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関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
太平洋戦争の原因は、石油のエネルギーではなく外米の食糧であった。
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現代日本人が日本農業を潰したのは、1980年代のバブル経済と1946年代の敗戦利得者による「米を食うとバカになる」であった。
それは、戦後民主主義教育の目的の一つであった。
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伝統文化というべき「もののあわれ」や「もったいない」と同時に「ひもじい」を、昔の日本民族は知っていたが、現代の日本人は知らないし理解できない。
現代の日本人は民族的な歴史力・伝統力・文化力そして宗教力がない。
つまり、日本人は歴史が好きであるは「ウソ」である。
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2023年2月27日 YAHOO!JAPANニュース 日刊スポーツ「森永卓郎氏が語る安全保障「食料とエネルギーを自前で確保できる国に」トマホークじゃない
森永卓郎氏(2020年6月撮影)
経済アナリストで独協大学教授の森永卓郎氏(65)が27日、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(月~金曜午後1時~同3時30分)に出演。
今月24日にロシアによるウクライナ侵攻が1年を経過したことについて触れ、日本に必要な安全保障の柱とは何か、持論を展開した。
森永氏は「ウクライナがなぜ1年間(ロシアによる侵攻に)持ちこたえられたかと言うと、食料自給率ほぼ100%、エネルギーをある程度自給できていたのが大きいと思います。人間は食べるものがなくなると生きていけないし、パワーも出ない」との持論を展開した。その上で「日本は食料自給率38%しかないし、エネルギーでも天然ガスを98%輸入に頼っている。石油は100%輸入している。これでは(有事の際には)弱いですよね」と持論を展開した。
大竹まこと(73)氏は「もう戦争なんかしたくない。でも戦わないと正義は守れないのか、人が死なないと終わらないのか」とウクライナの悲劇についてため息をつきながら「(日本も)そうならないように政治は一生懸命やってくれていると思いますが」と日本の現状について尋ねると、森永氏は「(日本政府は)本当に(安全保障を)やっているのでしょうか。トマホークを買えばいいという話じゃないと思う。食料とエネルギーを自前で確保できる国にしないと、国は守れない」とし、防衛費の増額に伴う増税、米国から大量のトマホークを買い入れる政策に岸田政権が動いていることに疑問を呈した。
大竹が「では政府は何を守ろうとしているのか」とたたみかけると、森永氏は「まず国民生活を守らなければならない」と断言。大竹も「市民の生活を守らないと国を守ることにはならいないと思います」とした。
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2023年2月28日5:41 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「日本人は低い食料自給率の深刻さをわかってない
日本政府が食料自給率向上に尽力しないことは懸念だ(写真:ペイレスイメージズ 2/PIXTA)
日本の食料自給率が依然として4割以下の低い水準にとどまっている。ロシア・ウクライナ戦争が始まって以来、世界的に食料自給に対する危機感が高まっている中で、政府や自民党は防衛費と少子化対策に躍起になっている。国民の命を守る食料の確保は十分なのか。日本政府の「食品安全保障」を検証する。
【グラフ】日本の食料自給率はどれほど下がっている?
■食料国産率も半分に届かない
農林水産省の「知ってる? 日本の食料事情2022」によれば、日本の食料自給率にまつわる数字は次の通りだ。
●食料自給率……38%(カロリーベース、生産額ベースでは63%)
●食料国産率……47%(カロリーベース、生産額ベースでは69%)
●飼料自給率……25%
食料自給率が輸入畜産物の生産分を除いているのに対して、食料国産率は畜産の飼料が国産か輸入かを問わずに計算した数字となる。そこで「飼料自給率」という指標も参考にする必要が出てくるのだが、こちらはさらに低くて25%しかない。
ロシア・ウクライナ戦争が始まって以降、飼料の国際的な逼迫がニュースになるが、飼料の輸入が止まれば、日本の家畜は単純計算で4分の3が飢えることになる。先進国のなかでも低い数値と言っていいだろう。
コメや小麦、トウモロコシなどの穀物だけに絞った「穀物自給率」も日本は28%しかない。農林水産省の「諸外国の穀物自給率(2019年 試算)」(2022年6月1日、現在、日本は年度、日本以外は暦年)によると、179カ国・地域中127番目、OECD加盟国38カ国中32番目となっている。韓国やハイチと並ぶ低水準だ。
世界的に最も穀物自給率の高い国は、ウクライナで440%。ロシアがウクライナを狙うのも納得のいくところだ。品目別自給率というデータもある。同じく農林水産省の食糧需給表2021年度版によると、日本の品目別食料自給率は次のような数字になる。
●卵類…… 97%
●野菜類…… 79%
●いも類…… 72%
●牛乳・乳製品…… 63%
●魚介類…… 59%
●肉類…… 53%
●果実類…… 39%
●砂糖類…… 36%
●油脂類…… 14%
●豆類…… 8%
要するに100%に達しているもの、超えているものはほとんどないと考えていい。これでは食料自給率が100%に達するもの=自給できているものはほとんどないと言っていいだろう。
そこで心配なのが、戦争や紛争など「有事」の際の対応法だ。ドイツは石油の34%、天然ガス55%、石炭45%をロシアに頼っていたために、厳しい状況に陥った。ただ、ドイツの食料自給率は84%(2018年、カロリーベース)。対して日本のエネルギー自給率は11.8%(2018年度)しかない。
岸田政権は、盛んにロシア・ウクライナ戦争から学んだこととして防衛費増強の必要性を叫んでいるが、日本がもっと先に手を付けなければいけないのは、食料自給率の向上ではないのかと思う。
例えば「台湾有事」が起きて、中国が世界的な経済制裁を受けたとしたら、日本は工業製品の面でも食料品においても大きな打撃を受ける可能性が高い。最近になって、アメリカのCIA =中央情報局のバーンズ長官が、中国の習近平国家主席が2027年までに台湾侵攻の準備を行うように指示した、と述べたとする報道が流れた。
これが本当にそうなるかはわからない。ただ、2027年と言えば4年後だ。中国からの食料品輸入が全面的にストップする事態を日本政府は想定しているのだろうか。
日本の主要農産物の国別輸入割合を見てみると、農産物の輸入額は7兆0388億円(2021年、農林水産省「農林水産物輸出入概況」より)。そのうちの23%(同)がアメリカ、第2位が中国の10%(同)となっている。つまり輸入する農産物全体の10%が完全に止まってしまう可能性があるということだ。
さらに中国との貿易がストップした場合、最も被害が大きいのは「肥料」だ。日本は食糧生産に不可欠な肥料の多くを中国から輸入しており、食料生産の生命線となる。たとえば、「尿素」は37%(農林水産省「肥料をめぐる情勢」、2022年4月より)、「リン酸」(同)に至っては90%を中国から輸入している。肥料の3大要素のうちの2つを中国に依存しているのが実態だ。
■農地や農業従事者が減っている
日本の食料自給率はなぜ一向に上昇しないのか。背景には何があるのだろうか。さまざまな情報をまとめると、次のような理由が考えられる。
① 農業生産基盤の衰退
少子高齢化の推進や、地方の過疎化などの原因によって、日本の農地面積は減少する一方だ。2021年の「農林水産省 耕地及び作付面積統計」によると、日本の農地面積はこの55年の間に大きく減少している。
<農地面積>
・1965年……600.4万ヘクタール(畑:261.4万ヘクタール、水田:339.1万ヘクタール)
・2021年……434.9万ヘクタール(畑:198.3万ヘクタール、水田:236.6万ヘクタール)
<農業従事者>
・1965年……894万人
・2021年……130万人
注目したいのは、やはり6分の1に減少した農業従事者の数だろう。ちなみに、その平均年齢も2021年現在67.9歳と高齢化が進んでいる。要するに、農業生産体制を支える農業生産基盤の衰退が、現在のような低い食料自給率をもたらしている。
国際的に見ても、日本の農業の衰退がわかる。日本の1人当たりの農地と比べると、ドイツやイタリアは6倍、イギリスは8倍、フランス13倍、アメリカ35倍、カナダ46倍、オーストラリアに至っては438倍もある。日本は国土の7割を森林に覆われているが、農業政策を大きく変更させずに森林を大きく破壊するような大規模な農地開発を避けてきた。日本国民は食料自給率の向上よりも森林などの豊かな自然を守ることを選択してきたともいえる。
② 貿易立国の維持のため製造業を優先し農業を犠牲にした?
日本の食料自給率が上昇しないもう1つの原因が、日本とアメリカの関係にあることもよく知られた事実だ。岸信介政権が1960年に結んだ「新日米安全保障条約」で結ばれた経済協力条項によって、日本は自動車や電化製品などの製造業に特化した貿易立国へと経済成長を遂げていく。しかし、その反面でアメリカを中心とする海外からの食料品輸入に頼る構造へと変革していく。
1990年代に入ると、牛肉やミカンの輸入を段階的に自由化し、その見返りとして日米貿易摩擦などを解消して貿易立国としての地位を確たるものにしていく。
■日本はアメリカの「食の傘」の下にいる?
こうした状態を、日本はアメリカの「食の傘」の下にいると表現され、日本はアメリカの「食料植民地」と指摘する報道もある(東洋経済オンライン、「日本の食料自給率向上を『米国が絶対許許さない』訳」、2022年5月31日より)。
最近になって注目されている「生乳廃棄」の原因も、「カレントアクセス(現行輸入機会)」と呼ばれるガット・ウルグアイラウンドの農業合意に基づいて、輸入する必要がないのに大量の乳製品を輸入し続けているからだと指摘されている。
日本は海外のバターや脱脂粉乳を一定額輸入するように国際的に約束しており、国内の生産者を犠牲にして生乳換算で13.7万トンの乳製品を輸入し続けている。一方で、この約束を厳格に守っているのは日本だけだという指摘もある。日本の農業行政は国内の産業保護よりも、国際的な世間体を優先しているわけだ。
③ 後手に回わる政府の農業政策
こうしたケースに代表されるように、日本の農業政策はこれまで後手に回ってきた。日本の農業政策の最大の特徴は、コメを守るために減反政策などさまざまな補助金を出し続けてきたことだ。とりわけ、減反政策は日本の農業の近代化を著しく阻んでしまった。
日本の農業政策を一言で言えば、「零細兼業農家維持政策」と呼ばれる。その結果、1960年にはGDPの9%あった農業が、現在では0.97%(2016年国民経済計算、内閣府より)しか残っていない。2018年に終了した減反政策に代表されるようにコメの価格を守るために、政府はありとあらゆる補助金をばらまいて、他の産業であれば独禁法違反となるカルテルを組んで、「JA農協」の意思に沿った政策を繰り返してきたと指摘されている。
例えば、現在でもコメを守るために、年間約3500億円の補助金が使われており、これまで総額9兆円のお金をばらまいて日本の農業を守ってきたと報道されている。「(農業)政策の二転、三転が不必要な過剰予算を招いた」とも指摘されている(「コメ『必要ない予算』温存」日本経済新聞2022年7月2日朝刊)。
■有事にはコメを食えと言うけれども…
さて、実際に台湾有事のような状態になり、世界中で食料品の争奪戦が起こったら、どうなるのだろうか。前出の「知ってる? 日本の食料事情2022」のなかでも、「輸出国もいざという時は自国内の供給を優先」と指摘している。
とりわけ、小麦、トウモロコシ、大豆は主要生産国が世界全体の8~9割を独占しており、リスクが高いことを指摘している。なかでも、大豆はアメリカとブラジルの2カ国で90%以上を占めており、この両国を巻き込んだ有事の際には、世界的に大豆不足になることが予想されている。
日本が世界中を巻き込んだ食料争奪戦に巻き込まれたとき、日本国民は何を食べればいいのか。農水省のシミュレーションによると、カロリーの高い焼き芋や粉吹き芋などのイモ類を主食にするように推奨しているが、太平洋戦争の戦中戦後の飢餓状態の時には、イモを主食にしてもなお国民は飢えていた。
日本は、長い間、食糧安保という意味もあるとして、稲作農家を守り続けてきた。政府の備蓄米は、現在でも100万トン程度を維持している。民間在庫約270万トンと合わせて370万トンある勘定になる(農林水産省、2020年発表)。同様に、食料用小麦は外国産食料用小麦として2~3カ月程度、家畜のえさとなる飼料用トウモロコシも100万トン程度備蓄している。
余っているとさんざん言われてきたコメを食べればいいのではないか……、と思いがちだが、実はそう簡単なことではないようだ。たとえば終戦時、コメの1人1日あたりの配給米は2合3勺だった。1億2500万人に2合3勺を配るとすれば1400万~1500万トン(15歳未満は半分と仮定)が必要になる。
しかし、減反政策によって今の生産量700万トンでは、国民の半分以上が餓死する計算だ。(キャノングローバル戦略研究所 研究主幹・山下一仁「食糧危機から見る日本農業の現状と課題~ウクライナ・マリウポリの教訓~」(グローバルエコノミー2022.08.15)より)
政府は、これまで食料安全保障とは言いながらも、実際には、有事に対する備えは皆無に等しい。太平洋戦争では、国民総出で小学校の土壌を耕して芋を植えたが、現在はアスファルトで覆われており、ゴルフ場ぐらいしか役立ちそうなものはない。
深刻なのが、シーレーンが破壊されて石油や肥料、農薬が一切輸入できなくなった場合だ。紛争が長引いた場合、農業機械すらない中で国民に提供できる食料が一体どの程度あるのか……。有事の際には、国民に「配給通帳」が配られて、配給制度をスタートさせるのが常套手段だが、マイナンバー制度ひとつ義務化できない現在の自民党政権に、その意思があるのか疑問になる。
■農産物輸出国への転換が結果的に国民を飢えから救う?
いずれにしても、これからできる対策としては、次のようなものが専門家によって指摘されている。筆者や関係者の意見も混ざってくるが、代表的なものピックアップしておこう。
① コメの輸出国になり、有事には国民に配給する
コメに対する補助制度などを廃止して、農家がジャポニカ米を自由に輸出できる体制にする方法だ。万一のときには、輸出分を国内に回すことができる。円安が進むこれからは、ジャポニカ米が世界中で売れるはずだ。誰でも気軽に農地を貸し借りできるように、農地という目的は限定したうえで通常の不動産同様に自由化することが求められる。
② 専業農家への直接補助に切り替える
日本の農業政策の最大の特徴は、ほとんど農業をしない兼業農家への補助が多いことだ。兼業農家への補助を打ち切って、専業農家に対して重点的、直接的な支援を行うことで、日本の農業の生産効率を上げられる。
③ スマート農業を取り入れて、生産性を向上する
オランダは、九州とほぼ同じ面積ながら、アメリカに次ぐ世界第2位の農産物を輸出している。付加価値の高い農産品を作るために、様々なミッションが行われている。衛星による監視やドローンなどの最先端技術を駆使して、「スマート農法」の充実を目指すべきだ。
日本の製造業は、IT化やデジタル化で後れを取り苦境に立たされているが、実は農業でも日本は大きく先進国のグローバルスタンダードから後れを取っている。農業生産で先端技術を使うためには、大規模農法にするしかないのだが、休耕地を簡単に貸し借りできる制度に転換することが求められている。しかし、ここでもJA農協などが立ちはだかっていると指摘されている。
農地の売買や賃貸をするのに、農業委員会の許可が必要になっている現行制度を廃止して、自由に農地を貸し借りできるようにすれば大企業が参加できて、大きな資本を投下できるはずだ。台湾有事が起きてからでは遅すぎる。
岩崎 博充 :経済ジャーナリスト
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2021年10月30日 YAHOO!JAPANニュース「日本人は低い食料自給率のヤバさをわかってない
6割以上を海外に頼る状況を放置していいのか
岩崎 博充 : 経済ジャーナリスト
日本は他国からの食料輸入なしには成り立たない国となっている(写真:sogane/PIXTA)
10月31日に投開票を控える衆院選を前に、選挙戦では、どの政党からも「経済安全保障」というフレーズが飛び交っている。岸田政権は、経済安全保障政策として今年5月に閣議決定された「中間取りまとめ」であげられたエネルギー、情報通信、交通・海上物流、金融、医療の5分野を重点分野として取り上げている。
しかし、実は日本には古くから高いリスクとして懸念されている安全保障分野がある。それは「食料自給率」の低さだ。食料自給率とは、自国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標。日本は先進国でかなり低いレベルにある。
食料の自給は、国民の命を直接左右するものであり、ある意味では防衛やエネルギー資源以上に意識しなければならない。ただ、今回の総選挙では大きなテーマにもなっていない。日本の食料自給率は、本当に大丈夫なのか……。農林水産省の資料などをもとに、いま一度考え直してみたい。
日本の食料自給率、過去最低の37%!
農林水産省が最近になって発表した、2020年度のカロリーベースの日本の食料自給率は、前年度から0.38ポイント減少して37.17%になった。統計データが存在している1965年度以降、小数点レベルで見れば過去最低の数字だ。新型コロナウイルスによる影響で、畜産品の家庭用需要が拡大し、牛肉や豚肉などの国内生産量が増えたにもかかわらず、昨年度は輸入が増えた影響だとされている。
農水省は、現在2030年度までにはカロリーベースの食料自給率を45%に高める目標を掲げている。ところが、日本の食料自給率は年々ズルズルと減少しているのが現実だ。
食料自給率の考え方には、熱量で換算する「カロリーベース」と金額で換算する「生産額ベース」の2種類がある。カロリーベースでは1965年には73%あったが、前述したように今や37%まで下がっている。生産額ベースの自給率も1965年には86%あったが、2020年には67.42%にまで減少している。
日本人の食料の6割以上を海外からの輸入に頼っているというのが現実だ。いわゆる「食料安全保障」と呼ばれる分野である。長い間、そのリスクが指摘されているものの、効果的な政策は出てきていない。
最近になって、新型コロナウイルスによる混乱などに伴って、牛肉や小麦、チーズなどが値上げされた。さらには天候不順などが原因で、10月1日以降輸入小麦の政府売渡価格が前期比19%引上げられ、家庭用レギュラーコーヒーが20%程度、そしてマーガリンも12%程度値上げしている。食料品の価格上昇は、日本に限ったことではないものの、世界的に需要と供給のバランスが崩れてきていることは間違いないだろう。
主食の穀物などの値上がりは、原油価格の値上がりと同様のインパクトを持っている。日本では大きくクローズアップされることがないが、食品の7割近くを輸入に頼る危機感を、日本人はもっと意識しなければならない。
実際に、日本の食料自給率の実態を見てみよう。たとえば品目別のカロリーベースの食料自給率は次のようになる(2020年度、農林水産省「カロリーベースと生産額ベースの食料自給率」より)。
●コメ…… 98%(生産額ベースでは100%)
●野菜…… 76%(生産額ベースでは90%)
●魚介類…… 51%(生産額ベースでは49%)
●果実…… 31%(生産額ベースでは65%)
●大豆…… 21%(生産額ベースでは47%)
●小麦…… 15%(生産額ベースでは19%)
●畜産物…… 16%(生産額ベースでは58%)
●油脂類…… 3%(生産額ベース47%)
日本で100%自給できている食料といえばコメぐらいしかない。食料自給率を国際比較で見ても、日本の低さが際立つ(農林水産省、2018年、日本のみ2020年度、カロリーベース)。
●カナダ…… 266%(生産額ベースでは123%)
●オーストラリア…… 200% (生産額ベースでは128%)
●アメリカ…… 132% (生産額ベースでは93%)
●フランス…… 125% (生産額ベースでは83%)
●ドイツ…… 86% (生産額ベースでは62%)
●イギリス…… 65% (生産額ベースでは64%)
●イタリア…… 60% (生産額ベースでは87%)
●スイス…… 51% (生産額ベースでは50%)
●日本…… 37% (生産額ベースでは67%)
ちなみに、農水省食料安全保障室の「食料需給表(令和2年度)」によると、日本の穀物自給率は28%(2018年度)、2018年のデータでは172の国・地域中128番目、OECD加盟38カ国中、32番目となっている。
日本の食料自給率が低いのは農地面積が少ないから?
日本の食料自給率は、なぜこんなにも低いのだろうか。人口の少子高齢化によって、農業人口が大きく減少していることなどがその原因といわれるが、もっと根源的な部分にも理由があるのかもしれない。
たとえば、ちょっと古いデータだが、日本と先進国の農地面積を比較してみよう(2017年、農林水産省「知ってる?日本の食料事情 2020年12月」より)。
●アメリカ……4億555万ヘクタール
●オーストラリア……3億9380万ヘクタール
●カナダ……5769万ヘクタール
●フランス……2870万ヘクタール
●ドイツ…… 1810万ヘクタール
●イギリス……1780万ヘクタール
●イタリア……1283万ヘクタール
●日本……444万ヘクタール
日本の農地面積は、ほかの国に比べて桁違いに少ない。1人当たりの農地面積で見ても、日本はわずか3.5ヘクタール(資料出所:同、以下同)しかない。オーストラリアの約400分の1、アメリカの約40分の1、イギリスの約8分の1の農地面積しかない。これでは、国民の食料を賄っていけないと考えるのが自然だ。
「農家一戸当たり」の農地面積を見ても、EUは日本の7倍(農林水産省、2009年、以下同)、アメリカは104倍、オーストラリアは1591倍というデータもある。
なぜこうなってしまったのか……。日本の場合、国土面積のうち約7割が森林を占めており、農地面積が限られている、という説明ができる。確かに、森林を農地に転換するのは大変な労力だが、これまでの農業政策でよかったのかという疑問は残る。森林を守ることも大切だが、場所に応じて適切な使われ方をしていくことも大切だ。
日本はこれまで広大な森林面積を使って、ゴルフ場をつくり、住宅地を開拓してきた。それに対して、農業は農業組合などの既得権益を持つ団体の保護に追われて、抜本的な改革ができなかったとも考えられる。また、農林水産省自身が、戦後の木材不足を見越してスギやヒノキの植林を推奨したために、森林がそのまま放置された面もある。
日本の森林面積率は国土の約66%(2017年現在、以下同)。それに対してオーストラリアは16%、イギリスは13%だ。アメリカ、ドイツはそろって32%。食料自給率の向上を考えたときに、この66%の森林面積をどう生かしていくかが大きな問題といえるかもしれない。
また、日本の場合は、近年の人口減少で専業農家が減少してきたことも大きな影響を及ぼしている。こうした時代の変化に対して、行政が農業の法人化といった農業政策の転換に遅れたのも1つの原因といっていい。
食料自給率向上のためにとった政策とは?
こんな状況の中で、農水省がとった食糧自給率向上のための農業政策もあまり効果的ではなかった。食品ロスをなくす、日本人の食生活を転換させるといったさまざまなプログラムはあったのだが、結果的にはその政策が効果的に働いているようには見えない。
例えば、政府は2015年3月に「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定して、2023年までにカロリーベースの食料自給率を39%(2013年当時)から45%に、生産額ベースでも65%(同)から73%に上昇させる、という目標を掲げた。
具体的には、食料の安定供給の確保、農村の振興、農業の持続的な発展、農業団体の再編整備といった政策を明示し、食料自給率の目標値を初めて設定した。たとえば、力強く持続可能な農業構造の実現に向けた担い手の育成・確保・経営所得安定対策の着実な推進、女性農業者が能力を最大限発揮できる環境の整備、農協改革や農業委員会改革の実施、農村への移住・定住の促進といった項目が並ぶ。
さらには、民間企業・団体・行政等が一体となって国産の農産物の消費拡大を推進するプロジェクトを立ち上げて、食料自給率アップのために「今が旬の食べ物を選ぶ」「地元でとれる食材を使う」「ご飯を中心に野菜を使ったバランスのいい食事」「朝食の推奨」「食べ残しを減らす」といった「食育」の概念まで導入。国民の食生活にも注文を出している。
こうした「国民にお願いする」形の政策で、食料自給率の上昇は望みにくい。抜本的な発想の転換がないまま現在に至っている。一方、食料自給率の低迷が国の安全保障に最も大きく関わっていることを、国民ももっと知ったほうがいい。
太平洋戦争においても、約230万人が戦死したがそのうち餓死した兵士が半分以上だったと言われている。本当の意味のリスクに直面したときにどうすればいいのか……。そうした現実に目を背けたままでは、本当の日本の安全保障にはつながらないのではないか。
今や、海外では国防も戦車やミサイルの数だけではなく、サイバーセキュリティーや食料の確保といったことに重きが置かれていると言われる。食品ロスなどを抑えるという発想よりも、本気で安全保障を考えるのであれば、森林面積を多少削ってでも農地を増やす。あるいは使わなくなったゴルフ場等を簡単に農地に転換するシステムづくり、あるいは都会の空き家を一定の期間を置いた後で農地に転換できるようにする、などなど……。新しい時代に沿った画期的な発想が必要なのかもしれない。
もし、食糧不足が起きたらどうなる?
実際に、日本で食料危機に陥った場合、われわれ国民はどうなるのだろうか……。農水省のシミュレーションによると食料品の輸入がストップしたときには、カロリーの高い焼き芋や粉吹き芋などの「イモ類」を主食にして、毎食のようにイモを食べる「イモ類中心」の食生活を提案している。
小麦やコメは1日1杯程度に抑えてイモを代替にすることで主食を賄い、さらに牛乳は5日に1杯、焼肉は19日に1皿、卵は3カ月に1個……。そんな食生活に切り替えていくことになるとしている(農林水産省「食料自給率及び食料自給力の検証、2019年11月」より)。
当然ながら、農地をカロリーの高い「イモ作」に切り替えることも必要になってくる。日本の場合、食糧の7割近くを輸入品に頼っているわけだから、たとえば戦争や災害などによって、長期にわたって食料品が海外から入ってこなくなれば、当然ながら食料品が不足する。
農水省は、いざというときに備えて農産物備蓄を行っているが、次の3品目しか備蓄がない状態だ(2019年度現在)。それもまた、民間にお願いベースでの“備蓄”が含まれている。
●コメ……政府備蓄米の適正備蓄水準は100万トン程度
●食糧用小麦……国全体として外国産食糧用小麦の需要量の2.3カ月分
●飼料穀物……国全体としてトウモロコシ等の飼料穀物100万トン程度を民間備蓄
要するに、政府が単独で食糧を備蓄しているのはコメのみ、というわけだ。万一、海外からの食糧品が入ってこないことが明らかになった場合、可及的速やかに全国の農地でイモの栽培など、高カロリーな作物をつくり始めなければならない。
その場合、9割近くを輸入に頼っている「エネルギー」も絶たれると考えられる。言い換えれば、農作業も人力や家畜の労力に頼ることになる。まさに、半世紀以上前の世界に戻ることになりかねない。
ちなみに、日本のエネルギー自給率は、11.8%(資源エネルギー庁「総合エネルギー統計、2018年度確定値」より)。東日本大震災の影響で低かった2014年の6.4%よりは回復したものの、世界的にみてもOECD35カ国中の34位と最低レベルの数字だ。
つまり、日本はエネルギーと食糧という国民生活に最も重要なライフラインを海外に頼っていることになる。
石油備蓄日数も、187日(2019年現在)しかないため、食料不足が深刻になって、イモ類を作らなければならないことがわかった段階で、農機具を動かすためのエネルギーが不足している可能性もあるということだ。
一方で、食料輸入先の国の事情も考えなくてはいけないだろう。例えば農水省の資料によると、一般的な「天ぷらそば」を例に考えてみると、ソバは中国やアメリカ、天ぷらの中身であるエビはタイ、ベトナム、インドネシアなど、天ぷらの衣となる小麦はアメリカやカナダ、そしてその天ぷらを揚げる油は、カナダから主に輸入している。
天ぷらそばの食料自給率は22%にしかならない(2014年の数値)そうだ。単純に考えて、天ぷらそば1杯にしても日本は世界中の国から、さまざまな食料を輸入して日常生活を送っているということになる。
仮に、中国とアメリカが戦争状態に陥るような地政学リスクが高まったら、日本は真っ先に食料不足とエネルギー不足に陥る可能性がある。
食料争奪戦争はすでに始まっている?
とはいえ、近年の世界では食糧争奪戦がすでに始まっている、と考えてもいいだろう。その先陣を切っているのが、食糧大量消費国の「中国」だ。13億人の国民を養うために、中国政府はなりふり構わない食糧争奪戦を繰り広げている。
食料も含めた安全保障問題の答えは簡単には出てこない。日本は、新型コロナによって日常的なリスク管理の重要性を学んだはずだ。食料やエネルギーに対するリスクも、日常的な危機管理が不可欠だ。
農水省は、ホームページで「食糧自給率向上に向けた取組」としてさまざまな政策を打ち出している。生産面、消費面両方からアプローチしているものの、人口減少、高齢化が進行する中ではなかなか効果を上げられそうもない。
かつて、イギリスは食糧自給率を40%程度から70%にまで引き上げることに成功している。ただ、イギリスの農家1戸当たりの経営規模は日本の70倍もある。海外のケースをそのまま生かせないのも事実だ。
日本は、日本独自の方法で食料自給率を上昇させていくしかない。
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