🍘19〗ー1ー日本の食糧危機をもたらす中国共産党の食料覇権主義。~No.60No.61No.62No.63 

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 2021年12月20日 MicrosoftNews JBpress「日本をも直撃、世界中の食卓を脅かす中国の「食料覇権主義
 青沼 陽一郎
 © JBpress 提供 今年9月、陝西省楡林市を視察した習近平主席(写真:新華社/アフロ)
(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
 中国が世界の穀物の買いだめを加速させている――。19日付けの日本経済新聞の1面にそんな記事が載った。
 記事によると、米農務省の推計データから、2022年前半(穀物年度、期末)の世界の在庫量に占める中国の割合はトウモロコシが69%、コメは60%、小麦は51%に達する見通しで、いずれも過去10年間で20ポイント前後高まったという。
 食糧生産量も作付面積も頭打ち
 また、中国税関総署によると2020年の食品輸入額(飲料除く)は981億ドル(約10兆円)と、10年間で4.6倍に増えたとされる。5年間で大豆やトウモロコシ、小麦の輸入額が2〜12倍に急増、牛肉や豚肉、乳製品、果物類も2〜5倍に伸びたという。
 世界人口の2割に満たない中国の巨大な食欲が穀物の高騰や貧困国の飢餓拡大の一因になっているとも指摘。国連食糧農業機関(FAO)が算出する世界の11月の食料価格指数は1年前より約3割高い。
 「中国が穀物などの輸入を増やすのは、国内での生産が追いついていないためだ。経済成長で豚などの飼料用需要が高まり、外国の良質な農産品を求める消費者も増えた。一方、国家統計局によるとコメや小麦などの食糧生産量と農作物の作付面積は15年以降頭打ちだ」
 記事ではそう伝えている。だが、問題の本質はそこではない。もっと深刻だ。
 他国への影響考慮し、自給率を高め、食料輸入量を抑制する方向に舵を切ったが
 「中国は95%の食料自給率を維持する」
 中国が世界にそう約束したのは、1996年のことだった。同年11月のローマで開かれた世界食糧サミットで当時の李鵬首相が宣言している。
 その当時から中国の人口は12億人を超え、経済的な台頭による将来の食料危機が叫ばれていた。2年前の94年には米国の思想家レスター・R・ブラウンが『誰が中国を養うのか』と題する論文を発表している。
 折しも、その翌年の95年、中国を凶作が襲う。そこで中国は、コメ、小麦、トウモロコシを純輸入量で1800万トンも輸入した。
 これが世界中にショックを与えた。特に慌てたのが途上国だった。
 中国の輸入が増えると、国際価格が上昇して、途上国は食料が買えなくなる――。それが理由だった。安定的に食料が供給されるはずの食料安全保障が壊れる。
 この懸念は、急速な経済成長で途上国の盟主を自負していた江沢民をはじめとする当時の中国指導部にとっても衝撃だった。
 そこで96年10月、中国は「食糧白書」をはじめてまとめ、翌月の世界食糧サミットでの宣言につながった。
 この世界との約束をひっくり返してしまったのが、習近平だ。
 2012年11月、習近平中国共産党総書記に、翌年3月には国家主席に就任すると、同年11月の党中央委員会第18期第3回全体会議、12月の中央経済工作会議、中央農村工作会議の3つの重要会議を通じて、食料安全保障について強い危機意識を表明すると同時に、これまでの食料政策の見直しに踏み切った。
 食料輸入は増やさざるを得ない
 まず、人が直接食べるコメや小麦の主食用穀物と、トウモロコシや大豆などの飼料用穀物、油糧種子を明確に区分し、前者の「絶対的自給」と、後者の「基本的自給」という2つの方針を打ち出したのだ。そこに自給率の具体的数値設定はない。基本的に自給できない分は、すなわち輸入によって補完される。言い換えれば、基本的な姿勢さえ崩さなければ、輸入はどこまでも増やせる。
 95%の自給率維持から、あえて海外依存への転換。そこには習近平でなくとも、いずれ中国にはそうせざるを得なかった、核心的な理由がある。
 そもそも中国という国は、世界人口の約2割を抱えてきた。2021年の世界人口は78億7500万人で、そのうち中国は世界第1位の14億人を超す約18%を占めている。
 その中国は意外なことに、世界の農耕地の約9%しか持っていない。「95%の食料自給」が基本であったことからすれば、これまで世界のわずか9%の農地で、世界の約2割の人間を養ってきたことになる。
 それも驚くべきことに中国は、2004〜14年まで、気候変化に関係なく、11年連続で食料の増産を実現してきていた。
 こんなことは歴史上ない。しかもその増産はもっぱら農地の収穫高を上げる単収増加によってもたらされたものだった。
 農地を増やしたくても、土地がないのだ。
 ただでさえ少ない農地なのに農薬や化学物質まみれに
 中国の国土は、欧州がすっぽり収まってしまうほどに広い。だが、その割に砂漠や山間部が多く、農地には向かない土地が多い。あっても、工業に利用され、むしろ田畑を潰して工場建設を進めてきた。
 限られた農地でとにかく収益を上げる。ここに大きく貢献したのが、化学肥料と農薬の大量投与だった。
 効率的に農地を利用しようと、毎年のように連作を繰り返す。すると土地は痩せ衰える。それを補うためにまた化学肥料と農薬を使う。これがいつしか土に浸透し、やがて地下水や河川を汚染していった。
 一方で、急速な工業化は深刻な環境汚染を引き起こした。田畑の真ん中に重化学工場が建つことも珍しくなく、ここから化学物質が流出し、土地が穢れ、水が濁り、大気中に危険物質が拡散していった。
 2014年4月、中国環境保護省が衝撃的な事実を公表する。同省が調査したところによると、中国国土の土壌の約16%に何らかの汚染があることが判明したのだ。
 しかも、農耕地に限っては、19.3%が汚染されていたのだ。公害の圧倒的大半は、基準値を超える重金属や化学廃棄物が検出されたものだった。
 つまり、世界の9%の農地しか持たない上に、そのうちの約2割は汚染地だったのだ。
 結局のところ、いまでこそ世界の2割に満たないとはいえ、世界最大の人口を養うために海外に進出せざるを得なくなったのだ。それが国家戦略となって今日に至る。
 中国が震源地となり世界的な食料価格高騰へ
 経済が発展すると食肉需要も増える、いわゆる食の高度化も進む。中国では「肉」と言えば本来は豚肉を指すが、牛肉の消費も増えた。2000年代に訪れた中国では、マクドナルドもまだ珍しく、同じ時期の中国進出でも、まだ馴染みのある鶏肉を使ったケンタッキーフライドチキンのほうが流行っていた。それももはや過去の話で、増え続ける牛肉消費は、日本の牛肉の値上がりにもつながっている。10月には大手牛丼チェーンの吉野家が値上げしている。原材料となる米国産牛肉が中国に「買い負け」した結果だ。牛肉に限らず、食肉価格の高騰によるミートショックは今後も続く見通しだ。
 同時に中国共産党が怖れるのは、民衆の反乱だ。飢餓はもっとも反乱を呼び込みやすい。かつては豚肉価格の値上がりに神経を尖らせていた。食品の値上がりは民衆の反感を買う。食料の備蓄は内政を安定させる上でも重要となる。
 中国の覇権主義は食の分野にも及んでいる。言い換えれば、世界の食料の争奪戦を主導している現実。それは2020年度の食料自給率がカロリーベースで37%と、統計のある1965年度以降で最低を記録した日本にとって脅威であることは間違いない。」
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