🏗2〗ー17ー災害対応「日本は省庁・組織間の調整が足りない」。令和6年~No.18 

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 2024年2月4日 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「災害対応「日本は省庁・組織間の調整が足りない」
 2024年1月6日、石川県輪島市の被災地を歩く警察官(写真・2024 Bloomberg Finance LP)
 元日に能登半島を襲ったマグニチュード7.6の大地震から1カ月が過ぎた。野党や一部の地方自治体の首長は「自衛隊の派遣が逐次投入だ」「政府の対応が後手に回った」と批判している。災害発生後72時間を経過すると被災者の生存率が大幅に下がると言われる中、政府の初動に問題はなかったのか。
 アメリカの連邦緊急事態管理局(FEMA)で長年危機管理を担当し、日本の危機管理にも詳しいレオ・ボスナー氏(77)に日本の防災体制の現状や課題を聞いた。ボスナー氏は「災害対応における日本の最大の問題は、ハードウェアの不足ではなく、計画、組織化、省庁間調整のそれぞれの欠如にある」と指摘する。
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 ――能登半島地震の被災地の現状をどう見ていますか。
 多くの悲劇的な死傷者をもたらし、広範囲にわたる損害や財産の破壊につながった恐ろしい出来事だ。日本の自然災害への脆弱さを改めて思い知らされる。
 幸いなことに今回の震災は、2011年3月に起きた東日本大震災のトリプル災害(地震津波原発事故)ほど深刻ではない。ただ、これは日本の当局が現状に満足する理由にはならない。
 実際、日本の当局にとって、能登半島地震の対応を批判的に検討し、その遅れや問題がないかを調べる良い機会となる。また、もし仮に今回の震災が東日本大震災のような規模の出来事だったとしたら、自分たちの危機対応システムはどれほど機能していたのか、どこを改善する必要があったのかを改めて問う機会にもなる。
■行政機関は記録を残すべきだ
 ――自衛隊の活動を含めた被災地での日本政府の対応についてどう思いますか。
 現時点では何とも言えない。第1に、災害対応活動に関する具体的な問題を指摘する英語ニュースをあまり見ていないからだ。第2に、活動はまだ続いているからだ。
 私が東日本大震災について実際に現地調査を行ったのは発生からほぼ1年後の2012年1月だった。その時までには、人々は何が起こったのかを正確に振り返って考えることができるようになっていた。
 今すぐに各行政機関が腰を据えて、災害時における自らの行動、何がうまくいき、どこに問題があったのか、将来的に問題を解決するために何が必要かについて話し合い、記録に残すことをお勧めしたい。
 警察は警察の中で、消防は消防の中で、自衛隊自衛隊の中で、それぞれやるべきだ。各機関が独自の記録を作成する必要がある。
 そして、おそらく今から半年後、誰かが(おそらく日本政府だろうが)これらの記録をすべてまとめて災害対応に関する包括的な報告書を作成し、日本の災害対応システムを改善する方法があるかどうかを真剣に検討すべきだ。
 ――一般的に日本の問題は何ですか。例えば行政組織間の調整に問題はありませんか。
 一般に人々は調整を好まない。調整とは、自分の行動が100%独立してできなくなり、自分のやりたいことが他の誰かの行動によって制限される可能性があることを意味するからだ。
 災害対策では「連携」が最優先に求められる。しかし、日本の当局は、技術的な修正に重点を置くことで、災害対応の調整に伴う政治的苦痛を回避してきたと思っている。
 私はかつて、日本人グループをワシントンにあるFEMAの国家対応調整センター(NRCC)の見学ツアーに連れて行ったことがある。そこはFEMAの災害対策本部だ。
 その時は災害が起こっていなかったので、NRCCは空の机でいっぱいだった。各机にはコンピュータのほか、災害時にどの機関がどの机に座っていたかを示すプラカードがあった。保健福祉省や沿岸警備隊、エネルギー省などだ。
 日本人の訪問者はFEMAに非常に感銘を受け、コンピュータがどこで製造されたのか尋ねてきた。私はコンピュータの1台を見て、「これは日本製です」と答えた。
■重要なのはハードウェアの充実ではない
 そして、あなたたちにとって最も重要なのはコンピュータではないと説明した。それらは単なる普通のPCだ。重要だったのは、机の上に置かれた各省庁のプラカードだ。
 大規模な災害が発生すると、連邦政府機関は代表者をNRCCに派遣し、彼らは各自のデスクに向かい、全員がチームとして協力する。各政府機関の代表者の多くはお互いをファーストネームで知っており、災害時に他の機関が何をすべきかを誰もが知っていた。それがFEMAの成功の秘密だった。
 これとは対照的に、東日本大震災から数年後、私は日本政府が次の大規模災害への備えをどのように強化しているのかを視察するために日本に行った。私は、災害時に救急車、消防車、パトカー、その他の緊急車両が必要とする緊急燃料の供給場所を計画しているある政府職員に会った。
 しかし、彼は非常にイライラしていた。なぜなら、数ブロック離れた別の省庁では他の職員が緊急車両そのものの配備計画を作成していたからだ。2人はなんとお互いに話し合うべきではないとされていた。
 つまり、1人が車両の燃料をどこに置くかを計画する一方で、もう1人が車両の配備先を計画していた。災害発生時には誰もが力を合わせて行動することが期待されているにもかかわらずだ。
 一言で言えば、ここに日本の問題がある。日本は災害対応における省庁間の連携を強化すべきだ。
 ――アメリカ政府にはFEMAがありますが、日本にも日本版FEMAが必要だと思いますか。
 1995年1月17日、阪神・淡路大震災は兵庫や大阪に壊滅的な被害をもたらした。日本政府は対応が遅いと厳しく批判された。FEMAがどのように組織され、どのように運営されているかを学ぶために日本の当局者がワシントンにあるFEMA本部に姿を現し始めた。
 翌1996年、私は札幌で開催された日本災害医学会の大会に招待されて講演した。私がそこにいた間、日本政府が日本版FEMAの設立を検討していると聞いた。しかし30年近く経った今でも、日本はいまだにそれを検討中のようだ。
 日本版FEMAについていつまでも議論する代わりに、FEMAのような集権的な災害機関が実際に行っていることのいくつかに注目すべきだ。そして、まったく新しい機関を設立せずに日本がどのようにしてこれらと同じことの多くを行うことができるかを考えるべきだろう。
 FEMAは1990年代に他の連邦機関と協力して連邦対応計画(FRP)を策定した。これは大規模災害時に連邦政府全体がどのように対応するかの計画だ。
 このアプローチにより、大規模災害時に連邦政府が実行や支援を求められる可能性のある主な任務が特定された。これらには次のものが含まれる。
 1.交通機関、2.コミュニケーション、3.公共事業、4.消防、5.緊急管理、6.避難所や集団給食を含む集団ケア、7.ロジスティクス、8.保健医療サービス、9.捜索と救助、10.危険物、11.食料品、12.エネルギー
■単一の中央政府災害対応計画が必要
 これらの任務は「緊急支援機能」(ESF)と呼ばれていた。そこから、FEMAは各ESFについて責任を負う連邦機関を特定した。たとえば、保健福祉省は、災害時の保健医療サービスの計画(ESF8)の作成を担当する。
 このようにして各機関はそれぞれの技術分野で災害対応計画を策定した。そして、これらの計画は災害時に各機関が一致して行動し、すべての問題に対処できるように1つの連邦対応計画にまとめられた。
 この単一の統一された中央政府の災害対応計画を持つことの利点は明らかだが、別の大きな利点もあった。FRPが発表されると、アメリカ中の州や都市はFRPと同じパターンに従って独自の対応計画を策定し始めた。
 これらの計画はほぼすべて相互に一致しているため、災害対応における政府間の協力が容易になる。
 例えば、大規模な災害後に健康と医療のニーズがある場合、連邦ESF8スタッフは災害が発生した州ESF8と地方ESF8とただちに調整する。そして、連邦、州、地方という3つの政府レベルのすべての保健と医療専門家が働くことができる。協力してニーズを迅速に評価し、対応策を策定する。
 これを行うためになぜ日本に真新しい「日本版FEMA」が必要なのかは私にはわからない。日本にはすでに消防庁があり、ホームページには「消防庁の役割」として「住民と連携した安全・安心な地域づくり」と「緊急時の国家対応」が掲げられている。
 消防庁職員は他の省庁と協力して、アメリカの災害対応枠組みに匹敵するものを作ることができるだろう。必要なのはそうする政治的意志だけだ。
 ――あなたはかつて日本メディアの取材に対し、「大災害が起これば、初動対応は政府ではなく、地域の人々と協調し、災害時では地方自治体の役割が重要だ」との認識を示しました。今もその考え方は変わらないですか。
 そうだ。まさにそれが私の考え方だ。すでに述べたように、連邦政府の対応計画は州と地方自治体の対応計画に反映され、災害時の協力が円滑に行われるようになった。
地方自治体の役割が重要だ
 FEMAは、対応計画に加えて、多数の災害管理ガイドブックを作成したり、FEMAの緊急管理研究所を通じた無料のオンラインと対面の災害管理トレーニングコースを作成したりすることで、州と地方の当局者の訓練と準備にも幅広く取り組んでいる。
 FEMAのこの訓練・指導活動は日本ではあまり知られていないかもしれないが、災害時の連邦・州・地方の連携を支援する上で極めて重要だ。私が日本を訪れたとき、内閣府防災担当の男性職員が、災害時に自分のオフィスがどのような対応をしたかについて私に話してくれた。
 私は彼に都道府県や市区町村の災害管理者はどうなっているのか、どこで訓練を受けているのかと尋ねた。すると、彼は私を見て肩をすくめて、何もわからなかった。彼は中央政府で働いていたため、県庁での訓練や準備が自分にとっての関心事とは考えなかったようだ。
 しかし、大規模な災害が発生した場合には、これらすべてのレベルの政府が協力しなければならず、それを迅速に行う必要がある。早めに準備しておいた方が良いのではないか。
 ――日本もアメリカ海軍のような病院船を保有すべきだと主張する人がいます。どう思いますか。
 日本の災害対応における最大の問題はハードウェアの不足ではなく、計画、組織化、省庁間の調整のそれぞれの欠如にある。確かに病院船があるのは日本にとって良いことかもしれないが、それが日本の災害対応を改善するための最優先事項であるとは私は言えない。
 以上がボスナー氏へのインタビューになる。「東京はワシントンに次ぐ第2の故郷だ」と公言してはばからない同氏は20年間にわたって日米を行き来してきた日本通だ。
 そして、FEMA発足以来の職員として、数多くの災害事案に関わった危機管理のスペシャリストだけに日本が直面する課題を鋭く指摘した。
能登半島地震から教訓を得よ
 能登半島地震から得られる教訓は何か。岸田首相は、半島特有の地理的な悪条件を理由に救助支援活動の困難さを指摘したが、本来はいかなる場合でも人命救助に遅れが生じることがあってはならないはずだ。
 半島地域は伊豆や紀伊など日本の国土の1割を占める。地理的な制約をあらかじめ踏まえ、ボスナー氏が指摘したように、あらゆる組織を縦横断する連携に重点を置き、有事に備えて物資の備蓄センターや避難シェルター、陸海空にわたる輸送ルートの確保などにしっかりと事前に取り組むべきだっただろう。
 環太平洋火山帯上に位置する日本は世界に名だたる地震大国であり、世界で起きたマグニチュード6以上の地震の約2割が日本に集中しているのだから。
 また、ボスナー氏は「日本人がこのテーマに興味を持ったら遠慮なく連絡してほしい」とメールアドレスを公開している。
 ボスナー氏のメールアドレスは、leobosner@hotmail.com。
 高橋 浩祐 :米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
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 日本の縦割り行政は、阪神淡路大震災に比べて改善したように見えたかが余り変わっていない事は東日本大震災で露見した。
 その日本的悪弊は悪習として日本に存在している。
 そこには被災者ではなく、省益と利権そして天下り先が優先されていた。
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