🌌35}─3・B─日本に家畜の虐待死が増えている。貧しい消費者は安い国産肉を好む。~No.185 

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 2023年9月9日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「「こうして育てられた畜産物を食べたいと思うだろうか」「同じことをされたらどんなにつらいだろうか」...日本の畜産業界で行われている《虐待の実態》と「私たちに問われていること」
 森 映子
 島根県大田市の農場で乳牛を繰り返し蹴るなど暴行を加えたとして元従業員が7月、動物愛護管理法(動愛法)違反の罪で起訴された。この事件は男が牛を蹴る動画をSNSに投稿して拡散されたことから、非難が高まっていた。
 一方、茨城では同月、県畜産センター(石岡市)の従業員たちが日常的に牛を蹴ったり殴ったり、麻酔なしでの子牛の角を切る「除角」の際に足で頭を踏みつけたり、ふん尿が堆積した飼育場など、劣悪な現場の動画が国際的な動物権利団体PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会、米国本部)によってSNSで公開された。
 その実態と問題点について、農水省の管轄部署や茨城県畜産課、畜産センターへの取材の回答を伝えた2つめの記事『「虐待と考えたことはない」「国かどこかに指導してほしい」...衝撃的すぎた《茨城県畜産センターの内部映像》に対する農水省畜産局、茨城県畜産課、同センターへの「取材と回答」』より続く。
 日本の他の農場での実態は?
 他の農場ではどうなのだろうか。私はこれまで、牛舎に閉じ込めっぱなしではなく乳牛を放牧し、除角は麻酔を使い断尾は行わないなど、アニマルウェルフェアを実践している牧場を取材したことはある。しかし、茨城のような飼育状況は他にもあるのではないか、という不安が芽生えてきた。
 そこで、農場で牛の世話をする酪農ヘルパーとして、さまざまな牧場で働いているBさん(女性)に話を聞いてみた。約6年前から働き始め、勤務した牧場は20余り、見学も含め約30の現場は見ているという。
―PETAの動画を見た感想は?
 「牛の扱いが荒い、酷い。乳房を棒で突いていたが、あんな行為は初めて見ました。乳房内部で出血し、乳汁に混じってしまう血乳(けつにゅう)の恐れがある。血乳は商品にならないので、なぜやるのか理解できない。除角の際に顔を踏みつける行為もあり得ません。牛に対する愛がないと思いました」
 2022年6月10日 搾乳室で乳牛の乳房を竹棒で突く
 © 現代ビジネス
―移動させるときに手荒く扱うことは珍しくない?
 「動かないときに蹴る人はいます。尻尾をS字に折り、ぎゅっと押して動かすやり方も多い。昔からの方法で、多少の刺激なら問題ないかもしれませんが、力を入れてやると骨が折れてしまう。ぐねぐねになっている尻尾を見掛けることもあります。移動させるときに動かない場合は、牛のかかとにある小さな爪を上げると、進むことがあるので、私はそうしています」
―棒は本来どのように使うべきですか?
 「棒は殴るためではなく、人の手の延長として使う物。棒で自分の体より大きく見せることで、牛が進む場合がある。あるいは、尻辺りをとんとんと軽く刺激して動かすことはあります。でも、ある農場で従業員が棒で思い切り殴っているのを見ました。管理する側がちゃんと指導するべきだと思います」
 今回の事例だけではない虐待の現実
―他に乱暴な行為を見たことはありますか?
 「子牛の競り市場に行ったときですね。トラックから降して施設内に連れていくときに、尻尾を折ったり引っ張ったり、顔面や腹を思い切り蹴ったりしていました。男性でそういう行為が多く、女性は皆『こんなことしなくても動かせるよね』とショックを受けていました」
―中々動かない牛はいますか?
 農場には足が痛い牛がいることが少なくないので、配慮して搾乳施設に近い所に牛を入れている農場はあります。牛を待ってあげるのか、あるいはポータブル式の搾乳機を牛がいる場所まで持っていくのか、人手や他の作業との兼ね合いだと思います。
 私はできるだけ痛い思いをさせないよう、日々やり方を探っています。最近は、背中の肉の薄い所にボールペンを軽くツンツンと当てると、すっと動く場合があると分かりました」
―麻酔なしの除角についてはどう思いますか?
 「私が同じことをされたら、どんなに辛いだろうかと―。従業員は、最初は見るのも辛いが、我慢してやっているうちに『これが当たり前なんだ』と感じるようになっていく。『慣れた』という声を何回も聞きました。
 2022年7月17日 足を引きずる乳牛の痛んだ膝
 © 現代ビジネス
 今、適切な除角方法について勉強中です。薬剤を使う方法は生後1週間までがベストで、生後1ヵ月だと遅過ぎて痛みが大きいようです。生後1カ月くらいで除角された子牛は、痛みで頭を振る時間が長かったり、立ったり座ったり落ち着きがなかった。一方、生後1日目に処置された子牛では、30分間は数回頭を振っていましたが、その後は通常の行動でした」
 Bさんは、多くの農場で体験してきただけあり、冷静に説明してくれた。牛への愛情とアニマルウェルフェアを学び現状を改善したい、という真摯な姿勢に頭が下がる。そして今回の暴力的な映像の行為が珍しくないことも分かった。
 話を茨城の件に戻すと、日よけ、雨よけがなかった一部の運動場には板を付けて暑熱対策を取り、デコボコのベッドは「砂を掘り起こしたら寝るようになった」(大浦センター長)と部分的に良くなった点もある。ただし、まだ改善されていない点も諸処残っており、暴力行為は今も「虐待ではない」と否定している。現場を監視する人や部署を設置したわけでもない。
 このような施設で育てられた畜産物を食べたいと思うだろうか。私も一人の消費者、納税者として不安が募るばかりである。
 茨城県は問題点を直視し、どのように改善していくのか具体的なルールを作り明らかに示すべきである。センターは幼児や小中高校生向けにアイスクリーム作りの出前講座なども行っているようだ。子どもたちを含め市民に胸を張れるような飼育施設に生まれ変わってほしい、と心から願っている。
――なお、国内の動物保護団体などは近く、畜産センター職員の暴行や不適切な飼育方法が動愛法違反などに当たるとして刑事告発する予定である。
 さらに関連記事『日本人が知らない「卵」のアブない現実…世界と「決定的な差」があった』では、日本の知られざるアニマルウェルフェアの危機について迫っています。
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