🏗2〗ー23ー弱った地方を食い物にする過疎ビジネス。令和6年~No.24 

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 良い日本人は2割、悪い日本人は3割、気にはするが行動しない煮え切らない日本人は5割。
 バブル経済の1980年代を境にして、日本は寛容な古き良き社会から不寛容な弱肉強食社会に変貌し、日本人は弱者に過酷な日本人に変わってきた。
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 2024年2月15日 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「弱った地方に食い物にする「過疎ビジネス」と、そこにすがる自治体が陥ったガバナンス不全
 福島県国見町が公募を開始する前から受注製造がはじまっていた救急車(写真/河北新報
 財政難や人材不足にあえぐ小さな自治体が、官民連携の名の下に協力姿勢を示した企業に施策を丸投げした挙げ句、公金を食い物にされた――。
 【図で見る】ふるさと納税で寄付をした企業に事業が還流するスキーム
 その責任は誰が負うのか。「提案」した企業か、それとも「決定」した行政か。
 企業版ふるさと納税をした企業の子会社が、その寄付金を使った自治体の事業を受注していたことで“寄付金還流”の疑惑が持ち上がっている福島県国見町。町議会が2023年10月に設置した調査特別委員会(百条委員会)で、企業と行政が責任の押し付け合いを繰り広げている。
河北新報』記者である筆者は2023年2月から、この不可解な国見町の救急車事業の問題を報道し、東洋経済オンラインでも「弱る自治体をぶんどる『過疎ビジネス』の実態」と「ふるさと納税不正疑惑の自治体が『資料は破棄』」で詳報してきた。
 国見町がやろうとしていた事業は、匿名の3社から企業版ふるさと納税国見町に寄せられた計4億3200万円を財源に、高規格救急車12台を町で所有し、他の自治体などにリースするというものだった。備蓄食品製造のワンテーブル(宮城県)が受託し、救急車ベンチャーのベルリング(東京)が車体製造を担った。匿名で財源を寄付したのは、ベルリングの親会社DMM.comとそのグループ2社だ。
官製談合防止法に抵触か
 百条委は、事業には官製談合の疑いがあるとみて追及を強めている。2024年1月26日にワンテーブルとベルリングの前社長を証人喚問した。
 以下は、百条委と関係者のやりとりだ。
 (百条委)ワンテーブルは何が目的で国見町に救急車事業を提案したのか。
 (ワンテーブル前社長の島田昌幸氏)私に目的などない。地域課題はそれぞれで、主体者は皆さんだ。「案出し」と「決定」は性質が違うと思う。われわれは最良の案を示すが、決めるのは町だ。
 (百条委)ベルリングは国見町用の「参考仕様書」を作成して町に渡したのか。
 (ベルリング前社長の飯野塁氏)入札に至るまで、町と直接やりとりしたことは一切ない。参考仕様書はワンテーブルに提出したが、一般論として自治体に自社の仕様書を提出することは、よくある。それ自体が問題だとは思わない。
 国見町の仕様書にはベルリング製車両の特徴に一致する指定が多数盛り込まれ、中古車2台を含む計12台の救急車を使いやすいように「研究開発」して2023年3月末までに納車するよう求めていた。
 国見町が委託事業者を公募したのは2022年11月。公募から納車までの猶予は4カ月で、通常であればどだい無理なスケジュールだが、これには裏があった。ベルリングは公募の8カ月前にワンテーブルから救急車の発注を受けていたのだ。
 『河北新報』が入手した国見町の内部文書には、車体の室内寸法などを仕様書で細かく指定することで他社を「排除したい」との記述もあった。ワンテーブルが提案した「出来レース」に、町がもろ手で乗っかった形跡が見てとれる。
 国見町とワンテーブルの対応は公正な入札を妨げた疑いがあり、発注者の関与を取り締まる官製談合防止法などに触れる可能性がある。
■責任逃れに終始
 証人喚問でワンテーブル前社長は、ベルリング作成の参考仕様書を国見町に提供した事実を認めたうえで「検討材料として提供しただけだ」と釈明。あくまで「最終的な決定権は町側にある」と繰り返し強調した。
 これに対し、国見町は責任逃れに終始する。
 国見町は2023年3月末に救急車事業を急きょ中止した。引地真町長はその理由について、河北新報が2023年3月21日付で「『行政機能ぶん取る』自治体連携巡りワンテーブル社長発言 録音データで判明」と報じたことで「信頼関係が失われた」からだと説明する。一貫して「町に非はない」とのスタンスを崩さない。
 百条委では、国見町が企業側と交わしたメールや提供資料などの行政文書を片っ端から廃棄していた事実が判明した。2023年12月の証人喚問で事業の担当職員やその上司は「不要と思い消去した」と図ったように口を揃え、たった1年前の町の一大事業なのに「詳しくは記憶にない」という。コンプライアンス意識が根本から崩れ、さながら「限界役場」ともいえるガバナンス不全だ。
 どうしてこうなったのか、問題の根は深い。その病理は、皮肉にも国の「地方創生」の号令を機に進んだのかもしれない。
 2014年に「まち・ひと・しごと創生法」が成立し、国は人口減少や東京一極集中に歯止めをかけようと、すべての自治体に地方版総合戦略の早期策定を求めた。努力義務とはいえ、戦略を策定して国の認可を得れば交付金がもらえる。その結果、自治体職員は慣れない作業を強いられることになった。
 地方自治総合研究所(東京)が2017年に全国の1741市町村を対象に行った調査では、回答を得た1342自治体のうち実に77.3%が地方版総合戦略の策定をコンサルタントに委託していた。外部委託に使える交付金を国がわざわざ用意したことも「外注」を助長した一因とみられる。
 地方創生の取り組みで他自治体が先行すれば「うちはやらなくていいのか」と焦り、安易に追随する。補助金交付金の獲得が目的化し、成功事例の引き回しや民意に添わない施策が横行する。
 2016年に始まった企業版ふるさと納税は、内閣府の地方創生推進事務局が所管する制度だ。国見町の救急車事業も、元はと言えば地方創生の一環だった。
 ワンテーブルは国の制度を巧みに利用して「過疎ビジネス」を仕掛けた。どんなに小さな自治体でも、年間の予算は国からの交付金補助金で数十億円規模になるからだ。
 施策のアウトソーシングを持ちかけ、公金を吸い上げる。大きな自治体は避け、国見町のような手なずけやすい小さな自治体を狙い打ちにした。国見町は自分たちで地域の課題解決を考えることを放棄し、ワンテーブルに全てを丸投げした。
自治体DXはコンサル千載一遇のチャンス
 同様の事例は、形を変えて各地で起きる可能性がある。政府は2021年、地方創生に抱き合わせる形で「デジタル田園都市国家構想」を打ち出し、各種の交付金補助金のメニューを用意した。自治体DXの大潮流が起きた。行政のデジタル化は時代の要請だが、協力する企業は最大利益を合理的に求めるのが常だ。
 2022年度の全国の企業版ふるさと納税の寄付総額は2021年度比で1.5倍増の約341億円。寄付件数は1.7倍の約8400件で、いずれも2016年の制度開始以降で最も多かった。国の2023年度当初予算はデジタル田園都市国家構想関係に4兆2000億円を計上、うち地方創生にひも付けられる交付金は1800億円に上る。
 地方創生や自治体DXを手がけるコンサルやIT企業にとっては千載一遇のチャンスだ。ノウハウの乏しい自治体は、豊富なデータや知見を持つ民間の力を必要としている。
 官民連携を一概に否定するつもりはない。だが、地方創生もデジタルも地域発展の手段であって、それ自体が目的ではない。そして、公金を原資に使う以上は何をするにも確かな民意の裏付けがなければならない。私たちの公金は、一企業が営利のために好き勝手に使っていい代物ではない。
 主体性なき自治体の官民連携には、いずれ大きな落とし穴が待ち受ける。持続可能な地域社会の実現には、住民一人一人が自治の主体として権利と責任を意識し、意思決定に関わる不断の努力が欠かせない。
 人口減少時代の「限界役場」に巣くう過疎ビジネス。誰もが地域課題に無関心な「お任せ民主主義」が続くようでは、先行きは危うい。
 横山勲 :『河北新報』記者
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