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2023年11月8日 YAHOO!JAPANニュース 夕刊フジ「災害の歴史と「緊急事態条項」憲法への明記 首都直下地震や南海トラフ巨大地震への備え「政治の不作為」 高層ビルなど建物が密集する東京都心部
【日本の危機管理~このままで大丈夫か?】
日本の歴史は「災害の歴史」といっても過言ではない。特に今年は、甚大な被害をもたらした関東大震災から100年目にあたる。この震災によって、首都・東京は旧東京市の約43%が焼失し、日本の災害史上最大級の犠牲者(死者・行方不明者は約10万5000人)を出した。経済的被害は、当時の国民総生産(GNP)推定値の35%にあたる55億円に達した。これは前年度の一般会計予算の約3・7倍である。まさに、国難レベルの巨大災害だった。
【写真】関東大震災では10万人以上の死者・行方不明者を出した
明治憲法(大日本帝国憲法)には、緊急事態条項が明記されていた。そのため、公共の安全を保持するため緊急の必要があり、政府が帝国議会を召集することが困難と判断した場合には、法律に代わって発せられる「緊急勅令」と、政府の判断で予算の執行ができる「緊急財政処分」という規定が設けられていた。
関東大震災では、政府は食糧などを緊急調達する「非常徴発令」と、国民の私権制限を伴う「戒厳令」を発令するための緊急勅令などを出して、緊急事態に対応した。
一方、日本国憲法には参院の緊急集会の開催があるだけだ。参院の緊急集会も開催できない事態が発生することを想定しておくのが政治の責任であり、いまだに憲法に緊急事態条項が明記されていないことは、「政治の不作為」としかいいようがない。
衆院憲法審査会では、巨大災害により選挙が実施できない場合の国会議員の任期延長が先行的に議論されている。緊急事態条項の明記とセットで議論しなければ、国民の目には単なる国会議員の身分保障のための憲法改正にしか映らないだろう。
岸田文雄首相は10月23日の所信表明演説で、憲法改正について「先送りできない重要な課題である。条文案の具体化など、これまで以上に積極的な議論が行われることを心から期待します」と述べているが、岸田首相自身の憲法改正への本気度が伝わってこない。
ルネサンス時代にイタリアで活躍した政治思想家、マキャベリは著書『君主論』の中で、問題を先送りするばかりの「不作為」の指導者(=首相)では、危機を乗り越えることはできないと説いている。憲法改正を先送りすることは危機管理体制の不備を放置することにつながり、新たな危機が起きたときの対応にもたつき、国民に犠牲を強いる事態を招くことにもなる。
このままで、今後高い確率で発生が予想されている首都直下地震や南海トラフ巨大地震への備えは大丈夫なのか。有事に備えた緊急事態条項の日本国憲法への明記が急がれる。
■濱口和久(はまぐち・かずひさ) 1968年、熊本県生まれ。防衛大学校材料物性工学卒、日本大学大学院総合社会情報研究科修了。防衛庁陸上自衛隊、栃木市首席政策監などを経て、現在は拓殖大学大学院特任教授、同大学防災教育研究センター長、ニューレジリエンスフォーラム事務局長などを務める。著書・共著に『日本版 民間防衛』(青林堂)、『リスク大国 日本~国防 感染症 災害』(グッドブックス)など多数。
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