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日本民族の古典的災害対策「津波てんでんこ」と現代日本の「正常性バイアス・同調性バイアス」。
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現代日本人の同調圧力。
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2024年10月13日 YAHOO!JAPANニュース マイナビ子育て「「南海トラフ地震」特別な注意の呼びかけが終了しても「深刻度は変わらない」。いちばん怖いのは「自分は大丈夫」という思い込み!
防災科学技術研究所総合防災情報センター長の臼田裕一郎さん(撮影:瀬尾直道)
2024年、元日に能登半島地震が発生したことを皮切りに、日本は自然災害の脅威に否応なく向き合わされました。
【画像】生死を分ける「発生後8秒間」の“3つの行動”とは
8月には宮崎県で震度6弱の地震が起こり、気象庁が「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に伴う政府としての特別な注意の呼びかけ」をしたことで、全国に緊張感が走りました。
さらに8月末から9月頭にかけて「史上最強クラス」と報じられた台風10号が直撃し、9月には集中豪雨が地震からの復旧復興に取り組む能登半島地震の被災地を襲いました。
今、私たちに必要な「備え」とは何なのでしょうか? 国立研究開発法人防災科学技術研究所総合防災情報センター長の臼田裕一郎先生に聞きました。
■地震災害の深刻度は変わっていない
――今年、日本は短期間で複数の大きな災害に見舞われています。
臼田裕一郎先生(以下、臼田先生) そうですね。能登半島地震が1月1日に起こったことで、「社会の動きと関係なく、災害は起こる」ことがあらためて認識されました。台風に関しても、「途中でコースが変わって日本を避けて通りすぎてくれるだろう」なんて楽観的に考えたくなったとしても、こちらの希望を聞いてくれないのが災害なんです。
ーー8月の気象庁の呼びかけには、「ついに南海トラフが!?」と身構えましたし、恐怖を覚えました。
臼田先生 びっくりしますよね。でも実は、このように特別な呼びかけがされてもされなくても、南海トラフ地震の深刻度自体はもともと大きいことに変わりはないんですよ。
ーー急に深刻化したわけではないということですか?
臼田先生 はい。もともと発生が懸念されている地震なんです。今回の臨時情報はあくまでも、「みなさんちゃんと備えていますよね? あらためて備えを再確認しましょう」という注意のお知らせでした。
ーーそうでしたか!
臼田先生 ひらたく言うと、「このエリアでこの規模の地震が起きたら臨時情報を発信する」という決まりに沿ったものなんですね。臨時情報にもいろいろあって、今回は「注意」でしたが、もうひとつ上のランクには「警戒」というものもあります。そうなると、対応もまた変わってきます。
■必ず持ち歩きたいものとは?
ーーただ、報道直後はみんな焦ったと思いますが、自分も含め、喉元すぎれば熱さ忘れる、といいますか……。
臼田先生 わかります。しかし、一週間が経過して呼びかけ終了となっても、「備えを解除して大丈夫ですよ」ということではありません。いつ発生してもおかしくないという状況は変わらないので、備えは常にしておく必要があるんです。
ーー食料品の備蓄や防災バッグなどですね。実はあれこれ備えておきたくて、リュックが重すぎて背負えないほどパンパンに詰め込んでしまうこともあります(苦笑)。中身の取捨選択はどうすればいいのでしょうか?
臼田先生 これが難しいんです。旅行と同じで、「荷物をたくさん持っていきたい人」と「コンパクトにしたい人」がいると思うのですが、これはそれぞれの安心感によります。たくさん持っていきたい人にとっては、その持ち物全部が必須なんですよね。であれば、そのタイプの人はバッグを大きくするしかないと思います。
ーー臼田さんご自身はいかがですか?
臼田先生 私はこじんまりさせたいタイプで、妻は何でも詰め込みたいタイプ。本当に人によるんです。ひとつポイントを挙げるとすれば、「これを持っていないと自分が辛くなる」と思うものは、自宅用の防災バッグよりも、むしろいつでも持ち歩いていたほうがいい、ということ。いつどこで被災するかは、誰にもわからないからです。
ーー常に持ち歩いたほうがいいものというと、たとえば……コンタクトレンズなどですか?
臼田先生 そうです、持病の薬や携帯トイレなど「1日でもこれがないと困る」というものですね。私の場合はモバイルバッテリーです。通信ができないと不安でたまらないし、仕事にもならないので、いつも複数持ち歩くようにしています。
■“我が家の場合”を想定しておくこと
ーー「いざ避難」となるとき、警戒レベルは1~5まで設定されていますね。1「災害への心構えを高める」、2「避難行動の確認」、3「高齢者等は避難」、4「全員避難」で、5「命を守るための行動」とあります。「じゃあ警戒レベル4になったら避難所へ行くのがいいのかな?」と思ってしまいますが。
臼田先生 それは人それぞれなんです。どのレベルのときに自分が避難すべきか、自分が置かれた状況などに応じて選択することが重要です。たとえば、健康な大人1名ならレベル4で避難すればいいけれど、「足を怪我している」「高齢者と一緒に住んでいる」「雨が降ったら水が溜まりやすい場所にいる」ケースなど、レベル3で避難したほうがいい場合もあります。
自分の住む場所ではどうなのか、自分たち家族の場合はどうなのか、正解はひとつではないので、それぞれ自ら考えておいてほしいです。
ーーどの段階でどこへ避難すべきか、あらかじめ調べて知っておくことが大切ですね。
臼田先生 ひとつ、見習うべき事例を紹介しましょう。私もこれを聞いて「へええ」と唸ったのですが、とある地方の集落に、独自の避難基準があるんです。それは「雨が降り始めたら、180mlが入る日本酒の空カップを屋外に置き、雨水が1時間で2センチ溜まったら区長に連絡する」というルールです。それを受けて、区長は区民に「警戒を開始」と呼びかけます。そのうえで、「◯◯橋のこの位置まで川の水位が上がった」ら、避難指示が出ていなくても集落全員が「避難を開始」と決めているのです。
ーーこれまでの経験で培ったその土地ならではのルールがあるのですね。
臼田先生 「行政からの避難指示」だけではなく、自分たちで考えて決めることがいちばん重要なんですよ。
■地震発生確率が低いとされている土地でも、大地震が来た
ーーしかし一方で、私たちは「自分の家は大丈夫だろう」といったように、事態をつい楽観視してしまう“正常性バイアス”を持っています。これにとらわれていると、避難のタイミングを逸してしまう恐ろしさがありますよね。
臼田先生 おっしゃるとおりで、万一に備えて逃げる訓練を常々しておくことが大事です。東日本大震災以降、海沿いの自治体は津波を想定した避難訓練を徹底してやるようになりましたが、徐々に「津波なんてそんなに来ないだろうし、もうやらなくていいのでは」という声も出てきました。
ただ、お正月の能登半島地震の際に聞いた話なのですが、そうしたムードが漂っても流されずに「海沿いに住む者の宿命として、ちゃんと避難訓練はやろう」と言い続けてくれた人がいたそうなんです。そのおかげで今回、能登では津波による直接の被害を受けた人が非常に少なかった。何十年に一回の確率だといわれていたとしても、訓練を継続することが重要なのです。
ーー「めったに来ないから訓練しなくていい」と思っていると、いざ来たときに対応できませんよね。大人になると学生時代よりも避難訓練の機会は減りますし、いざというときにパニックになってしまいそうです。
臼田先生 日本は、どこでも災害が起こりえます。被災地の報道を見聞きするとき、「これがそのまま、自分の身の回りで起こったらどうなるんだろう」と、常に想像してほしいと思います。
ちなみに、国が「全国地震動予測地図」を公表していますが、それによると能登半島は地震で大きく揺れる確率が比較的低かった。にもかかわらず大きな地震が起きました。一方で、関東は能登よりも確率が高いと示されています。とても楽観視はできません。
ーー1997年に阪神・淡路大震災があった兵庫県も、地震が少ない土地だそうですね。
臼田先生 地震発生確率をはじめ災害の発生可能性(ハザード)に関するマップは「これまで調べてわかったこと」だけが描かれています。わかっていないことやまだ調査していないことは描かれていないので、「描かれていない=安全な土地」ではないのです。「日本はどこにいても地震が起こる」と思っておいたほうがいいですね。「必ず起こる」と思っておけば準備もできるし、心構えもできるのではないでしょうか。
■防災バッグにぬいぐるみが必要なこともある
ーーそんな心構えのスタートラインとして私たちができることは、防災グッズを揃えるほかにもありますか?
臼田先生 是非、実際の状況をシミュレーションしてみていただきたいと思います。私はスマホやPCで避難体験ができるコンテンツ『スマホ避難シミュレーション』を監修しているのですが、災害発生から避難時までクイズに答えて行動しながら進んでいくので、イメージしやすいのではないでしょうか。
たとえば「地震のあとに、近所で火事が起きている。どうする?」「SNSで、町が水没しているという不自然な画像が投稿されていた。こんなときはどうする?」といったクイズがあります。
ーー絵柄がかわいらしく、親子で一緒に体験してみると良さそうですね。
臼田先生 是非親子で取り組んでいただきたいです。それをきっかけに、我が家の防災について家族で話し合うのもいいと思います。
ーー子どもと一緒に避難する場合は、防災バッグに追加した方がいい物も多いですよね。赤ちゃんの場合は液体ミルクや離乳食、紙オムツ、おしりふきなどでしょうか。もう少し年齢があがると……。
臼田先生 ぬいぐるみやおもちゃなど、一見必要なさそうに思えるものでも、「一緒にいると安心できる」というグッズは大切です。防災バッグは家族の人数分用意して、お子さん用の防災バッグにはその子にとって必要なものを一緒に選びながら入れるといいですね。また、子どもの成長に伴って必要なものは変わりますから、衣替えや年度変わりの時期に、中身を一緒に確認するといいでしょう。いざというときにしっかり行動できるように、意識しておきたいですね。
臼田裕一郎さん
防災科学技術研究所総合防災情報センター長。1973年長野県生まれ。1997年慶應義塾大学環境情報学部卒。1999年慶大大学院政策・メディア研究科修士課程修了。2001年慶大大学院特別研究助手を務める傍ら博士課程に入り2004年修了。2006年防災科学技術研究所に入所し、2016年から現職。2019年AI防災協議会常務理事(現在は理事長)、2020年筑波大学理工情報生命学術院教授(協働大学院)を兼務。ITを駆使して災害情報を「見える化」し、迅速かつ的確な災害支援につなげる研究をしている。
(撮影:瀬尾直道 取材・文:有山千春)
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日本列島とは、春夏秋冬、季節に関係なく、広範囲に同時多発的に頻発する複合災害多発地帯である。
日本の自然は、数万年前の旧石器時代・縄文時代から日本列島に住む生物・人間を何度も死滅・絶滅・消滅させる為に世にも恐ろしい災厄・災害を起こしていた。
日本民族は、自然の猛威に耐え、地獄の様な環境の中を、家族や知人さえも誰も助けずに身一つ、自分一人で逃げ回って生きてきた、それ故に祖先を神(氏神)とする人神信仰を受け継いで来た。
日本人は生き残る為に個人主義であり、日本社会は皆で生きていく為に集団主義である。
日本の宗教・文化・言語は、こうして創られてきた。
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日本民族の人間性である価値観・人格・気質を作り出したのは、人間(他国・異民族・異教徒)の脅威ではなかったし、唯一絶対神(全智全能の創り主)の奇蹟と恩寵ではなく、自然の脅威と恩恵(和食)である。
つまり、日本人と朝鮮人・中国人は違うのである。
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コンサルタントコラム
「津波てんでんこ」を正しく理解しよう~災害に強い組織づくりへの第一歩~
所属 リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ
役職名 コンサルタント
執筆者名 加藤 真由 Mayu Kato
自然災害
2023年6月2日
「津波てんでんこ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「津波てんでんこ」とは、「津波が来たら、いち早く各自てんでんばらばらに高台に逃げろ」(岩手県HPより)という津波襲来時の避難に関する三陸地方の言い伝えである。2011年3月に発生した東日本大震災にて、従来から津波防災教育を受けていた岩手県釜石市の小中学生が、この「津波てんでんこ」の教えを実践した。これにより、多くの命が助かった事例は「釜石の奇跡」として大々的にメディアに取り上げられた。その一方で、「津波てんでんこ」は、その注目度の高さ故、言葉がひとり歩きした結果、「自分だけが助かればよい」という意味で誤解され、「利己的で薄情である」と批判された事例も見受けられる。津波被害から身を守り、災害に強い組織づくりをするためにも、まず「津波てんでんこ」という言葉の意味を正しく理解する必要がある。
京都大学の矢守克也教授は、「津波てんでんこ」は4つの意味・機能を多面的に織り込んだ重層的な用語であることを述べている(2012年)。
1つ目は、「自助原則の強調」である。「自分の命は自分で守る」という考え方は重要だとされている。しかし、単純に津波避難における「自助」の重要性にとどまるものではなく、自己責任の原則だけを強調するものではないことに注意が必要である。
2つ目は、「他者避難の促進」である。避難する姿が目撃者にとっての避難のきっかけとなり、結果的に他者の避難行動を促す仕掛けとなる。
3つ目は、「相互信頼の事前醸成」である。「津波襲来時はお互いに"てんでんこ"する。」という行動を、事前に周囲の他者と約束する。この信頼関係が共有されていれば、「てんでんこ」の有効性が飛躍的に向上する。
4つ目は、「生存者の自責感の低減」である。被災時には、津波で命を落とした他者に対して自責的感情に苛まれやすい。しかし、事前に他者と「てんでんこ」を約束しておくことで、「亡くなった人も"てんでんこ"した(しようとした)にも関わらず、それも及ばず犠牲になった」と考え、生存者の自責的感情を低減する可能性がある。
この4つの意味・機能より、「津波てんでんこ」という言葉には、自助だけでなく、共助の重要性を強調する要素が含まれている。加えて、一刻を争う津波避難時の行動原則だけでなく、事前の社会のあり方や事後の人の心の回復等にも大きな意味を持つものである。
東洋大学の及川康教授は、「津波てんでんこ」という言葉に対する考えを認識度別に調査した。その結果、「津波てんでんこ」に対する真の理解を得るためには、一義的・表面的な原義を提示するのみでは不十分で、適切な解説・解釈がなされる必要があることを示唆した(2017年)。
「津波てんでんこ」という1つの言葉から学ぶべきことは非常に多い。災害に強い組織を作るためにも、東日本大震災をはじめとした過去の災害を振り返り、1つの言葉をテーマに皆さんで深い議論を重ねてみてはどうだろうか。
以上
(2023年5月25日 三友新聞掲載記事を転載)
古川 崚仁 Ryoto Furukawa
氏名 加藤 真由 Mayu Kato
役職 リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ コンサルタント
専門領域 自然災害リスク/カーボンニュートラル/スポーツ・リスクマネジメント/イベント・リスクマネジメント/施設等(指定管理者)の安全管理
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日本赤十字社
知ってほしい! 避難の妨げになる「正常性バイアス・同調性バイアス」
ACTION!防災・減災ー命のために今うごくー
2021年9月号
9月1日は防災の日。そして8月30日から9月5日までは国の定めた防災週間です。日本赤十字社はこれらに合わせて、災害時に働く2つの心理について、啓発キャンペーンを展開します。「災害時、ある心の働きが避難を遅らせる」…誰にでも起こり得る災害時の課題を一緒に乗り越えましょう。
まずは簡単な診断テストに答えてください。
Q. 職場や学校、外出先で非常ベルが鳴っているのを聞いた時、あなたはどうしましたか?
A.
(1)点検だと思って何もしなかった
(2)皆が避難していないので、大丈夫だと思った
(3)煙が出ていないし、大丈夫だと思った
(4)安全な場所に避難した
これは、簡単にできる「正常性バイアス」と「同調性バイアス」の診断方法です。
この中でバイアス(先入観・偏見)がないのは(4)のみ。(1)〜(3)には下記のバイアスがあります。
「これくらいなら大丈夫」 正常性バイアス
上の質問で回答(1)は「非常ベル」=「点検」という過去の先入観から自分にとって危険な状況と認識できない正常性バイアスが働いています。また、(3)は「非常ベル」=「火事」=「煙が見える」という固定観念から、火事以外の危険の可能性があることを認識しない正常性バイアスが働いています。正常性バイアスは、異常なことが起こった時に「大したことじゃない」と落ち着こうとする心の安定機能のようなもの。日常生活では、不安や心配を減らす役割があります。しかし、緊急事態では逃げ遅れなど、危険に巻き込まれる原因にもなります。
「皆と一緒だから大丈夫」 同調性バイアス
上記の回答(2)は非常ベルが鳴って危機的状況が知らされているにもかかわらず、周囲の人の行動に合わせる同調性バイアスが働いています。同調性バイアスは、集団の中にいるとついつい他人と同じ行動をとってしまう心理で、日常生活では協調性につながります。しかし、災害時には周囲の人の様子をうかがっているうちに避難が遅れる原因にもなります。その反対に周囲に率先して避難する人がいれば、より多くの人を避難に導くことも可能です。
災害時に働くこの2つの心理を知っておくことが、逃げ遅れを防ぎます。
●キャンペーン監修者インタビュー●
常tokusyu_komoto.jpg葉大学 大学院 環境防災研究科
准教授 河本 尋子 さん
「私の専門は災害心理学で、地震などの災害時に人間がどのような心理になり、どう行動するかを研究テーマにしています。
2011年の東日本大震災発生から3年後に、被災された方々へのインタビュー調査を行い、大津波発生時の心理や行動についてお話をうかがいました。その際に、地震発生後に海の様子を見に行った男性が、沖合から津波が迫ってくるのを目撃し、慌てて自転車で内陸に逃げながら『津波が来る!今すぐ逃げろ!』と大声で呼び掛けたにもかかわらず、多くの住民は聞く耳を持たない、中には『うるさい』などと言い返された、という体験談を聞きました。
あれほどの大津波は予測できなかったので、それは仕方のない反応だったのかもしれません。でも一方で、地震の後にすぐ高台に避難した住民の方々や、上司のひと声で工場の全員が避難した事例など、素早い避難行動で助かったという体験談もありました。
さきほどの自転車の体験談は『正常性バイアス』の事例の一つです。この『正常性バイアス』は、さまざまな災害の場面でみられ、東日本大震災だけでなく、水害などのように、少しずつ状況が変化して徐々に危険度が増していくような災害でよく見られます。危険が迫るなか、『まだ大丈夫』となかなか避難せず、逃げ遅れてしまうことがあります。
もう一つの『同調性バイアス』も含めて、大切なことは、こういった心理が働き、今の自分は危機を認識できていないかもしれない、避難が遅れているのかもしれないという意識を持つことです。
人間の深い心理を、今日明日で変えることは難しいので、まずは二つの心理があることを知り、身近なところから少しずつ備えの意識を高めていくことが、防災・減災の総合力強化につながると考えます。」
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tenki.jp
正常性バイアスを知っていますか?「自分は大丈夫」と思い込む、脳の危険なメカニズム
Mika YamamotoMika Yamamoto
2015年04月18日トピックス
正常性バイアスを知っていますか?「自分は大丈夫」と思い込む、脳の危険なメカニズム
様々な要素で構成される人間心理(psychology)……。そのメカニズムは深奥です
4月に入り、転勤や入学などで初めての出来事や変化に緊張したり、戸惑っている人はいませんか?
人間には些事に翻弄されないよう、自然と心の平穏を保つ働きが備わっているので、日常生活で問題に直面したときにも、それなりに対応できるチカラを有しています。
ところが、大災害など未経験の事態に遭遇した場合、この働きが過剰反応し、脳が処理できなくなることがあります。
これを「正常性バイアス」と言いますが、最近、話題に上ることの多い“この心理”が危ないのです!
ポイント解説へ
「正常性バイアス」とは?
逃げ遅れの心理「正常性バイアス」の恐ろしさ
ほとんどの人が緊急時に茫然! では、どうしたらいい?
最後は狼に食べられてしまう、イソップ物語『羊飼いと狼』
「正常性バイアス」とは?
「正常性バイアス(normalcy bias)」は、心理学の用語です。社会心理学や災害心理学だけでなく、医療用語としても使われます。
人間が予期しない事態に対峙したとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働き(メカニズム)を指します。
何か起こるたびに反応していると精神的に疲れてしまうので、人間にはそのようなストレスを回避するために自然と“脳”が働き、“心”の平安を守る作用が備わっています。ところが、この防御作用ともいえる「正常性バイアス」が度を越すと、事は深刻な状況に……。
つまり、一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、“脳”の防御作用(=正常性バイアス)によってその認識が妨げられ、結果、生命の危険にさらされる状況を招きかねないのです。
逃げ遅れの心理「正常性バイアス」の恐ろしさ
甚大な被害を出した東日本大震災では、「大地震の混乱もあり、すぐに避難できなかった」「あれほど巨大な津波が来るとは想像できなかった」と思った人がたくさんいらしたことが、のちの報道によって明らかになりました。
そう話していた人々が住む地域には、大型防潮堤等の水防施設が設置されていた……、また10m超の津波を経験した人がいなかった……などの様々な要因があり、迅速な避難行動が取れなかったことも事実です。よって、一概に「いち早く行動を取れるか」「危険に鈍感になっていないか」を明確に線引きできない部分もありますが、緊急事態下で的確な行動を取れるか否かの明暗を分けうる「正常性バイアス」の働きを、過去の災害が示唆する教訓として、私たちは理解しておきたいものです。
また、御嶽山の噴火の際にも同じような心理が働いていた可能性があります。
火山の噴火という危険な状態に接しても、「大丈夫だろう」(=正常性バイアスの働き)と、立ち上る噴煙を撮影していたため、避難が遅れた人も少なくないといわれています。
災害の報道をテレビで見ている多くの人は冷静であるがゆえ、「撮影している時間があれば逃げられたのでは?」と考えがちですが、災害に直面した当事者にしかわからない「正常性バイアス」は予想外の大きなチカラで人々の行動を制限します。
そのため過去の事例からも、地震、洪水、火災などに直面した際、自分の身を守るために迅速に行動できる人は、“驚くほど少ない”ことが明らかになっています。
ほとんどの人が緊急時に茫然! では、どうしたらいい?
それでは、いざというとき、私たちはいったいどうしたらいいのでしょうか。
突発的な災害や事故に遭った場合、事態の状況をとっさに判断できず、茫然としてしまう人がほとんどと言われています。
「緊急地震速報の報道におびえて動けなかった」「非常ベルの音で凍りついてしまった」という話をよく聞きますよね。
こういうときこそ必要なのが、「落ち着いて行動すること」。
そのために有効なのが「訓練」です。
訓練を重ねることで、いざというとき、自然にいつもと同じ行動をとることができる、つまり、訓練と同じ行動をとることで身を守れる、というわけです。
非常事態の際に「正常性バイアス」に脳を支配されないよう、本当に危険なのか、何をしたらいいかを見極める判断力を養っておきましょう。
最後は狼に食べられてしまう、イソップ物語『羊飼いと狼』
ここまで読まれた方は、イソップ物語の『羊飼いと狼』を思い出しませんか?
羊飼いの少年に何度も「狼が来た」と言われて惑わされた村人は、いつしか「またか」と対応しなくなり、ついには本当の非常事態だということがわからなくなって、羊は狼に食べられてしまいます。
物語の本来の目的は「うそをついてはいけない」ことを子どもに伝える童話なのですが、裏を返せば、村人の「正常性バイアス」の働きをうまく突いた、“戒め”のように聞こえなくもありません。
数々の災害や事故などによっていくつもの「想定外」が生まれ、「想定内」にする努力がなされていますが、いまだに「想定外」が出現し続けている昨今。
私たちの心の在り方そのものが、さらなる災害を生みだすことのないよう、日頃から日常と非日常の切り替えに翻弄されず、冷静に対応することが求められています。
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ライター
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航空会社勤務を経て、フリーライターに。 好きなものは80年代の洋楽、オペラ、絵本、パンダ、ねこ! ミヌエットの「きなこ」に癒されつつ、食欲旺盛な彼女のダイエットに励んでいる日々。
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PRESIDENT Online「なぜ人は「自分だけは大丈夫」と考えたがるのか…自分に悪いことが起こる確率を過小評価してしまう深い理由
極端な不安やストレスから自分を守る働き
知人が事故や病気など不幸な出来事にあったと聞いたときに「周りには起こるかもしれないけれど、自分は大丈夫」と思ったことはありませんか。人が自分に不運な出来事が起こる確率を過小評価することを「楽観性バイアス」と言います。こうした「自分だけは大丈夫」「なんとかなるだろう」といった思い込みは、ときにリスク評価を誤る恐れもあるので注意が必要です――。
※本稿は、『イラストでサクッとわかる! 認知バイアス』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
自分に都合よく解釈してしまう認知バイアス
日常生活の中では、誰もが無意識のうちに直感や経験、先入観、願望などに囚われています。その結果、合理的でない選択や判断を下していたりします。
心理学ではこれを「認知バイアス」と言い、こうした思い込みや思考の偏りに誰もが縛られているのです。
認知バイアスは日常生活のあらゆる場面に潜んでいて、科学的に実証されているものは200種類以上あるとも言われています。
記憶や選択、信念、因果、真偽などに関連する場合に認知バイアスは生じやすいのですが、非合理的な判断をしてしまった結果、「あのとき、他の方法を選べばよかった」「なぜ判断を間違えてしまったのか」と後悔することもあります。
認知バイアスで陥りがちな失敗の一つに、リスク評価を誤るというものがあります。物事のリスクを客観的ではなく、自分に都合よく解釈して、リスクを小さく見積もってしまうわけです。
本稿では、リスク評価を間違えてしまう3つの認知バイアスを紹介します。
自分に不運な出来事が起こる確率を過小評価
同年代の知人が大きな事故に遭ったと聞けば、「大変だな」と思う人は多いでしょうが、「自分も大事故に遭うかも」と考える人は少ないのではないでしょうか?
人は、自分に不運な出来事(犯罪、病気、災害)が起こる確率を過小評価し、幸運な出来事が起こる確率は過大評価します。つまり人は、不幸な話を聞いても、「周りには起こるかもしれないけれど、自分は大丈夫」と捉える傾向があります。このように、ものごとを楽観的に解釈することを「楽観性バイアス」と言います。
楽観性バイアスは、独立や起業、開発など、新しいことを始めるときには必要だと言われています。そうしたときにリスクを細かく考えていると、いつまでも前に進めません。
いざ決断するときには、「なんとかなるさ」というこのバイアスがうまく作用することが重要だと考えられます。
楽観性バイアスは、性別や国籍を問わず人間に本質的に備わっており、多くの人に見られるとされています。過度の楽観は疾患を見逃すなどの危険性があり注意が必要ですが、その一方、ポジティブな結果を期待することで、ストレスや不安が軽減したり、健康的な生活や行動が促進されたりします。実際に楽観性バイアスの欠如は、うつ病などの心身の疾患とも関係することが指摘されています。
仕事の合間に手を頭の後ろで組んで椅子にもたれかかってリラックスする男性写真=iStock.com/BartekSzewczyk
「楽観性バイアス」は、心理学者シェリー・テイラーが提唱する「ポジティブ・イリュージョン」の1つです。イリュージョンとは「幻想」のことです。彼女は、このバイアスがあることで、人が社会に適応することができ、心身の健康維持や促進に大きく貢献していると主張しました。ポジティブ・イリュージョンにはほかに、自分は平均よりも優れていると考える「平均以上効果」や、外界の現象をコントロールできると考える「コントロールの錯覚」といった認知バイアスなどもあります。
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ウィキペディア
正常性バイアス(英: Normalcy bias)とは、認知バイアスの一種。社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりするという認知の特性のこと。
自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい[2]、都合の悪い情報を無視したり、「前例がない」「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。
概要
人間の心は、予期せぬ出来事に対して、ある程度「鈍感」にできている[6]。日々の生活の中で生じる予期せぬ変化や新しい事象に、心が過剰に反応して疲弊しないために必要なはたらきで、ある程度の限界までは、正常の範囲として処理する心のメカニズムが備わっていると考えられる。
古い防災の常識では、災害に直面した人々の多くは、たやすくパニックに陥ってしまうものと信じられており、災害に関する情報を群衆にありのまま伝えて避難を急かすようなことは、かえって避難や救助の妨げになると考えられてきた。ところが後世の研究では、実際にパニックが起こるのは希なケースであるとされ、その状況が前例から外れることはないと思い込むため、逃げ遅れの原因となる。むしろ災害に直面した人々がただちに避難行動を取ろうとしない原因の一つとして、正常性バイアスなどの心の作用が注目されている。
具体的な例
大邱地下鉄放火事件
2003年2月18日に、韓国の大邱市で起こった地下鉄火災。多くの乗客が煙が充満する車内の中で口や鼻を押さえながらも、座席に座ったまま逃げずに留まっている様子が乗客によって撮影されており、正常性バイアスが乗客たちの行動に影響したという指摘もある。「被害はたいしたことがないのでその場に留まるように」という旨の車内放送が流れたという証言もあり、こうした対処が正常性バイアスを助長した可能性もある。この火災は当時において、世界の地下鉄火災史上で2番目となる198人以上の死者を出した。
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
津波避難をめぐる課題として、警報が出ているのを知りながら避難しない人たちがいることが指摘されていた。実際に、地震発生直後のビッグデータによる人々の動線解析で、ある地域では地震直後にはほとんど動きがなく、多くの人々が実際に津波を目撃してから初めて避難行動に移り、結果、避難に遅れが生じたことが解明された。
例えば海岸から5キロメートル離れた石巻市立大川小学校で、生徒74名と教師10名およびスクールバスの運転手が、避難先の決定を誤るなどして河川を遡上してきた津波に飲み込まれて死亡したケースでは、正常性バイアスによる根拠のない楽観的思考が対応を遅らせた可能性が指摘されている。
2014年の御嶽山噴火
御嶽山の噴火で登山者58人が噴石や噴煙に巻き込まれて死亡した。死亡者の多くが噴火後も火口付近にとどまり噴火の様子を写真撮影していたことがわかっており、携帯電話を手に持ったままの死体や、噴火から4分後に撮影した記録が残るカメラもあった。彼らが正常性バイアスの影響下にあり、「自分は大丈夫」と思っていた可能性が指摘されている。
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