🌌34}─3・D─かわいいクマさん幻想の病理と動物愛護精神の魔。十和利山クマ襲撃事件。~No.175No.176No.177 

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 2023年11月26日 MicrosoftStartニュース ダイヤモンド・オンライン「クマ被害続出の日本列島に根強く残る「かわいいクマさん幻想」の病理
 武藤弘樹
 クマが人にあだなす獣になり得るということを、想像しにくい感性が確立されてしまっているのではないか(写真はイメージです) Photo:PIXTA
 © ダイヤモンド・オンライン
 クマによる人身被害が相次いでいる。被害人数の過去最多は2020年度の158人(ツキノワグマ・ヒグマ)だったが、今年は10月末暫定値にかかわらず180人(2023年11月1日時点)と、これを大幅に更新している。すでに5人の死亡者が出ている由々しき事態で、各自治体は対応策のうちの一つの選択肢としてクマの駆除を行っている。しかし、それに対して「殺す必要があるのか」「適切な対処でない」という批判が持ち上がっており、自治体窓口には嵐のようなクレームが寄せられ、業務が滞ったりしているそうである。動物愛護の精神に我々はどのように向き合うべきか。クマの駆除に関する考え方を通して、世相が変わりゆく中、2023年の今改めて考えてみたい。(フリーライター 武藤弘樹)
 クマ被害が過去最多に
 ドングリの不作が主な原因?
 今年クマが人の生活圏内に多く出没している原因については、主にクマの食料となるドングリやヤマブドウなどの不作が関係していると見られる。他の原因として専門家は、クマの生息域の変化や、生息数の増加(狩猟をする人が減っていることが関係しているとの説も)といった可能性を指摘している。
 また、クマ被害の増加とメガソーラー(大規模太陽光発電システム)の関連性を論じる風説や、森林伐採によってクマのもともとの住処が奪われているのではないかといった風説があり、それに対して「根拠のない情報を安易に鵜呑みにしないように」といった注意喚起も行われている。
 様々な情報が錯綜するのは現代の世の常だが、メガソーラーに関していえば、ゴルフ場跡地などのもともと開発されていた場所にソーラーパネルを敷き詰めることが多いそうで(ソーラーパネル設置のために改めて造成工事をすると莫大なコストがかかるため、行わない)、クマ被害を増加させている主要因とは言えなさそうである。
 ともあれ、情報の精査に神経を使いたい局面である。
 現代人がクマを愛したい理由
 やむなく駆除する現場の理由
 クマの駆除に反対する意見には、頷けなくはない面もある。まず、クマはルックスがいい。かわいく、よく二足歩行をするし、子グマを伴って目撃されたりするので、人間にとって擬人化して捉えられやすい。
 また、クマのぬいぐるみやキャラクターも非常に多く、かわいいクマのキャラなんぞは日常のそこかしこで目にすることができる。テディベアやくまのプーさん(ディズニー)は世界的に愛されるクマたちであり、いつも蜂蜜を舐めようと平和そうにポワンと佇んでいるプーさんが、クマとして実はひとなぎで人間を殺傷する能力を持っていることは、誰しもが忘れている。
 関連するビデオ: 出没情報77件…ヒグマ相次ぐ 「ヘア・トラップ」で行動分析 (テレ朝news)
 というか、クマのプーさんというキャラを見るときにそのようなことを想定するのは、無粋かあまのじゃくである。
 そうした積み重ねがあるから、クマが時として人にあだなす獣になり得るということを、想像しにくい感性が確立されてしまっている。鳥獣保護法に則った形で駆除が行われようと、「駆除、すなわち殺すことは許されないのではないか」と自ずと感じられてしまうわけである。
 そこで、「殺す以外の解決法をなんとか見出してほしい」というのが駆除反対派の主張である。
 一方、駆除を敢行する現場は、それを承知の上でやむなく駆除を行っている状況である。今年被害にあった人の数が最も多い秋田県では、すでにおよそ6年前に「熊の殺処分について」と題した声明を出し、殺処分に反対する県民の声に回答する形でその考えを示している。クマの駆除を行う自治体側の苦悩が端的にまとまっているので、箇条書きで紹介したい。
・人身被害が住宅地含む県内どこにいても起こりうるので県民の不安は高まっている。
・種々の施策は実施済。また、狩猟者に自粛要請を行っていたが、捕獲数上限を定めた上で自粛要請を解除した。県民の命の安全をふまえてやむを得ない措置。
・動物の命の大切さは重々理解している。
ツキノワグマが人の生活圏に侵入せず、本来の生息域で暮らしていけることがそもそも大事なので、各施策に取り組んでいく所存。
 参考)秋田県 県民の声 熊の殺処分について
 https://www.pref.akita.lg.jp/pages/contents/63987
 難しい状況の中で、やれることをやっているという印象である。とにかくクマ被害は死者が出ているので、当面差し迫ったその脅威をなんとかするべく、駆除が行われている状況だ。
 筆者は犬猫を飼っていた経験から動物愛護の精神が養われ、クマもできることなら殺す以外の方法で解決してほしいとは思うが、悠長なことは言ってられない状況なので、「対応に当たっている現場の皆様、お疲れさまです」という気持ちである。
 「駆除は反対だが、その代わり、自分や近しい人がクマに殺されても文句は言わない」と考える人は、正真正銘の「駆除反対派」を名乗るべきだと思うが、そうでない駆除反対派の人たちは、先述した感性によって「クマ=害獣」という認識が持ちにくくなっているのであろう。あるいは、クマへのかわいさのあまり、自身と利害関係のない人の命が軽く考えられている状況なのかもしれない。
 筆者は諸事において客観的な立場でいたいので、クマ側に過度の肩入れはしたくないのだが、クマ側に肩入れする人の心情はもちろん理解できる。そして、筆者と同様に感じている人は多いと思われる。
 クマを殺さずに済むならそれに越したことはない。人里に現れたクマにお仕置きをして山へ返す「学習放獣」という試みも行われているようだが、課題や議論の余地も残っている方法なので、過信は禁物である。
 人をヒステリックに駆り立てる
 “動物愛護”精神の魔
 えてして、動物愛護の精神は人をヒステリックに憤慨させる。筆者自身もその自覚があるし、憤慨した人からのご意見を頂戴しやすいのも動物愛護関連のトピックの記事を書いたときである。一度ペットショップについての記事を書いたとき、「あなたの記事は読んでいないけど、タイトルだけ見るにあなたは最低のクソライターだ」といった長文のご意見を、ある人から数日に渡って頂戴したこともある。
 「一度記事をお読みになってください。あなたが心配されているようなことは書いておらず、むしろ逆のことを書いています」と返信すれば、「いいえ読みません。あなたはクソです。はやくライターをやめてほしい」といった内容がもっとひどい言葉で返ってきて、こちらとしてはもうどうすることもできない、ということがあった。
 相手の方が個人情報をメールに署名していたので、調べてみれば「優しい」と評判の動物病院の院長さんである。その先生が怨念を込めて、理不尽な言いがかりのごとき長文のご意見をしたためるくらい、動物愛護の精神は人のバランスを失わせるポテンシャルを秘めているのである。
 「クマ駆除反対」の気持ちも、ともすればその状態に陥りやすいので、最低限の冷静さは失わないように意識していたいところである。
 駆除容認派と反対派に
 歩み寄りの余地はあるのか
 ただし、クマを愛護しようとする気持ち、それ自体は決して否定されるべきものではないし、「駆除以外の方法を模索していこう」という提言も世の中にとって有益である。駆除反対派の人は、これらを被害の脅威にさらされる地域に思いをめぐらせながら行っていければ、立脚点のバランスがよくなるように思う。
 そうしたこと抜きで「クマ駆除反対」を唱えるのは、もうただの無思慮・無配慮の感情論ではないか。SNSなどで発散するぶんには問題ないが、自治体に電話して延々と文句を言ったり、筆者に異次元メールを送ったりしてくるのは、八つ当たりな行為であるため、控えた方がよろしかろう。
 一方「クマ駆除容認派」の人は、反対派の人と話をするとき、感情的にならないようにすることを心がけられたい。そして、冷静に対応しても相手の理解を得るのが難しいと感じたら、どこかの段階で自衛のために馬耳東風を決め込んでも罪には当たるまい。
 動物愛護の観点から菜食主義となる人がわずかずつではあるが増えてきている昨今、「クマ駆除反対」の声も動物愛護精神の高まりの一環のように思える。動物愛護は崇高な理念だとして、ではそれを達成するためにどこまでのことを犠牲にしていいのかは議論の余地がある。菜食主義は個人の自由だが、クマの被害は公共の治安に属する問題だ。場合に応じてその線引きを明確にし、世間で共有していく必要がありそうである。
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 11月26日 YAHOO!JAPANニュース AERA dot.「「人喰いクマ」は複数いた? 秋田県で8人死傷した「十和利山クマ襲撃事件」の真相
 第1、第3、第4の犠牲者を殺害したとみられるオスグマ「スーパーK」=米田一彦さん提供
 今年、全国で相次いでいるクマによる被害。そのなかでも特に多いのが秋田県だ。県内で2016年に起きた「十和利山クマ襲撃事件」は、死者4人、重軽傷者4人を出し、本州で起きた最悪の獣害事件となった。死者数では「三毛別ヒグマ事件」に続く事例だ。クマの研究を長年続け、事件現場での調査にも加わった日本ツキノワグマ研究所の米田一彦さんは、同じ地域でクマによる人身被害が相次ぐことなどから、人を襲うクマの「集団」が存在する可能性も疑っている。
 【写真】複数いた?クマの専門家がとらえた「人喰いクマ」の姿はこちら
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 「十和利山クマ襲撃事件」の現場となった場所は、秋田県青森県の県境にある十和田湖の南の山中だ。犠牲者の多くは、山の恵みである根曲がり竹(タケノコ)を採集する「採り子」と呼ばれる人たちだった。
 彼らは当初、危険性が高い複数の「人喰いグマ」が徘徊していることを知らされずに入山し、それが被害を拡大させることになった。
 秋田県自然保護課の職員としてクマ対策に従事し、その後フリーのクマ研究者となった米田さんが、広島県内の自宅から車で鹿角市に向かったのは2016年5月22日。
 「事件の発端となった死亡事故が5月20日に発生したときは、普通の人身被害だと思っていた。ところが22日、『第2の犠牲者を収容した』と地元の人からメールが送られてきた。『これはただことではない』と感じて、すぐに駆けつけた」
■これは1頭じゃない
 現地に到着した米田さんは23日、研究所のホームページを更新し、次のように情報を発信した。
 「2件の死亡事故は同一グマによる犯行だ。第一犠牲者の遺体に食害があれば3件目の死亡事故が発生する可能性大」
 クマが最初の犠牲者と突然遭遇し、驚いて攻撃した末に食害したのかもしれない。しかし、続いて犠牲者が出たことはクマが人間を「食べ物」と認識したことを意味した。つまり、「人喰いグマ」の出現である。
 「ところが、21日に1人目の犠牲者が発見され、遺体に食害があったのに、その情報は遺体を収容した鹿角市消防団、猟友会、警察官で止まり、事態の重大性が県庁と県警には伝わらなかった」
 そして1人目の犠牲者に食害の痕跡があることを知り、食べられた人肉の量から米田さんが導き出した推察は、「複数のクマが関与している」ということだった。
 クマは経験のないことには慎重な行動をとるが、いったん遺体を「食べ物」と見なすようになったクマは再び人を襲う可能性が高くなる。しかも、それが複数となると、危険度はさらに増す。
 第1、第2の襲撃現場は比較的平坦な場所で、500メートルほどしか離れていない。警察や消防はヘリを投入し、現場付近をなめるように飛んでクマを探した。すると2頭のクマが目撃された。
 しかし、ヘリの爆音に驚いたクマは逃げてしまった。米田さんは、ここから離れた場所で人身被害が発生するおそれがある、と予測した。
 その心配は現実のものとなった。
■ついに4人目の犠牲者が
 第1、第2の襲撃現場から北東へ2キロほど、大きな谷を隔てた沢筋にタケノコ採りに出かけた男性が夜になっても帰ってこないと、25日警察へ通報があった。そして5日後、性別不明の遺体が見つかった。
 「3人目の犠牲者の捜索は難航しました。切れ込んだ谷の急斜面に竹が密生していたので、まったく見通しがきかない。そこでクマと遭遇すれば2次被害が発生する可能性が高かった。その間、遺体は何頭ものクマに食われていた」
 さらに6月7日、第3現場から西へ500メートルほど離れた場所で女性が行方不明になった。
 10日朝、警察が捜索を開始したが、クマに吠えられて退避した。ヘリを使って威圧すると、クマは姿を消した。そのすきに遺体を発見し、収容した。遺体は性別が不明なほど広範囲に食害がみられた。
 同日午後2時ごろ、遺体の発見現場付近にいたメスグマが猟友会によって射殺された。解剖すると、胃の内容物の6割はタケノコで、4割は人肉と髪の毛だった。
 「これで事件は収束した」という空気が流れた。
 しかし、死者こそ出なかったものの、その後もクマによる人身被害は続いた。
■埋められた証拠
 果たして射殺されたグマは、4人を殺したクマだったのか。
 「死者が出るような重大な人身被害が発生した場合、加害したクマを特定して取り除き、さらなる被害を防ぐことが一番重要です。ところが、この事件ではクマの特定が行われなかった」
 と、米田さんは忸怩たる思いを口にする。
 被害者の遺体にはクマの体毛が付着する。それを射殺されたクマの遺伝子と照合すれば明らかになる。ところが、これだけの死者が出たにもかかわらず、遺伝子分析は行われなかった。死がいも廃棄物として埋められたという。
 「北海道でクマに襲われて死者が出れば、必ず体毛を採取します。関係機関の対応は非常に不可解です。射殺したクマの死がいも埋めてしまって、絶対に掘り起こさせない」
 米田さんは、射殺されたクマはすでにあった遺体を食べていただけで、「主犯」のクマはまだ捕獲されていないと推察していた。
 その根拠として挙げるのが、被害者たちの頭蓋骨に見られた陥没だ。
 「被害者の顔やあごが、がっぽりと取れていることはよくあるんですが、過去の事例からしても頭蓋骨が骨折するほどの攻撃は、オスであれば80キロ以上、メスだと100キロ以上なければ、これほどの打撃力は出ない。射殺されたメスグマは60キロ程度なので無理です」
■駆除された「スーパーK」
 クマの世界では序列がはっきりと決まっており、大きなクマほど餌場を移動しない。
 米田さんは十和利山麓に通って関係者の証言を集めるとともに、クマの観察と撮影を続けた。長年、秋田県のクマをよく知っている米田さんでさえ驚くほどの生息密度だった。
 クマの個体識別を行い、「推定に推定を重ねた」結果、「主犯」の可能性があるクマを2頭に絞り込んだ。
 第1、第3、第4の被害者を殺害したとみられるのが「スーパーK(鹿角の頭文字)」と名付けた84キロのオスグマだ。そして、第2の被害者の遺体のそばで目撃された子グマを連れた120キロ級の赤毛のメスグマだった。
 同年9月、「スーパーK」はデントコーン畑に仕掛けた箱わなで捕獲され、駆除された。しかし、赤毛のメスグマは捕まらないままだった。
 「遺体の食害に参加したとみられる子グマは親離れした後、牛小屋を襲い続けて駆除されたんですが、親のほうはわなをかいくぐり続けた」
 事件直後から秋田県は、駆除を強力に推し進めた。目撃情報から、ほかにも食害に関与したクマがいることが強く疑われていたが、おそらくすべて駆除されたと米田さんは見ている。
 それでも米田さんは、つい最近までこの地に通い、根気強くクマの観察を続けてきた。
 というのも、米田さんは県庁時代から、同じ地域で重大な人身事故が連綿と続いていることに気づいていたからだ。
 全国の事故を拾うと、そのような地域がいくつも見つかった。それは攻撃的な血筋を受け継ぐクマ集団の存在を強くにおわせていた。
■「問題グマ」出現の原因は
 「どうして、そんな『問題グマ』が現れるのか、考えるわけですよ。最初は弱い動物を狩るわけだけど、肉食経験を持つと、そういうクマになりやすいわけだよね。おそらくシカやイノシシが増えて捕える機会が増えたとかで」
 十和利山クマ襲撃事件の真相はいまだに闇の中だ。
 「この事件については、歴史に残すために本も書きました。その内容は今後、新たな科学的な根拠が明らかになれば、それに基づいて直してもらうべきものだと思います。でも、もうかなり難しいでしょうね」
 (AERA dot.編集部・米倉昭仁)
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