🌀19〗─2─日本が「医療貧国」であるこれだけの理由。発展途上国並みに衰退した日本。~No.136No.137 

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 2022年7月11日 MicrosoftNews ダイヤモンド・オンライン「日本が「医療貧国」であるこれだけの理由、無駄に長い入院・過剰な病床数…
 © ダイヤモンド・オンライン 提供 Photo:PIXTA
 現在、日本は「医療先進国」だと言われている。しかし、その裏にある「多額の医療費」の存在を忘れてはならない。医師・医学博士の奥真也氏は、著書『医療貧国ニッポン』の中で、日本は医療費の公費負担割合が非常に高い一方、患者自身の負担額は少ないため、「安くて手厚い医療が当たり前」という意識から抜け出せず、将来的な医療費の増大に歯止めがかからない。この状況が続けば、医療費で国が破綻する「医療貧国」になってしまう、と警告する。本記事では、そんな日本の医療費増大の大きな要因である「入院日数の長さ」「病床の多さ」、さらには「乱立する赤字病院」という大問題に迫る。
 ※本記事は奥真也著『医療貧国ニッポン』(PHP研究所)の一部を抜粋・再編集しています。
 日本の入院数は長すぎる!?
 その背景とは
 日本の医療費増大に直結する問題はいくつかありますが、その1つが「入院日数の長さ」です。海外と比べてみると、日本は驚くほど長いことがわかります。
 OECD加盟国の急性期医療の平均在院日数を見ると、ドイツ8.9日、フランス8.8日、イギリス6.9日、アメリカ6.1日、それに対して日本は16.0日と突出して入院期間が長いのです。アメリカだったら手術して3日後には退院するような病気でも、日本は7、8日後の退院になります。
 しかし、これでも日本は以前に比べて入院期間がかなり短縮されるようになったのです。日本の診療報酬の支払い方式は、以前は入院も外来もすべて「出来高払い制」でした。医療行為をすればするほど診療報酬が増えるため、入院期間が必要以上に長くなりやすかったのです。
 そこで入院医療費の適正化を図るために、2003年から「包括支払い制度」が取り入れられました。急性期入院医療を対象として、傷病の種類ごとに医療費を一括して計算する「疾診断群分類別包括評価制度(DPC制度:Diagnosis Procedure Combination)が導入されたのです。
 これによって、入院日数が長引くことが医療機関の収益にプラスにならなくなったため、病院の都合で入院期間が引き延ばされるようなことは減りました。しかし、入院期間が短縮されると病床の空きが増え、病院としては経営に影響します。
 病院にとって、「病床稼働率」は収益に大きく影響するのです。病床稼働率を上げるために、金曜日に入院、月曜日に退院というかたちを探る医療機関が日本にはいまだに存在します。
 金曜日に入院しても、土日は医師の診療も検査もありません。場合によっては外泊OK、つまり自宅に帰ってもいいということもあります。まだ何も医療を受けていないのに、ベッド代はかかります。個室だったら差額ベッド代も取られます。
 また退院は、土日をはさんで月曜日。建前としては、週が明けた月曜日に担当医師の診察を受けて退院許可が下りた、という体裁です。極端な例は減ってきましたが、悪い慣習は根絶されない。入院についての説明の際、患者さんは「この日に入院しないと、他に空きがありません」といわれて承諾することになるのでしょうが、例えば本来なら手術後、10日間の人が15日間の入院になったりする。
 日本には「高額療養費制度」といって医衆費が高額になった場合はあとから還ってくる仕組みもありますから、入院が長引いても結果的に患者さん自身があまり懐を痛めることにならずに済むこともあって、まかり通っているのです。
 厚労省は、金曜入院、月曜退院のケースが頻発する病院にぺナルティを課す制度を設けたりして病院側の都合で入院を引き延ばすことを抑刷しようとしていますが、まだまだこうしたことが行われている現実があります。
 日本は「病床大国」でもある
 コロナで病床逼迫だったのはなぜ?
 さらに、日本の医療体制の中で、海外に比べて日本が抜きん出て多いものがまだあります。それは「人口あたりの病床数」です。OECD加盟国の病床数(人口1000人当たり)を見ると、日本は12.8床でトップです。OECD平均は4.4床なので、平均の3倍近くの数があることになります。
 しかし、ここである疑問が頭に浮かぶ方もいるかもしれません。「こんなに病床が多いのに、コロナ禍で病床逼迫が叫ばれていたのはなぜ?」と。
 日本では病床は、「精神病床」「感染症病床」「結核病床」「療養病床」「一般病床」と分類されています。2020年当時、新型コロナの患者急増の対応に感染症病床だけでは足りないということで、行政側は他の病床をコロナ用に回せないかと病院に要請したわけです。
 当初、病院側は積極的ではありませんでした。病床稼働率が収益に響くのに、いつ来るかわからない患者のために何床もベッドを空けておくことに難色を示したのです。そこで、国がベッド空け賃として補助金を手厚く出すことにしたら、協力的なところが増えたという経緯がありました。
 病床そのものが本当に逼迫した状態になったことは、日本ではあまりなかったのではないかと思います。実際に逼迫していたのは、ベッドよりも医師や看護師などの医療スタッフです。ケアするスタッフがそろわなくて対応できなかったというのが実情です。
 重症患者に用いる人工心肺装置「ECMO(エクモ)」にしても、日本は保有台数がとても多いのです。しかしエクモを操作できる技師がまだ少なく、24時間態勢の医療に対応するには2交代、3交代のスタッフが必要になります。
 が、それだけのスタッフを揃えられない状況で他の診療部門には余剰人員がいても、簡単に配置転換できないなど、制度の運用が硬直化しているという側面もありました。コロナ禍の日本の「医療過迫」は、見かけ上の医療スタッフの逼迫、人不足の問題でもあったのです。
 話を病床の多さに戻しましょう。日本はもともとそんなに病床の多い国ではありませんでしたが、1970年代から1990年ごろにかけて、猛烈な勢いで病床が増えました。
 高齢者の医療費無料化を実践した第二次田中内閣が、「一県一医大構想」を打ち出したため、次々と地方に医科大学が新設され、併せて付属病院がつくられました(なお、医科大学が新設され、その後に附属病院がつくられるのは日本特有のやり方で、アメリカなどは異なります)。
 また、自宅でケアできない高齢者のための療養病床がどんどん増やされました。日本には海外のナーシングホームにあたる長期療養型の施設がなかったため、本来ならば病院を退院して療養施設に移るのが望ましい人たちに対して、長期的な入院措置がとられている状況がありました。
 例えば、精神疾患を持つ人たちを収容している精神病床などもそうです。入院というより、社会に出さないための超長期的収容施設です。高齢者用の療養病床が「社会的入院」と呼ばれたのも、それに近い仕組みといえます。こういった長期入院が多いことも日本の病床の多さに関係しています。
 先進諸国は、医療の効率化を目指して入院日数を短縮させたり、病床回転率を上げたりするなどして、病床数そのものを減らす方向に進められています。日本も同じように、病床を減らしたいのです。実際、厚労省が医療計画に基づいて病床の総量規制を求めています。けれども法的に病床の新設を認めないという規制はあっても、病床を減らせという規制はかけにくいです。民業を圧迫することはつねに慎重に行われます。
 国や知事などの行政は、医療機関や医師に対して「命令」することができず、「要請」か「誘導」しかできません。医師免許が強い権限を持っていることにも関連します。日本は、経済も社会も上り調子だった時代にたくさん病床がつくられました。当時の状況からほぼ横ばいのまま、多くの病床がいまも残っているのです。
 病院が赤字経営に苦しむ時代
 国公立病院が特に深刻
 国民皆保険制に基づいた日本の公的医療保険制度は、個人負担は軽いにもかかわらず、高いレベルの医療をみんなが受けられる、至れり尽くせりといってもいいようなラグジュアリーな制度です。世界一の高齢化、長寿化は、こうした手厚い保険制度があったからこそなしえたことだということができるでしょう。
 しかし、これまでのやり方では、もうやっていけないのです。なぜなら、日本では赤字経営に苦しむ病院が多数存在しているからです。
 ニッセイ基礎研究所厚生労働省「医療経済実態調査」を基に発表したレポートによれば、医療法人設立の病院は黒字の病院が増加傾向にあるが、それでも全体の65%ほどです(2018年)。さらに、国公立の病院を見ると、黒字の病院の割合は減少傾向で、全体のわずか7%に過ぎません。とくに損益率がマイナス30%を下回る赤字病院の数は25%にも上ります。
 一般企業であれば、採算のとれない赤字部署は潰されたり再編されたりして淘汰されていきます。しかし病院は医療を提供する場という役割があるため、簡単に潰したりすることができません。
 とくに、地域医療の提供者として公的な性格を強く持つ公立病院はそうです。一方、公立病院は、民間病院よりも経営に対する危機感がシビアではない、ともいえます。いざとなったら税金で補填されてなんとかなるだろうという意識があるからです。
 厚労省は2019年、赤字経営が目立ち、再編統合の必要があると見られる全国424の公的病院名を公表しました。これらの病院には、病床数の削減や診療機能の縮小、他病院との統合といった赤字経営脱却のための施策の実施を要請しています。
 コロナ禍によってしばらくこの話は下火になっていましたが、ポストコロナの時代になって、あなたの住む地域の病院もこれから大きな変革が迫られるようになります。」
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