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2023年11月24日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「「かわいそう」「殺すな」熊駆除クレーマー続出が意味する、「理想化された自然」と「都市の論理」
「理想化された自然」観
クマの駆除をめぐって賛否両論が巻き起こっています。駆除する側の行政にクレームが殺到するだけではなく、クレームに対する批判も大きくなっています。
【写真】世界最悪、12人が犠牲になった「マイソールの人食い熊」をご存じか
報道によれば、「殺処分するな」「武器を使うのは卑怯だ」などと感情論が多く、電話口で号泣する人もおり、行政が対応に苦慮しているといいます。クマの被害が多発する東北6県と北海道、新潟県の知事らは、11月13日に環境省を訪れ、クマを「指定管理鳥獣」に指定するよう要望。翌14日には、伊藤信太郎環境相が追加の検討を始めたことを明らかにしました。
実は、同種の騒動は、もう20年近く前の話になりますが、2005年に青森で行なわれたサルの駆除でも勃発しています。人への威嚇や人家への侵入が問題になっていたことから、脇野沢村が捕獲した6匹のサルを駆除したのです。その後、村には抗議の電話が2日間で100件以上殺到。「猿を殺すなら村人を殺す」と脅迫めいたものもあったといいます(河北新報/2005年1月27日付)。
現地の人々の実態をまったく考慮していない独りよがりな主張、単なる無知といえばそれまでかもしれせん。しかし、なぜ、このような極端な反発が噴き上がるのでしょうか。
それは最近の報道で紹介されたクマの駆除に抗議する女性のコメントに如実に表れています。彼女は「みんな野生の生き物って、癒やしてるわけじゃない。クマは怖い汚い恐ろしいというイメージを植え付けられている。悪者じゃないよ、そう思わない?」と言ったのです(*1)。
これこそが極端な反発の背景にある「理想化された自然」観であり、自然と人間の関係の単純化なのです。
「手つかずの自然」は存在しない
例えば、兵庫県立大学自然・環境科学研究所教授の横山真弓は、野生動物が一線を越えて、人の生活圏に入ってくる原因について、巷で言われている山が開発され、森が荒れたて住みにくくなったなどはごく一部と述べ、三大要因として、(1)野生動物たちの数の増加、(2)人口減少による人間活動の縮小に伴う野生動物の生育環境の拡大、(3)野生動物たちの学習能力の高さを挙げました(*2)。
横山は、昭和初期から第二次世界大戦にかけて日本の野生動物が絶滅寸前に陥っていたこと、戦後は一転して保護政策が始まったこと、個体数が増加する中で農山村から産業が撤退し、生息地が拡大したことなどを解説し、「自然を破壊する人間」と「住む場所を追われる野生動物」というわたしたちが思い描きがちな神話を否定したのです(同)。実際、クマの駆除を非難する人々は「人間の責任」を口にすることが目立ちます。
歴史を振り返ると、前述のサルの被害は、江戸時代から存在しています。当時の旅行記には、鹿やサルが全部食べてしまうので、収穫できず、飢えることがあるなどと書かれており、農業書にはサルの食害対策などが紹介されているほどでした。
名古屋大学環境学研究科教授の丸山康司は、それはサルが伝承で神格化されるといった文化的な位置付けや、霊力があるとされて薬用資源として利用されるなど、多様な関係性ありきの共存であったことを強調しています(*3)。
そもそも多様な関係性が失われ、「害」の面しかない純粋な「害獣」は近代化の産物といえます。「手付かずの自然」という言葉がありますが、とりわけ近代化以降、もはや「手付かずの自然」はどこにもなく、地域ごとの生態系のバランスを保つために人が介入しなければならなくなっています。
もちろん、それは人間の都合に過ぎないという言い方もできますが、地域住民の生存が懸かっている場合は介入を避けられません。
ディープエコロジーという理念
社会が自然の保護や管理の主体として関わることが必須となるのです。なぜなら、「自然な」野山が幻想に過ぎないのと同じく、「自然な」捕食関係も幻想に過ぎないからです。けれども、まるでエデンの園のような「理想化された自然」観が世間に浸透しています。
これは震災研究で知られる物理学者の寺田寅彦の「大自然は慈母であると同時に厳父である」という表現における「慈母の慈愛」しか見ていないことを意味します。
クマ駆除の騒動では、ここに都市と地方の二項対立が入り込んでいます。先の抗議した女性は都市部に住んでいることを隠しませんでした。おそらくほとんどのクレームがその地域と何ら接点を持っていないのです。都市において野生動物を殺すことは「野蛮」であるという感覚的なものもありますが、昨今のエコロジーと持続可能性を重視する風潮は、植物を含むすべての生き物を生かすことを求めている節があります。
これは、生命全体を平等に取り扱おうとするディープエコロジーに近い立場です。ディープエコロジーは、1973年にノルウェーの哲学者アルネ・ネスが提唱した概念で、すべての生命は人間と同等の価値を持っており、人間が勝手に侵してはならない「生命圏平等主義」(biospherical egalitarianism)という理念を掲げています。ただし、ネスは、人間が生きるために必要な動物の殺生などは否定していません(*4)。
しかしながら、クマの駆除に怒りや悲しみの声を上げる人々は、より過激なディープエコロジーの信奉者のように、「いかなる理由があっても動物の命を奪ってはならない」という思想に突き動かされているように映ります。クマに襲われた人々の恐ろしい被害状況が報じられていますが、死亡する可能性が高い上、生き残っても交通事故と同程度の衝撃によって、顔や頭部が原形をとどめないほどの重傷を負います。
自然は、人間が作り出した概念など素通りします。生態系のゲームに従っているに過ぎません。それは「生存すること」です。進化生物学者のダン・リスキンは、自身がヒフバエに寄生された原体験を振り返り、「自然は熱帯雨林の美しい写真ではない。それは、寄主から寄生者に、餌動物から捕食者に、そして腐りつつある死骸から腐肉食動物に流れるエネルギーをめぐる戦いよって引き起こされる、生と死のドラマ」だと述べました(*5)。
「妥協点」を模索し続ける
当たり前ですが、わたしたちも生物であり、自然の一部であるからこそ、寄生されたり、襲撃されたりするのです。こういった諸々の連鎖、緊張関係、そして歴史的な経緯が蔑ろにされると、「かわいそう」「殺すな」という「癒しとしての自然」というファンタジーに乗っかった大合唱が生じるのです。
皮肉なことに、野生動物も人間と同じく環境の影響をまぬかれず、その性質や行動パターンが変化を遂げてゆき、従来のイメージを刷新してしまうところがあります。その場合、人間の都合でこしらえた「自然観」は、現実離れした概念でしかありません。 時間を元に戻せない以上、わたしたちは自然に何かしらの形で手を入れるしかありません。自然と人間の二項対立ではなく、相互浸透が不可避な状況とどう付き合っていくかという道しかないのです。
それは、一部の地域で始まっている捕食を前提とした狩猟ツーリズムに象徴される「害獣」カテゴリーを超える価値の創出といった「妥協点」を模索し続けるということです。野生動物との多様な関係性を地道に編み直すというリアリズムこそが不可欠になっているのです。
*1 クマ駆除に抗議電話30件…女性を直撃「人の責任だ」秋田知事「感情論多い」【詳細版】/2023年11月9日/テレ朝news
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900000736.html
*2『エコひょうご』2021春号No.98(公益財団法人ひょうご環境創造協会)
https://www.eco-hyogo.jp/files/4616/3357/0922/ecohyogo98.pdf
*3 関礼子・中澤秀雄・丸山康司・田中求『環境の社会学』(有斐閣)
https://www.eco-hyogo.jp/files/4616/3357/0922/ecohyogo98.pdf
*4 アルネ・ネス『ディープ・エコロジーとは何か』斎藤直輔・開龍美訳(文化書房博文社)
*5 ダン・リスキン『母なる自然があなたを殺そうとしている』小山重郎訳(築地書館)
真鍋 厚(評論家・著述家)
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11月24日 YAHOO!JAPANニュース STVニュース北海道「【速報】ヒグマの体内から遺体の一部 死亡した大学生と特定 登山中にクマ襲撃 北海道福島町
警察は24日、北海道福島町・大千軒岳で死んでいたクマの胃の内容物について、DNA鑑定した結果、遺体で見つかった男子大学生(22)のDNAと一致したと発表しました。
函館市の北海道大学水産学部の屋名池奏人さん22歳は11月2日、登山をしていた大千軒岳の6合目から60メートルほど離れた川の近くで遺体で発見されました。
遺体の周りには土がかぶせられていて、数十メートル離れたところでクマの死骸が見つかりました。
屋名池さんは全身が激しく損傷している状態で、司法解剖やDNA鑑定の結果、死因は出血性ショックだったことが判明しています。
警察によりますと、クマの胃の内容物から遺体の一部とみられるものが発見され、DNA鑑定の結果、屋名池さんと特定しました。
警察は、屋名池さんがクマに襲われて死亡した可能性が極めて高いとしています。
クマは10月31日に、30代から40代の消防士の男性3人を襲った個体と同じで、男性らがナイフで首などを切りつけ撃退していました。
その後の調査で、このクマは首の刺し傷が致命傷で死んだことがわかっています。
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日本を空気的に支配する動物愛護、マイノリティ・ファシズム、エコ・テロリスト、ヒューマニズム原理主義、環境過激派、リベラル・ファシズム(エセ・リベラル)。
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熊駆除クレーマーは、人命よりも害獣化した熊・鹿・猪・猿などの命を守ろうとしている。
害獣駆除は、動物虐待ではない。
外来種を人為的に持ち込み山野・河川に捨て、在来種の生息域を侵蝕させる行為こそが動物虐待である。
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11月21日 YAHOO!JAPANニュース 週刊現代講談社「「夜道を歩くときは気をつけろ」「お前も死ね」最凶ヒグマ「OSO18」駆除ハンターが受けた「ヤバすぎる誹謗中傷」
1400件もの抗議
全国各地で出没が相次ぐクマ。人が襲われる被害も相次いでおり、自治体は駆除など対応に追われているが、彼らを悩ませる問題がある。クマの駆除をめぐり、自治体に「クマがかわいそう」「クマを殺すな」などと苦情が殺到しているのだ。
10月には秋田県美郷町の作業小屋にクマ3頭が20時間以上にわたって居続ける騒動があり、地元の猟友会によって駆除された。この件が報道されると、役場には県外から抗議の声が相次いだという。美郷町役場の担当者が明かす。
「実は地元ではそれほど騒ぎになっていませんでしたが、全国ニュースになったため、それこそ九州在住の方からも抗議の電話がありました。当初は『クマを殺さないで』という内容でしたが、駆除してからは『なぜ殺したんだ』という怒りの声に変わりました。電話で700件、メールで700件、合わせて1400件もの抗議の声が届きました。
こちらとしては丁寧に事情を説明するしかなく、どうにかご理解していただきたいのですが、一方的にまくし立てられる方が多く、『クマと一緒に死ね』『税金泥棒』『役場をやめろ』と言われたこともあります。
こうした電話は数分では終わらず、ときには30分以上におよぶ場合もあります。一時は通常業務を行えない状態でした」
過剰な抗議や誹謗中傷に悩んでいるのは自治体だけではない。命がけでクマと向き合う地元猟友会のハンターも同じだ。
クマちゃんへの冒涜だ!
「クマによる被害がこれだけ社会問題になっている今こそ、ハンターの立場や思いをきちんと伝えたい。いや、今後のためにも伝えなければいけないと思う」
こう訴えるのは、北海道東部の標茶町などで牛66頭を襲ったヒグマ「OSO18」を追い続けてきた北海道猟友会標茶支部の後藤勲支部長だ。
4年にわたって酪農家を苦しめてきたOSO18は今年7月にようやく駆除されたが、このときも駆除したハンターに対して批難が殺到したという。
OSO18を駆除したのは、標茶町の隣町である釧路町役場の男性職員。有害鳥獣駆除を担当する部署に勤務する公務員ハンターだ。
「OSO18を駆除したハンターは標茶町の出身。我が家の隣に住んでいたので、彼のことはよく知っています。彼によれば、職場に誹謗中傷に近い抗議電話がいくつもかかってきて、つらい思いをしたそうです」(後藤支部長)
男性職員が在籍する釧路町役場の同僚も次のように明かした。
「捕獲後しばらく、『ハンターを出せ』などと抗議の電話やメールが殺到しました。トータルで40件ほどでしょうか。一回の電話が長いので、どうしても業務に差し支えが出てしまいました」
OSO18と駆除したハンター
「OSO18を捕獲した同僚の写真が現代ビジネスさんに掲載されたときには『クマちゃんへの冒涜だ』との怒りの電話が相次ぎました。抗議してくる方の多くは、なぜかクマとは言わず、『クマちゃん』という言い方をします」
8回連続でクレーム電話
一方的に同じことをまくし立て、気が済んだらいったん電話を切り、またかけてくる。これが7、8回続くこともありました。我々役場の人間は立場上、強く反論できません。仮にこちらが何かを言っても、反応はなく聞いている様子すらない。まるで機械と話しているようでした。
彼は精神的に苦しんだと思います。ときには『夜道を歩くときは気をつけろ』『お前も死ね』といった過激な内容もあり、彼は『こんな電話が来ると思っていなかった』と漏らしていました」
駆除されたOSO18
こうした事態に対し、後藤支部長は「有害なクマを駆除したにもかかわらず、誹謗中傷される。そんなバカな話はない」と怒りをあらわにする。
「彼は有害鳥獣駆除を担当する部署にいて、クマが出たという報告があったから出動しただけ。何も悪いことをしていません。にもかかわらず、誹謗中傷されて思い悩む。こんなことが許されていいのでしょうか」(後藤支部長)
ハンター歴60年の後藤支部長はクマとの共生の難しさを訴える。
「『クマを殺すな』と主張する人は現場を見てほしい。クマの被害で苦しむ自治体に住んでみれば大変さがわかりますよ。クマとの共存なんてできるわけがない」
後編記事『クレーマーと保護団体に告ぐ!最凶ヒグマ「OSO18」ハンターの怒りの告白「駆除は命をかけたボランティア」「人間とクマの共存は100%不可能だ」』では、現場で命をかけてクマと対峙するハンターが誹謗中傷を繰り返すクレーマー、そして保護団体への本音を明かす。
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11月23日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「クレーマーと保護団体に告ぐ!最凶ヒグマ「OSO18」ハンターの怒りの告白「人間とクマの共存は100%不可能だ」
1000頭駆除しても被害は急増中
ありし日のOSO18(写真:標茶町提供)
全国各地で出没が相次ぐクマ。人が襲われる被害も起きており、自治体は駆除など対策に追われているが、駆除をめぐり、自治体には「クマを殺すな」などと苦情が寄せられている。
【写真】北海道中を恐怖の渦に叩き落とした「最凶クマ」OSO18の「最期の姿」
前編記事『「夜道を歩くときは気をつけろ」「お前も死ね」最凶ヒグマ「OSO18」駆除ハンターが受けた「ヤバすぎる誹謗中傷」』でも紹介したように、執拗な抗議は自治体だけではなく、命をかけてクマに対峙するハンター個人にも向けられ、彼らを苦しめている。
北海道東部の標茶町などで牛66頭を襲ったヒグマ「OSO18」を追い続けてきた北海道猟友会標茶支部の後藤勲支部長は憤る。
「『クマを殺すな』と主張する人は、クマによる被害に苦しむ自治体に暮らして自分の目で実態を見てほしい」
2021年度に駆除や狩猟などで捕獲されたヒグマの個体数は1056頭。記録が残っている1962年度以降、1000頭を超えるのは初めてだった。
「これだけ捕獲しても被害が続いているのが現状です。現在生息する個体数については、1990年に『春グマ駆除』が廃止されてから30年で約2倍になったと推定されており、2020年の推定値では1万1700頭となっています」(北海道庁ヒグマ対策室の担当者)
現場を知る後藤支部長は「人間とクマの共存はありえない」と断言する。
「クマの駆除に反対する保護団体の人たちは共存・共生という言葉を口にしますが、その方たちのいう共存・共生には疑問があります。人間は、はるか昔から狩猟し、植物を食べて生きてきました。これが本来の共存・共生だと思います。
命をかけたボランティア
すべてを生かすということはありえないし、共存共生は100%ないと考えています。クマの駆除はやむをえない。年間1000頭以上もクマを捕獲してもこれだけの被害が出ています。もし駆除しなければ、クマは町に出てきて、そのうち人間がやられてしまう。
被害が出たとき、誰が補償してくれるんですか。『クマを殺すな』と訴える保護団体の人は補償してくれるんですか。
保護団体の人は『クマを駆除するな』と繰り返すだけで、『じゃ、どうやって共存するのか? 』と問われても具体的な解決案を示せない。それでは解決しません。私の意見に反論があるのであればぜひ討論したい」(後藤支部長)
誹謗中傷を続けるクレーマーや、クマの保護を訴える団体に対し、後藤支部長が強いメッセージを発するのは、今後への懸念があるからだ。クマの生息数が増え続ける一方で、猟友会の多くは高齢化と担い手不足に直面している。
「そもそもクマの駆除対応についてはボランティアのようなものであり、決して義務ではありません。お金の話はしたくないが、標茶町の場合、クマの駆除の出動費は4時間以内であれば6000円です。これでは命をかけてパートに行くようなものです。しかも、弾薬は高額であり、猟銃を所持するには3年に一度、精神鑑定を受けて診断書を提出する義務もあります。
第二のOSO18が出現
ありし日のOSO18(写真:標茶町提供)
これらに加え、有害なクマを駆除したにもかかわらず、誹謗中傷されてしまうのであれば、ハンターはどんどん辞めていくでしょうし、新たな担い手も出てこないでしょう。誰も鉄砲を持たなくなりますよ。私自身、『やってられるか』という思いがあります」
OSO18による被害でパニック状態が続いた標茶町だが、現在は一転して静かだという。しかし、「第二のOSO18」が出現する可能性はある。
「OSO18がいなくなってから不思議なくらいクマが出ていません。目撃情報がわずかにあるだけです。ただし、油断はできません。もうすぐ牛の放牧が終わりますが、それはクマが家の近くに来る可能性があるということを意味します。
OSO18より強いクマはいくらでもいますし、OSO18のDNAを持ったクマが現れる可能性もあります。被害がひとつでも出たらまた大騒ぎになるでしょう。
そのとき、ハンターがいなかったらどうなるのか。誹謗中傷を許していたら誰も鉄砲なんて持ちませんよ。それでいいんですか、という話です」
クマ対策の最前線にいるハンターの声は、遠く離れた場所から誹謗中傷する人に届くだろうか。
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さらに関連記事『【独自】頭部に命中した3発でようやく…最凶ヒグマ「OSO18」が絶命した“最期の瞬間”と、駆逐したハンターの「意外な正体」』では、OSO18駆除ハンターが仕留めた際の緊迫の状況を詳報しています。
週刊現代(講談社)
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11月22日 YAHOO!JAPANニュース BRAVO MOUNTAIN「過去最悪「クマ被害」のいま! 「人身被害全国1位」秋田県在住ライター【現地レポ】
本州の山間部に生息するツキノワグマ
今年(2023年)の秋は、全国的に過去最悪のペースでクマ被害が急増中だ。クマのエサとなる木の実が凶作のため、空腹のクマが里に下りてきたことが要因の一つと考えられている。
■【画像】自宅の近くのクマの糞と、破壊された公園のベンチ
筆者の住む秋田県は元々ツキノワグマが多い地域だが、今年はとくに被害が多発しており、人身被害件数61件69名で、全国1位となっている(11月14日現在)。
筆者自身、今のところクマと遭遇していないが、知人からクマとの遭遇体験や被害について聞くことが増えた。本記事では、知人の体験談を3つ紹介したい。
■体験談1. 山のふもとにある公園で獣(おそらくクマ)のうなり声
知人がクマと思われるうなり声を聞いた公園
筆者の知人は、山のふもとにある公園に行ったとき、獣のうなり声を聞いたそうだ。そこは、普段からたびたびクマが目撃される場所。知人は「クマの声かもしれない」と思ってすぐに車へ戻ったため、遭遇せずにすんだ。
クマは本来、臆病な生き物で、人の接近に気づくと唸り声を出して威嚇する。これを無視して近づけば襲われる可能性もあるため、騒がずに建物内や車内など少しでも安全な場所に避難しよう。
またクマ鈴やラジオを携行し、人間の存在をアピールしながら行動すると、クマの方が先に逃げてくれる可能性が高まる。
■体験談2. 夜の運転でクマと衝突
クマ注意の看板
別の知人は、仕事帰りに夜道を車で走行中、飛び出してきたクマを避けきれずに衝突してしまったそうだ。知人の車はバンパーが破損し、クマは道端でうずくまっていたという。クマが出たのは、里山の近くではあるが、幹線道路や住宅地にも近い場所だ。
車の修理に保険を使おうにも、クマと衝突したことを証明するのは難しい。そこで、ドライブレコーダーの映像を警察と保険会社に証拠として提出したそうだ。
野生動物は突然道路に飛び出すことがある。とくにツキノワグマは黒いので、夜道では気づきにくい。万が一のため、車にドライブレコーダーを付けておくことをおすすめする。
また、クマの目撃情報がある地域での夜間外出は、なるべく控えたほうがいいだろう。
■体験談3. 果樹園で収穫間近の果物がクマに食べられる
色づき始めた収穫間近のリンゴ
筆者が毎年リンゴを買いに行く果樹園では、収穫間近のリンゴがクマに食べられてしまった。「明日収穫しよう」と予定していたリンゴが毎晩のようにクマに食べられ、収穫量は例年の5分の1ほどになってしまったそうだ。
クマは木に登り、高い場所の果実も取ろうとするため、木の枝もかなり折られている。果樹園の管理者は「収穫量が元に戻るまで、5年以上はかかると思う」と悲しそうに話していた。
また、リンゴの木に登っているクマの姿も目撃したそうで「怖くてハサミを握りしめていた」とも話しており、筆者もゾッとした。
秋田県内では、栗農家が被害にあい、クマと鉢合わせしてケガをする被害も出ている。果物や栗はクマも好んでよく食べる。山に入る際は栗の木やどんぐりの木など、クマが好みそうな実を付ける木になるべく近づかないこともクマ対策の一つだろう。
■クマ被害は他人事ではない
糞が見つかった農道
秋田県では、山から離れた市街地でも被害が出ていることから「いつでも・どこでも・誰でもクマに遭遇するリスクがある」として、住民に注意を呼びかけている。
秋田市郊外にある筆者の家の近くでもクマのものと思われる糞が見つかり、公園ではクマが目撃された。そのため、近所の小学生はランドセルにクマ鈴を付けて登下校している。また、電車や新幹線がクマと衝突し、遅延することも珍しくない。
今年はクマの餌である木の実の凶作に加え、暖冬予想のため、冬眠しないクマが出る可能性があるようだ。山へ出かけるときには、クマの活動域に立ち入ることをまず自覚して、十分なクマ対策をしてほしい。
クマ対策や鉢合わせしたときの対応については、環境省のホームページに詳しく記載されている。クマの目撃情報が多い地域に出かける際は、事前に読んでおくことをおすすめする。
鈴山 まき(すずやま まき)
東北の自然豊かな雪国在住。子どものころからのキャンプ好きが高じて、キャンプ場で6年間勤務。
同時期に登山にもハマり、無雪期を中心にさまざまな山を歩いてきた。
現在は子育て中のため、子どもと低山ハイキングやキャンプ、BBQなどをゆったりと楽しんでいる。
鈴山 まき
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