🐟25〗─1─日本の伝統的魚食文化は輸入魚介類で支えられる。マグロ、サバ。~No.100No.101 

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 日本人のコメ・魚介食離れが進んでいる。
 伝統的魚食文化を支えているのは、日本人ではなく外国人である。
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 2023年8月20日 MicrosoftStartニュース FNNプライムオンライン「マグロを“買い負け”る日本…。中国やアメリカの需要増で気軽に食べられなくなる日が来るかもしれない
 マグロを“買い負け”る日本…。中国やアメリカの需要増で気軽に食べられなくなる日が来るかもしれない
 © FNNプライムオンライン
 食卓に欠かせない海産物。刺身や煮魚、寿司など、私たちはざまざまな形で魚を楽しんでいる。
 長年、豊富な種類の魚介類を安価に消費してきたが、今後はそうは言っていられない状況が起きているという。
 魚食文化における影響力は健在ながらも、経済力やルール面で国際的に後れを取り始めている日本。
 そんな日本の海、そして世界の海で起こっていること、輸入される海産物の現状などを水産アナリスト・小平桃郎さんの著書『回転寿司からサカナが消える日』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介する。
 今回はマグロ。しかし、これも気軽に食べられなくなる日が近づいているという。
 世界で買い負けてしまう日本
 日本は今でも世界のマグロ消費量の4分の1を占めるマグロ消費大国です。しかし、日本が世界のマグロ市場で存在感を発揮していたのは6、7年前くらいまでです。
 韓国にある釜山港は、日本の主要都市や中国などにもアクセスしやすいという点で、現在、冷凍マグロの世界最大の集積地となっています。
 その釜山港が流通のハブとして機能しているのはマグロだけではなく、カニやエビでも同様です。成長を続ける中国の水産業界との結びつきが歴史的に強いため、釜山港のプレゼンスは今後も高まっていくものと思われます。
 中国の水産業者やバイヤーが海外でまとめ買いした水産物を釜山で荷揚げし、現地で切り分けや加工を行って大部分を中国市場に持ち込み、余剰品は日本や東南アジアに分配するという流れが、アジアにおける水産流通の今後のトレンドになりそうです。
 それを知ると「中国の残り物を食べさせられている」といった気がするかもしれません。
 しかし、そもそも日本では大トロはさほど需要はありませんでした。中国が大トロを高く買ってくれるからこそ、日本人は赤身を比較的安く食べられているのです。
 中国と同様に、ここ数年マグロの需要が伸びているのがアメリカです。
 全輸出量の8割ほどを日本が輸入していたメキシコ産養殖クロマグロをめぐっては、2020年からアメリカへ輸出されることが多くなったのです。
 そして2021年にはアメリカの輸入量が日本をわずかに上回りました。
 今後、数年以内にメキシコ産養殖クロマグロの7割がアメリカへ輸出されるようになり、日本への輸出分は2割未満にとどまるようになると私は見ています。
 こうした世界での買い負けの原因は、ほかにもあります。
 水産物に対する舌が肥えている日本人を消費者として抱える日本の水産業者は、海外で買い付ける際、要求が高すぎるのです。
 品質や規格が基準に見合う品物だけを選別することはもちろんのこと、在庫を抱えるのが悪とされているので小ロットで発注します。
 一方、米中の業者は細かいことは言わず大ロットで仕入れる。品質重視はいいことですが、どちらがお客さんとして歓迎されるか、言わずもがな。
 そんななか、マグロに限らず日本市場は海外の生産者にだんだん相手にされなくなってきているのです。水産業界の三大展示会の開催地はアメリカ、スペイン(2021年まではベルギー)、中国で、残念ながら日本は入っていないことを見てもよくわかります。
 “ヤミマグロ”の背景にある漁獲枠への不満
 2023年に入って大間マグロの不正流通問題が表面化しました。
 この問題は、漁師による漁獲枠への不満が背景にあったといえます。
 本州の最北端・青森県の大間漁港で水揚げされるクロマグロは、「黒いダイヤ」とも呼ばれ、国産マグロのなかでも最上級品として認識されています。
 大間の周辺漁港はサンマやイワシスルメイカなどが多く存在し、マグロにとっての栄養源が豊富なため、大間マグロは脂が乗っていて味が良いとされています。
 ちなみに豊洲市場の初競りでは、大間マグロが2023年まで12年連続で、その日の最高値で落札される「一番マグロ」となっています。
 そんな一大ブランドに、疑惑が浮上したのは2022年夏のこと。青森県による調査で、大間周辺の3漁協の漁師20人が前年のクロマグロの漁獲量計59.8トン分を報告していなかったことが明らかになったのです。
 さらにその後、新たな未報告分が明らかとなり、水産業者2人は合わせて74トンの漁獲量を県に報告しなかったとして、漁業法違反容疑で逮捕・起訴されました。
 同年度に、青森県に割り振られていたクロマグロの漁獲量は約710トンなので、この「ヤミ漁獲」がそれなりの規模だったことがわかります。
 ヤミ漁獲されたクロマグロは、水産卸売会社に売却され、その後、大間マグロとして回転寿司チェーンに卸されていたと報じられました。
 マグロの漁獲枠は、海域ごとに行われる国際会議の決議に基づいて各国に分配され、各都道府県や各漁協、そして漁師という具合に、枝分かれするように分配されていきます。基本的にすべてのレベルで、分配は過去の漁獲実績に基づいて行われます。
 大間漁協では5トン以上の枠を分配されている漁師もいれば、1トン未満の枠しか与えられていない漁師もいたようです。獲れば必ず儲かる大間マグロの場合、それぞれの漁師が与えられた枠の上限まで獲るのが普通です。
 すると漁獲枠分配の基準となる過去の漁獲実績は、永遠に固定化されることとなります。大間マグロのヤミ漁獲の動機には、そんな不公平感もあったものとみられます。
 大きくなりすぎた「大間のマグロ」の名前
 また、大間マグロというブランドが有名になりすぎたことも遠因でしょう。
 一方で、大間に近い漁場で取れて北海道に水揚げされたマグロのほうが安くて品質が良い場合も多いことは、この業界にいる人なら誰もが知っていることです。ただし、消費者はやはり「大間」というブランドに魅力を感じます。
 現在の水産流通では最終消費者に近い、末端市場の立場が強いこともあり、大間マグロというブランドが独り歩きしているような状況になっています。そのことは、大間のマグロ漁師にとってのヤミ漁獲への誘惑を高くしていたともいえます。
 今回、ヤミ漁獲に加担した大間の漁師に科された刑罰は10万~20万円の罰金のみ。これではヤミ漁獲の抑止になるとは思えません。
 一方で、大間以外の近隣の港にも、おいしいマグロが揚がるということが消費者に周知されれば、消費者が大間ブランドに集中することもなくなり、ヤミ漁獲に手を染める漁師も少なくなるのではないでしょうか。
 小平桃郎
 東京・築地の鮮魚市場に務める父の姿を見て育つ。大学卒業後、テレビ局ADを経て語学留学のためアルゼンチンに渡り、現地のイカ釣り漁船の会社に採用され、日本の水産会社との交渉窓口を担当。2005年に帰国し、輸入商社を経て大手水産会社に勤務。2021年に退職し、水産貿易商社・タンゴネロを設立。水産アナリストとして週刊誌や経済メディア、テレビなどに寄稿・コメントなども行っている。
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 8月20日 MicrosoftStartニュース FNNプライムオンライン「秋の味覚・サバが食べられなくなるかも?ノルウェー産依存と、脂が乗る前に獲ってしまう日本の漁業の仕組み
 秋の味覚・サバが食べられなくなるかも?ノルウェー産依存と、脂が乗る前に獲ってしまう日本の漁業の仕組み
 © FNNプライムオンライン
 食卓に欠かせない海産物。刺身や煮魚、寿司など、私たちはざまざまな形で魚を楽しんでいる。
 長年、豊富な種類の魚介類を安価に消費してきたが、今後はそうは言っていられない状況が起きている。
 魚食文化における影響力は健在ながらも、日本は経済力やルール面で国際的に後れを取り始めているのだ。
 日本、そして世界の海で起こっていること、輸入される海産物の現状などを水産アナリスト・小平桃郎さんの著書『回転寿司からサカナが消える日』(扶桑社)から一部抜粋・再編集して紹介する。
 輸入依存度の高い魚種「サバ」
 水揚げ量の減少や価格の高騰、国際的な資源管理などの動きから、サンマが気軽に買えない魚となっています。
 その中で、量販店などではサバの商品ラインナップを充実させ、サンマの代替として「秋の味覚」とする動きもあります。
 しかし、そのサバさえも近い将来、気軽に食べられなくなるかもしれません。
 日本の近海魚を代表する魚のひとつであるサバですが、実は輸入依存度が高い魚種のひとつです。農林水産省の統計から概算される、2021年の日本国内のサバの消費量は約28万トン。
 うち国産は4割にとどまっており、残りは外国産で、輸入の7割を占めるのはノルウェー産のタイセイヨウサバ。
 コンビニの弁当や飲食チェーンの定食に使われているサバのほとんどがノルウェー産で、スーパーで加熱用として売られているサバの切り身の多くも同国産と言ってもいいでしょう。
 とはいえ、味であれば国産のサバも負けないはず。サバは簡単に釣れる魚であり、狙ってもいないときにも食いついてくるほどなのです。資源量が枯渇しているようにも思えません。
 しかも、2022年9月の冷凍サバの卸値(フィーレ)を見ても、ノルウェー産はキロ当たり650~1200円。国産は680~700円程度(大阪本場市場市況データ)。むしろ国産のほうが安いくらいなのです。
 「早い者勝ち」な日本の漁業システム
 なぜ、日本は8000キロ以上も離れた国から、サバを輸入しているのでしょうか。
 一番の理由は、ノルウェー産のほうがサイズが大きいからです。
 ノルウェー産の場合、1匹当たり300~600グラムで脂肪率30%以上ですが、国産の場合は200~300グラムが中心で、脂肪率も20%程度といわれています。
 サイズの違いは品種の問題だけではありません。
 タイセイヨウサバは脂の乗りが良く、煮魚や焼き魚に向いていますが、それはサイズが大型になるよう、水揚げ時期がノルウェー政府によってコントロールされているからです。
 そこには、日本の海洋資源管理の構造的な問題があります。
 1996年に国連海洋法条約への批准に際して制定された「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(TAC法)」に基づき、水産庁はサバやサンマ、クロマグロなどといった「特定水産資源」の漁獲枠(獲ってもいい数量の上限)を毎年設定しています。
 漁期に入ると、国内の漁業者は「ヨーイドン!」で漁獲を始め、水揚げ総量が上限に達した時点で打ち止めとなります。「早い者勝ち」な、この資源管理法はオリンピック方式、またはダービー方式と呼ばれています。
 しかし、これには問題があり、すべての漁業者が「上限が来る前にできるだけたくさん獲ろう」と思うため、魚が旬を迎えるのを待たずに、漁獲枠の大部分を獲ってしまうのです。
 サバでいえば、魚体が成長し脂が乗るのを待たずに、水揚げされてしまう。
 日本でサイズが大きく脂が乗ったサバが獲れない原因のひとつはここにあります。これは漁業者の収益性の面でも不利です。
 さらにこのオリンピック方式には、魚が未成魚のまま水揚げされてしまうものも出てくるため、漁獲枠が逆に漁業の持続可能性の障害となります。
 サバは近海魚の中では長寿で知られています。寿命が長いぶん、成魚となるにも時間がかかり、生殖ができるようになるまで2~3年がかかります。
 このままでは、国内におけるサバの漁獲枠をますます削減しなければいけない可能性もあります。世界のサバの漁獲量は右肩上がりですが、日本では40年で約3分の1にまで激減しています。
 世界でも需要が伸びる海産物
 一方で、ノルウェーをはじめとする欧米諸国では、それぞれの漁業者ごとに漁獲枠を付与する個別割当方式(IQ方式)を採っています。
 それぞれの漁業者が、魚の旬を待ってから漁を本格化させるので、大きく成長した魚を効率よく獲ることができ、サステナブルであるといえます。ノルウェー産のサバがどれも大ぶりで脂が乗っている理由もここにあります。
 日本がオリンピック方式による水産資源管理を改めない限り、サバに関してはノルウェー依存から脱却することはできないでしょう。
 それだけではありません。今、サバは世界的にも需要が増えている魚種のひとつです。
 最も大きなライバルは韓国。韓国はノルウェー産サバを最も多く購入(総額約173億円)し、日本の輸入額は約160億円(2021年度、ノルウェー水産庁)。ベトナムがこれに続いています。
 今、世界市場で人気が高いのはマグロやサーモン、ブリなど、脂肪分の多い魚。ノルウェー産サバもこの条件に合致し、今後はこれらの国々以外においても需要が伸びることが予想されます。
 そして鍵を握るのがアフリカ市場。もともと海産物の消費量が多くないですが、ここ10年ほどの間でサバ缶が浸透し、サバを食べる習慣が根づきつつあります。
 アフリカ諸国が今後発展して購買力が上昇すれば、サバの国際価格はますます上昇し、ノルウェー産もこれまでのように安定的には日本に入ってこなくなるかもしれません。
 財務省貿易統計を見ると、値上がりはすでに始まっています。
 ノルウェー産サバの価格上昇の一因となったといわれているのが、イギリスのEU離脱です。かつてイギリスがEUの一員だった時代には、ノルウェー漁船はイギリスの海域でもサバ漁が可能でしたが、ブレグジット以降はそれが不可能になりました。
 2016年にイギリス国民が取った決断が、日本のサバ弁当の値段を変えてしまうかもしれないのだから、やはり世界は海でつながっているのです。
 小平桃郎
 東京・築地の鮮魚市場に務める父の姿を見て育つ。大学卒業後、テレビ局ADを経て語学留学のためアルゼンチンに渡り、現地のイカ釣り漁船の会社に採用され、日本の水産会社との交渉窓口を担当。2005年に帰国し、輸入商社を経て大手水産会社に勤務。2021年に退職し、水産貿易商社・タンゴネロを設立。水産アナリストとして週刊誌や経済メディア、テレビなどに寄稿・コメントなども行っている。
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