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2024年4月19日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「「なぜ日本の研究は遅れているのか」…ノーベル賞科学者・山中伸弥が教育現場にみる、日本とアメリカの絶望的なほどの「差」
想像を絶する速度で進化を続けるAI。その存在は既存の価値観を破壊し、あらゆる分野に革命をもたらしている。人知を超えるその能力を前に、人類はどう立ち向かうべきなのか。
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それぞれの分野の最先端を歩む“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が人間とAIの本質を探る『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋して、新時代の道標となる知見をお届けする。
『人間の未来AIの未来』連載第24回
『「知識が邪魔することもある」二人の天才が語る、無知であることが武器になる「納得の理由」【山中伸弥×羽生善治】』より続く
「居心地がいい」環境が危ない
山中 詰め込んでしまったほうが、実は安心ですからね。これは今の教育の現場全体に言えることだと思うんです。
今、アジアはどこもそうかもしれないですけど、日本はまず受験というハードルがあるでしょう。幼稚園に入る時、小学校に入る時、中学受験、高校受験、大学受験。幼少期から、ともかく問いに対して正解を出すトレーニングを受けていますよね。教科書に書いてあること、先生の言うことは絶対正しくて、その通りに答えたらマルだし、そこに逆らったらペケ。それで点数が取れなかったら、希望の大学に入れない、そういうトレーニングを受けています。
だから失敗を経験することなく、教科書に書いてあることをそのまま答えたら目的の大学に入れるという環境で育ってきた子が大半です。そんな子がいきなり研究の世界に入ってきて、「教科書に書いてあること、先生の言うことは信じるな」とか、「実験結果で予想外のことが起こった時こそチャンスだ」とか言われても、それは簡単には受け入れられないですよ。
羽生 もう考え方が染みついてしまっている。
日本とアメリカの「違い」
山中 僕は日本とアメリカの両方で研究してきましたけれども、アメリカの子供のほうが割とのびのびしていて自由なんですね。大学生になってからは、ものすごく勉強しなければならなくなる。でもそれまでは、スポーツに打ち込んだりする子供たちがけっこう多いですね。研究者という観点からそういう姿を見ると、日本に比べてアメリカのほうが有利なような気がします。
羽生 有利というのは、アメリカのほうが意外なことに直面したり、答えがないような場面を経験したりしている機会が多いということですか。
山中 そうですね。日本は、子供たちにとって居心地がいいところですよね。親や学校の先生から「こうしなさい」と言われたことをその通りやっていると、いわゆる「いい子」となり、ある意味、非常に生きやすい。逆にそこから外れると、すごくしんどい思いをして生きづらくなります。
それから最近は、大人が子供を叱ることを避ける傾向がありますね。昔に比べたら、親はほとんど子供を叱らない。学校でも叱る先生がいません。生徒や学生にかける言葉でさえ、一歩間違えたらパワハラ、アカハラと言われてしまう。叱ることを推奨しているわけではないけれども、子供たちは自分の考え方や行動様式を否定されないので、見方によっては新しい世界に踏み出す機会が失われているわけです。
教科書を否定する
山中 こういう経験があります。今、普通の自家用車でも、前方車両の速度に自動的に追従するといった機能がどんどんついていますよね。僕はそういう機能があると、すぐに使いたい(笑)。
料金所ETCのところに来ると、前方の車が時速2十キロくらいまでスピードを落としますよね。そうすると僕の車も自動的に減速します。減速はするけれども、普段の自分のタイミングよりも一歩遅れるんです。自分だったら、ここから減速するというタイミングで減速してくれない。それでぐっと我慢していると、ちょっと遅れて減速するんですけど、もう怖くて怖くて、ものすごく不快です。
そういうふうに、ずっと慣れ親しんできた自分の行動様式と違うことをするのは、頭では安全だとわかっていても、全身から不快さがこみ上げてくる。もし車が止まらなかったら大変なことになってしまうわけだから。だいたい止まりますけどね(笑)。
研究というのは、今ある教科書を否定します。他の人と違うことをやる、新しいことを発見する、というのは、結局、教科書の否定につながりますからね。ただ、僕は教科書の否定を推奨しているわけではないですよ。そもそも教科書をあまり知らないので(笑)。
羽生 いえいえ、そんなことは(笑)。
新しいアイデアを広げるために
山中 教科書を否定しているのではなくて、教科書を十分知った上で否定するのが、本来のやり方だと思います。結果的に「ああ、これは以前、教科書に書かれていたことと違っているな」と後からわかることのほうが多いです。
羽生 確かにそうですね。たとえば私も「若い人たちに何かメッセージをいただけませんか?」と聞かれることがあります。そんなときには「今まで自分がやったことがないとか、経験したことがないとか、そういう羅針盤が利かない状況に身を置くことが大事なのではないでしょうか」と答えることが多いんですね。
先ほどの車の運転の話もそうですけれども、今はどこへ行くのにも、カーナビはあるし、スマホさえ持っていれば、自分がどこにいるかが瞬時にわかります。いつも手元に地図と羅針盤があり、そういう意味では安心な状況です。
でもそうではなく、これまでの知識や経験が役に立たないような、カオスとまでは行かなくても、そうした状況に身を置いて自分で対応していくことが、新しい発想やアイデアを広げるのかなと思います。
『「今からシリアの戦地に行ってきます」天才棋士・羽生善治が仰天する、向こう見ずな「Z世代」の衝撃的な行動』
に続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/羽生 善治
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4月16日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「「今からシリアの戦地に行ってきます」天才棋士・羽生善治が仰天する、向こう見ずな「Z世代」の衝撃的な行動
山中 伸弥
京都大学iPS細胞研究所所長
羽生 善治
想像を絶する速度で進化を続けるAI。その存在は既存の価値観を破壊し、あらゆる分野に革命をもたらしている。人知を超えるその能力を前に、人類はどう立ち向かうべきなのか。
それぞれの分野の最先端を歩む“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が人間とAIの本質を探る『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋して、新時代の道標となる知見をお届けする。
『人間の未来AIの未来』連載第25回
『「なぜ日本の研究は遅れているのか」…ノーベル賞科学者・山中伸弥が教育現場にみる、日本とアメリカの絶望的なほどの「差」』より続く
「新しい環境」に身を置くこと
山中 前回記事で言われたことは将棋で対局するときにも当てはまることなんでしょうね。
羽生 そうですね。将棋には「これはこうだ」とはっきり答えがわかっている局面と、答えがない局面の両方があります。自分が持っている羅針盤が機能しない未知の局面に出くわしたとき、どれだけ素早くその局面に対応できるかで真価が問われます。
私は普段の生活でも同じサイクルや思考法に陥らないようにしています。身近な例で言えば、将棋会館に行くにも、羽田空港に行くにもルートを変えるとか、新しい場所に身を置くようにしています。
ただ、この話で気をつけなければいけないのは、「これまでの知識や体験が役立たない状況」と聞いた若い人たちが、勢いのあまり「じゃあ今からシリアの戦地に行ってきます」とか「災害地域に出かけます」といった短絡的な考えに結び付けると、困ってしまいます。
リスクを取る上での「大前提」
羽生 だから、気をつけて話さないといけないんですよ。知識や経験が役に立たない状況はリスクを伴うので、さまざまな意味での身の安全を自分自身の判断で確保することは大前提です。
山中 「向こう見ず」はダメで、向こうもこちらもちゃんと見る。
羽生 情報化の現代では、大量のデータがどんどん入って来るので、量を使いこなすことによって力をつけている感じがします。私が関心を持っているのは、膨大に有する情報の「量」を、ただ丸暗記するのではなく、自分なりに栄養素として吸収し、未知の局面に遭遇したときに自然に対応できるような「質」に転換できるかどうかです。これから先の若い人たちの大きなテーマなんじゃないかと思っています。
「一流」になるためのプロセス
山中 過去の知識や経験は、もちろん大切です。将棋でも過去の対局を勉強したり教わったりすることは、絶対必要なんだと思います。さすがの僕も研究論文などは数多く読みますよ。でもそればかりだと、頭でっかちになってしまう。
それはそれで大切なことですが、どこかで実際に自分で手を動かさないといけません。でないと、一流の批評家にはなれるかもしれないけれども、一流の研究者にはなれません。
僕は研修医の時に上司から「ごちゃごちゃ考えんと、実験をやってみい」と何度も言われました。その教えが、研究に活きています。行き詰まったら、とりあえず実験をしてみる。そうすると、これまでとは違う結果や、何か予想しないことに出会って、それが新しいアイデアのヒントになることがある。
今の教科書の中身を変えていく仕事をするのに、ある程度の学びは必要です。でもそれはある程度にしておいて、途中からは失敗を恐れず、実際に踏み出さなければ前には進めません。そのタイミングですよね。まったく何も論文を読まずに、いきなり実験ばかりしていても、それは多分ダメだと思います。かといって、ものすごい量の論文を読んでも、全然実験をしていなければやっぱりダメです。うまい塩梅と言うか、うまいタイミング、それがとても大切ですね。
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4月16日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「「知識が邪魔することもある」二人の天才が語る、無知であることが武器になる「納得の理由」【山中伸弥×羽生善治】
山中 伸弥
京都大学iPS細胞研究所所長
羽生 善治
想像を絶する速度で進化を続けるAI。その存在は既存の価値観を破壊し、あらゆる分野に革命をもたらしている。人知を超えるその能力を前に、人類はどう立ち向かうべきなのか。
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『「3つしかない」ノーベル賞科学者・山中伸弥が明らかにする、意外過ぎる「成功者」になるための裏ワザ』より続く
「無知」の強み
羽生 他の人たちが手を付けないところに、「じゃあ、やってみようか」と踏み込めたのはどうしてなんでしょうか。
山中 そこなんです。すでにお話ししたように、もともと僕は整形外科医だったんですね。学生時代から整形外科医になりたかった。特にけがをしたスポーツ選手を復帰させることを専門にしたスポーツドクターになりたいと思っていたんです。だから学生時代、整形の授業だけは全部一番前で聞いていました(笑)。他の授業は、ラグビーをやって出たり出なかったりで偏っていたんです。
実際、整形外科医になったんですが、なかなか人生思ったようにうまくいかないですね。そもそも整形外科の患者さんでスポーツ選手は、実はそんなに多くないんです。少なくはないけれども、スポーツによるけがの中でも、脊髄損傷などとても治せないようなけがや病気の方がたくさんおられました。それでまず、「これはちょっと僕の思い描いていた世界ではない」と参ってしまいました。
知らないことだらけで研究
山中 それで結局、研究を始めてしまったんですね。でも研究を始めて愕然としたのは、学生時代サボりまくっていたので、基本をまったく知らないということでした。基本的単語さえわかっていない。
ゲノムの世界ではエクソン、イントロンという用語があります。ゲノムの配列で、エクソンというのはタンパク質を作る部分で、イントロンというのはそれとそれの間の切り取られる部分です。そんなのは中学生や高校生でも知っているんじゃないかなと思うんですけど、僕は大学院に入ってそれを見た時に、「何やこれ?」と思いました。見たことも聞いたこともない。そこからスタートしました。それが結局、今も続いているんですね。
羽生 そうなんですか(笑)。
山中 いまだに知らないことがいっぱいあるんです。今は減りましたけど、昔は学生さんに授業をすることがあって、特に京大の前にいた奈良先端科学技術大学院大学は、教育もしっかりしていました。自分の研究室を初めて持たせていただいた大学です。そこは大学院なんですけれども、4月から始めて半年くらいは、ずっと授業をするんです。
だから僕たちも分厚い教科書を順番に教えるんですよ。でも教えていながら、知らないことばっかりで、知らないことを教えるって「困ったなぁ」(笑)。学生さんはけっこう勉強しているので、僕よりもよく知っているんですよね。「絶対、バレるな」と思いながら、冷や汗を流して続けていました。
でも、その無知さによって、ある意味、怖いもの知らずでやっていました。iPS細胞の研究も、まさにそうです。知識があったら怖くてできなかったと思うんです。でも知らないものだから、「じゃあ、やってみようか」と思えたところがあるんですね。
成功体験が足かせになる
羽生 私自身も年数を重ねてきて思います。もちろん、経験を積んだら積んだで、知ることができたことは数多くあります。でも判断材料が増えるぶん、こういうやり方さえ知っていればまあまあ行けるとか、そこそこ行けるとか、リスクが小さい方法を知らず知らずのうちに覚えてしまったところがありますね。ちょっと小賢しいと言うのか、大胆なこと、挑戦的なことをやる機会が少なくなって、反省することが多いです。
山中 知識は当然必要なんだけれども、でも時に邪魔することもある。知識が多すぎると、「これはできるはずがない。絶対に失敗する」と怖くなるんですね。そう思ってしまうと、もう本当にできなくなってしまいますから。
羽生 確かに知識や経験が新しい発想の足かせになるケースもいっぱいあります。だから、私の場合、経験をそのまま当てはめないようにしています。ひと工夫して、具体的に実戦に生かせるものに変えていく。たとえば、対局で経験したことのある局面を、似たような局面での判断に利用したり、考え方だけを抽出してみたりしています。
山中 なるほど。
羽生 今、世の中にはものすごい量の情報があふれていますね。たとえば人と違うことをするためには、人が何をやっているかをまず知らなくてはいけません。もちろん、事前に自分なりに情報を集めて研究して備えることは大事だと思います。ただ、そういうことばかりに多くの時間と労力を使って、なかなか肝心かなめの創造的なことに費やす時間が少なくなってしまうことがあります。
頭の中にたくさん情報を詰め込んでしまうと、先入観や固定観念ができてしまって、これまでにまったくなかったもの、既成概念を破壊するようなことが思い浮かばなくなってしまう。それはよくないな、と思うことが多いですね。
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4月27日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「日本がアメリカに負ける原因の正体は、自らが作り出す「死の谷」だった…天才科学者・山中伸弥が語る、日本が抱えるヤバすぎる「弱点」
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。
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人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。
『人間の未来AIの未来』連載第32回
『「金メダルを取っても意味がない」…天才科学者・山中伸弥が語る、日本特有の“風潮”が及ぼす科学への「痛すぎる影響」』より続く
研究に立ちはだかる「死の谷」
山中 僕たちの大学が研究した技術は、最終的には大手の製薬会社などが本格的に開発してくれないと社会に還元することはできません。大学からいきなり社会に還元するのは難しいんです。
先端技術の開発で、基礎研究の成果から実用化・製品化するまでには「死の谷」と呼ばれる資金的なボトルネックがあるんですね。日本では今まで大学発の優れた研究が多かったのですが、その「死の谷」を乗り越えられず、実用化段階でアメリカに先を越されてしまったケースが少なくありません。ゲノム情報を読み取るシークエンスの技術も、もともとは日本の会社が先陣を切っていたんです。
羽生 そうだったんですか。
山中 ところが国からの援助が途切れてしまったので、日本は開発が――。
羽生 停滞してしまった。
アメリカが急速に成長できたワケ
山中 アメリカが急速に伸びたのは、ベンチャー企業のおかげです。アメリカだとベンチャーがすぐにできて優秀な人材が集まります。大学発の技術をベンチャーで伸ばし、それを大企業が買収したりしてスムーズに行くんです。日本のベンチャー企業も頑張ってはいますが、なかなか苦労しています。まず、お金が集まりにくい。人材を集めるのも苦労しているところが多いと思います。
日米で若い人を見ていると、明確な違いがあります。アメリカでは研究室のトップの学生が「自由にやりたい」とベンチャー企業に行きたがります。ところが、日本はベンチャーに行きたがる学生は本当に少ない。多くは大学に残るか、一流企業に就職しようとします。たとえ本人がベンチャーに興味があっても、親御さんが反対しますね。
羽生 「せっかく大学を出たのに、なぜわざわざリスクの高いベンチャーに行くんだ」と。
山中 その違いは本当に大きい。だから、多くの優秀な若者が研究者の道を選ばない傾向と、ベンチャー企業の道を選ばない傾向は、徐々にでも変えていかないといけません。
羽生 科学技術は日本を支える大事な要素ですからね。
山中 ちょっと心配ですね。
『じつは、「その場しのぎばかり」…永世七冠・羽生善治の“意外過ぎる告白”と「いい加減さ」がもたらす絶大な効果』
に続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/羽生 善治
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