🌌22}─6・B─日本が世界一、地球温暖化の被害を受けている?~No.114 ⑰ 

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 2022年10月22日 YAHOO!JAPANニュース withnews「日本が世界一、地球温暖化の被害を受けている? 〝遠い国の問題〟に見えてしまうのはワケがあった
 2019年10月の台風19号。川の水があふれてから1日半以上が経過しても水は引かなかった=水戸市、小島弘之撮影、朝日新聞社
 「地球温暖化」と聞いて想像するのは、海に沈む危機が迫る〝遠くの島国〟だけでしょうか。日本でなかなか身近に感じにくいのには、ワケがありました。気候科学が専門の東京大学教授・江守正多(せいた)さんに、気候変動の「そもそも」をずばっと、聞きました。
 【画像】日本はネガティブ? 「気候変動対策」で感じること、世界平均との違いがこんなにあった
 江守正多さん:専門は地球温暖化の将来予測とリスク論。気候変動に関する政府間パネル第5次、第6次の評価報告書の主執筆者。
 水野梓(withnews編集部):学生時代から環境問題に関心があったが、「意識高い」と言われて距離を取られることにもやもや。
 松川希実(withnews編集部):「気候変動」という大きすぎる問題を〝自分事化〟できていなかったことに気づき、企画に参加。
 巣ごもり期間に減ったCO2
 水野:コロナ禍で飛行機が止まって人の移動が減り、世界中でステイホームして経済活動が減り、あわせて二酸化炭素の排出量がすごく減ったというニュースもありましたよね。これで「ちょっと良くなるのかな」と感じました。
 江守さん:少しは良くなりましたね。ボリュームでいうと飛行機よりも自動車の移動が減ったことや、工場の稼働が止まったことが大きかったんです。2020年の世界のCO2の排出量は前の年に比べて5~7%ぐらい減りました。
 松川:え、数%……!
 江守さん:あれだけ何にもせず、どこにも行かなかったのに、数%しか減っていないんですよ。しかも次の年は、また元に戻っちゃったんです。
 松川:……ちなみに、いま私たちが目指している削減目標は、その数%より大きいんですか?
 江守さん:私たちが目指しているのは、毎年7%ぐらいずつCO2の排出量を減らしていくことなんです。
 松川:あ、このレベルで減らさないといけないんですか!? あの巣ごもりレベルの……
 江守さん:いいえ、あの年はたまたまコロナ禍で排出量が減りましたが、本来やろうとしていたことではありませんよね。7%分減らすために、また経済活動を止めないといけない、というわけじゃないんですよ。
 松川:あの巣ごもり期間のような活動できない時期を思い出すと、悲観して「もう考えるのやめよう」と思う人もいるかもしれないと思ったんですが、そうではないんですね!
気候変動を「ドーピング」に例えると
 水野:でもそれぐらい減らしていかないと、どんなことが起きてしまうのかは気になります。
 大型の台風が増えたり、朝日新聞デジタルで連載「食卓異変」も配信していますが、有明海のノリや北海道の鮭やウニがとれなくなっています。
 江守さん:地球温暖化の問題にはさまざまなリスクがありますが、「地球温暖化」とは地球全体の温度が長期的に上昇していく傾向のことであって、1年1年には違うことが起きます。
 ある年にある場所で熱波が来たとか、ある場所で大雨が降ったというのは、「こういう気圧のパターンになったから」というのが直接的な理由なんです。
 大ざっぱに見れば、昔から暑い夏も涼しい夏もたまに来るし、大雨もたまに降っていました。年々の天候や日々の天気は不規則に変動しています。そこに地球温暖化による長期的な温度上昇の影響が重なっているんです。
 松川:ひどい天候が、もっとひどくなるということですか?
 江守さん:地球温暖化をスポーツ選手のドーピングと考えてみてください。
 たとえば野球選手が打って、ドーピングしていなければ外野フライで終わっていたところ、ドーピングしているとホームランになる。
 ドーピングしないときに普通のホームランだったら、ドーピングがあれば場外ホームランになっちゃう。ドーピングしている分だけ、遠くに飛んじゃう、という感じです。
 昔から大雨は降りますが、それが温暖化している分だけ、より記録的になりやすくなる……と考えて頂ければ良いです。
 海洋熱波や漁業の不漁なども、たまたまその年にそういう気圧パターンや海流パターンだったからかもしれません。しかしそこに温暖化の長期的な傾向が重なって、ドーピングでパワーアップしたと考えたら分かりやすいと思います。
 松川:つまり、今後も地球の温度が上がっていくと、さらにドーピングが強くなるというイメージですか?
 江守さん:そうです。たまたま当たった時には、めっちゃ飛んじゃうという。
 水野:特定の生物にとっては、たまたまその年に発生した生きづらい環境が引き金になって、絶滅するおそれもありますよね。
 江守さん:そうなんですよ。生物の場合は、ある年に壊滅的な影響を受けて、そこからなかなか回復できないということが起こりえます。
 CO2を出さない人が負う被害
 水野:私たちの場合は、記録的な猛暑があっても「エアコンをつけよう」と自分を守る文明の利器もあります。一方で、途上国ではより影響を受けてしまいますね。
 江守さん:日本など先進国は、ダムや堤防といったインフラによって大雨が降った時にも被害を減らすことができます。
 でも、途上国だと防災インフラがなく、社会として自然災害に弱いわけです。さらに地理的に見ても、大きな被害を受けやすいところに、けっこう貧しい人たちが住んでいるということがあります。
 アフリカや中東、中南米の乾燥地域には、貧しい国が多く、小規模な自給自足的な農業をしています。しかし温暖化で干ばつが増え、食糧、水が本当に無くなり、収入も無くなる。
 バングラデシュなどの沿岸の低い土地、よく話題になるツバルなどの小さい島国では、海面が上昇して、さらに嵐が来ると高潮でひどい水害になります。家が流され、畑が流され、住めなくなってしまいます。
 問題なのは、そういう人たちはほとんどCO2を出さずに暮らしていて、温暖化の原因になっていないのに被害に遭っているということです。

 <<地球温暖化のリスク>
・低平地沿岸の社会生態系へのリスク
→海水の熱膨張と、陸上の氷が減ることで海面が上昇し、高潮なども増えるおそれがあります
・陸上・海洋生態系へのリスク→生物多様性への影響などが心配されます

・重要な物理インフラ、ネットワーク、サービスへのリスク
→大雨や強い風でエネルギーや交通、あるいはICT(情報通信技術)のインフラが被害を受けると、社会的に大きな混乱が起きる可能性もあります
・人間の健康へのリスク
熱中症などの健康被害、蚊がうつすデング熱などの拡大のおそれ
・食糧や水の「安全保障」へのリスク
→中東やアフリカ、中南米といった乾燥地帯では干ばつが増加。食糧や水の危機のおそれ
・平和と人の移動に対するリスク
→国際社会の緊張関係が、温暖化のリスクによって増幅するおそれも。紛争の引き金になったり、難民がたくさん発生したりといったことが心配されています――江守正多さんインタビューより(朝日新聞)>
 世界一、温暖化の被害を受けている国?
 水野:日本でも強い台風がたびたび上陸して、今夏も九州・静岡で大きな被害がありました。
 江守さん:過去には、日本でも伊勢湾台風などで死者・行方不明者5千人を超すという大きな被害が出ていました。
 しかし我々を含めてCO2を出している先進国や新興国は、ダム・堤防といった防災インフラに資金を投入し、いまは被害が少なくなっているんです。
 でも日本は、それだけ防災に力を入れていても、2018年の西日本豪雨では災害関連死を含む300人以上が犠牲となっています。
 ドーピングによって強くなった台風が来ると、今も深刻な被害が出てしまうんです。
 松川:地球温暖化の影響というと、遠い国の被害を思い浮かべて、なんとなく日本では実感がないなぁと思っていました。
 江守さん:実は2019年の台風19号でも甚大な被害がありました。多摩川があふれ、千曲川があふれて新幹線が浸水したり、東北でも被害があったりしました。
 被害額を計算したら、2019年に世界で起きたあらゆる自然災害の中で、日本の台風19号は最大の被害額だったんですよ。
 温暖化がなければあそこまでの被害になっていなかったはずなんです。
 だから被害額で見れば、日本は、世界一、温暖化の被害を受けている国、とも見えるわけです。
 〈明日は「『1.5℃』の本当のヤバさ」「対策は〝我慢〟の話じゃない」について聞きます〉
#気候変動のそもそも:
 「気候変動」と良く聞くようになったけど、自分に何が関係あるんだろう。大変そうだし、何をして良いのかも分からない。そんな〝そもそも〟を、気候変動問題に詳しい専門家に聞きます。未来への「1.5℃の約束」って、何でしょうか。」
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