⚡41】─7─日本の安全性の崩壊。免震・制振装置データ改竄と地震対策への信用不安。〜No.205No.206No.207 * 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。  
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 日本は地震大国であり、近い将来、南海トラフ地震や首都直下型大地震が発生する。
   ・   ・   ・   
 日本人は、生き残れるのか?
   ・   ・   ・  
 日本列島は、自然災害多発地帯であり、甚大なる複合被害が起きる危険地帯である。
   ・   ・   ・   
 2018年10月16日 産経新聞「KYBデータ改竄 不正の手口「脈々と」 改竄手法口頭で伝え、チェック体制も欠如
 検査データに不適切な書き換えがあったとして記者会見する、油圧機器大手「KYB」の中島康輔社長(右)と子会社「カヤバシステムマシナリー」の広門茂喜社長=16日午後、東京・霞が関国交省(松本健吾撮影)
 製造する免震装置の検査データ改竄(かいざん)が発覚した部品メーカーのKYBと、子会社のカヤバシステムマシナリー。16日に記者会見したKYBの中島康輔社長ら幹部は沈痛な表情で謝罪した。チェック体制が欠如し検査員が改竄手法を口頭で引き継いだと説明。学校や病院など、公共性の高い場所にも納入実績があり「安全確認を急いでいる」というが、ずさんな管理に批判を浴びそうだ。
 「担当者が書き換えの方法を脈々と引き継いでいた」。会見で幹部らは、経緯をこう表現した。
 改竄は少なくとも8人の担当者が第三者のチェックがない環境で実行。KYBからカ社への事業譲渡の際に全ての担当者が変わったが、後任研修の中で手法が口頭で伝えられたという。別業務の社員が不正に気づき報告するまで長年、発覚することはなかった。
 基準を満たさない商品の分解・再調整に時間がかかり、納期に間に合わせるため行われた可能性もあり、中島社長は「悪い問題を上にあげるよう徹底していたが不十分だった。継続的に不正が行われたきたことを深くおわびし、再発防止に努める」と釈明した。
 装置は公共性の高い施設などにも使われ、同社は「ご心配を払拭することが最優先事項」と強調。一方で、具体的施設名は「改竄が特定されれば設計者、建設者、所有者の合意が得られれば、国交省とも相談して公表したい」と公表を差し控えた。
   ・   ・   ・   
 10月18日 産経新聞「基準値のずれ最大42・3%、出荷総数7割が不適合か KYBデータ改竄 19日施設名公表
 検査データに不適切な書き換えがあったとして記者会見する、油圧機器大手「KYB」の中島康輔社長(中央)と子会社「カヤバシステムマシナリー」の広門茂喜社長(左)ら=16日午後、東京・霞が関国交省(松本健吾撮影)
 油圧機器メーカーのKYBと子会社のカヤバシステムマシナリーの免震・制振装置データ改竄(かいざん)問題で、免震装置では出荷総数の7割超が国の基準や顧客契約に反する不適合品だった疑いがあり、基準値から最大で42・3%ずれた製品も出荷されていたことが18日、分かった。震度7程度の地震でも倒壊の危険はないとしているが、揺れが大きくなるなど本来の機能が十分に発揮されない恐れがある。KYBは19日、出荷先のうち所有者の了解が得られた施設名を公表する。
 改竄されたのは、建物の地下などに設置して揺れを抑制する免震オイルダンパーと、地上階に設置する制振オイルダンパーの検査結果データ。基準値よりプラスにずれるとダンパーの動きが硬くなって地震の揺れが建物に伝わりやすくなり、マイナスだと動きが柔らかくなって揺れ幅が大きくなる恐れがある。
 免震ダンパーは建築基準法に基づき、性能が基準値のプラス・マイナス15%以内に収まるよう定められている。また同社は顧客契約で、基準のプラス・マイナス10%以内に収めるより厳しい規定を定めていた。
 だが、改竄が確定した免震ダンパーのうち最大で基準値をプラス42・3%も逸脱した製品が医療施設に設置されていることが確認された。
 一方、制振ダンパーでは国が定める性能基準値はなく、同社の顧客との契約で基準を定めている。プラス・マイナス10%以内に収めることになっていたが、最大でプラス20・5%ずれた製品のデータを改竄、出荷していた。
 同社によると、免震ダンパーの出荷総数1万369本の7割超にあたる7550本で不適合品やその疑いがあるにも関わらず、903物件に設置されていた。また、制振ダンパーの出荷総数2万779本のうち、同様に問題のある3378本が83物件に設置されている。」
   ・   ・   ・   
 10月19日19:32 産経新聞「KYBデータ改竄 モノづくり企業の不祥事、その共通点は…「納期の重圧」
 会見を終え、会場を後にするKYBの齋藤圭介取締役専務執行役員。右奥はカヤバシステムマシナリーの広門茂喜社長=19日午後、国交省(納冨康撮影)
 日本を代表するメーカーによる品質不正が後を絶たない。背景には「現場の負担増」「ガバナンス(企業統治)欠如」「人手不足」といった共通点が浮かび上がる。品質を強みとする日本のモノづくりを根底から揺るがす異常事態は一向に終わりがみえず、いつ新たな問題企業が出てきてもおかしくない状況だ。
 「(日本メーカーは)激しい競争に直面し、コストダウンを求められる中で人員を削減してきた。余裕がなく、現場がおろそかになっている」。企業論を専門とする政策研究大学院大学橋本久義名誉教授は一連の不正の背景をそう指摘する。
 昨年10月に神戸製鋼所が公表して以降、不正に手を染めていたことが発覚した企業は三菱マテリアル東レ日産自動車、SUBARU(スバル)と枚挙にいとまがない。
 多くの不正で直接的な原因として挙げられるのが、「納期順守の重圧」だ。
 KYBの不正は少なくとも平成15年にさかのぼり、検査データ改竄(かいざん)の手口を検査員が引き継いでいた。子会社のカヤバシステムマシナリー(東京都港区)の広門茂喜社長は19日の記者会見で、「不具合品を分解して新しいモノにするのに時間がかかる。納期を守りたいがために正しい作業を省いた」と説明した。
 また、KYBには、免震・制振装置の性能をチェックする検査員が1人しかいなかったという。コスト削減を優先する中で人手不足が常態化し、現場に重い負担がのしかかっていた可能性が高く、事実なら適切な人員配置を怠った経営陣の責任は重い。
 一方、不正の多くは非主流部門が舞台となった。
 KYBは、連結売上高の約6割を自動車部品が占める。一方、免震・制振オイルダンパー事業は3%弱にすぎず、19年にはカヤバシステムマシナリーへ事業譲渡されていた。子会社に移ったことで経営陣が目配りできなくなった。
 これらの要因の多くは、神鋼や三菱マテなど不正に手を染めた他の企業にも当てはまる。各社は情報開示でも後手に回っている。KYBも国土交通省への不正報告から公表まで約1カ月かかった。危機管理広報コンサルティング会社、エイレックスの江良俊郎社長は「まったく甘い。企業向けビジネスが中心で、消費者のことを考えていない」と対応を厳しく批判する。(井田通人)」
   ・   ・   ・   
 10月19日21:11 産経新聞「KYB改竄 最近のデータも残存せず ずさんさ明らかに
 油圧機器メーカー「KYB」と子会社によるデータ改竄の免震・制振装置が使用されている建築物を公表する会見の冒頭で謝罪する(右から)KYBの齋藤圭介取締役専務執行役員、カヤバシステムマシナリーの広門茂喜社長=19日午後、東京都千代田区国土交通省(納冨康撮影)
 KYB側が19日行った施設名公表に伴う会見で、幹部は約2時間の質疑に答えたが、影響が大きい病院やマンション、五輪施設、原発関連施設などはこの日は未公表で、幹部は「作業が手いっぱい」と言い訳に終始した。資料がなく改竄の有無が不明な建物も多く「恥ずかしながら申し訳ない」とも繰り返した。
 午後4時すぎ、150人以上の報道陣が集まった東京都千代田区国土交通省の会見場。配られたリストには、会見場が入る国の中央合同庁舎第3号館の名前もあった。同施設を含めたリストの大半で改竄の有無を「不明」としたお粗末さを指摘されたKYBの斉藤圭介専務は「最近の製品でも検査データが残っていないものがある」と、文書管理のずさんさを謝罪した。
 同席した子会社の幹部は、不正が内部で指摘された時期を確認されると、16日に説明した「今年8月上旬」より「早い段階からという情報もある」と述べた。だが、詳しくは「第三者の調査に委ねる」とし、説明責任を果たすことがままならない状態を露呈させた。

   ・   ・   ・   

⚡41】─6─日本の安全神話崩壊。日本企業のモラル低下。〜No.202No.203No.204 * 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。  
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2016年3月17日 週刊文春「出る杭は伸ばせ! 辻野晃一觔のビジネス進化論
 リーダー受難の時代に
 ……
 優先社長三代に渡る粉飾決算問題で揺れる東芝も、以前は経団連会長を務めた石坂泰三氏や土光敏光氏といって偉大な経営者を輩出した。土光氏は我欲を越え、会社だけでなく社会全体を見通す経営を貫き、私生活では清貧を通した。そんな東芝ほどの名門でも、今や、『会社のため』を大義と勘違いして、悪びれずに部下に不正を強要するような人達がリーダーの座に就く会社になり果てた。東芝が発覚して頭を下げる経営者の光景は日常にすらなっている。
 中長期より短期を
 一方で思うのは、今は『リーダー受難の時代』ということだ。会社経営では、欧米流のコーポレートガバナンスが否応なしに適応され、短期的な成績ばかりが求められる。中長期の視野があっても、世間はその成果を待ってはくれない。サラリーマン経営者が増え、在任中の成績を優先してそつなく立ち回ろうとする傾向もやむなしという状況だ。
 『日本人にかえれ』の著作もある出光佐三氏は、出光興産の最高にあたり、玉音放送の直後に『愚痴を止めよ』と全社員に告げた。敗戦国の分際で、大国イギリスや石油メジャーの圧力に屈することなくイランにタンカーを差し向けた『日章丸事件』は、石油の自由貿易再開を勝ち取り、日本人が誇りと自信を取り戻すきっかけにもなった。あえて火中の栗を拾ったその行為は、リーダーかくあるべしとの教えでもある」
   ・   ・   ・   
 5月7日 産経ニュース「羽田空港滑走路のデータ改竄 東亜建設工業、耐震工事の薬液量など4点
 記者会見で謝罪する東亜建設工業の松尾正臣社長(右から2人目)ら=6日午後、横浜市
 中堅ゼネコン「東亜建設工業」(東京)は6日、同社が担当した羽田空港C滑走路の地盤改良工事でデータを改竄(かいざん)し、国土交通省に虚偽の報告をしていたことを明らかにした。同社によると、偽装があったのは地震時に滑走路の液状化を防ぐ耐震化工事。土中に注入する薬液が予定量の5.4%しか注入されなかったにもかかわらず、仕様書通りに施工されたようにデータを改竄し、虚偽の報告をして完成検査を受け、引き渡していた。国交省関東地方整備局は、通常利用に問題はなく滑走路の運航制限はしないとしている。
 同日、横浜市内で記者会見した同社の松尾正臣社長は「関係者にご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわびします」と謝罪。当初予定の6月株主総会に先だって社長を辞任し、代表権のない相談役に退く意向を示した。
 問題の工事は、滑走路の脇から穴を掘って薬液の注入を行う同社が開発した「バルーングラウト工法」とよばれる工法で、平成27年5月から同28年3月に行われた。
 薬液を注入する管を地中に埋めた長さ▽薬液の注入量▽施工後の地盤強度−などの4点で偽装があった。管を通すため穴を開ける際、地中のコンクリート片などに当たり予定位置に達しなかったことや、薬液が浸透しにくい土質だったことなどが原因という。地盤強度は施工前とほとんど変わっていないという。
 4月中旬に工事に携わった2次下請けの作業員を介して施工不良があったとの通報が同社にあり、4月21日に調査を指示。27日に施工不良の疑いがあることを国交省に申告した。
 調査の過程で、施工責任者の東京支店前支店長は「プレッシャーから『失敗できない』と現場の人間にも言い続けてきた」と話しているという。これに対し、松尾氏は「前支店長が明らかに指示したわけではないと思っている。最終的には調査を通じて明らかにしていきたい」と述べ、具体的にどの段階で偽装が行われていたかについては「調査している」と話すにとどめた。
 同工法は福岡空港(福岡市博多区)など11施設で行われており、同社は他に問題がなかったか調査を進めているほか、原因究明と再発防止に向けた調査委員会を設置する。
   ◇
【用語解説】東亜建設工業
 「臨海工業地帯開発の父」と呼ばれた事業家の浅野総一郎が明治41(1908)年に創業し、神奈川県などを流れる鶴見川河口の埋め立て事業を手掛けた。大正3年に鶴見埋築株式会社を創立、合併などを経て、昭和48年に東亜建設工業株式会社に社名変更する。その後、道路や橋梁(きょうりょう)、宅地造成工事などにも進出。ベトナムコンテナターミナル整備、インドネシアの石炭火力発電所の土建工事にも携わる。同社ホームページによると、平成26年度の売上高は1988億円。」

    ・   ・   ・   

⚡41】─5─厚労官僚。日本の公式統計手抜きと国際的信用の失墜。~No.199No.200No.201 * 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。  
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・    
 2019年1月10日 産経新聞「統計問題あす詳細発表 公明幹部が見通し
 記者会見する公明党の北側中央幹事会会長=10日午前、東京都新宿区の党本部
 公明党北側一雄副代表は10日の記者会見で、厚生労働省が賃金や労働時間の動向を把握する毎月勤労統計に関し不適切な手法で調査を行っていた問題について、11日に根本匠厚労相が詳しい内容を記者会見で公表すると明らかにした。
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で、勤労統計に不適切な調査があった問題を受けて平成31年度予算案を修正する可能性を示唆した。「厚生労働省の調査結果を踏まえて、必要があれば適切に対応する」と述べた。
 勤労統計は、失業給付の算定基準などに使われており、統計自体が誤っていれば給付額が本来と異なる可能性がある。失業給付などへの国の負担額を計上している31年度予算案にも影響する恐れがある。
 菅氏は「政策立案の基となる統計の正確性を確保することは当然だ。しっかり対応する」と語った。北側氏は「国際的にも大事な資料となり、正確さが求められている。極めて遺憾だ」と述べた。」
   ・   ・   ・   
 1月12日 産経新聞「勤労統計不正、23年前から ずさん対応浮き彫り
 11日、不適切な勤労統計に関する記者会見の冒頭で謝罪する根本匠厚労相厚労省(納冨康撮影)
 賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計」の調査が不適切だった問題で、不適切調査は平成8年から行われていたことが12日、分かった。さらに、500人以上の規模の事業所を全調査しなければならないものを、厚労省は東京都分に加え、昨年6月、大阪、愛知、神奈川の3府県に「抽出」とする不適切調査を要請していたことも判明。統計に対する厚労省のずさんな対応が浮き彫りになっている。
 厚労省によると、8年から全国約3万3千事業所を調査していたと公表していたが、実際には約3万事業所しか調べておらず、1割が抜け落ちていた。ただ、厚労省が確認できた範囲では、公表していた数値に影響はないという。
 勤労統計は厚労省都道府県を通じて行い、従業員500人以上の事業所は全数調査がルール。しかし16年からは、賃金が高い傾向にある大規模事業者が多い東京都内約1400事業所のうち3分の1だけを抽出して調べ、このことが全国の平均賃金額が低く算出されることにつながった。
 厚労省は昨年6月、東京を参考に、やはり事業規模が大きい事業所を抱える大阪など3府県の各担当課長あてに、同省政策統括官参事官から、1〜2割程度除外した抽出調査を行う旨の連絡をした。今回の問題発覚後に撤回されたが、3府県での抽出調査が実際に行われていれば、統計上の賃金額などが低くなり、今回、発覚した過少支給額が拡大していたとみられる。
 厚労省の担当者は「統計分野ではほとんどが抽出するというやり方だった。実務レベルで淡々と行われていて、統計上(賃金額などを)改竄(かいざん)するという意図はなかった」と説明。不適切調査が始まった動機や背景については今後、職員への聞き取りを進めて解明していくという。
 不適切調査により、雇用保険の失業給付や労災保険などの過少支給の対象者は延べ約1973万人で、追加給付の総額は約537.5億円に上る。雇用保険の中には、育児や介護を理由に休業した人にも支給額が少なかったケースもある。厚労省は相談窓口を設け、追加給付のための申し出を呼びかけている。
   ・   ・   ・   
 1月25日 msnニュース FNN「今度は「重要統計4割で問題」 “日本の信用”ガタ落ち?
 c FNN.jpプライムオンライン
 勤労統計の不正調査問題をめぐって25日、野党が行った合同ヒアリング。
 立憲民主党・初鹿議員
 「相当間抜けなんです。一言で言えば」
 国民民主党・原口国対委員長
 「実質賃金が伸びたというのは、早く訂正してくださいよ。これ、アベノミクス偽装だ」
一方、自民党小泉進次郎厚生労働部会長は25日、「15年間の経過の中では、与野党ない案件でもありますから、疑念がこれ以上拡大したり、次々ぼろぼろ出ることがないよう、対応していきたい」と述べた。
 特別監察委員会による調査が終わったあとも、波紋が広がっている。
 立憲民主党・辻本国対委員長
 「やり直した方がいい」
 「職員だけのヒアリングをしている人がいる。これは断じて認められない」
 立憲民主党は、調査の一部が第3者を交えない厚労省の身内による調査だったとして調査のやり直しを要求。
 根本厚労相は、外部の識者も交え、調査をやり直す方針を表明した。
 根本厚労相
 「いささかの疑念が生じないように、ヒアリング調査などをさらに行う」
 そうした中、24日、政府の56の基幹統計のうち、およそ4割にあたる22の統計に問題があったこともわかった。
 25日、石田総務相は「毎月勤労統計調査のように実際の調査方法、復元推計の実施状況に問題のある事案はなかった」と、説明。
 しかし、大和総研エコノミスト・小林俊介氏は「海外から見たときに、数字があまりあてにならないという話になってくると、そんな不透明な国では投資やビジネスができない、ますます日本離れが進んでしまう可能性を秘めている」と話した。
 ギリシャでは2009年、前の政権が財政赤字の数字をごまかしていたことが発覚。
 国の信用が失墜し、経済危機を招いた。
 小林氏によると、2018年6月、不適切な調査が原因で、日本の賃金に高い伸びが示されると、海外の投資家などから問い合わせが相次いだという。
 小林エコノミスト
 「ついにこの時がきたかと、日本はデフレから脱却してインフレになるのか、デフレの国から転換していくんじゃないかと。そういうような期待の声が一部にあった」
 日本の統計の信頼性を揺るがす不正調査問題。
 来週始まる通常国会で、最大の焦点となる見通し。
   ・   ・   ・   

    ・   ・   ・   

⚡41】─4─偽装大国化する日本で製造されるメイド・イン・ジャパン。日本企業の凋落と日本経済の衰退。〜No.196No.197No.198 * 

  ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。  
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・    
 2017年11月2日号 週刊文春「それでも社長になりたいあなたへ 宋文洲
 『メイド・イン・ジャパン』失墜その温床は『終身雇用』だ
 今年9月の中国市場におけるタカタ製のエアバッグに起因するリコール対象車は、なんと765万台に上りました。これは通算ではありません。1ヵ月間での数字です。
 タカタ製エアバッグを搭載したリコール車は全世界で合計1.2億台に達しています。日本では大したニュースになっていませんが、1.2億台の車体を並べれば54万キロになり、地球と月との距離の1.4倍にもなるのです。
 2009年、アメリカで、タカタのエアバッグから飛び散った金属片で首の動脈を切り少女が亡くなるという事件がありました。実は、その前年から小規模のリコールは断続的に行われていた。しかし経営陣は何年もデータを隠し続け、世界に100件以上の死傷事故と天文学的な台数のリコールをもたらしたのです。
 今年6月末にタカタは経営破綻に追い込まれますが、その衝撃が冷めないうちに神戸製鋼の品質偽装が発覚。偽装された材料は車、新幹線、飛行機から原発まで、国内外の500社に納入されており、世界中のメディアが『メイド・イン・ジャパン』に疑惑の目を向け始めています。
 さらに日産自動車の不正検査問題も明らかになった。こちらは不正検査の発覚後も、無資格者が検査し続けていたという問題です。
 近年、三菱自動車の燃費不正、旭化成の『傾きマンション』、東芝の財務問題など、日本の大企業で続々と不正が露見しています。これだけの件数が短期間に起きるのは世界的にも珍しい。まるで日本は『偽装大国』になったかのようです。
 私は『終身雇用』がこうした不祥事の温床になっていると考えています。終身雇用の下では不正の連鎖に歯止めがかからない。一度偽装が始まると後継者が暴くことはない。トラブルのババ抜きと同じで、先輩が残したジョーカーを誰も引きたくないのは当然です。
 また戦前を経験している経営者がいなくなったことも原因の一つです。約10年前から敗戦の記憶を持つ経営者が引退。そして高度成長の中で育った人々が経営者になっています。敗戦は屈辱だけでなく、彼らは戦前の日本製品の酷さを知らずに育っている。アメリカのハイウェイで日本車が煙を上げて立ち往生した事件も知らないし、ソニー盛田昭夫氏や松下電器松下幸之助氏など、初代経営者の苦労も知らない。
 そして先達の努力の結晶である『高品質』にあぐらをかくようになった。メディアの喧伝もあり、『日本企業であれば必ず高品質を出せる、いや出して当然だ』と誤解し始めました。
 さらに間の悪いことにちょうど10年前から中国メーカーが急速に力をつけ始めた。14年にはハイテク製品のシェアで日中が逆転しており、今もその差は広がっています。
 日本の企業が現実を受け入れ、改革すればいいのですが、業績と世間体にこだわり、偽装に手を出してしまう。東芝の経営陣が偽装を指示する際に、『工夫しろ』という言葉を使っていました。『あるべき結果』を先に設定し、データ改竄を指示する構図はどの不祥事でも同じです。
 こうした病理は一部で流行する『日本スゴイ』風潮にも通じます。客観的な現実から目を逸らし、偽装現実を作り出して一時的な『安堵』と『勇気』を得る。偽装は企業だけの問題ではないと認識するべきではないでしょうか」
   ・   ・   ・   
 終身雇用・年功序列・毎年給料昇給は、敗戦後混乱期・戦後復興期・高度経済成長期までは有効であったが、バブル経済期以降は有害であった。
 人口激減時代において、人口爆発期モデルである終身雇用・年功序列・毎年給料昇給は切り捨てなければ日本は衰退するしかない。
   ・   ・   ・   
 21世紀の日本を指導する政治家、官僚、企業家・経営者、学者、マスコミ関係者などは、過去の遺物である人口爆発期の教育を優秀な成績で終了した知的エリート達である。
 彼らが見ているのは、提出された統計数値だけで、その先の人・日本民族日本人ではない。
   ・   ・   ・   
 自分に都合の良い数値、自分が欲しい数値、自分が安心できる数値、相手を騙し誤魔化せる数値、を意図的に作り出す。
 数値は、真実を目に見える形で明らかにすると同時に真実を隠す目からましでもある。
   ・   ・   ・   
 日本の政治家・官僚は三流以下と言われてきたが、今や経営者・企業家も三流以下に落ち、そして学者やマスコミ関係者も仲良く三流以下に落ちた。
 つまり、日本人全体が「売家と唐様で書く三代目」の放蕩息子・どら息子・ダメ息子・不逞息子状態となって、日本国を破産させ、祖先から受け継いだ大事な身上・身代を食い潰す。
 彼らでは、破滅・崩壊・破綻を伴う最悪の人口激減時代・少子高齢化時代を乗り切る事はできない。
 その象徴が、2017年10月に行われたどたばた喜劇のような醜態を晒した衆議院選挙である。
 日本は、今後、先進国・一流国か転落し、新興国・二流国どころか発展途上国・三流以下にまで落ちぶれていく。
 その分岐点が、2017年と言う事になるかもしれない。
 その発端は、1980年代後半と言える。
   ・   ・   ・   
 日本を崩壊させたいと願う反天皇反日的日本人達は、日本民族日本人の愚行を高笑いし、民族国家日本の崩壊を楽しげに高みから眺めている。
 反天皇反日的日本人は、左翼・左派とは限らず右翼・右派の中にも少なからず存在する。
   ・   ・   ・   
 如何に優れた科学技術があり、類い稀な才能・能力があろうとも、人として信用・信頼をなくせば無意味であり、存在価値はない。
 日本の100年以上続く老舗商店は、その事を知り、顧客・お客を神様として大切にした。
 現代の企業は、忘れたか捨て去り、顧客・お客を金を出して買う消費者と見なし、売上高・統計数値による株高にしか関心がなくなった。
 故に、現状の信用を失っても恥じない偽装大国・日本では未来はない。
   ・   ・   ・   
 日本は、生存に必要な食糧・資源・エネルギーをアメリカの影響下にある国・地域から大量に輸入し、生活に必要な金融・サービスそして輸送・運輸をアメリカに依存している。
   ・   ・   ・   
 日本には、バレなければ多少の誤魔化しはあって当然、法律で禁止されてなければ何をやっても構わない、契約の条項に入っていなければ気にすることはない、という考え方が蔓延している。
 その考え方は、1980年代以前の日本ではありえない考え方で、「恥」と「穢れ」と「言霊」を大事にする日本民族日本人の考え方ではない。
 官僚的な事勿れ主義や問題先送りが日本を支配し、日本民族日本人の心から「恥」「穢れ」「言霊」を消滅させつつある。
   ・   ・   ・   
 老後は、金を貯め、全財産を持って海外に逃げ出した方が、日本に留まるよりも幸せになれるかもしれない。

   ・   ・   ・   

⚡41】─3─アメリカやEUなどで広がる日本ブランドと日本工業規格(JIS)への不信。~No.193No.194No.195 * 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・  {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・    
 信頼・信用を築くのは大変な事だが、失うのは一瞬で、失った信頼・信用を取り戻すのは並大抵の事ではない。
 「日本ブランド、メイド・イン・ジャパンは好かれているから必ず買ってもらえる」とは、嘘である。
   ・   ・   ・    
 2017年10月21日 産経ニュース「【神戸製鋼データ改竄】米でも揺らぐ「日本製への信頼」 米鉄鋼業界からは怨嗟の声
 データ改竄問題で揺れる神戸製鋼所東京本社=東京都品川区
 【ワシントン=塩原永久】神戸製鋼所の性能データ改竄(かいざん)問題が、米国でも日本製品への信頼を揺さぶっている。神戸製鋼から供給を受けていた民間企業や政府が調査を進めており、米メディアは品質を売りとしてきた日本製品の「評判への打撃」と報じている。また米鉄鋼業界からは「(業界の製品検査への)信頼が損なわれかねない」と怨嗟(えんさ)の声も出ており、反響が広がっている形だ。
 不正をめぐっては、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなどに問題の製品が供給されていたことが判明。現時点で安全面への影響は把握されていないが、各社は調査を続けている。
 航空機大手のボーイングは20日、産経新聞の取材に「これまでの調査で(改竄問題が)安全上の懸念を生じさせる事例はないとの結論に至った」と回答。問題発覚後、「サプライチェーン(調達・供給網)を包括的に点検」する作業を実施したといい、調査は今後も継続するとしている。
 米政府では、司法当局が神戸製鋼に資料の提出を求めたほか、道路交通安全局(NHTSA)も関心を寄せているようだ。 
 高品位な素材の納入先は軍事用も含め多岐にわたり、国防総省も「どの程度の軍事プログラムやプラットホームに(神戸製鋼の製品が)使われているのか調べている」としている。
 日米関係を専門とするヴァンダービルト大のジェームス・アワー名誉教授は、改竄発覚に「落胆した」とする一方、「日本の品質基準はもともと非常に高く、現段階で安全性にかかわる事態が生じていない」ことから、米国内で影響が深刻化するとはみていない。
 ただ、日本の製造業をめぐっては、神戸製鋼の問題以外にも日産自動車による無資格検査が表面化。「精密な日本の製造業の評価に新たな影がかかった」(米紙ニューヨーク・タイムズ)といった論評も出ている。
 米鉄鋼業界も無関係ではない。鉄鋼産業の専門調査会社「スチール・マーケット・アップデート」が実施したメーカーや専門商社の役員に行った聞き取り調査では、業界の品質検査に対する不信が生じかねないとの懸念が寄せられた。
 調査結果では、「単に外国の工場で起きた問題では済まない」と業界全体への影響を危ぶむ声や、「当局から検査の厳格化を求める圧力」が高まるのではないかとの指摘が出たという。」
   ・   ・   ・   
 10月22日 産経ニュース「【主張】日産と神鋼の不正 安全の基本損ねる背信
 安全を守るための法令をあまりに軽んじる姿勢にあきれる。
 日産自動車が資格を持たない社員に完成車の検査を行わせていた問題で、9月の不正発覚後も大半の工場で無資格検査が続けられていた。
 アルミや鉄鋼製品の性能を改竄(かいざん)していた神戸製鋼所では、社内の自主点検の際に管理職らが不正を隠蔽(いんぺい)していたことが新たに発覚した。
 いずれも日本を代表する大手メーカーである。社内不正が常態化していたのだろうか。世界の信頼をも揺るがす背信行為の続発を重く受け止めなければならない。
 安全性を早急に確認し、原因を徹底解明するのは当たり前だが、言葉で取り繕うだけなら消費者や取引先に見放される。
 日産の西川広人社長は不正発覚時点の会見で「再発防止を徹底した」と強調した。非常時におけるトップの指示さえ製造現場に行き届かない状況に驚く。管理体制を強化するため、国内で生産した車両の出荷を全面停止したのも当然である。
 資格者が検査する本来の態勢に改めたはずなのに、無資格者の検査が続いていたのは、管理職同士の連絡ミスなどが原因という。
 西川氏は「現場任せだった」と釈明したが、指示が現場に届かないのは企業統治に決定的な不備がある証左である。
 生産を拡大する一方で、完成車を検査する陣容が他社よりも手薄だったという指摘もある。
 仏ルノー出身のカルロス・ゴーン会長は、コスト削減など効率優先の経営が特徴だ。それが不正につながったとすれば問題の根は深い。徹底した検証が必要だ。
 出荷前検査は、道路運送車両法に基づき、自動車メーカーが国の安全検査を代行する制度である。その見直しの必要性についても、政府は検討すべきだろう。
 神戸製鋼ではアルミ製品などの性能改竄が判明し、米司法当局や欧州連合(EU)当局も調査に乗り出した。日本ブランドの信頼が傷つけば、政府が進めるインフラ輸出にも悪影響を与える。
 さらに同社では、日本工業規格(JIS)の検査証明書を書き換えた疑いも新たに見つかった。
 他の企業、業界に同様の問題がないのか気がかりだ。法令順守について産業界全体で襟をただすのはもとより、有効な防止策を講じるのは政府の責務でもあろう。」
   ・   ・   ・  
 
国際標準は自分で創れ!

国際標準は自分で創れ!

⚡39】─1─公益通報者保護法制度。偽装大国ニッポンは内部告発者を裏切り者として排除した。~No.173No.174No.175No.176 * ㉔ 

新書813内部告発の時代 (平凡社新書)

新書813内部告発の時代 (平凡社新書)

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。  
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 正直者が馬鹿を見る時代に突入した。
   ・   ・   ・   
 江戸時代において、主君に対する諌言や忠告は勇気ある忠義であるとして褒められた。
 現代日本は、正しい事で告発すると、軽蔑され、袋叩きにあい、不利益を被る。 
   ・   ・   ・   
 日本の信用は、度重なる偽装・捏造・改竄とその都度繰り返される偽りの謝罪で地に落ち始めている。
 日本の経営者は、隠していた偽装・捏造・改竄がばれて頭を下げて謝罪の言葉を述べるが、その言葉に真実味はない。
 それは、政治家や官僚でも同じ事で、次から次へと不祥事が明らかになっても嘘や詭弁を弄して言い逃れをしている。
 子供達は、常識ある大人達とは思えない卑屈・卑劣な醜態を見ながら成長していく。
 日本の無様な姿は、バブル崩壊から続いている。
 日本の大人達から、自分でどうにかしようという自浄能力が消えている。
   ・   ・   ・   
 2018年6月24日号 サンデー毎日公益通報者保護法制度は機能不全!
 『正義の組織人』の声が黙殺されている
 悲しき〝偽装大国ニッポン〟を告発するはずが
 2006年に『公益通報者保護法』が施行され、内部告発者は保護されることになった。ところが、今も企業による『データ偽装』などの不正は後を絶たない。正義の組織人が声を上げにくいようだ。せっかくの法が、有名無実化してはいないだろうか?」
   ・   ・   ・   
 不正を公にする内部告発者を、組織に対する「裏切り」として排除するのはバブル崩壊後の日本の醜悪な風潮であった。
 江戸時代の武士社会では考えられなかった。
 武士にとって守るべきは、大名・主君ではなく藩・御家であった。
 武士が最も怖れたのは、主君や藩重役の悪政や不正が原因で騒動が起き、その不祥事が御上・幕府に知られる事である。
 御上・幕府は、大名支配を強化し、領地経営に不手際がればあ厳罰を下し、天下の御法に照らして許せない罪科があれば藩が取り潰し、大名を改易し、問題の藩重役を切腹させた。
 武士・サムライと現代日本人とは違う。
   ・   ・   ・   
 領民である百姓は、大名・領主の不正や悪政に対して一揆を起こして改める事を求めるが、藩が受け入れなければ、御上・幕府に訴えた。
 御上・幕府は、百姓の訴えを受けて吟味して告発された大名に沙汰を下した、同時に「喧嘩両成敗」として訴えた百姓にも罰を与えた。
 百姓は、決して「泣き寝入り」はしなかった。
 同じ村人は、ムラ根性から、処罰を受けた百姓を温かく迎えムラの「神様」として崇めた。
 百姓と現代日本人とは違う。
   ・   ・   ・    
 大名・主君や藩重役の悪政や不正を切腹覚悟で諫めた武士や改める事を求めて一揆を起こした百姓と、勇気ある内部告発者を「裏切り者」として排除する現代日本人とは、別人的な日本人である。
   ・   ・   ・   
 現代の政治家、官僚、経営者・企業家、学者は、武士・サムライや百姓・町人でも大名でもないし、それ以前にその人物的なその素質もない。
   ・   ・   ・   
 現代の日本が抱える醜悪な諸問題の原因は、日本民族の過去には存在しない。
 元凶は、1980年代以降の日本にある。
 つまり、現代日本人の無責任体質が原因である。
 原因・元凶を過去に求めているうちは、日本は救われる事はない。
 その象徴が、ありもしない「天皇の戦争責任」問題である。
   ・   ・   ・   
 天皇の戦争責任を声高に叫ぶ日本人は、全ての責任を他人に押し付け・擦り付けて逃げる日本人であり、信用するに値しない心醜く・心汚く・心卑しい日本人である。

   ・   ・   ・   

ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか (朝日新書)

ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか (朝日新書)

内部告発と公益通報者保護法

内部告発と公益通報者保護法

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 法律文化社
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 単行本
内部告発 潰れる会社 活きる会社

内部告発 潰れる会社 活きる会社

🍘8〗─3─台風19号。完成した堤防も決壊、遅れる河川整備〜No.26No.27No.28 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・  ・{東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 政治家は、選挙の票になるか、政治献金になるか、しない限り動かない。
 官僚は、天下り先の利益にならない公共事業に予算をつける事に消極的である。
   ・   ・   ・   
 2019年10月25日 産経新聞「【台風19号】完成した堤防も決壊 遅れる河川整備
 台風19号による堤防の決壊は、既に完成済みの堤防でも起きた。河川全体の治水工事が終わっていなかった影響が大きいといい、関係者は「堤防さえできればすぐに安全というわけではない」と指摘。国の河川整備は予算減少を背景に思うように進んでおらず、専門家は予算を拡充して急ぐべきだとしている。
 国が直轄管理する河川で決壊した堤防は5県7河川の12カ所。このうち千曲川長野市)と阿武隈川福島県須賀川市)、吉田川(宮城県大郷町)の計3カ所の堤防は、いずれも整備が終わり完成していた。
 国の堤防の整備計画は、戦後に起きた最大規模の洪水を河川ごとに想定し、当時と同じ水量に耐えられる高さや幅などを算出。千曲川は昭和58年の台風、阿武隈川は61年の台風、吉田川は22年に甚大な被害が出たカスリーン台風を想定して堤防を設計していた。
 国交省は、今回の水量が想定を超えたかは検証中で、堤防の決壊原因は分かっていないという。ただ、現場を所管する同省地方整備局は「川全体の整備が完了していなかったためだ」と口をそろえる。
 河川整備は堤防のかさ上げや補強のほか、狭い部分の拡幅、川底の掘削による水深の確保、ダムや遊水池の整備など幅広い。全体を20~30年で完了し流せる水量を増やしたり、水位を下げたりして洪水に備える。
 だが決壊した3カ所周辺では、川底の掘削や、川幅が狭くなる場所の対策などをまだ実施していなかった。「堤防だけが完成していても治水レベルが十分でなかった」(北陸地方整備局)ことから、決壊した可能性が高いとみている。
 3カ所はいずれも川の上・中流域で、「河川整備は下流側から進める」という原則が影響した可能性もある。下流側は市街地で人口が多く洪水時の被害が大きいことや、上流を先に整備すると水量が増えて下流の危険が増すことが理由で、上流側は後回しになる。今回の他の洪水被害も上・中流域が目立った。
 治水事業は多額の費用が必要だ。国の当初予算は緊縮財政の影響で平成9年度の1兆3698億円をピークに減少。民主党政権期に急減し、近年はやや回復したが、今年度で8471億円にとどまる。さらに近年は大規模な洪水が多発し、被災地の復旧に予算が集中。「その結果、他の場所の整備が遅れることになる」(国交省)という。
 国が整備が必要と判断した全国の直轄河川の堤防は計約1万3400キロで、このうち30年度末で約3割が完成していない。京都大の中川一教授(河川防災学)は「気候変動で洪水が大型化しており、このままでは被害拡大が続く。国は予算を拡充し、河川整備全体を加速させなくてはならない」と指摘している。」
   ・   ・   ・