🌌5}─6・A─温暖化。摂氏50℃の日常、世界各地で観測される異常気象。〜No.28 

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 2022年7月28日 MicrosoftNews 東洋経済オンライン「温暖化が心配な人がたじろぐ、やはり過酷な現実 摂氏50℃の日常、世界各地で観測される異常気象
岩崎 博充
 © 東洋経済オンライン 欧州でも今年は各地で記録的な猛暑となっている(写真:AP/アフロ)
 世界中で異常気象が猛威をふるっている。今や、誰もが「地球温暖化」の現象を認め、その影響を日常生活の中で体験しているはずだ。日本でも、観測史上最も短い梅雨が明け、6月にもかかわらずところによっては40℃前後の猛暑に襲われた。日本だけではなく、欧州やアメリカの一部でも歴史的な高温が記録されるなど、世界でも猛暑に襲われている。猛暑だけではなく、経験したことのない大洪水や山火事などに見舞われている。
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 ロシアによるウクライナ侵攻によって、石炭による火力発電が世界中で増えるなど、地政学リスクによる温室効果ガス削減にブレーキがかかる懸念もある。世界の平均気温の上昇を止めなければ人類は滅亡するかもしれない――誰もがわかっている現実だが、実は本気で立ち向かおうとしない現実が見え隠れする。
 最高気温60℃、人間が住めないエリアが拡大中?
 いかに世界中で異常気象が発生しているかは、気象庁が定期的にホームページで発表しているデータである程度知ることができる。直近(7月5日現在)のデータによると、2022年3~5月(四半期)、同年5月(月単位)、6月29日~7月5日(週単位)といった期間別に起きた異常気象が発表されている。いくつか代表的なものをピックアップして紹介してみよう。
<3~5月>
●北海道札幌……3カ月の平均気温8.9℃、年平均と比較して+1.8℃
広島県広島……3カ月の平均気温16.0℃、年平均と比較して+1.4℃
●中国ウイグル自治区ウルムチ……3カ月の平均気温12.9℃、年平均と比較して+3.2℃
パキスタンイスラマバード国際空港……3カ月の平均気温26.8℃、年平均と比較して+3.2℃
<5月>
●フランス……5月の月平均気温は1900年以降最も高く、降水量は1959年以降最少
●中央シベリア北西部ボロチャンカ……5月の月平均気温-0.1℃、年平均気温に比べて+4.1℃
●インド北東部チェラプンジ……月降水量2403ミリ、年平均に比べて+217%
<6月29日~7月5日>
アルジェリア北部ビスクラ……1日の平均気温が約41℃、年平均は33℃、+8℃。7月2日の最高気温は48℃を超えている
●メキシコ北部サルティージョ…… 7月5日までの30日間降水量がほぼゼロ。年平均では6月=81.1ミリ、7月=93.0ミリだった
 3~5月といえば北半球では春だが、注目したいのは平均気温との格差だ。突出した異常気象は時々起きており、地上温度が90℃を超えるような高温も過去には報道されている。問題は、平均気温の上昇であり、地球温暖化の象徴ともいえる。
 つい最近も、埼玉県鳩山町で記録的な雨が降り、6時間で観測史上第1位となる降水量を記録している。例年の7月に降る2倍の雨に相当する。今年は梅雨明けが早く6月から7月にかけて日本を猛暑が襲ったが、世界の異常気象も目立っており、スペインでは45℃を超え、昨年記録した史上最高気温の47.4℃を超す勢いだ。英国でも史上初めて40℃超えを記録し、アメリカでも歴史的な高温が至るところで起きている。
 ちなみに過去の異常気象では、2020年6月20日にロシア・サハ共和国ベルホヤンスクで、シベリアにもかかわらず38℃の最高気温を記録し、北極圏の観測史上で最高気温を記録している。永久凍土は解け、山火事が頻発する状況だ(日本経済新聞夕刊、2021年12月15日)。同じく、2021年8月11日にはイタリアのシチリア島南部のフロリディアで48.8℃を記録している。欧州史上最高気温だが、今年の夏本番にはこの記録も更新される可能性がある(日経新聞夕刊、2021年8月12日)。
 「平均気温+2℃」で、人類は後戻りできないレベルに?
今年の2月28日に公表された、国連の「気候変動に関する政府間パネルIPCC)」の報告書は、今後の地球温暖化への対応策の指針となるだけに、世界中の政府に注目された。気候変動による影響が細かく記載され、今後はIPCCのシナリオに沿って気候変動と立ち向かう必要が迫られた。
 IPCCの報告書は今回で第6次になる。「産業革命前に比べて平均気温が『2度』上昇すれば、今世紀末までに8億人から30億人が深刻な影響を受ける」とシミュレーションしたことで話題になったが、食糧生産や生物の存続に至るまで、その影響は深刻なものと報道された。世界の専門家集団であり、ノーベル平和賞も受賞している。たとえば、2050年ごろまでに起こる現象を、同報告書では具体的に次のように警告している。
1.今後20年以内に世界の平均気温は1.5度上昇する
2.温暖化による海面上昇によって10億人以上に洪水リスクが発生する
3.気候変動によって農業や企業の収入源で最大8000万人が飢餓に苦しむことになる
 同報告書では、さらに2100年までに5つの温度上昇シナリオを想定しており、それぞれの状況に応じた気温上昇を想定している。たとえば、次のようなシナリオが想定されている(経済産業省資料より作成)。
① 1.4℃(目標は1.5℃)……2050年ごろまでに温暖化ガスの排出をゼロにした場合
② 1.8℃……2050年以降に温暖化排出ガスを実質ゼロにできた場合
③ 2.7℃……各国がCO2排出目標を達成した場合、2.7℃は最良推定値
④ 3.6℃……気候変動政策を導入しない場合
⑤ 4.4℃……化石燃料に依存し続けた場合
 2021年11月にイギリスで開催された「COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)」では、「世界の気温上昇を1.5℃以内に抑える努力をする」と確認している。各国とも、地球温暖化対策=CO2削減に取り組むと約束したわけだが、現実には今後20年で「1.5℃」の気温上昇は避けられそうもない。しかも、「温室効果ガスを2030年に2010年比45%削減」というCOP26=グラスゴー気候合意の目標を守れる国が本当にあるのか、かなり疑問だ。2030年といえば、あと8年しか時間は残されていない。
 「温室効果ガスを2030年に2010年比45%削減」とは、日本を含む先進国が次の改革を実行する必要がある。今の状況では、実現可能とは到底思えない(IEA=国際エネルギー機関が発表したロードマップより)。
●2030年までにCO2の回収や貯留ができない石炭火力発電所を段階的に廃止する
2035年までに電力部門のCO2排出を実質ゼロにする
2035年までに内燃機関自動車の新規販売を終了する
 温暖化は急進行
 さらに問題なのは、IPCC報告書をはるかに上回る速度で地球温暖化が進みつつあることだ。気候変動の象徴ともいわれる「平均海面上昇」は2300年の時点で「低いシナリオ」で「0.5~3.0m」、「非常に高いシナリオ」では「2~7m」とされている。2300年の話が2022年に住んでいるわれわれに届くのかといえば、答えは「ノー」だろう。IPCCの報告書がいまひとつピンと来ない理由の1つになっているとも言える。
 実際に、世界は頻繁に高温、多雨、干ばつといった異常気象に襲われ続けており、すでに水害により移住を余儀なくされた住民は、2020年でも約2800万人に達し、西太平洋では8つの島が水没したと言われている(日本経済新聞朝刊、2022年3月1日)。国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)は、「2050年には世界で20億人が洪水の危機にさらされる」と、18年も前の2004年6月には警告している。
 また、同報告書ではシナリオの③や④の2℃から3℃台の気温上昇で、最大12兆7000億ドルの資産が洪水によって被害を受けるとシミュレーションしている。さらに最大30億人が慢性的な水不足を経験すると指摘。もっとも、2100年の「気温シナリオ」にどれだけの説得力があるのかも不透明だ。
 そもそもこの報告書そのものが「現実を過小評価しているのではないか」「現実をよりシビアに表現することを避けているのではないか」という指摘まで出ている。IPCCは、気候変動について最新の科学的知見を評価する政府間組織だが、地球温暖化について今回はじめて「疑う余地がない」と断定したが、そこに至るまでに相当の時間を要している。
 こうした異常気象は政治家にも大きなプレッシャーを与えるはずだが、ドナルド・トランプアメリカ大統領のように地球温暖化を軽く見る政治家も少なくない。ロシアのプーチン大統領地球温暖化を真剣に考えているとは到底思えない。ブラジルのボルソナーロ大統領も、地球の肺といわれるアマゾンの緑地を守ろうという意識はなさそうだ。こうした政治指導者には、2050年や2100年、まして2300年といったシミュレーションは説得力のない話になってしまう。
 そんな状況の中で、最近指摘され始めたのは地球温暖化によって食糧生産が被害を受け、全地球の人口の食糧を賄えなくなるのではないか、という懸念だ。地球の人口が80億人を超え、まもなくインドが中国を超えて世界最大の人口になると見られている中、中国やインドが、食料を自前で調達できるのかと言えば、それはやや疑問と言って良いだろう。インドは、小麦の生産ランキングで世界第1位の中国に次いで第2位だが、今年の5月にはウクライナ情勢や自国の気候変動などを理由に、小麦の輸出を禁止している。
 個人が節電、省エネしてもCO2は削減できない?
 食糧不足問題は、すでにアフリカや中近東などでは現実のものとなっているが、ロシアによるウクライナ侵攻によって、いまある危機に様変わりしてしまった。IPCCのシナリオでは、2050年までに800万~8000万人が苦しむことになるとしているものの、この数字には疑問を持たざるをえない。
 そもそも世界の飢餓人口は、国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2020年のデータで7億2000万~8億1100万人と推計されている。前年の2019年に比べて1億1800万人と急増しており、2030年には6億6000万人が飢餓に直面していると予測している。
 中国やインド、ロシアは、これまで二酸化炭素を大量に排出してきたG7など先進国の責任を追及しており、さらに世界中の政治家が気候変動対策に邁進しない理由には、エネルギー関連業界や代替エネルギーを導入するだけの資金がない企業や業界の反対があるからだ。その結果として、IPCC報告書のように客観性を重んじるあまり、CO2削減へのメッセージ性が薄らいでしまっている。
 そもそも個人レベルの節電や温暖化対策で、ほんとうに地球温高化をストップできるのか。そのあたりの検証が不十分だ。個人レベルではなく、政治家がリーダーシップを発揮して大量のCO2排出企業に改善命令を出せるような状況にならないと、いまや地球温暖化対策は機能しないのではないか……。
 2020年10月に、当時の菅義偉首相は「2050年カーボンニュートラル宣言」を行っている。2050年までに温室効果ガス排出をゼロにしようという野心的な発言だ。しかし、この取り組みも家庭や個人の省エネ意識に訴えるものが多く、本質的には実行可能なのか不透明だ。
 そもそも日本では、温室効果ガスの排出の50%を占めているのは「超大口130事業所」だというデータがある。超大口というのは、碧南火力発電所などの火力発電所JFEスチール、日本製鉄などの大手製鉄所が、上位を独占している。こういう企業に対して、政府主導でCO2排出をゼロにさせなければ地球温暖化はストップできないはずだ。
 日本の温室効果ガス排出量の内訳は次の通り(気候ネットワーク、2021「日本の大口排出源の温暖化ガス排出の実態 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度による2017年度データ分析」より)。家庭や車などの存在がいかに小さいかがわかるはずだ。
●超大口130事業所……50.1%
●大口248事業所・18運輸事業所……9.9%
●その他大口15000事業所・500運輸事業所……12.9%
●中小企業・家庭・車など……27.1%
 戦争はCO2削減にプラス、マイナス?
 一方、地政学リスクの高まりでロシアからのLPGガス輸入がストップするなど、世界はエネルギー危機に見舞われている。石油やガスの代替エネルギーとして、大量のCO2を排出する石炭火力発電所が稼働されるなど、少なくとも一時的にはCO2削減にはブレーキがかかりそうだ。
 とはいえ、火力発電所と並んでエネルギー効率の高い原発の再稼働が検討されており、原発のリスクなどを度外視すればCO2削減にはプラスの要因ともいえる。かつての冷戦時代も、経済成長にブレーキがかかったために、温室化効果ガスの排出はセーブされたと言われている。戦争のおかげ、というよりも、経済成長至上主義を改めない限り、人類が気候変動に勝つ方法は少ないのかもしれない。
 結論を言えば、われわれ先進国に住む人間が快適な暮らしを続ける限り、地球温暖化を止めることはできない。アメリカ式の3カ月ごとに企業の成長度合いを開示させる成長至上主義は、地球温暖化にとっては最大の敵なのかもしれない。経済成長をどこかで止めなければ、地球や人類にとって明るい未来は描きにくい。」
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