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2022年6月20日 MicrosoftNews 現代ビジネス「習近平も「震えている」…! 世界の“食糧不足”でこれから「本当にヤバくなる国」の名前
中原 圭介
「小麦ショック」のほんとうの怖さをご存じか…?
インフレがいよいよ深刻になってきています。
足元の消費者物価上昇率はアメリカと欧州(ユーロ圏)が8%を超え、新興国のトルコにいたっては70%に達しようとしています。
中でも深刻なのは小麦の価格です。
3月には2008年2月以来の史上最高値を更新しました。米シカゴ商品取引所(CBOT)の小麦先物(中心限月)は、2021年初めに1ブッシェル6ドル程度でしたが、2022年2月には8ドル程度まで上昇、ロシアのウクライナ侵攻でついに14ドルを超えてしまったのです。
その後は高値からの調整を挟み、足元では10~11ドル台で高止まりしています。
ドイツのパン工房でも小麦価格の高騰に悩まされている Photo/gettyimages© 現代ビジネス ドイツのパン工房でも小麦価格の高騰に悩まされている Photo/gettyimages
歴史をさかのぼってみると、このような高水準のインフレ下では社会的に不安が高まりやすく、革命や動乱が起こることが多いものです。
物価が勢いよく上がることによって、庶民が日々の生活に苦しくなってしまうからです。
とくに、小麦などの穀物価格の高騰には注意を払う必要があります。
インドでは「ナン」が作れなくなる…?
小麦価格高騰の背景は、輸出大国であるロシア・ウクライナの両国で輸出が落ち込み、世界的に小麦の需給が逼迫するという懸念が広がったことです。ロシアの年間の小麦輸出量は世界全体の約2割(世界1位)、ウクライナは約1割(世界5位)と、両国合わせて約3割を占めるまでになっています。
しかし、ロシアは小麦など穀物の輸出を制限し、世界的な食糧危機を煽ることで欧米の制裁解除を迫る方針です。
「欧州のパンかご」といわれるウクライナでは、ロシアの侵攻による被害や住民の避難にともなって穀物生産が停滞しています。そのうえ、黒海地域の港がロシア軍によって封鎖されているため、海上輸送がまったくできない状況にあります。
ウクライナとロシアは小麦の一大産地。供給扶南はますます深刻化している Photo/gettyimages© 現代ビジネス ウクライナとロシアは小麦の一大産地。供給扶南はますます深刻化している Photo/gettyimages
ロシアやウクライナに代わる輸出国として期待されていたインド(生産量で世界2位)でも、小麦の国内価格が上昇したため、自国での供給を優先し輸出を停止する方針に転換しました。
小麦はインドの家庭の食卓に欠かせないナンの原料となるので、インドが国内備蓄を重視するとしたのは致し方ないでしょう。
小麦価格が高止まりする要因は、これだけではありません。他の生産国でも天候不順などによって供給が落ち込む懸念が強いのです。ロシアに次ぐ輸出大国であるアメリカでは、天候が思わしくないことから小麦の作付けが遅れており、輸出量が減る見通しにあります。
アメリカがロシアやウクライナの穴埋めをすると期待が大きかっただけに、世界的に供給不安がいっそう広がりました。
食糧パニック
北半球と南半球は季節が逆になるので、例年であれば夏から秋にかけて北半球の国々の小麦の輸出が増えて、世界の需要を満たしています。
それが今年にかぎっては需要を賄うことが困難となっているため、夏に向けて小麦価格が一段と上昇するだろうと危惧されます。
小麦の価格高騰は、小麦を輸入に頼るアジアや中東、アフリカ諸国に大きな悪影響を及ぼします。生きていくためには欠かせない食糧は、いくら価格が上がったとしても需要が減ることはないからです。
© 現代ビジネス フランス革命も食糧危機が発端だった Photo/gettyimages
とりわけウクライナからの穀物輸入が多い中東や北アフリカでは、主食であるパンの品薄感が強まっています。
ウクライナは近年、トウモロコシの輸出でも世界シェアのおよそ1割(世界4位)を占めるまでになりました。トウモロコシは家畜の飼料として使われるため、トウモロコシの供給不足は肉や卵の価格上昇にもつながります。
小麦やトウモロコシを高値で買い付ける経済力がない国々では、今後数カ月のうちにウクライナ有事が解決しなければ、食糧パニックが起こるかもしれない深刻な状況にあるといえるでしょう。
飢えがもたらす革命や動乱
普通に暮らす庶民と呼ばれる人々は、たとえ不満を抱いていても、多少の生活苦は我慢するものです。
とくに強権的な国々では、下手に政府に逆らってデモを起こしたりしたら、投獄されたり殺されたりするかもしれないからです。それでも人々が我慢できずに政府に逆らうとすれば、食糧難によって飢えが現実化する時です。
歴史上で代表的な事例をみると、18世紀のフランス革命、20世紀の天安門事件、21世紀のアラブの春などが挙げられます。
1789年にフランス革命が起こる直前の社会では、特権身分とされていた聖職者や貴族は全人口の2%にすぎなかったものの、土地の約40%を所有していました。残りの市民は重い税負担を課せられ搾取されていたので、現代とは比べものにならない凄まじい格差社会であったのです。
しかし、それが革命の直接の原因ではありませんでした。
革命の原動力となった大部分の貧しい市民は重労働・低収入で、小麦価格の高騰からパンが買えなくなったのです。当時は火山の爆発で天候不順が続き、小麦の収穫が激減したといわれています。ふだんはおとなしい庶民が飢えから革命を起こし、フランスを絶対王政から民主政へと根底から変革したというわけです。
懸念が深まる中国
1989年に中国で起こった天安門事件も、その原因は穀物価格の高騰にありました。たしかに学生が主導した民主化運動であることに間違いはありませんが、それはあくまで表面的な見方に過ぎません。
その事件の根底には、年率で20%近いインフレによる民衆の生活苦や飢えに対する不満があったのです。
なぜ中国政府が「財政赤字の対GDP比率を3%以内に抑える」という方針を堅持しているのかというと、インフレを過度に恐れているからです。日本政府に比べればはるかに財政に余裕があるにもかかわらず、天安門事件以後の中国の財政における方針では、「放漫財政によって物価高を招けば、社会が不安定になり共産党独裁体制の土台が揺らぐ」という懸念が共有されています。
© 現代ビジネス 天安門事件以降、中国政府は物価高騰に神経をとがらせている Photo/gettyimages
2011年に中東で起こったアラブの春のきっかけも、小麦価格の高騰によるものでした。
主食であるパンの価格も高騰し、庶民は食べていくのが苦しくなったのです。
北アフリカのチュニジアで発生した反政府デモが当時のベンアリ独裁政権を倒し、それがエジプトのムバラク独裁政権やリビアのカダフィ独裁政権を崩壊させるまでに波及していきました。
いま火種を抱える「国の名前」
フランス革命、天安門事件、アラブの春の例からも分かるように、革命や動乱につながるような民衆の暴動は多くの場合、インフレによる生活苦が原因となってきました。
とくにアラブの春は、2010年にロシアとウクライナの穀物輸出制限が大きく影響していました。
いま、まさに中東や北アフリカで再び政情不安が高まっているといえるでしょう。
国連食糧農業機関(FAO)によれば、ロシアとウクライナの両国からの小麦輸入シェアが50%を超える国々は、中東やアフリカを中心に26カ国もあります。
両国からのエネルギーや穀物の輸出が減少したことで、食糧難や政情不安に陥る国々が徐々に増えつつあるようです。
足元ではパキスタンやスリランカで政権交代が起こり、イラクやペルーでも食糧高に抗議する大規模なデモが発生しています。
リビア、レバノン、チュニジア、イエメン、ソマリアなどでは、食糧不足による人道危機を心配する報道がされています。
© 現代ビジネス ロシアによるウクライナ侵攻が、食糧危機のリスクに拍車をかけた Photo/gettyimages
原油や天然ガスなどのエネルギー価格の上昇と連動して、食糧高が長期化するリスクが高まっています。そのうえ、ロシアによるウクライナ侵攻が、そのリスクに拍車をかける事態を招いています。
その結果、新興国・途上国の政治を大きく変える地殻変動が起こるかもしれないのです。」
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