🏗2〗ー11ー世論の猛批判を恐れて「オスプレイ」を派遣しなかった。能登令和6年~No.12 

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 2024年1月23日 MicrosoftStartニュース 乗りものニュース自衛隊が「慎重すぎる」のか? 高速自慢の「オスプレイ能登へ出向かない理由とは
 月刊PANZER編集部
 オスプレイ木更津駐屯地に配備
 2024年の元日に発生した能登半島地震は、最も起きてほしくない時と場所で発生しました。被災地は、紀元前500年頃に中国で書かれた兵法書孫子』でいうところの「険」「狭」の環境で、行動するのがとても難しいところです。こういった場所では大兵力も有効には使えません。それは現代技術で海路や空路を使えるようになっても、制約条件であることには変わりはないのです。
 【写真】海上に物料投下する様子
 「令和4年度離島総合防災訓練」で神津島ヘリポートに着陸する陸上自衛隊V-22オスプレイ木更津駐屯地からCH-47の約半分の時間で到着した(月刊PANZER編集部撮影)。
「令和4年度離島総合防災訓練」で神津島ヘリポートに着陸する陸上自衛隊V-22オスプレイ木更津駐屯地からCH-47の約半分の時間で到着した(月刊PANZER編集部撮影)。
© 乗りものニュース 提供
 それでも海路では、海上自衛隊LCACと呼ばれる揚陸艇、いわゆるホバークラフト(ホーバークラフト)を使い、空路ではヘリコプターが投入され救援にあたっています。しかし陸上自衛隊保有するV-22オスプレイは参加していません。
 オスプレイは固定翼機と回転翼機の長所をあわせ持ち、性能は大型輸送ヘリコプターCH-47と比べると巡航速度で約1.7倍、航続距離で約2.5倍とされています。積載量はCH-47にはやや劣るものの、中型のUH-60よりは多くなっています。
 オスプレイは2024年1月現在、木更津駐屯地の第1ヘリコプター団航空輸送隊に13機が配備されています。島嶼防衛には有効な輸送展開力を持ち、災害派遣でも活躍が期待されていました。東京都の神津島で実施された「令和4年度離島総合防災訓練」に初参加し、救援部隊としてCH-47とともに木更津駐屯地から神津島に向かいましたが、到着時間の差は歴然で、オスプレイはその高速性を示しました。
 ではなぜ、今回は救援にオスプレイが投入されないのでしょうか。
 理由のひとつには、2023年11月29日に発生した、アメリ海兵隊CV-22Bの墜落事故があります。事故を受けてアメリカ軍は飛行停止を命じ、陸自オスプレイも飛行を見合わせています。
 同県の小松には空自の基地がある
 2つ目には、高速性と長い航続距離というオスプレイの特性が活かせなかったという事情もあります。元日でも自衛隊は待機していますが、飛行見合わせ中のオスプレイはすぐには離陸できなかったでしょう。航空機は自動車のようにエンジンスタートしてすぐ離陸というわけにはいきません。
 空路の救援拠点となっているのは小松基地であり、そこから被災地の能登空港までは約110kmです。近距離であれば、高速性よりすぐ飛べる機体の方が即応性に優れます。CH-47でも1時間弱の距離ですので、すぐ飛べて、より積載量の大きい機体の方が効率も良かったのです。
 回転翼機もいきなりは着陸できない。見極めと準備が必要。訓練では消火器具箱も風圧で蓋が開いて破損しないよう、事前に固縛された(月刊PANZER編集部撮影)。
回転翼機もいきなりは着陸できない。見極めと準備が必要。訓練では消火器具箱も風圧で蓋が開いて破損しないよう、事前に固縛された(月刊PANZER編集部撮影)。
 © 乗りものニュース 提供
 また考慮しなければならないのは「険」「狭」の環境だということです。この環境に大量の物資をむやみに送り込めないのは空路でも同じです。多くの機体を送り込めば、それを飛ばすための補給や点検、いわゆる兵站の負担も大きくなります。機種が増えればなおさらです。
 有事こそ、状況に最適で効率の良いアセットを厳しく見極める必要があります。オスプレイ単体のスペックだけ見て決めるものではありません。神津島の例はあくまで訓練であり、オスプレイの能力実証という意味もあります。
 「救援部隊の行動が慎重すぎる」「環境が悪い時こそ自衛隊の力は発揮されるべきで、そんなことでいざという時に戦えるのか」という批判も聞こえます。しかし戦時と災害派遣ではリスクの取り方が違います。災害派遣では絶対に事故を起こしてはならず、自らが要救助者になることはありえないのです。求められる任務は全く別物であり、慎重になるのは当然です。
 関連するビデオ: 能登地震の情報収集にあたる海自哨戒機 初訓練にカメラ搭乗し密着 (テレ朝news)
 オスプレイの本務は「防衛」
 「険」「狭」と冬季日本海側の天候という環境は航空機にも厳しいものです。オスプレイは高性能ですが、物資を出発地から目的地に運ぶ物流ネットワークの一部に過ぎず、物流を成立させるには前後の経路が整備される必要があります。それが「険」「狭」となればなおさらです。
 また忘れてはならないのは、自衛隊の本務は国の防衛・安全保障ということです。語弊がありますが、大災害でも兵力を全力投入することはなく、使えるものはオスプレイでも何でも使えというわけにはいきません。今この時も、世界はじっと観察しています。
 2011(平成23)年の東日本大震災時も、周辺国は災害時の日本の防衛態勢を探り、原発事故のモニタリングを行う目的で、航空機や艦艇を多く接近させています。それに対応して自衛隊は、警戒監視体制を堅持しました。毎年恒例の富士総合火力演習も実施されています。
 東日本大震災と同年の2011年に実施された富士総合火力演習において、終了後、東北応援のノボリを掲げる参加部隊(月刊PANZER編集部撮影)。
 © 乗りものニュース 提供
 2024年の空挺降下始めも同様です。災害があっても、日本の防衛体制に揺るぎがないことを示すのが抑止力の本質です。その点で2011年の総火演にも今年の空挺降下始めにも、特別な意味があります。オスプレイの本務は島嶼防衛であり、今回の災害派遣に投入しないのも意味があるのです。
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 1月23日 MicrosoftStartニュース Merkmal「被災地支援の遅れは「ヘリ」「自衛隊」の能力不足ではない! ネットには「ヘリ降りられない」という謎投稿も 震災3週間で考える
 ブースカちゃん(元航空機プロジェクトエンジニア)
 ネット上の“謎投稿”
 元日の夕方に能登半島沖で発生した大地震は、能登半島の北部、奥能登と呼ばれる地域を直撃し、多くの孤立集落が発生した。輪島市珠洲市では多くの家屋が倒壊、輪島市では観光の名所として知られた朝市で大火災が発生し、およそ200棟が焼失、現在も現場の捜索が続いている。
 【画像】えっ…! これが自衛官の「年収」です(計7枚)
 県の中心部である金沢地方から遮断された奥能登での災害に対して、ヘリコプターの機動力による救助や支援が必要になることは、当然予想できたことである。しかし、孤立した地区の被災者に対する救助や支援は、遅々として進まなかった。
 新聞によると、1月4日の時点で救助要請の20~30件が未対応と報道され、自衛隊の派遣規模が小さかったことの対比で、政府による初動の遅さが指摘された。そうした批判を打ち消したいためだろうが、
 「被災地にはヘリコプターなど降りられない」
 などと妙なことをいう人たちが現れた。
・中学校のグラウンドに起きた地割れのニュース写真
・避難所になった小学校に避難者の自動車が多数とまっている写真
 を出して、こんなところにヘリコプターが降ろせるわけがない、というのである。
 しかし、それらの写真は状況の一部分を切り取っただけのものだった。地割れを起こした運動場の空いている場所に自衛隊の大型ヘリコプターは着陸していたし、避難所になった小学校も、近くの運動公園が離着陸場に指定されており、そこにヘリコプターは降りていたのである。
 孤立地域への救助活動
 ヘリコプターによる吊り上げ救助のイメージ(画像:写真AC)
 © Merkmal 提供
 全国各地の自治体では、大規模災害に備えた災害対策計画を持っているが、そのなかでは地域ごとに受援用のヘリポートも指定されている。これは、各都道府県の消防部隊や消防防災航空隊が駆けつける「緊急消防援助隊」の支援に備えたもので、石川県では奥能登管内だけでも15か所が指定されている。
 こうした施設には、自治体の防災訓練などでも実際にヘリコプターを離着陸させることがあるし、多くの自治体は災害対策計画をネット上で公開しているので、自分の住んでいる自治体について改めて確認しておくといいかもしれない。
 しかし、これも山あいの小さな集落まで網羅しているわけではなく、救助を求める孤立集落などの現場に、必ずしも事前に指定されたヘリポートがあるとは限らない。そうした現場でヘリコプターが救助活動や物資輸送を行う場合は、人命救助として任意の場所に着陸することが認められているし、降りられない場合は空中停止(ホバリング)したヘリコプターからつり下げによる積み下ろしが行われる。
 ホバリング中のヘリコプターから物資や人員を積み下ろしするのに使われるのは、主に
 「ホイスト」
 と呼ばれる巻き上げ式ウインチだ。ヘリコプターの機外に、70~80mほどのワイヤを下すことができ、これで要救助者を機内に収容したり、支援物資を地上に降ろしたりできる。
 各地の自衛隊基地で開かれる航空祭や地域の防災訓練などでも、このホイストを使った救助訓練が展示される機会は多いし、今回の災害派遣でも多くの救助や物資搬送がホイストを使って行われている。
 自衛隊の救難ヘリコプターや中型ヘリコプターにもホイストは装備されており、今回の震災では地元である小松救難隊UH-60ヘリコプターが初期の人命救助に奔走した。しかし、災害時の人命救助は基本的に
・消防
・警察
 の役割だ。そのため、大災害時に全国から集まってきた消防防災ヘリコプターや警察ヘリコプターが、被害の大きかった地域での救助の主力を担っている。
 行政機能の機能不全
 防衛省自衛隊のウェブサイト(画像:防衛省自衛隊
 © Merkmal 提供
 その一方で、自治体の消防防災ヘリコプターは、比較的小型な機種が多く、数も限られていることから、避難所などへの物資輸送や被災者の移送までは、なかなか手が回らない。そうしたニーズに応えるのは、主に
 「自衛隊のヘリコプターによる空輸能力」
 である。今回の災害でも、孤立集落の被災者から自衛隊のヘリコプター部隊に期待する声は多かったが、特に初期の段階では十分に支援が届いたとはいえず、これも
 「自衛隊の派遣規模は適正だったのか」
 を疑問視される一因になっている。
 こうした問題が発生した理由として浮かび上がるのは、孤立した被災集落は過疎地で行政職員も少なく、通信インフラの確保も困難になってしまったことで、
 関連するビデオ: 地震時のペットの避難で注目「同伴避難所」 (KNBニュース)
 「状況や受援ニーズの把握と伝達」
 がうまく行かなくなっていたことである。発災直後に石川県の馳知事が発信したSNSによると、県災害対策本部のホワイトボードには、被害の大きかった能登市や珠洲市と連絡が取れていない様子が書き込まれている。
 自衛隊や消防は、基本的に県の災害対策本部の要請を受けて活動する。しかし、県の災害対策本部に現地の情報が乏しく、自衛隊への出動要請にもつながらなかった可能性が高い。それだけではなく、現地に入ったジャーナリストらの情報からは、孤立地の避難所で救援ニーズを取りまとめる機能や、そのニーズを受け止めて的確な支援を調整する機能が、スムーズに働いていないことが伺える。
 つまり、発災から3週間を経て見えてくるのは、ヘリコプターや自衛隊の能力不足ではない。被災者支援のなかで、
 「県や国の主体的な関与が求められるプロセスが、機能不全に陥っていた」
 ことである。その原因には、石川県の防災計画が古いままで、地震調査委員会による最新の知見も取り入れられていなかったことも指摘されている。
 この震災における被災地支援の遅れを、自衛隊やヘリコプターの責任に帰すことは間違いである。地方と国の行政機関において、
・災害対策計画は十分なものであったのか
・発災時の対応能力が十分であったのか
 それを問うてこそ、今後に生かすべき教訓が得られるはずである。
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