🗡21〗─3・C─アメリカの大艦巨砲主義。最後の戦艦”アイオワ級。~No.67 

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 大艦巨砲主義は、日本海軍ではなくアメリカとイギリスの海軍であった。
 戦前の日本を大艦巨砲主義一点豪華主義・非科学的精神主義と批判する者には、戦史を語る資格はない。
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 2024年9月24日19:12 YAHOO!JAPANニュース 乗りものニュース「「大艦巨砲主義」は遺産です! 最も長生きした“最後の戦艦”アイオワ級 転生したらツルツル船体だった!?
 「大艦巨砲主義」を21世紀まで アイオワ級戦艦
 戦後、ミサイル戦艦に生まれ変わった「アイオワ」。中央部に複数のミサイル・ランチャーがあり、艦尾に見えるのは広い飛行甲板で、さながら伊勢型航空戦艦の現代版(画像:アメリカ海軍)。
 第二次世界大戦中にアメリカ海軍が完成させたアイオワ級戦艦。これらは戦後、戦艦という艦種が時代遅れになっても長く運用され、「世界最後の戦艦」となりました。日本の大和型戦艦は無用の長物だったと批判されますが、同じく大艦巨砲主義の権化といえるアイオワ級はなぜ生き残れたのか、その歴史をたどってみましょう。
 【え…】デカすぎる&強そうすぎる!! アイオワ級vs大和型戦艦を比較(画像)
 アイオワ級は大和型と同じく日米開戦前に計画され、建造が始まりました。その目的は日米の艦隊決戦において、速力に優れた日本の金剛型巡洋戦艦(昭和の改装で戦艦に変更)からアメリカの空母や巡洋艦を守るためでした。既存の戦艦は足が遅く、空母部隊と同行できなかったのです。そこで速力30ノット(約56km/h)以上の高速戦艦としてアイオワ級が計画されました。
 ところが、戦争が始まると日米とも空母による航空戦が主流になり、艦隊決戦の機会は大幅に減少してしまったのです。
 日本はコストがかかり建造期間が長い戦艦の建造には早い段階で見切りをつけたため、大和型は「大和」「武蔵」の2隻で打ち止めになっています。一方、アイオワ級は1番艦「アイオワ」と2番艦「ニュージャージー」が1943(昭和18)年、3番艦「ミズーリ」と4番艦「ウィスコンシン」は翌44年に次々と就役します。太平洋戦争末期の1944年後半から45年1月にかけて、4隻のアイオワ級戦艦が次々と太平洋戦域に投入されたのです。戦争末期のアメリカ戦艦は、日本が航空特攻を作戦の中心にしたこともあり、空母部隊の防空を主に硫黄島や沖縄、日本本土への艦砲射撃に従事しました。
 終戦を迎えて建造中の5番艦「イリノイ」と6番艦「ケンタッキー」は工事が中止になり、アメリカ海軍は戦艦から小艦艇まで大量の在庫処分に入ります。同時に高速空母部隊を海軍戦力の柱にする計画を進めます。この中で、アイオワ級は空母部隊と行動を共にできる高速戦艦として戦後も生き延びることになりました。
 ミサイル戦艦に生まれ変わる
 1981年、ワシントン州ピューゼットサウンド海軍造船所の桟橋に停泊する「ニュージャージー」(左)と「ミズーリ」(パブリックドメイン)。
 戦後の冷戦期、航空機のジェット化とミサイルの進歩が戦いの様相を一変させる中、米英仏の三国は戦艦を保有し続けました。しかし、冷戦初期の旧ソ連と中国の海軍力は脆弱であり、海戦が生起する可能性はほとんどありませんでした。
 朝鮮戦争インドシナ紛争からベトナム戦争では、戦艦が大口径砲(ビッグガン)の威力を生かした火力支援の役割を担いましたが、1960年代半ばまでにイギリスとフランスは戦艦を退役させています。
 実際のところ、膨大な維持費がかかる「時代遅れ」の戦艦を、アメリカも持て余し始めていました。それでもアイオワ級は1940年代後半からミサイルの搭載や強襲揚陸艦への改造など、時代の変化に合わせた様々な計画が検討されていました。
 一方、1962(昭和37)年のキューバ危機以降、旧ソ連は海軍力の強化を本格化させていました。それに対抗してアメリカ国防総省は海軍戦力の再編成に着手します。そしてレーガン政権になった1981(昭和56)年、アメリカ海軍は当時約480隻あった海軍艦艇を大幅に増強する「600隻艦隊構想」を打ち出します。
 その一環として、旧ソ連キーロフ級ミサイル巡洋艦に対抗するためアイオワ級の改造が決定しました。
 改造の目玉となる新たな攻撃兵器は、建造時から搭載されていた5インチ(12.7cm)両用砲を換装したトマホーク巡航ミサイルとハープーン対艦ミサイルのランチャーでした。近接防空兵器はファランクス20mmCIWSで、レーダーも最新式に換装されています。
 16インチ(約41cm)主砲は対艦用ミサイルのVLS垂直発射装置)に置き換える案もありましたが、結局は採用されませんでした。シーハリアーの搭載が検討されたものの実現せず、艦尾に広い飛行甲板を設置し、開発されたばかりの無人偵察機RQ-2パイオニアやヘリコプターが運用可能になりました。
 「骨董品ではない 歴史遺産だ」
 2016年に就役したズムウォルト級1番艦「ズムウォルト」(画像:アメリカ海軍)。
 こうして膨大な費用をかけてミサイル戦艦に生まれ変わったアイオワ級は、1991(平成3)年、クウェートに侵攻したイラク軍に対する「砂漠の嵐作戦」で投入され、「ミズーリ」と「ウィスコンシン」がトマホークの発射と主砲の艦砲射撃を行っています。
 しかし、同年のソ連崩壊、そして冷戦の終結をきっかけに、アイオワ級は海軍の艦艇登録簿から抹消され、本格的に退役が検討されていきます。ところが、海軍内部や長い艦歴で生まれた多くの元乗組員から現役復帰を望む声が多数寄せられました。
 アメリカ海軍にとって、アイオワ級は単なる骨董品の戦艦ではなく、もはや国家を象徴する歴史遺産といえる存在になっていたのです。
 とはいえ、維持費のかかるアイオワ級をそのまま残すわけにはいきません。そこでアメリカ海軍はアイオワ級を退役させる代替え案として、長距離誘導弾を装備し、海兵隊の火力支援を行う新たな艦艇を計画します。この案を発展させたのが射程100kmの発射体を打ち出せる先進砲システムを搭載したDD(X)計画でした。
 このDD(X)はステルス性をそなえたズムウォルト級ミサイル駆逐艦として実現し、2016(平成28)年に就役しました。しかし、予定された30隻以上の建造数はコストがかさみ過ぎるために3隻で中止になっています。
 他方、役割を終えて退役が決まったアイオワ級は、1992(平成3)年から2012(平成23)年にかけて4隻ともアメリカ本土とハワイで記念艦となりました。こうして、時代を超えて生き残り続けたアイオワ級は、アメリカが戦後も保持し続けた「戦艦」と「ビッグガン」の伝統を今に伝えています。
 時実雅信(軍事ライター、編集者、翻訳家)
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 2022年2月13日 乗りものニュース「 ›› ミリタリー ›› 日米戦艦対決「大和」対「アイオワ」世界“最強”戦艦の軍配は?
 日米戦艦対決「大和」対「アイオワ」世界“最強”戦艦の軍配は?
 安藤昌季(乗りものライター)
 tags: 船, 艦艇(軍艦), 戦艦, 大和, 武蔵, アイオワ, ニュージャージー, ミズーリ, ウィスコンシン, 旧日本海軍, アメリカ軍
 兵器に関する話題の定番は「最強」論争。もちろん戦艦の分野でも定番の話題です。ここでは、世界最大の主砲を備えた日本の大和型と、世界最速で高性能なレーダーを搭載したアメリカのアイオワ級のどちらが最強か考えてみました。
 真の世界最強はどっち?
 日本が造りだした世界最大の戦艦「大和」。姉妹艦の「武蔵」とともに大和型戦艦としてよく知られた軍艦です。ただ、世界最強の戦艦となると、1980年代以降の近代化改装されたアメリカのアイオワ級戦艦ではないでしょうか。このクラスは、核兵器搭載型のトマホークミサイルやW23核砲弾が運用できるようになっています。
 ただ、アイオワ級の建造時にこれら核兵器は存在していなかったため、「戦艦どうしでの最強」を考える場合は、それらを省いて考える必要があります。そうなってもアイオワ級は世界最強の戦艦といえるのか、世界最大を誇る大和型戦艦と比較してみましょう。対戦条件は、大和の最終状態である1945(昭和20)年4月。1番艦どうし、「大和」と「アイオワ」による1対1の状況で考えてみました。
 主砲の射撃を行うアイオワ級戦艦(画像:アメリカ海軍)。
 「大和」は基準排水量6万4000トン、45口径46cm主砲9門、27ノット(約50km/h)、舷側装甲の厚さは410mm、水平装甲の厚さは200~230mmです。一方の「アイオワ」は、1945(昭和20)年の時点で、基準排水量4万7825トン、50口径40.6cm砲9門、33ノット(約61.1km/h)、舷側装甲の厚さは307mm、水平装甲の厚さは153~159mmです。
 「大和」は世界最強の主砲威力と防御力を誇りますが、「アイオワ」は「大和」よりも優れたレーダーと速力、主砲の発射速度を備えており、1対1でどちらが強いかは長年議論されてきました。
 【次ページ】 脚が速いとT字が取れるってホント?
 脚が速いとT字が取れるってホント?
 「アイオワ」は、「大和」よりも6ノット(約11.1km/h)ほど優速ですが、「大和」に対してはあまり意味がありません。「大和」の主砲射程は4万2026m。一方、「アイオワ」は主砲射程が3万8720mで、どの距離でも「大和」に砲撃されるからです。32km以遠を保てば、「アイオワ」の主砲弾は大和の水平装甲を貫通できますが、そんな遠距離ではほぼ命中しませんし、「大和」の主砲弾はその距離でも「アイオワ」の装甲を貫通します。
 「その優速で大和の頭をT字に抑え、主砲を6門しか使えなくできるのでアイオワ有利」、という説もありますが、これは舵を切って同航戦になるだけです。
 「アイオワは速度で勝るから、ジグザグに舵を切って大和の弾を避け、懐に飛び込める」という説もありますが、これも無理といえるでしょう。なぜなら、大きく舵を切れば速力が大幅に低下するからです。
 「大和」の事例だと、大きく舵を数回切れば、速力が半減します。「アイオワ」も同様ですから、大和の砲撃を避けようと大きく舵を切れば、遅くなって「大和」に近づけません。また、戦艦は「ほぼ直進」しなければ弾が当たりませんので、舵を切れば命中率が急激に低下します。
 旧日本海軍の大和型戦艦(右)とアイオワ級戦艦(アメリカ海軍の画像を加工)。
 また、「大和」の主砲弾は24km程度から「アイオワ」の舷側を、一方の「アイオワ」は17km程度から「大和」の舷側を貫通します。なお、距離はあくまでも目安であり、実際には艦の向きが異なることで装甲傾斜が発生するので、さらに近づく必要があります。
 両者の速度差は6ノット(約11.1km/h)なので、この24kmの距離を17kmに縮めるのに約38分かかります。「大和」の砲撃速度を1分に1発と考えた場合、最大342発の46cm砲弾が降ってくる計算になります。命中率を3%とすると10発が命中することになるため、「アイオワ」は近づく前に大被害を受けるでしょう。
 なお、「大和」の射撃装置は敵速40ノット(約74km/h)まで対応しており、敵艦が速いと弾を当てられないというようなことはありません。
 【次ページ】 「アイオワ」の方がレーダーや発射速度で有利?
 「アイオワ」の方がレーダーや発射速度で有利?
 それでもやはり、「アイオワ」には高性能レーダーがあり、主砲発射速度でも「大和」に勝るから、命中弾数で有利というハナシもあります。
 「アイオワ」のMk.8レーダーは管制員が口頭で報告した数字を手動で入力することから人的ミスも生じるものであり、距離の測定以外は光学照準が必要とされていました。実際、Mk.8レーダーのみの夜間砲撃では、レイテ沖海戦の戦艦「山城」に対して命中率は0.72%と低く、かつ頻繁に故障したといいます。そのため、レーダー照準射撃といえども「アイオワ」の有利を保証する要素にはなりえないと考えられます。
 旧日本海軍の大和型戦艦(上)とアイオワ級戦艦(アメリカ海軍の画像を加工)。
 なお、大和の二号二型改四電波探信儀(いわゆるレーダー)も電波照準射撃を行えます。観測精度はMk.8の方が上回るものの、探知距離はMk.8が約37km、二号二型は約35kmと大差ありません。敵戦艦の存在を把握するぐらいなら二号二型でも探知可能であるため、「アイオワ」は夜間でも奇襲できないでしょう。
 また、レーダーは装甲板で覆うことができないため、命中弾によって使えなくなる可能性も高いです。
 加えて命中率はレーダーのみで決まるものでもありません。両艦とも光学測距での照準が不可欠ですが、測距儀のサイズは「大和」が15.5m、「アイオワ」が8mですから、その点では「大和」が有利です。
 さらに、命中率には射撃時の安定性も影響します。これについては「大和」が台風でも安定していたのに対し、「アイオワ」は嵐の中でイギリス戦艦「ヴァンガード」の倍も動揺したという逸話があり、アイオワの方が劣っていたといえるでしょう。
 【次ページ】 戦艦「大和」の弱点は?
 戦艦「大和」の弱点は?
 1対1の場合、観測機での弾着観測の有無も大きく影響を及ぼします。「大和」は7機、「アイオワ」は3機を搭載できます。「大和」の零式観測機は空戦能力を有しますが、「アイオワ」のOS2U観測機にはその能力はありません。新型のSC「シーホーク」観測機は空戦できますが、「大和」には、空戦・弾着観測・爆撃が可能な、より新型の水上偵察機「瑞雲」も搭載できるため、弾着観測は「大和」が独占するでしょう。観測機は両者の砲戦距離の中間、高度7000mあたりから観測するので、「アイオワ」の高角砲(高射砲)では届きません。
 また、「大和」の徹甲弾は水中弾がやや発生しやすく、手前に落ちた主砲弾も有効弾になる可能性があります。こうした理由から、両艦の命中率は大差ないといえるでしょう。
 主砲の射撃を行う戦艦「アイオワ」(画像:アメリカ海軍)。
 ちなみに、「アイオワ」の主砲射撃は30秒間隔で行うことが可能な一方、「大和」は40秒間隔で、射撃速度の点で「アイオワ」が有利といわれることもあります。「大和」の約40秒は最大射程の場合で、例えば砲の上げ下げが少ない3万mなら、34秒前後で発砲できます。そして、「大和」の場合、射程3万mでは発砲から弾着まで約50秒かかります。「アイオワ」は初速が「大和」より遅いので、弾着まではより時間を要します。結局、修正を考えれば1分に1発くらいしか発砲できないため、一概に「アイオワ」有利とも言い切れません。
 なお、「大和」は副砲塔の防御が弱いといわれることもありますが、そこは弱点ではないと筆者(安藤昌季:乗りものライター)は考えます。「アイオワ」の主砲弾は3万mでは落下角度35度で落ちてきますが、副砲塔に35度で砲弾が当たっても、砲塔を破壊するだけで、弾薬庫に弾は入りません。副砲塔の支柱の根元に主砲弾が命中した場合のみ、弱点となりますが、同様な防御配置をした日本重巡は弾薬庫への注水で誘爆は起きていませんので、問題はないと考えます。
 むしろ「大和」の弱点は第1および第3主砲塔の手前です。主砲弾薬庫を守る装甲が340mmと薄く、かつ、敵弾に水平になる角度で傾斜しているので、命中すれば轟沈する可能性があります。ただ、ここも反航戦以外では当たることはないでしょう。
 結論として、「大和」対「アイオワ」は、「大和」に軍配が上がると筆者は考えます。
 【了】
 ※一部修正しました(2月13日12時15分)。
 【米国に残る大和型戦艦の遺品も】アイオワ級戦艦の発砲シーンほか
 Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
 ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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