🍞8〗ー1ー人類が食べて生き残るには“肉食”を諦めるべきなのか。~No.40No.41 

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 2023年10月29日 YAHOO!JAPANニュース AERA dot.「人間が生き残るには“肉”を諦めるべきなのか 甚大な世界飢餓から逃れる2つの方法
 ※写真はイメージです(Getty Images)
 気候変動や人口増加などから今後、ますます足りなくなる世界の食料。中国・アジアの食料・農業問題や、世界の飢餓問題を専門に研究する、愛知大学名誉教授で、同大国際中国学研究センターフェローの高橋五郎氏は2つの解決方法を提案する。『食料危機の未来年表 そして日本人が飢える日』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して紹介する。
 【写真】大豆から作られた肉の代替品はこちら
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耕作放棄地の把握と整備を
 世界を飢餓から救うには、まずは食料の生産を増やせる国は増やし、各国が責任を持って、能力不足の国に対しては国連が支援することとし、主要穀物に関する世界統一的な価格補償制度を設置しながら小売価格水準を下げることである。主要な穀物生産国に限れば生産量が増えていることも事実で、ウクライナやロシアはともかく、アメリカ・ブラジル・オーストラリア・カナダ・アルゼンチン・インド・タイ・ミャンマーベトナムなどが重量当たり利潤率の低下を販売量の増加でカバーできればさらなる増産が可能となり、貧困国がかなりの量を輸入できるレベルまで価格が下がる期待が持てる。
 この10年間に限ると世界の主要穀物の生産量は小麦19.0%、コメ5.7%、トウモロコシ29.9%、大豆44.8%とそれぞれ増加している(AMIS農業市場情報システム・2011年のG20で設立)。しかし短期間の動き、2021/22年度から2022/23年度の1年間では、小麦0.6%増、コメが2.4%減、トウモロコシ3.7%減、大豆10.5%増の見込みであり、全体としては、2040年頃までならばなんとか微増傾向を維持しそうである。
 ただし穀物生産量が増えるには、さまざまな条件が必要である。そのうちの一つが耕地面積の増加あるいは生産性の向上である。国によって生産性の向上にはバラツキがあり、全体としての生産量増加を期待するにはやや心もとない。
 EUアメリカ・中国などの資料から世界には1億ヘクタール以上の耕作放棄地があるとみられる。これをまとまった耕地にするための区画整理・灌漑施設の整備をして生産現場に戻すことである。これには莫大なコストがかかるだろうが、FAO(国連食料農業機関)はまずはその実態を把握し、先進国は自国予算で、他の国は世界銀行や各国の海外援助(ODA)などを総動員してでも実行しなければならない。
■飼料向け穀物を半分に
 畜産物は飼料として膨大な穀物を消費する。人口増加に比して増加しない穀物生産量が予測される未来においては、人と家畜の穀物の奪い合いのような本末転倒な事態になりかねない。
 そこでもし5億トンを人間の食料として取り戻すことができれば、1人1日当たり必要な2400キロカロリーを確保したうえで、世界人口のどれくらいを飢餓から解放することができるだろうか?
 畜産物を除いた場合、ヒトは計算上穀物を年間250キログラム食べれば1日当たりで2400キロカロリーを確保できる。小麦・コメ・トウモロコシなどの穀物は平均して1キログラム当たり3500キロカロリー程度であり、だから年間にして1人当たり約250キログラムの穀物を摂ればよいことになる。
 このようにして5億トンを人間の直接の食料に取り戻すことができれば、20億人、現在の地球の人口80億人の4人に1人を飢餓あるいは隠れ飢餓から解放することができるだろう。
 他方、飼料穀物が5億トン減ったことによる畜産物生産への影響は飼料要求率を3とすると、1億6700万トンが減ることとなり、全体として1億6700万トンが残ることになる。
 その減少分は、何人分のカロリーを失うことになるだろうか? 1人1日当たりの必要カロリーを2400キロカロリー、年間にして87万6000キロカロリーは変わらないものとする。結果は約4億人となり、5億トンの穀物を直接の食料に回すことで生まれる20億人から4億人を差し引いた16億人が結局助かる勘定になろう。
 畜産物のための飼料を減らした場合の効果は明らかである。
 畜産物1キログラム当たりのカロリーの最大は豚肉平均3860キロカロリー、最低は牛乳の640キロカロリー、これに牛肉・鶏肉・鶏卵を合わせた平均を2000キロカロリーとすると、畜産物1キログラムを食べても、必要とする2400キロカロリーの83%程度しか満たすことができない。あと200グラム多く食べることが必要な勘定である(2000キロカロリー×1.2)。これに対して穀物1キログラムの平均は3500キロカロリーなので、1日当たり686グラム食べるだけで十分である(3500キロカロリー×0.686)。
 畜産物は穀物の57%しかカロリーがなく、効率が良くないともいえる。畜産物を食べるほどに地球には飢餓が増える、ともいえよう。
 畜産物は現状よりも約1億6700万トン少なくなるが、その方が地球に住むヒトの食料向けの穀物供給量が増え、飢餓で苦しむ人類を救うことができるとなればベターな選択ではあるまいか。
 生産した穀物を人間と家畜とでどう分け合うかを、衰えつつある地球の体力と相談し、どちらが飢餓を救う対策として有効なのか選択せざるえない局面なのである。
 だからといって、動物性タンパク質は人間の身体にとって原則的に不可欠なので、畜産物をなくすことはできない。すべての牛肉や豚肉をやめて穀物に回そうとか、はては昆虫食を摂ろうとかいうのは非現実的だ。1日に摂るべきとされる60グラム程度のタンパク質の1割に当たる動物性タンパク質5~6グラムは、畜産物か魚介類などから摂ることが必要とされているからである。
●高橋五郎(たかはし・ごろう)
 1948年新潟県生まれ。農学博士(千葉大学)。愛知大学名誉教授・同大国際中国学研究センターフェロー。中国経済経営学会名誉会員。専門分野は中国・アジアの食料・農業問題、世界の飢餓問題。主な著書に『農民も土も水も悲惨な中国農業』2009年(朝日新書)、『新型世界食料危機の時代』2011年(論創社)、『日中食品汚染』2014年(文春新書)、『デジタル食品の恐怖』2016年(新潮新書)、『中国が世界を牛耳る100の分野』2022年(光文社新書)など。
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