💫16}─2─大量絶滅まであと7℃?。大量絶滅の犯人は超大陸パンゲアを引き裂いた火山活動だった。〜No.112No.113No.114No.115 ⑮ 

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 2023年9月27日7:57 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「大量絶滅の「犯人」は超大陸パンゲアを引き裂いた火山活動だった…そのトリックとは?
 豊富な化石記録から、過去の地球で、生物多様性が急減した時代があることが知られています。300万年未満という(地質学的な尺度で)短期間に、75%以上の生物種が絶滅してしまう現象を「大量絶滅」といいます。種の絶滅は珍しい出来事ではありませんが、これほど大規模な現象は稀です。
 【画像】大量絶滅まであと7℃…!?どれだけ暑いと、生物は生きていけなくなるのか?
 大量絶滅は5回起きたと知られています。最も有名なのは5回目、つまり約6600万年前の「白亜紀末大量絶滅」でしょう。このとき、鳥類型を除くすべての恐竜が絶滅しました。巨大隕石の衝突が地球規模の環境変動を起こしたと考えられています。
 『大量絶滅はなぜ起きるのか』を上梓した尾上哲治教授は、地層に記録された絶滅現象の謎解きに挑んできました。尾上教授が現在とくに注目しているのは、三畳紀末(約2億150万年前)に起きた大量絶滅です。本記事では、三畳紀末大量絶滅について過去に提案されてきた仮説(モデル)をご紹介するとともに、新たな証拠と考えについて、尾上教授の解説をお届けします。
 *本記事は、『大量絶滅はなぜ起きるのか? 生命を脅かす地球の異変』の内容から、再編集・再構成してお送りします。
 過去は未来を知る鍵
 地質年表
 前回の記事では、おもに人の生存限界温度である「湿球温度35℃」について紹介しました。現在からプラス7℃の温暖化が進むと、この湿球温度35℃を超える地域が現れはじめると予測されています。人以外の動物や植物も同じく、30~40℃の温度範囲が生死を分ける境界となっています。
 では、もし現代の気温プラス7℃の温暖化が起こると、つまり動物や植物の生存限界温度を超えてしまうほど温暖化が進むと、地球上では何が起こるのでしょうか? 実は過去の地球では、短期的にこの温度を突破したと考えられる時代があります。 それは「三畳紀」と呼ばれる時代の末期で、今から約2億150万年前の出来事です。そしてこの時代には「大量絶滅」が起こりました。
 「過去は未来を知る鍵」と言われています。将来何が起こるのかを考察するために、三畳紀末に何が起こったのかを見ていきましょう。
 三畳紀末の絶滅
 図 超大陸パンゲア」の古地理図
 三畳紀は、「パンゲア」と呼ばれる一つの超大陸が存在した時代です。それが今から2億170万年前に分裂をはじめました。この時、パンゲア大陸を引き裂くようにして起こった大規模な火山活動が、大量の二酸化炭素を放出しました。
 この二酸化炭素の放出により、現在と同程度の気温だった三畳紀末の地球は、急激な温暖化に見舞われました。最近の研究では、火山活動によって放出された二酸化炭素と温暖化が、三畳紀末大量絶滅の原因になったと考えられています。
 では具体的に、どのようにして大量絶滅が起こったのでしょうか? 陸上の動植物だけでなく、温暖化の影響を受けにくそうな海洋生物も絶滅したので、原因は生存限界温度の突破だけではなさそうです。
 ここでは特に海洋生物の絶滅原因について、これまでに提案された2つのモデルを見ていきます。
 二酸化炭素の連鎖
 赤潮は現代でも生物の大量死を起こす要因となっている photo by gettyimages
 一つ目のモデルは比較的単純で、火山活動により大気中の二酸化炭素が増加したことで、海洋表層の著しい酸性化が引き起こされたとするものです。酸性化により、炭酸カルシウムの外骨格を持つ生物(例えばサンゴ)が絶滅したと考えられています(海洋酸性化による絶滅モデル)。詳細は省略しますが、酸性化が進んだ海では炭酸イオンが減り、炭酸カルシウムの殻を維持できなくなってしまったのです。
 もう一つのモデルは少し複雑です。順を追って見ていきましょう。
 まずは大地に変化が起こりました。二酸化炭素の放出による温暖化や湿潤化は、陸上の岩石の化学的な風化作用(化学風化)を促進します。この強い風化作用によって、岩石と土壌から大量の栄養塩(硝酸塩やリン酸塩)が流出し、陸から海へともたらされました。
 すると、沿岸域の海洋で富栄養化が進みます。栄養塩の過度な供給は、現在の赤潮と同様のプランクトンの大増殖を促しました。
 大量発生したプランクトンの遺骸は、海底へ沈んでいく途中で、海水中のバクテリアによって分解されます。分解には酸素が使われるため、海水中の酸素が大量に消費されました。その結果、海洋中層(およそ200m以深)で無酸素化が引き起こされ、海洋生物の絶滅の原因になったと考えられています(無酸素化による絶滅モデル)。
 海洋生物の絶滅の原因となった「海洋酸性化」と「無酸素化」は、もとをたどれば二酸化炭素が大気~大地~海洋~生物の間で形を変えながらリレーされた結果です。一見無関係にみえる現象がすべてつながる様は、「風が吹けば桶屋が儲かる」モデルと表現しても違和感ありませんが、格好よく「環境ストレスのカスケード」と呼ばれています。
現場とモデルの不一致
 しかしながら、世界各地の地層を詳しく調べてみると、ことはそう簡単ではないことがわかります。
 たとえば、「海洋酸性化」と「無酸素化」の証拠がみつかる堆積物の場所や水深に、偏りがあります。大量絶滅の時代には、「広範囲に分布し、個体数が多く、将来化石として残りやすい分類群」が絶滅しました。そのため、特定の地域や水深の堆積物中にしか見られないこれらの出来事は、絶滅の原因としてはやや不適当な印象です。
 また何より、これらの出来事と絶滅が起こった年代の間には、若干のずれがあることも問題です。
 では、絶滅が起こった時期に海洋酸性化と無酸素化のほかに何がおこったのでしょうか。丁寧に堆積物の記録を読み解いていくと、最近別の現象が見えてきました。絶滅の直前、陸地から森が消え、土壌が失われていたのです。
 消えた森の謎
 大量絶滅の直前に「森が消え、土壌が失われた」とする根拠は、地層に含まれる花粉化石の消失や、化石の腐食痕の研究などから知られています。ただし、なぜ森が消えたかについては、説得力のある説は提案されていません。
 私は、極端な気温上昇が森林消失の原因ではないかと考えています。実際、気温上昇の地質学的な根拠はいくつか報告されています。
 例えば植物の葉の化石にみられる変化です。絶滅の直前には、小さな葉や分裂した葉をもつ植物が増えたという傾向がみられます。
 このような葉の変化は、高温世界で有効な生存戦略によるものです。すなわち、日光に当たる部分を少なくして“オーバーヒート”のおそれを減らし、なおかつ風通しをよくすることで熱を効果的に分散できるようになりました。
 葉の変化が遺伝的変異によるものか、環境の変化に適応した表現型の変化なのかは、化石からは判断できません。それでも、急激な温暖化が植物化石にみられる葉の形態を変化させたとする仮説が提唱されています。
 ではこれから、温暖化を軸とした三畳紀末大量絶滅モデルを紹介しましょう。
 森林消失と土壌流出
 植生が失われると土壌流出が発生する photo by gettyimages
 三畳紀末の地球では、極端な温暖化により気温が樹木の生存限界を超えた結果、低緯度の乾燥した内陸部から裸子植物の森林消失がはじまりました。この森林消失は、比較的湿潤な沿岸部にもおよび、最終的には沿岸部も乾燥化した大地へと変化しました。
 低緯度の熱帯から森が完全に消えてしまった結果、この時代の四肢動物は絶滅したのかもしれません。四肢動物の絶滅の原因は、森林消失に加えて、生息できる限界の温度を超えた可能性もあります。あるいは、高緯度地域へ移動した線も残されています。
 さて、陸上を被覆する植生が失われたことで、熱帯では大規模な土壌流出が起こりました。
 植生と土壌が失われたことで、いよいよ陸上の乾燥化は止められなくなったでしょう。
 森が消えれば海も死ぬ
 深刻な問題として、陸上で土壌が消えたことにより、熱帯の沿岸域には、栄養塩が生物に利用できる形で供給されなくなった可能性があります。特に、海洋の基礎生産を支える鉄やケイ素の供給は、土壌がなければ難しかったでしょう。なぜなら、鉄やケイ素は岩石を構成する鉱物の化学風化によって生成されますが、土壌がない場合、風化の速さは100分の1から1000分の1倍に落ち込んでしまうからです。
 加えて、鉄は、土壌があって初めて植物プランクトンの生産に利用される化学的な性質を持つことができます。そのため、土壌流出の影響はいよいよ深刻になりました(この議論については、松永勝彦氏の名著『森が消えれば海も死ぬ 第2版』(講談社ブルーバックス)をご参照ください)。
 さらに、森林や土壌の被覆が陸上からなくなってしまうと、河川から大量の土砂が海に流れ込みます。その結果、底生・固着性の生物は、土砂に埋もれて生息場を失ってしまいました。
 これらの森林消失と土壌流出に端を発する陸の変化によって、海の生態系が崩壊し、堆積物には大量絶滅の化石記録が残されたと考えられます。
 これから何が起こるのか
 写真:現代ビジネス
 以上が、2億150万年前に起こった三畳紀末大量絶滅のあらましです。三畳紀末には、極端な温暖化により熱帯の森が消え、土壌流出や海洋生態系の崩壊といった大量絶滅へとつながる現象が引き起こされました。
 どうやら「大量絶滅はなぜ起きるのか」を解く鍵は、熱帯の森林にあるようです。では、現代の熱帯林はどのような状況にあるのでしょうか。そして7℃の温暖化が起こった時、何が起こるのでしょうか。
 今回は過去の大量絶滅を紹介しましたが、これを参考に、最近何かと話題になる「第6の大量絶滅」について、稿をあらためて議論していきたいと思います。
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 「第6の大量絶滅」についての議論は、9月27日公開予定です

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 大量絶滅はなぜ起きるのか? 生命を脅かす地球の異変
 2億150万年前(三畳紀末期)の地球で、陸も海も関係なく、80%もの生物種が一斉に消えた。世界中の地層に記録されたその大事件を「三畳紀末大量絶滅」という。このとき、いったい何が起きたのか? 気鋭の地質学者が、まったく新しい「絶滅論」を提唱する。

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 尾上 哲治(九州大学大学院教授)
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 大量絶滅まであと7℃!? 「どれだけ暑く、どれだけ湿度が高ければ、生き物は死にはじめるのか?」を真剣に考えてみた
 尾上 哲治九州大学大学院教授
 今年の夏は暑かった――。最近、毎年言っている気がしますが、勘違いではなさそうです。2023年の夏は「史上最も暑かった」という報道を、何度も耳にしました。「これ以上外にいたら、死ぬ」なんてセリフが、冗談では済まない暑さでした。
 地球温暖化ヒートアイランドなど、さまざまな要因があるのでしょう。原因はともかく、近年の傾向から考えて、暑い夏は来年も再来年も訪れそうです。もしかしたらさらなる高温化も経験するかもしれません。私たちはどこまで耐えられるのでしょうか?
 高温に苦しめられるのは、人間だけではありません(いや、人間はまだマシなほうかも)。生物はどこまで耐えられるのでしょうか?
 かつて起きた「大量絶滅」の原因究明に挑む地質学者、尾上哲治教授は、最新刊『大量絶滅はなぜ起きるのか』(講談社ブルーバックス)で生物の「熱耐性」に注目しています。
 【書影】大量絶滅
 *本記事は、『大量絶滅はなぜ起きるのか? 生命を脅かす地球の異変』の内容から、再編集・再構成してお送りします。
 湿球温度計をめぐる不気味な論文
 みなさんは、学校の理科室の壁にかけられた一風変わった温度計のことを覚えていますか? 温度計の先端の丸い部分は、水にぬれたガーゼで覆われています。これは「湿球温度計」と呼ばれるもので、となりにかけられた普通の「乾球温度計」と合わせて使うことで、理科室内の湿度を調べられます。
 【写真】湿球温度計(著者撮影)湿球温度計(著者撮影)
 湿球温度計の原理は、私たちの体の仕組みと似ています。
 湿度が低いときは、湿ったガーゼから盛んに蒸発が起こるので、温度計の丸い部分は熱を奪われます。そのため、湿球温度計が示す温度は、となりの乾球温度計のものよりも低くなるのです。汗が蒸発することで、皮膚の温度(皮膚温)が下がるのと同じです。
 一方、湿度が高いときは、蒸発が起こりにくいので、湿球温度計乾球温度計の温度の差は小さくなります。湿度が高いと蒸発しにくいのは、汗も同じです。そのため、同じ気温でも湿度が高いと、私たちは暑く感じます。
 どうして湿球温度計の話ばかりしているかというと、温暖化と大量絶滅の関連性について調べているうちに、この温度計をめぐる不気味な論文があることに気づいたためです。論文は次のことを問いかけています。
 どれだけ暑く、どれだけ湿度が高ければ、生き物は死にはじめるのか?
 5500万年前からの宿題
 今から約5500万年前の地球の気温は、現在とほぼ同じだったと考えられています。しかし短期的に、5〜8℃の温暖化イベントが起こったことが知られています(その原因については諸説あります)。
 5500万年前の温暖化にかんする研究で有名な、パデュー大学の古気候学者マシュー・フーバーは、とある学会で、地質時代の熱帯の気温がどれほど高かったのかについて発表しました。聴衆の中には、ニューサウスウェールズ大学の気候科学者スティーブ・シャーウッドがいました。
 シャーウッドは先の「どれだけ暑く、どれだけ湿度が高ければ、生き物は死にはじめるのか?」という疑問をフーバーに投げかけましたが、彼はその答えを知りませんでした。
 そこで二人が調べてみると、人は皮膚温が35℃を超えると、脳をふくむ体の中心温度(深部温度)が上昇し、皮膚温が37℃に達すると、4時間から6時間で死に至ることがわかりました。これは言い換えると、「湿球温度」が35℃を超えるような場所――つまり発汗による蒸発があったとしても、皮膚温が35℃を超える場所――では、基本的に人は生きていけないことを意味します。
 エアコンなしで生きられない場所
 幸運なことに、現在の地球上には、湿球温度が35℃を超える地域はほぼありません。フーバーとシャーウッドはもう一歩踏み込んで、近い将来の温暖化により、湿球温度が35℃を超える場所が出てこないかをシミュレートしてみました。
 すると、温暖化が7℃進んだ場合は、熱帯に湿球温度が35℃を超える地域が出現しはじめることがわかりました。さらに、12℃の温暖化では、現在の人口のほとんどをカバーする場所で、湿球温度は35℃に達しました。
 【写真】温暖化が進行した世界ではエアコン無しでは人体は限界に photo by gettyimeages温暖化が進行した世界では、エアコン無しでは人体は限界に… photo by gettyimeages
 シャーウッドの言葉を借りると、このような場所では「日陰にずぶ濡れで裸になり、扇風機の前に立っていたとしても、人の体は限界に達してしまう」ことになります。温暖化の進んだ世界では、私たちはもはやエアコンなしでは生きられません。
 動物の限界温度
 人にとっては、湿球温度35℃が生存可能な限界のようです。ほかの動物にも目を向けてみましょう。
 哺乳類は、体温と重さによりまちまちであるものの、湿球温度35℃が6時間以上継続すると、致死レベルの熱ストレスを受けます。
 外部の温度により体温が変化する動物(昆虫やトカゲなど)は、行動時間が昼か夜か、あるいは活動場所(開けた場所、巣穴など)によって、気温と著しく異なる体温を持つことができます。そのため、どの程度の温度まで生きられるかを推定することは難しいようです。
 水生動物の中には陸上動物と同程度の熱耐性をもつものも photo by gettyimages水生動物の中には陸上動物と同程度の熱耐性をもつものも photo by gettyimages
水生動物についても、詳しい熱耐性はわかっていません。ただ、潮の満ち引きの影響を受けるような浅い海に生息する水生動物の中には、陸上動物と同程度の熱耐性を持つものが存在します。たとえばエビは、24℃でストレスにより活発に這い回るようになり、33℃以上で腹部の痙攣が起こり、43℃で死に至ります。
 世界の熱帯林の気温と樹木の限界
 植物の熱耐性については、湿度に代わって「飽差」と呼ばれる乾燥の度合いの指標が用いられます。飽差とは、ある気温における飽和水蒸気圧と実際の水蒸気圧の差のことです。言い換えると、「空気の中にあとどれだけ水蒸気を含むことができるか」についての指標です。飽差が大きいほど、もっとたくさんの水蒸気を含むことができる「乾燥した空気」であり、逆に飽差が小さければ、もうあまり水蒸気を含むことができない「湿った空気」と言い表すこともできます。
 葉からの水の蒸発を考えると、高温で飽差の大きい(つまり乾燥した空気の)環境が、植物とってストレスとなることは想像できます。
 実際に、比較的飽差が大きいメキシコやアマゾンの一部の熱帯林では、27〜28℃くらいから熱ストレスの影響が出はじめ、生産性が急激に低下します。アマゾンでは年平均気温がすでに28℃に迫っている地域もあるので、「世界の熱帯林の気温は、すでに樹木が耐えられる限界に近づいている」という議論が起こっています。
 高緯度地域に森林を形成する裸子植物の熱耐性も、先の熱帯林と比較的近いことがわかっています。飽差が大きい環境下では、日中の気温が30~32℃くらいまで上昇すると、生産性の急激な低下や、苗木の枯死(こし)がみられるようになります。
 このように樹木は、生息する環境の飽差条件によっては、30℃前後の気温を超えると生産性が低下する傾向にあるようです。さらに気温が上昇し40℃を超えると、今度は葉の膜の安定性低下や酵素の劣化といった別の問題が起こるため、ほとんどの植物が枯死します。
 つまり陸上の動物と同じく、30〜40℃の温度範囲が植物の生死を分ける境界となっているのです(ただし、植物の場合は動物と違って、空気が乾燥している場合に、より低い温度で枯れてしまいます)。
 過去の地球の気温
 さてここまでの議論を踏まえて、過去の地球の気温を示したグラフを見ていきましょう。
 過去5億4000万年間の気温変化過去5億4000万年間の気温変化。データは、Royer et al., 2004, GSA Today; Jaffrés et al., 2007, Earth Science Reviews; Blake et al., 2010, Natureより引用
 グラフについて少し丁寧に説明しておきます。横軸は時間軸を表し、右端が現在で、左に行くほど過去に遡る、つまり古い年代です。縦軸は、2001~2010年の世界の平均気温をゼロとした時の気温の偏差を表しています。過去の気温は、地層や化石の「酸素同位体比分析」から復元されました(詳しくは『大量絶滅はなぜ起きるのか』をご参照ください)。
 なおこのグラフは、100万年単位で平均化したグラフなので、数千〜数万年単位の細かい気温の変化を見ることはできません。
 グラフには、「プラス7℃の温暖化」の位置に線を引いてあります。これは、フーバーとシャーウッドが推定した、熱帯の湿球温度が35℃を超える境界です。現在から過去に遡って気温の変化を確認していくと、陸上に動植物が存在した過去約4億年間は、この線を超えるような長期の温暖化が基本的に起こっていないことがわかります。
 大量絶滅まであと7℃?
 では、もし近い将来この線を越えて温暖化が進むと――つまり動物や植物の生存限界温度を超えてしまうと――、地球上では何が起こるのでしょうか?
 実は過去の地球では、この温度を短期的に突破した時代があることがわかっています。結論を先に述べると、そのような時代には、「大量絶滅」が起こっていました。大量絶滅とは、地質学的尺度で短い期間に(通常は300万年未満)、75%以上の種が消滅する現象のことです。温暖化により、地球と生命にいったい何が起こったのでしょうか。
 次回の記事では、生命の限界温度を超えて温暖化したと考えられる、約2億150万年前の地球で起こった異変と、この時代の大量絶滅について紹介します。
 ※詳しい内容や参考文献については、『大量絶滅はなぜ起きるのか』をご覧ください。
 次回はこちらから
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 9月22日 日本列島を「くの字に曲げている溝」その深さ、なんと6km…!その底にある「御歳数千万歳の岩」の正体をご存知か
 藤岡 換太郎
 後に「日本地質学の父」とも呼ばれるようになるハインリッヒ・エドムント・ナウマンは、短期間に高精度の地質図を完成させたり、日本列島成立のカギともなる「フォッサマグナ」を発見するなど、重要な成果を多く残しています。
 とくに「フォッサマグナ」は、日本列島の成立や、今後の変化や姿を考えるのに非常に重要な地質構造であると言われています。それと同時に、謎もまた多く、そもそもその範囲さえ確定していません。
 では、ナウマンは、なぜ景色を見ただけで「得意な構造」であることがわかったのでしょうか? なぜ、フォッサマグナが日本列島を考える上で重要なのでしょうか? いったいどういう構造をしているのでしょう? つきることのないフォッサマグナの謎を追いながら、私たちの住む日本列島を見つめ直す旅に出ましょう。
 【書影】フォッサマグナ
 *本記事は、『フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体』の内容から、再編集・再構成してお送りします。
 フォッサマグナとは何か?
 前回の記事で、ナウマンのご紹介しつつ、彼が「フォッサマグナ」を発見した経緯をご紹介しました。そこでも、簡単にお話ししましたが、あらためて「フォッサマグナ」と何かというと、本州の中央部の、火山が南北に並んで本州を横断している細長い地帯のこと、と言えます。
 ナウマンフォッサマグナの範囲として、日本海側の新潟県糸魚川市〜高田平野付近から、太平洋側の静岡県清水市(現・静岡市清水区)〜神奈川県足柄平野付近に至るまでの広い地域を示しています。
 北から見ていくと、新潟県、長野県、山梨県、神奈川県、静岡県、東京都です。さらに関連する府県を入れると、富山県岐阜県群馬県を含む関東から中部日本となります(前回の記事で挙げた「ナウマンが定義したフォッサマグナ地域の範囲」の図を再掲します)。
 【図】ナウマンが定義したフォッサマグナ地域の範囲ナウマンが定義したフォッサマグナ地域の範囲(背景の地形図:国土地理院電子国土・彩色地図より)
 「ナウマンが定義したフォッサマグナ地域の範囲」の拡大画像はこちら
 東西に長く延びている日本列島は、このフォッサマグナ地域を境にして、地質的に分断されています。そして、フォッサマグナ地域とその東西では、地層や岩石などの地質がまったく異なっています。
 これがフォッサマグナの構造
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