🏗2〗ー18ー能登半島地震であわや電源消失。志賀原発・柏崎刈羽原発。令和6年~No.19 

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 日本の自然災害で深刻な問題は、災害被害ではなく、災害復興である。
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 平成30年9月6日 震度7北海道胆振東部地震で大規模な全域停電(ブラックアウト)が起きた。
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 2024年2月11日9:33 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「【志賀原発】「あわや電源消失、福島原発の二の舞の大惨事に...」能登半島地震で「志賀原発で起きたこと」への恐怖と地元で見つかった「新たなる切り札」
 あわや電源消失の事態に
 電力がほぼ復旧した能登半島だが、北陸電力志賀原子力発電所に不信感を抱いた住民は少なくない。なぜなら水位の上昇、油漏れなど発表する情報が二転三転。なにより怖がらせたのは、他地区より揺れの少ない震度5強ながら変圧器が2台損傷し、復旧に半年以上かかること。電源は他ルートで確保できたものの、電源消失なら福島原発並みの大惨事につながっていたかもしれない。
 【マンガ】南海トラフ巨大地震で日本は「衝撃的な有り様」になる…そのヤバすぎる被害
 志賀原発は1,2号機とも'11年から運転停止中。再稼働を目指して準備を重ねていたが、推進派だった稲岡健太郎町長は、地震を経て「以前のように安全性をアピールするのは難しい」と立場を変えた。
 原発の隣に蓄電所を
 志賀町で次世代蓄電池の製造とそれを組み込んだ蓄電所の設置に取り組む日高機械エンジニアリングの日高明広代表は、災害に備えて「原発の新たな外部電源に蓄電所を加えてマイクログリッド(小規模送電網)化して欲しい」という。蓄電所とは文字通り電気を溜める施設だが、'22年の電気事業法改正で発電所と同じ位置付けで系統電力に接続できるようになった。原発の電力消失時に、別系統の電源として接続し機能する。
 能登半島地震原発の耐震性が改めて見直されているなか、日高氏は被災地発で「原発立地地区の優先的な蓄電所設置」を訴える方針だ。
 「週刊現代」2024年2月17日号より
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 【つづきを読む】『次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…! 日本地震予知学会がいま、もっとも心配している「港町の名前」』
 週刊現代講談社
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 2月14日 YAHOO!JAPANニュース ビデオニュース・ドットコム「能登半島地震であらためて露見した日本で原発を続けることの本当のリスク/松久保肇氏(原子力資料情報室事務局長)
 1月1日の能登半島地震では、能登半島の付け根に位置する志賀原発が、変圧器が壊れて一部の外部電源が喪失したり、燃料プールから水が漏れるなど、相次ぐトラブルに見舞われた。能登半島地震はあらためて、地震大国である日本で本当に安全に原発の運用ができるのかという問いをわれわれに突き付けている。第17回のセーブアースでは、原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏をゲストに、地震大国日本が原発を続けることのリスクと、それがやめられない理由などについて考えた。
 北陸電力は、能登半島北部沿岸で96kmの断層が動く地震を想定していたが、実際は150kmにわたって断層が動いた。今回は幸い志賀原発の敷地内では地層の隆起は起きなかったが、すぐ近くで地盤が4m隆起している。もし敷地内でそれほどの隆起があれば、取水口が海面から離れることにより冷却水が取れなくなる恐れもあったし、そもそも原発の建屋が損傷する恐れもあった。
 また、能登半島地震は、震災と原発事故が同時に起こったとき、周辺住民が本当に安全に避難できるのかという古くて新しい問題をわれわれに突き付けた。今回のように道路が寸断して孤立集落がたくさん発生しているような状況下で原発事故が起きた場合、どうやって住民を避難させるのか。さらに志賀原発のように半島の付け根にある原発で事故が起これば、半島の奥側にいる人たちは逃げ場がなくなる。船を前提にした避難計画もあるが、地盤が隆起して港が使えなくなる場合があることも、今回の経験で分かった。
 日本では現在、10基の原発が動いている。また、基準審査や定期検査などで停止中の原発が23基ある。その他、24基は既に廃炉が決まっており、3基が新たに建設中だ。志賀原発は2011年の東日本大震災福島第一原発の事故以来、運転が止まっているが、もし運転中であれば、より大きな事故につながっていた可能性もある。また、今回地震津波の影響を大きく受けた珠洲市には1970年代より、北陸電力中部電力関西電力の3社による珠洲原発の建設が計画されていたが、地元の反対運動により凍結されていた。もし当初の計画通り珠洲原発が設置されていれば、取り返しのつかない事態になっていたかもしれない。
 そのような状況にもかかわらず、北陸電力志賀原発の再稼働を目指している。なぜならば、その間北陸電力東日本大震災から1度も稼働していない志賀原発に維持費や人件費として6,100億円をつぎ込んでいるからだと松久保氏は言う。いつ動くか分からない原発に資金の投入を続けていれば、他のエネルギーに投資することも難しい。志賀原発に限らず、日本は原発をやめることを前提に、再生可能エネルギーに投資する方向に舵を切るべきではないかと松久保氏は言う。
 岸田政権は2022年12月、安倍政権さえできなかった原発の運転期間の延長を成し遂げている。原子炉等基本法では運転期間は40年、特別な点検をすればプラス20年とされていたが、岸田政権は、運転停止している期間をカウントしないことで実質的に60年を超える稼働を可能にした。
 さらに岸田首相は肝いりのGX実行会議で次世代革新炉の開発・建設を命じた。政府はGX債という2050年温暖化ガス0実現のための国債を10年間で20兆円発行し、そのうち1兆円を次世代革新炉の開発・建設にあてるとしている。しかし高速炉の実証実験がうまくいったとしても、高速炉は建設費が高いだけではなく燃料費も高いので、実用化することは経済的に難しく、それだけのお金を投じることの意味は見いだせない。国が丸抱えで支援するしかなくなっており、松久保氏はこれは沈みゆく原子力産業の救済措置に過ぎないと言う。
 福島第一原発の事故処理費用は23.4兆円と言われるが、これはデブリを取り出すまでのコストに過ぎない。さらに取り出した後の核廃棄物を処理するために膨大な費用がかかることが予想され、それは優に20兆円はかかると松久保氏は言う。一つの原発の事故処理に国家予算の半分近く、国の年間GDPの1割近くを費やすことになるのだ。再び事故が起これば、また同じだけの負担を負うことになるが、そのリスクを国民に負わせて運転を続けるつもりなのだろうか。
 原発政策を議論する経産省原子力小委員会では、原発に反対する意見を述べる人は松久保氏を含め2人しかいない中、委員会は2時間の枠で、経産省の人が30分ほど説明して21人の委員が3分ずつコメントするだけで、議論も何もないと松久保氏は言う。そのようなことをやっていては、原発政策を巡る本質的な議論などできるはずもない。明らかに行き詰まった日本の原発をどうするかを考えるためには、国民的な議論が不可欠だ。
 日本は世界でも類を見ない4つのプレートが重なり合った文字通りの地震大国だ。そんな日本がそれでも原発をやめられない最大の理由は、電力会社がすでに投資をした資金を回収せざるを得ないからに他ならないと松久保氏は言う。そのために国民がどれだけ大きなリスクを背負わされているのかを、われわれは厳しく認識する必要があるだろう。
 能登半島地震が示した日本で原発を続けることの危険性などについて、原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏と環境ジャーナリストの井田徹治が議論した。
 【プロフィール】
 松久保 肇(まつくぼ はじめ)
 原子力資料情報室事務局長
 1979年兵庫県生まれ。2003年国際基督教大学卒業。16年法政大学大学院公共政策研究科修士課程修了。東京金融取引所勤務を経て12年より原子力資料情報室研究員。17年より現職。22年より経済産業省原子力小委員会委員。共著に『検証 福島第一原発事故』、『原発災害・避難年表』など。
 井田 徹治(いだ てつじ)
 共同通信編集委員論説委員 環境・開発・エネルギー問題担当
1959年東京都生まれ。83年東京大学文学部卒業。同年共同通信社入社。科学部記者、ワシントン特派員などを経て2010年より現職。著書に『ウナギ』、『生物多様性とは何か』『データで検証 地球の資源』など。
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 2021年9月5日 朝日新聞デジタル「ブラックアウト再発防止のカギは 北電が期待する原発再稼働と送電網
 佐藤亜季
 北海道胆振東部地震で停電したすすきの中心部=2018年9月6日午前4時20分、札幌市中央区、白井伸洋撮影
 2018年の北海道胆振東部地震では、道内ほぼ全域の295万戸が最長2日間にわたって停電する大規模な全域停電(ブラックアウト)が起きた。国内初となるブラックアウトの一因は、北海道電力が石炭火力の苫東厚真(とまとうあつま)発電所厚真町)に発電量を集中させていたことだ。
 北電は再発防止に向け、泊原子力発電所(泊村)の再稼働による電源構成の分散化を急ぐ。
 地震が発生した18年9月時点で、苫東厚真発電所は道内の電力需要(308万キロワット)の48%を担っていた。その苫東厚真が、地震で損傷するなどして止まった。
 停止直後、北電は北海道と本州を結ぶ送電網「北本(きたほん)連系線」を通して電力の緊急融通を受けたが、変動に対応しきれなかった。需給バランスが大きく崩れたことで、道内の別の発電所も連鎖停止を余儀なくされ、北電の送電網全体が機能しなくなった。復旧には45時間かかった。
 地震後の20年度でも、北電の年間発電量に占める石炭火力の割合は55%と、全国平均(32%)を大きく上回る。石炭火力への依存がここまで進んだのは、東日本大震災での原発事故が影響している。
 東日本大震災の前は原発が44%で、石炭火力は31%だった。だが福島第一原発の事故に伴う泊原発の運転停止で、石炭火力の電源構成を大きくせざるを得なくなった。
 なかでも、コストを安く抑えられる海外炭を使う苫東厚真に過度に頼る構造となっていた。胆振東部地震ではその厚真町で大きな揺れを観測し、苫東厚真も被害を受けた。北電は「ブラックアウトは泊原発が停止していた特異な状況下で、複合的要因が重なって起きた」と説明する。
 石炭火力依存からの脱却でカギを握るのが、泊原発の再稼働だ。再稼働の最大の難関だった敷地内断層が活断層かどうかの判断について、原子力規制委員会は今年7月、北電の「活断層ではない」とする主張を認めた。審査は8年間におよび膠着(こうちゃく)していたが、これで再稼働に向けた手続きが進むことになった。再稼働すれば電源構成は一定程度の分散化が見込まれ、ブラックアウトの再発リスクは減る。
 ただ、再稼働をめぐっては、原発そのものの安全性も問われる。原発頼みにならない再発リスクの軽減は欠かせない。そのひとつが本州と道内を結ぶ送電網の増強だ。
 北電の関連会社は5月、送電網の増強計画を発表。本州とを結ぶ二つの送電網のうち一つ(30万キロワット)の容量を30万キロワット増やし、60万キロワットにする。送電能力は3割増の計120万キロワットとなる。総工費は479億円。23年春ごろに工事に着工し、28年3月の運転開始を予定している。
 北電の藤井裕社長は「ブラックアウトの経験を風化させることなく繰り返し訓練も行うなど、安定供給に向けて気を緩めずしっかり取り組んでいきたい」と話す。(佐藤亜季)
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 2019年9月6日 朝日新聞デジタル「大地震、その時北海道電力で何が ブラックアウトの真相
 有料記事経済インサイド
 長崎潤一郎
 ちょうど1年前の2018年9月6日。寝静まった北海道を震度7地震が襲った。この大地震で、北海道では国内初のブラックアウト(全域停電)が発生し、295万戸が停電。電力が復旧するまでの45時間、多くの世帯が電気のない生活を強いられた。当時、北海道電力の社内で何が起きていたのか。関係者の証言をもとに描く。=敬称略、肩書は当時
 これまでの「経済インサイド
 経験したことのない揺れ
 2018年9月6日午前3時7分59秒。北海道電力苫東厚真(とまとうあつま)発電所長の斉藤晋(58)は、これまで経験したことがない激しい揺れで跳び起きた。
 北海道胆振(いぶり)東部地震。北海道で初めての震度7を観測した厚真町の市街地にある社宅で就寝中だった。
 激しい揺れで体の自由がきかず、なかなかベッドから起き上がれない。投げ出されるようにベッドから転がり落ちた。4畳半の寝室の片隅にあったはずのベッドは、反対側の壁の近くまで1メートルほど動いていた。
 非常時に連絡が取れるように、いつも枕元に置いている携帯電話が見当たらない。寝室の電気のスイッチを押すが、反応しない。停電していた。
 薄暗い室内で何とか携帯を見つけ、同じ社宅に住む発電課長の小貫晃司(50)に発電所の状況を確認するよう指示した。
 「命の危険を感じるほどの揺れだった」
 何らかの設備トラブルは覚悟していたが、小貫から返ってきたのは衝撃的な報告だった。
 「2号機と4号機はトリップ(自動停止)しました」
 地震の影響で停止した北海道電力苫東厚真発電所=2018年9月8日、北海道厚真町
 「1号機はまだ動いています」
 苫東厚真は北海道最大の火力発電所だ。1号機、2号機、4号機の全3基の発電出力は計165万キロワット。泊原子力発電所(全3基、計207万キロワット)とともに、電気の一大消費地の札幌を取り囲むように配置されている。泊原発の停止が長期化するなか、主力電源として北海道の電力供給を支え、地震当時も需要(308万7千キロワット)の半分近くを一つの発電所でまかなっていた。
 その2基が同時に止まった。北海道の電気が足りなくなるのは明らかだった。
 何とか1号機は運転継続を
 斉藤は「何とか1号機の運転を続けてくれ」と小貫を通じて発電所の運転員に指示を出した。
 次に脳裏に浮かんだのは津波だった。
 札幌市の本店火力部と連絡を取り、地震の情報を集めた。発電所は沿岸部に建っており、津波の危険がある場合は、災害対策の拠点は社宅の隣にある独身寮に置く決まりになっている。幸い、震源地が内陸で津波の心配はなく、社宅に住む小貫ら4人で急いで発電所に向かうことになった。
 「長期戦になる」
 斉藤は、手当たり次第に着替えをリュックに詰め込んだ。暗い室内で足の裏がチクチクと痛む。天井から落ちてきた蛍光灯の破片だった。トイレの床はタンクからこぼれた水で一面、水浸しになっていた。台所ではビールジョッキ以外の食器はことごとく割れ、冷蔵庫は扉が開いて中身が飛び出していた。
 社宅から発電所までは南西へ約18キロ。街灯は消え、ところどころで道路は波打ち、電柱は傾いていた。途中にある橋の手前では道路が大きく陥没していた。斉藤らが乗った車は減速して乗り切ったが、ここで車のタイヤがパンクし、すぐに発電所にたどり着けない所員もいた。
 発電所に到着したのは午前4時すぎ。停電して薄暗い事務所でヘルメットを手に取り、3階の渡り廊下を通って発電設備がある本館に入った。
 「ゴオー」というジェット機のエンジンのような轟音(ごうおん)が鳴り響いていた。高さ50メートル、石炭を燃やす1号機のボイラーが蒸気漏れを起こしているようだった。
 運転員が詰めている中央操作室に駆け込むと、ある運転員はぼうぜんと立ち尽くし、また、ある運転員は外部との連絡に追われていた。
 そこで、運転を続けていた1号機の停止と、さらに耳を疑うような報告を受けた。
 「北海道が、全域停電してい…
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 2024年2月11日7:15 YAHOO!JAPANニュース マネーポストWEB「「柏崎刈羽原発」にも能登半島地震の余波 新潟県民の再稼働反対で永久停止となる流れは必然か
 昨年末、柏崎刈羽原発の運転禁止命令が解除されたばかりだが…(原子力規制委員会の定例会合/時事通信フォト)
 能登半島地震により、石川県の志賀原子力発電所では変圧器の配管が壊れるなど、様々なトラブルが発生した。そのうえで経営コンサルタント大前研一氏は「余波はそれだけで終わらない」と指摘する。元原子炉設計者でもある大前氏が懸念するのは、「柏崎刈羽原発」への影響だ。
 【イラスト】能登半島地震志賀原発柏崎刈羽原発に与えた影響とは
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 能登半島地震による石川県の被害は死者240人、負傷者1181人、安否不明者14人、住宅被害4万9440戸に上り、まだ多くの地域で断水や停電が続いている(2月2日14時時点)。
 被災者の救済と被災地の復旧・復興が急がれる中、私が元原子炉設計者として注視していたのは北陸電力志賀原子力発電所だ。今回の地震で被災してリスクが露呈した同原発は、もはや廃炉にするしかないと思う。
 ただし、能登半島地震の余波はそれだけで終わらない。原発関係者にとって今回の最大のダメージは、7基の原子炉がある世界最大の柏崎刈羽原発も再稼働できずに永久停止(=廃炉)となりかねないことだ。
 福島第一原発事故後、東京電力柏崎刈羽原発の安全対策に1.2兆円を注ぎ込んで、海抜約15mの高さの防潮堤や防潮壁などを設置し、原子炉や使用済み核燃料プールの冷却機能を強化するため海抜約45mの高台に貯水容量約2万トンの淡水貯水池も造成した。こうした対策は私から見ても福島第一の教訓を反映したものであり、再稼働を認めるべきだという意見になる。
 だが、能登半島地震柏崎市刈羽村は震度5強を観測した。柏崎刈羽原発に異常は確認されなかったが、周辺地域では道路に無数の亀裂が入るなど地震の影響が少なくなかった。
 柏崎刈羽原発は、テロ対策上の重大な問題が相次いで見つかり、原子力規制委員会東京電力に対して事実上運転を禁止する命令を出していた。
 しかし昨年末、規制委は「自律的な改善が見込める状態であることが確認できた」として運転禁止命令を解除した。今後は再稼働に向けた手続きが再開されることになり、地元自治体の同意が焦点となる。
 新潟県の花角英世知事は、県民の間で議論を進めた上で自身の判断を示し、最終的に県民の意思を確認するため「信を問う」としているが、そうなれば県民の同意を得ることはできないだろう。能登半島地震の甚大な被害を目の当たりにして、多くの新潟県民が「やはり原発を再稼働するのは危険だ」「柏崎刈羽も福島第一の二の舞になりかねない」と思ったはずだからである。
 政府と電力会社が柏崎刈羽原発志賀原発などを再稼働したいのであれば、私が以前から提案しているように、原子力関係の人材と原発の運営管理を個々の電力会社ではなく全国で1社に集約し、そこにすべてを任せる体制にすべきである。そうして原発の安全性を担保しなければ、万一の過酷事故や重大事故に対応することはできないだろう。
 一昨年、岸田政権が原発再稼働に舵を切った際、私は本連載(『週刊ポスト』2022年10月28日号)で「『総括』や『反省』なき政府による原発再稼働には反対する」と書いたが、今回の志賀原発の被災状況とその対応を見ても、政府・規制委・電力会社は福島第一原発事故の教訓に何も学んでいないと言わざるを得ない。そうである以上、柏崎刈羽原発新潟県民の再稼働反対によって廃炉に追い込まれるのも、必然の結果だと思うのである。
 【プロフィール】
 大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。
 ※週刊ポスト2024年2月23日号
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 2022年10月22日 週刊ポスト大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方
 原発再稼働の前にやっておかなければならない「福島第一原発事故の3つの総括」
 このまま再稼働して大丈夫なのか(イラスト/井川泰年)
 岸田文雄・首相は8月の「第2回GX実行会議」で、原子力発電の活用に前向きな姿勢を示した。首相は電力不足解消の手段として、今冬には最大9基の原発を再稼働することも表明しているが、経営コンサルタント大前研一氏は、現状の政府主導の“いい加減な原発再稼働”に警鐘を鳴らす。再稼働する前に必要な、2011年3月11日の東日本大震災で起きた福島第一原発事故の「3つの総括」について、大前氏が解説する。
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 1つ目は「政府説明の嘘」である。福島第一原発を建設した際、政府は地元の地方自治体に対してどのような説明をしたのか、そのどこが虚偽だったのか、実態はどうだったのか、自治体との関係をどう直すのか、ということを明らかにしなければならない。
 2つ目は「東京電力の嘘」である。当時、東京電力は事故の状況を毎日発表し、枝野幸男官房長官が鸚鵡返しで記者会見していたが、それは真実ではなかった。では、どこに嘘があったのか? 東京電力に聞くと「正直に発表していたのにマスコミが伝えてくれなかった」と言い訳した。しかし、それが本当だという証拠はなく、本当だとしても十分ではなかった。したがって、万一同様の事故が起きた時にどういう発表の仕方をするべきなのか、という総括が必要なのだ。
 そして3つ目は「政府・自治体と地元住民とのコミュニケーション」である。政府・自治体と地元住民のコミュニケーションは適切に行なわれていたのか、住民の避難は何に基づいて判断したのか、という問題だ。適切でなかった場合は、その原因を追究し、適切なコミュニケーションのルールと判断基準を明確にした避難方法を定め、住民の安全を担保しなければならない。
 私は福島第一原発事故の原因を独自調査した。当時の担当大臣でもあった細野豪志環境相に頼まれたからである。その報告書は200ページを超え、英文でも公表している。また、著書『原発再稼働「最後の条件」』(小学館/2012年)には写真や図も盛り込んで一般の人にもわかりやすくまとめた。その中では、津波による全電源喪失を想定していなかった“原子力ムラ(原発利権によって結ばれた政治家・企業・研究者の集団)”の傲慢と怠慢を指摘し、実施すべき安全対策や必要なアクシデント・マネジメント(事故対応)体制などを提言している。
 11年眠っていた旧車で高速走行?
 しかし、政府と東京電力は事故から11年以上経過しても前記3つの問題を総括していないため、まだ大半の国民は原発に対して恐怖感や忌避感を持っている。真摯な総括・反省をしない限り、再稼働に進んではいけないのだ。
 私が再稼働に反対するもう1つの理由は、元・原子炉設計者から見て工学的なリスクが非常に高いと思うからだ。原子炉は稼働から40年以上経過しているものが多数あり、それが11年以上も止まっていたわけだが、もし40年前に製造されて車庫に11年間眠っていた自動車を動かし、フルスピードで高速道路を走ったらどうなるか? どんなトラブルが起きるか、わかったものではないだろう。
 しかも、原子炉は“配管の化け物”だ。極めて複雑な構造で、自動車とはわけが違う。にもかかわらず、政府は運転期間を30年から40年に延長し、さらに原子力規制委員会の認可を受ければ1回に限り60年まで延長できるようにした。耐用年数ではなく運転期間だから停止していた期間は差し引かれるが、それで大丈夫かどうかは何のテストも実証もされていない。ましてや11年以上も止まっていた原発を再稼働した例は、世界にないのである。
 さらに、電力会社と原子炉メーカーに建設時の責任者やエンジニアはもういない。福島第一原発事故当時にいた人たちも11年間で代替わりし、“原子力ムラ”(※原発利権によって結ばれた政治家・企業・研究者の集団)は無責任体制のままである。
 もし私が首相だったら、3つの総括をして原子炉の工学的な安全性とリスクを国民に説明する。その上で2年ごとに担当が代わる役所の旧弊を廃止し、責任を持てる原子力行政の確立を誓って国民に理解を求める。
 “ど素人”の岸田首相が再稼働したければ、すればよい。だが、総括も説明もないまま、なし崩しに再稼働することは危険であり、許されない。しかも、万一事故が起きた時に首相官邸で指揮を執るのは誰なのかさえ決まっていない。そんな状況で前に進んだら、地元住民をはじめとする国民の理解は得られないだろう。
 【プロフィール】
 大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『大前研一 世界の潮流2022-23スペシャル』(プレジデント社刊)など著書多数。
 ※週刊ポスト2022年10月28日号
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