🍘43〗ー5・Aー新たな地政学、エネルギー産出国、食料生産国が「覇権」の鍵を握る。~No.136 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 国家は残るが、政府は終焉を迎える。
 民族には寿命があり、文化・伝統・宗教と共に何時かは消滅する。
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 資源小国日本は、明治の近代化以降、食糧、エネルギー、物資、金銭、情報を海外から大量に輸入しないと生きていけない。
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 太平洋戦争は、石油と外米(食糧)を獲得する為の戦争であった。
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 2023年11月27日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「戦争が耐えがたいインフレを招来~エネルギー産出国、食料生産国が「覇権」の鍵を握る
 政府が「こければ」責任を負って支払うのは国民だ!
 2021年10月25日、「日本は外国に借金していないからデフォルトしないというのは本当か?」で、日本がこれから直面するであろう「財政問題」について述べた。
 【写真】「地政学リスク・マックス」の時代、いつまでもあると思うな政府とお金の価値
 そして、同記事5ぺージ目「戦前の負債は最悪の手段で帳消しにした」において、「政府の国民からの借金を様々な手法で『帳消し』にした」ことに触れた。
 平時には「信頼できそう」に見える政府も、いざ窮地に追い込まれればなりふり構わずに、「自らの責任には知らん顔をして、すべての『責任と負担』を国民に押し付けてきた」のが、過去の歴史である。
 よく税金は「みかじめ料」(東京弁護士会)に例えられて揶揄される。
 「お前の店(会社)が商売できるのは誰のおかげだ?」と言って、一種の用心棒代をせしめるというわけだ。
 もちろん、現在の日本を始めとする近代国家の税金は、軍事費や王侯貴族の遊興費にだけ使われるわけではない。政治家・公務員の給与を含む「運営費=手数料」が差し引かれた後の多くの部分が、「福祉」などで還元される。もちろん、国民の福祉とは関係なさそうな、一種の「利権」や「キックバック」に回っている部分もあると推察されるが、それはごく一部である(と信じたい)。
 だが、重要な問題は、「みかじめ料」も「税金」も納めるのは国民(市民)であって、「取り立てる側の組織」が富を生む出すことは「基本的に無い」ということだ(その筋のビジネスや(大概赤字を生む)国営企業は存在するが、ここでは除外する)。
 つまり、「政府が使ったどのような資金も、『最終的に(ツケを)支払うのは国民』である」ということなのだ。
 第2次世界大戦の破壊が強烈なインフレをもたらした
 「大原浩の逆説チャンネル<第1回・特別版>大乱の八つのテーマと対処法」、「同<第27回>世界大乱の中 日本が発展する」などで述べたように、世界はすでに「政府がこける事もあり得る『大乱の時代』」に突入している。
 これからやってくる「大乱の時代」について考える上で、「終戦直後」は重要な参考例だ。
 すでに述べたように、預金封鎖、新旧円交換、財産税など様々な手法を駆使したが、「ハイパーインフレ」も忘れてはならない。
 1945 年 8 月の敗戦から、1949 年初めからのドッジ・ラインに至るまで、わが国は数年間にわたって激しいインフレに直面している。
 日本銀行金融研究所、伊藤正直氏「戦後ハイパー・インフレと中央銀行」「1、はじめに」において、「日本の戦後インフレは、第1次大戦後のドイツや同時期のハンガリーほどではなかったが、それでも 1934~36 年卸売物価ベースでみると1949 年までに約 220 倍、1945 年ベースでみても約 70 倍というハイパー・インフレとなった」と述べられている。
 1945年以後のおおよそ4年間で70倍というインフレはすさまじい。例えば、2023年現在380円(1.5リットル、希望小売価格)のコカ・コーラが、4年後の2027年に(平均と同じだけ上昇すれは)2万6600円になるということだ。
 また、1934~36 年卸売物価ベースで1949年までに220倍ということは、1945年までのおおよそ10年間で物価が約3倍になっているということである。それなりに高い率のインフレが続いていのだ。
 減少してきた軍事費が反転増大しつつある
 第2次世界大戦において、日本を始めとする多くの国々が(事実上)破綻するほどの巨額な軍事費が使われた。しかし、戦後は「冷戦」があったものの、「軍事費を抑制しようとする流れ」が続いた。
 graphtochart.com「アメリカ合衆国の軍事費の対GDP比率(推移と比較グラフ)」がわかりやすい資料だ。1960年の対GDP比9%程度から、2022年の約3.5%まで大幅に下げている。
 もちろん、米国の人口が約1億8000万人から約3億3000万に増えたことなどからGDPそのものが増加した事も大きな要因だ。しかし、GDPが増えたからと言って軍事費を増やさずに、その資金を「経済の中で循環させた」のである。そしてそのことが、特に1991年ソ連邦崩壊後の「低インフレ・低金利」による(残念ながら日本を除く)世界経済の発展につながったといえる。
 だが、2022年の「ウクライナ侵攻」が状況を激変させた。ノルドストリーム(ガスパイプライン)の途絶になどによって、天然ガスを始めとするエネルギー価格が上昇。また、輸送用船舶の安全性の問題などから小麦価格が上昇し「インフレの時代幕開け」の象徴となった。
 後世の歴史家は、「低インフレが始まったベルリンの壁崩壊(1989年)・ソ連邦崩壊(1991年)」と同じような歴史的イベントとして、「ウクライナ侵攻」さらには「ガザ侵攻」を「高インフレ時代が始まった歴史的イベント」として取り上げるのではないだろうか? 
 元々、長年にわたって(GDP比で)減少してきた世界の軍事費は下限に近づいていたともいえる。
 実業の日本フォーラム 2022年9月9日「世界の軍事費、初の2兆ドル超え 20年で10倍の中国が進める『軍民融合』」でも述べられているように、「核大国」である米国とロシアに加えて共産主義中国の軍事的台頭が著しい。
 日本でも、その脅威に対抗すべく、日本経済新聞 1月29日「防衛費、27年度にGDP比2%、非防衛省予算は2兆円規模」のように、対GDP比の軍事費を増やす方向だ。
 もちろん、台湾を始めとする地政学リスクの高まりの中で、「当然行うべきこと」である。しかし、軍事費の増大がインフレ要因であることは明確だ。
 しかも、悲しくもその軍事費が、ガザで行われているような「破壊行為」に使われ、世界的に戦闘地域が広がれば、1945年からの「戦後ハイパーインフレ」の再現もあり得ない事ではない。
 軍事費は「他国の軍事費」と密接な関係がある。(仮想敵国などの)他国が軍事費を増強すれば、対抗上自国も軍事費を増強しなければならないから、「際限の無い軍拡競争」に陥りやすい。
 中東から欧米が排除されるか?
 当面の「戦争によるインフレ」の最大の懸念は、「中東問題」による「エネルギー価格の上昇」であろう。
 この中東問題は、11月7日公開「『ガザ侵略』と『ベトナム戦争』、再び米国は『大義なき戦争』に踏み込むのか」、10月23日公開「パレスティナ―天井の無い監獄で何が行われてきたのか? 『いじめられっ子』がやり返したら大騒ぎに」など多数の記事で述べてきたように、少なくとも1948年のイスラエル「建国」、長い視点で言えば中世の十字軍(イスラムから見れば「虐殺隊」)にまで遡る根の深い問題だ。
 実際、イスラエルの「ガザ侵略」は、1979年のエジプト・イスラエル平和条約以来、44年間(事実上)「封印」されてきた「中東戦争」を再発させかねない。
 第1次~第4次までの中東戦争で、米国などの西側社会を後ろ盾にしたイスラエルに負け続けてきたアラブ社会は、確かに「イスラエル容認」へと傾いていた。いわゆる「現実路線」である。
 だが、イスラエルやその後ろ側にいる欧米がアラブ地域に行ってきたことを忘れた訳ではない。10月27日公開「中東紛争の本質~白人の南北アメリカ大陸侵略・アジア・アフリカ植民地化との同質性、そして米国は常に『独裁国家』の支援者であった」冒頭「ダブルスタンダードな中露」において、日本の北方領土問題に触れた。戦後78年経ったからと言って、日本人がロシア(ソ連)が行った非道な行いを忘れて「北方領土を差し上げる」ということはあり得るだろうか? 
 日本が北方領土を取り返すために戦争を行わないのは、「平和主義」を大事にしているからだが、もしロシアが改めて非道な行いをしたらどうであろうか? 
 中東問題の本質は、十字軍(虐殺隊)にまで遡るから、もっと根が深い。
 「ガザ侵略」によってパンドラの箱を開けてしまった現在、8月10日公開「ウクライナの次の戦争……イラン-イスラエル戦争という『時限爆弾』のスイッチが最悪の時期に入る可能性」の可能性が高まっている。
 原油500ドルは十分あり得る
 10月13日公開「世界は21世紀の『オイルショック』に向かっている~バレル500ドルもあり得るか」と述べた。
 元々、2019年10月9日公開「『地球温暖化騒動』の『不都合な真実』に目を向けよう」から9月30日公開「EVバブルに続いて『脱炭素バブル』も崩壊するのか? とうとうノーベル賞科学者も『気候変動』を否定」に至る多数の記事で述べてきた「脱炭素」が、人類にとって必要不可欠な化石燃料の開発・生産を妨害してきた。
 2021年12月6日公開「脱炭素原理主義が今の『自業自得エネルギー危機』を招いている」副題「原油価格バレル500ドルもあり得るか」ということだ。
 「戦争」以前に化石燃料の(歴史的)需給はすでに引き締まっているのである。そこに「第5次中東戦争」のような事が起これば、どのようになるかは火を見るよりも明らかだ。
 エネルギー産出国・食料生産国が鍵を握る
 現在、OPECプラスを始めとする(非欧米の)エネルギー産出国が強い団結を示している。これもエネルギー価格の上昇を促すインフレ要因だ。
 さらには。少子高齢化による「生産年齢人口の減少」も、供給サイドの制約となり、インフレを加速する。
 もちろん、いくつかの国で「輸出規制」の動きがある食料問題も、これからさらに深刻になる。
 植田日銀の「利上げ」はすでに遅すぎる!?
 私は「日本」に大いに期待している。「大原浩の逆説チャンネル<第27回>世界大乱の中 日本が発展する」、拙稿ZAKZAK 12月20日「日米株価が再逆転する『世界インフレ時代』突入へ 原因は戦争と生産年齢の減少 『日本品質』や生産性が大きな武器に」などで述べた通りだ。
 しかし、冒頭で述べたように「日本政府」には警戒を怠らない。
 政治的圧力を受けやすい利上げは元々遅れる傾向にあるが、今回は米国からの圧力もあると考えられる。これから確実にやってくるインフレに対処するための「利上げ」が遅れる事により、再び「国債が紙屑」となり、「年金・保険システム」が瓦解するのであろうか? 
 「大原浩の逆説チャンネル<第40回>いよいよやってくるインフレ『第2波』。『インフレ時代』、そして金利上昇の中でどのように生きるべきか?」で想定した以上の恐ろしい事態になるかもしれない。
 「日本(企業)」は大いに頼りにしているが、「日本政府」は、全く信頼がおけないというのが私の感じるところである。
 大原 浩(国際投資アナリスト)
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