💫4}─2・E─ガンブリア爆発は"爆発"じゃない!? じわじわ進んだ生物多様化と生存競争。〜No.28No.29No.30 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2022年7月3日 MicrosoftNews 現代ビジネス ブルーバックス編集部「「ガンブリア爆発」は"爆発"じゃない!? じわじわ進んだ生物多様化と生存競争 更新し続ける過去の学問・カンブリア編
 みなさんは、「化石」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか? 恐竜? アンモナイト? 少し詳しい方なら、足跡や巣穴などのかつて生きていた生物の痕跡の化石もあることをご存知かもしれません。
 こうした、化石によって"存在が証明される生物"を「古生物」と呼び、古生物の姿や生き様、生存当時の環境、そしてその進化と絶滅について研究する学問が「古生物学」です。化石を手がかりに、科学技術を駆使して、古生物のさまざまな謎に迫るのは、良質なミステリーとも言えますが、中でもその進化と滅亡、あるいは現在へに至る道程、「生命の歴史」は、とりわけ壮大なテーマの1つです。
 今回から、数回にわたって、古生物をめぐる歴史について、とくにここ十数年で得られた新たな知見に注目して、見ていきたいと思います。まず、1回めは、生物の種類が徐々に増えてくる「エディカラ紀」から「カンブリア紀」の古生物たちを見てみたいと思います。
 古生物学は日進月歩
 地球上に生命が誕生して、約40億年間。その長い歩みのなかで、多くの生物が栄え、絶滅してきた。地球上に存在してきたほとんどの生物は、いまや「化石」によってしか、その存在を知ることができない。三葉虫、恐竜など、"化石によってその存在が証明される生物"を「古生物」と呼ぶ。そして、古生物の姿や生態、生きていたときの環境、その進化と絶滅などに迫る学問が古生物学である。
 © 現代ビジネス 【図】年代区分
 過去に起きたことは変わらない。これが、我々の日常での常識である。それは、古生物の世界でも、もちろん同じだ。6600万年前に絶滅したティラノサウルスが、いきなり街を闊歩したりすることはない。
 しかし、「過去についてわかっていること」が変わることはある。新しい化石の発見や分析方法によって、同じ化石から新たな発見があったりして、古生物やその環境についての知識が更新されることは、決して珍しくはない。
 古生物学は、絶滅した生物、いわば過去についての学問なのだが、その知識の更新は、じつは日進月歩なのだ。ここでは、とくに変化の著しいいくつかの事象について、ご紹介していきたい。
 生物の多様化はいつ頃から始まったか?
 「カンブリア爆発」という言葉を聞いたことがある読者のみなさんも多いだろう。化石によって生物が確認できる時代を「顕生累代」と呼ぶが、それはカンブリア紀(約5億3900万年前~約4億8500万年前)から始まっている。実際には、顕生累代が始まる前にエディアカラ生物群などの化石が発見されているが、顕生累代という言葉がつくられた当時は、まだエディアカラ生物群の存在は知られていなかった。
 そして、2010年代初頭くらいまでは、カンブリア紀に、カンブリア爆発ともいわれる、生物の爆発的多様化があり、アノマロカリスをはじめ様々な生物が現れ、そして「食う・食われる」の生存競争が激化したといわれていたることが多かった。
 しかし、ここ10年ほどの研究成果によって、生物の多様化と生存競争は、じつはカンブリア紀の前から始まっていたらしいことが明らかになりつつある。約6億3500万年前からエディアカラ紀が始まるが、その半ば頃の約5億7500万年前にできた地層から、急速に化石が増えるのだ。エディアカラ紀の古生物たちは、「エディアカラ生物群」と総称され、オーストラリア、ロシア、カナダなど、世界各地から発見されている。
 © 現代ビジネス 【イラスト】エディアカラ紀の海
 また、2018年には、名古屋大学の大路樹生たちが、モンゴル西部の約5億5000万年前の地層から、海底下約4センチメートルまで掘られた「U字」型の生痕化石(生物そのものではなく、生物の活動の痕跡が化石となったもの)を報告した。
 カンブリア爆発はなかった!?
 「アレニコリテス Arenicolites」と名づけられたこの生痕化石は蠕虫状の左右相称動物がのこしたものと考えられている。その生物は、敵から逃げる、あるいは身を隠すために海底下に潜っていたのかもしれない。
 つまり、この「U字」型の化石は、エディアカラ紀に、すくなくともこの化石が発見された地域では、すでに生存競争が始まっていたことを示している可能性があるのだ。非常にシンプルな生痕化石だが、進化の1つの段階を示すという非常に大きな意味を持っている。
 © 現代ビジネス 【写真】生痕化石「アレニコリテス」
 それこそ10年以上前は、生存競争はカンブリア紀に激しくなったと考えられていたが、生物の進化はそんな単純なものではなく、そのはるか前から、地域ごとに異なるスピードで進化は進んでいたかもしれないのだ。そして、そういった考えをサポートするさまざまな発見がされており、カンブリア紀とそれ以前の生物に関しては、ここ10年で研究のステージが一歩進んだといえるだろう。
 では、カンブリア爆発はなかったのか? 現在では、カンブリア紀以前にも多様な生物がいたことが明らかになっていることから、「爆発的多様化」を指す言葉として「カンブリア爆発」とはいわなくなってきた。
 カンブリア紀の生物が生存競争のなかから獲得したものの1つが硬い殻などの硬組織だという。そしてその結果、多くの動物たちが化石として残りやすくなった。あえていえば、「カンブリア爆発」とは、化石に残りやすい生物が増えた、「爆発的進化」を指すといえるかもしれない。
 その言葉の意味するところは、変わってきたのである。
 では、カンブリア紀に現れた生物には、どのようなものがいたのだろうか? いくつかの復元図とともに、次項で見ていこう。」
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