⚡30】─3─侵食される国富「絶対的正義」が覆い隠してきた再エネ利権。〜No.130 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2023年8月24日 YAHOO!JAPANニュース Wedge(ウェッジ)「侵食される国富「絶対的正義」が覆い隠してきた再エネ利権
 自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(以下、再エネ議連)の事務局長を務めていた秋本真利議員が東京地検特捜部による強制捜査を受けた。容疑は贈収賄で、有力な風力発電ベンチャーとされる日本風力開発が計6000万円を秋本議員に支払ったとするもので、日本風力開発は容疑を認める姿勢に転じたようである。
 具体的な容疑事実は、日本風力開発が洋上風力の国家プロジェクトの公募制度を自社に有利なものに改変することを画策し、その意図を受けた秋本議員が国会質問を通じて所管官庁である経済産業省へと働きかけたというものである。
 容疑が事実であるならば、再エネ議連の国策と世論の追い風を受けた「絶対的正義」という過信が招いたものかもしれない。その過信を醸成したのは、再エネと言えば無批判で支持する世論であり、再エネを持て囃してその欠点をきちんと報道してこなかったマスメディアだったのではないだろうか。
 汚職事件の構図
 発端は2021年12月に国家プロジェクトの第1ラウンドに当たる秋田県および千葉県の3海域の入札が行われ、三菱商事を中心とするコンソーシアムが全てのプロジェクトを落札したことであった。三菱商事コンソーシアムが落札に成功した最大の要因が入札上限価格の半値以下という圧倒的に低い入札価格であった。
 そもそも資源エネルギー庁が設定した入札上限価格は欧州や中国の水準と比べるとかなり高く、それでいて洋上風力がグリーン成長の切り札のように喧伝されることには現実性がないと筆者は当時から批判していたが、三菱商事コンソーシアムの入札価格は世界水準には及ばないものの、世界との差をぐっと縮めるもので今後の希望を抱かせるものであった。しかしすぐさま風力発電業界の猛烈な巻き返しが始まる。
 まず入札結果の公表後1カ月も経たないうちに、三菱商事コンソーシアムの落札価格は「リスクを低く想定」し、「楽観的な事業見通し」による赤字受注に違いないと断定し、価格破壊が事業の実施可能性、産業育成、立地地域の合意形成の面で問題が生じうるとして、第2ラウンド以降の入札基準の見直しや審査評価の透明化、更には三菱商事コンソーシアムによる第1ラウンド落札の結果さえも政府は見直すべきとする論稿が発表された。その論稿は、三菱商事コンソーシアム以外の業者を「地元密着と評判の事業者」とし、「その価格は適正に高い」とまで言う、露骨なポジションペーパーであったが、その後の制度見直しに大きな影響を与えたものと思われる。
 そして翌22年2月の衆院予算委員会で秋本議員が洋上風力の国家プロジェクトの公募に関する制度見直しを「第2ラウンドから評価の仕方を見直して頂きたい」と当時の萩生田光一経済産業相への質問という形で繰り返し迫った。当然ながら舞台裏でも所管の資源エネルギー庁は強力な働きかけを受けていたと考えられ、国会質問から1カ月後の3月には既に公示済であった第2ラウンドの入札締切の同年6月を異例にも1年近く延期し、実際にその後6月23日には制度変更が行われた。
 制度変更の内容は、(1)最高評価点価格という基準以下の価格を入札した企業は価格要素については満点を獲得、(2)発電開始時期の早期化を配点化、(3)同時に複数海域で公募が行われた場合に落札制限を課す、といったところが重要な点であると考える。しかしいずれも21年末の三菱商事コンソーシアムによる総取りを受け、先行企業である風力発電ベンチャー各社に取り分を確保してガチンコ競争を回避させるような内容である。以下、論評してみよう。
 (1)については、この最高評価点価格というのは別途定められる入札上限価格とは異なり、ある程度競争的な水準が設定される見通しではある。しかし今回、再エネ議連が政治的圧力をかけて最高評価点価格を割高な水準へと引き上げようとする悪しき企みが起こり得ると証明されたことを考えると、各社の価格差に応じて加点していく従来の公明正大な制度の方が望ましいだろう。
 (2)については、元々カーボンニュートラルは50年に向けた目標であり、洋上風力を数年早く稼働させることに(仮に現在が40年代後半などであればともかく)ほとんど意味がない。そのくせ第2ラウンドの入札を1年近く遅らせたていることと全く整合性が取れない。
 (3)については、洋上風力をグリーン成長に寄与するものと持ち上げているのに反し、企業の集中による規模の経済性の実現を妨げようとする内容であり、この点でも再エネ推進が経済成長にもつながるという口上がそもそも真面目に追及されていないのではないかと疑問視せざるを得ない。
 率直に言って、第1ラウンドで負けた企業が第2ラウンドで戦いやすくなるようにルールを変更するという、露骨で公的な制度としては極めて異例な事業進行中の制度変更であったというべきだろう。それでも再エネ業界の有識者は、「秋本議員の働きかけによって、公募ルールが事業者に有利になるようにねじ曲げられたという事実はない。それどころか、今のような価格偏重の入札方式が続けば、日本の洋上風力政策は立ち行かなくなる」と、事ここに至ってもこうした意見と、恬として恥じる様子はない。
 再エネレントと汚職レント
 今回の一件は典型的なレントシーキングである。レントシーキングとは、本来であれば市場競争の下、需要と供給のバランスで決定される価格で供給される財やサービスを、市場での競争を回避することで本来より高い価格で取引されるよう供給側が働きかけることである。
 またこの場合、レントとは競争価格よりも高い価格で取引できることで本来供給者が受け取るべき利益を上回って得られる超過利潤のことを指す。レントを得ようとあれこれ働きかけるからレントシーキングと呼ばれるわけだ。
 市場競争を回避するために、最もよく取られるのは政治に働きかけ(ロビイング)、規制制度を導入することである。規制によって、供給者の数を制限する、あるいは価格を市場によらず政治的に決定するという方法が考えられる。市場取引では需要側と供給側の思惑(買っても良いvs売っても良い)が一致するまで取引は成立しないが、政治はそれに介入し、市場でのバランスから決まるはずの取引量よりも大きく(あるいは小さく)、価格よりも高く(あるいは税金を投入するなどして低く)することになる。
 とは言え、レント=超過利潤と言っても一概に全て否定されるものでもない。例えば、新しい医薬品の特許を取得した場合、一定期間その医薬品を販売する権利を独占的に保有し(供給者を制限し、競争から保護)、高い価格で販売することができる。その時に得られる利潤は供給者が競争して販売する場合の価格水準より大きくなるが、その超過利潤(レント)は特許に値する医薬品の開発に取り組んできた企業への正当な報酬として正当化される。
 特許によるレントがなければ、リスクのある新製品やイノベーションに取り組もうとする企業が出てこなくなる恐れがあり、イノベーションは社会全体に利益をもたらすため、この場合の超過利潤は社会的にも望ましいものである。
 実は洋上風力を含む、再エネ全般のこれまでの成長はレントの賜物である。風力も太陽光もわが国では化石燃料による発電コストよりもずっと割高であった。風力にせよ、太陽光にせよ、化石燃料を含む全ての電源と競争する市場においては、再エネに投資するという決定は起こらないはずであった。
 しかし再エネには発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しないというメリットがあり、そのメリットが社会的に望ましいと政治が価値を見出し、固定価格買取制度(FIT)という形で通常の電力販売価格よりも割高な価格でも再エネは発電した電力を販売できる制度が導入された。競争から隔離され、化石燃料によって発電する電力と品質的に何ら違いのない電力を割高な価格で販売しているわけで、まさしくレントに他ならない。これを再エネレントと呼ぼう。
 そして今回の贈収賄はこの再エネレントとは別に、日本風力開発と政治家が結託して更なるレントの上乗せを企図したもので、それぞれ区別して考える必要がある。この汚職レントとでも呼ぶべきレントも、同様に競争を政治の力で排除して、価格を引き上げることで供給者が不当な超過利潤を得ようとする企てであり、そのために政治家に働きかけるレントシーキングを行ったということになる。
 レントシーキングは見えないところで国力を侵食する
 今回の贈収賄事件のメディア報道は汚職レントの方ばかり注目している。もちろん事件になったのは汚職レントであるから当然ではあるものの、本稿は今回の案件を再エネレントの存在についても改めて考える契機にするべきだと考える。
 特許もそうだが、社会的意義のあるレントであったとして、その存在が許容されるのは本来一時的な期間であるべきである。特許もいつまでも販売独占を認められるものではなく、あくまで特許の有効期間が定められている。再エネレントも本来は一定期間を経た後は解消されるべきものである。
 再エネレントの設定を具体的に見れば、わが国で再エネ導入が本格化した2010年代以降、導入支援策の中心となってきたFITは政治が再エネの買取価格を決定し、その価格水準で利益が出る供給者は全て電力を販売できるとするという制度であった。買取期間は太陽光の場合は20年間であり、長期であるが、レントはいずれ解消されるものとして制度化されている。
 それではこの再エネレントは一体どのくらいの金額に上るのだろうか? 再エネ導入のためのコストで電力利用者が負担する金額(買取費用から化石燃料などの発電費用=回避可能費用を引いた金額)は21年時点で巨額の2兆7400億円にまで膨らんでいる 。
 ちなみにこれは累積金額ではなく、21年の一年間だけで支払わされた金額である。大量の太陽光発電がわが国で導入されたことをご存じの方は多いと思うが、そのためにわれわれが負担している金額が年間3兆円近くなっているということはあまり知られていないのではないかと思う。
 わが国でFIT制度の下で導入されてきた再エネの中心は太陽光であった。当初キロワット時(kWh)当たり43円という超絶高額で全量買い取りが始まった太陽光であるが、23年には事業用の50kWh以上の太陽光では9.5円を下回る水準まで買取価格が低下し、火力発電と比較して遜色のない水準となった。その意味では、太陽光についてはこれまでの10年余りのレントで成長し、レントを解消できる条件が整いつつあると言えよう。
 しかし問題は、ようやく新設の太陽光については超過利潤を与えなくても良い水準にまで買取価格が低下したにもかかわらず、次は洋上風力が再エネレントに頼って導入を進められようとしていることである。こうなると、再エネレントはいつまで経っても減ることなく、拡大を続けていってしまうのではないかと危惧される。
 再エネはクリーンエネルギーだから、カーボンニュートラルに必要だからと、免罪符を与えられるべきではない。割高な買取費用で再エネを優遇することは、わが国の産業や生活者の利用するエネルギー価格を上昇させ、産業の国際競争力やわれわれの消費余力を削っていくことに他ならないことを認識すべきである。したがってレントを受け取る再エネ産業は国民経済の負担を軽くするべく、自らの高コスト体質から脱却できるよう努力する義務がある。
 コスト低減の原動力として最も効果的なのはやはり競争である。他方で、レントは競争から隔離されることで生じるため、競争による効率化の効果を活用しにくい。今回の洋上風力の場合は、例えば太陽光と比べると大幅に高い買取価格水準になるため、全量買い取りのFITではなく、割高な洋上風力同士の限られた競争に止まるが、入札によって供給者を決める制度となっていたわけである。
 国民経済の犠牲の下、再エネレントを食むことが出来ているという特権に胡坐をかき、更にレントを政治的影響力で拡大しようとした今回の案件が非常に悪質であることをご理解頂けただろうか。日本風力開発の働きかけで秋本議員が異例の制度変更を成し遂げた内容は、前段で述べた通り、洋上風力の再エネレントの縮小、解消につながる三菱商事コンソーシアムの成果を台無しにし、競争を排除することでレントを更に大きくしようとする試みと言えよう。
 汚職レントの大きさ
 今回の汚職レントはどのくらいの大きさなのか、粗い精度ではあるが、試算してみることとしよう。
 第1ラウンドの三菱商事コンソーシアムと他の入札企業の入札価格との差は3.7~13.7円/kWhの範囲となっている。汚職レントは三菱商事コンソーシアムのように価格を下げようとする努力を実質的に無効化し、買取価格を高く設定するものであるから、三菱商事コンソーシアムと他の入札企業の価格差を汚職レントだと考えることができる。
 第1ラウンド3海域の設備容量は合計で168万kW。気候条件が近い、既に商業運転を開始した秋田港・能代港プロジェクトでは13.9万kWの設備容量で4億kWhの出力が想定されているようなので、同様の稼働率だとすると第1ラウンドの総発電量は48億3500万kWhと考えられる。これに上記の入札価格の差を乗ずれば、年間179億~662億円が汚職レントの大きさと考えることができる。
 ちなみに今回贈賄側の日本風力開発は第1ラウンドでは秋田能代由利本荘の2海域に絞った入札であったが、三菱商事コンソーシアムとの価格差はそれぞれ11.0円と9.0円もあり、上記同様に計算すると、もし日本風力開発が落札していたら、三菱商事コンソーシアムよりもそれぞれ152億円、212億円も高い年間販売収入を請求することになっていたのだ。この巨額の金額を明らかにした上で、日本風力開発は「適正な高値だ」と主張できるのだろうか? また、これだけ巨額のレントを得ることができることを踏まえれば、日本風力開発が認めた秋本議員への6000万円の賄賂など、極めて少額で費用対効果が良かったということになるだろう。
 日本政府は2030年の洋上風力の国家導入目標を570万kWとしている(民間案件を含めて1000万kW)。もし仮に今回の贈収賄が露見しなかった場合、あるいは秋本議員以外にも同様のレントシーキングに加担する政治家がいてそれに追及が及ばない場合、この汚職レントの額はさらに膨らんでいく。
 再エネレントにもメスを入れよ
 今回の贈収賄はそもそも非合法であり、徹底的な事実究明と犯罪行為の撲滅に取り組むべきなのは当然である。しかしこの問題はわが国の国民経済にレントという足かせを強いていることへの認識が重要である。汚職レントは数百億円規模であるが、再エネレントは更に大きく、21年時点で年間3兆円近くの巨額に上る。
 再エネレントもレントである以上、競争はなくともレント縮小、解消に向けた絶え間ない努力が求められるべきであるのに、これまで再エネはカーボンニュートラルへの唯一の手段として「絶対的正義」と優遇され、どんなに高コストであっても拡大の一途を辿ってきた。今回の事件を契機に、再エネの導入コスト低減をきちんと進めていけるよう制度を再設計するべきである。
 中国は既に太陽光も風力も、何なら洋上風力も世界最大の導入量となっている。中国では再エネについても買取価格はほぼ常に世界最低水準で進めてきた。
 洋上風力について言えば、第1ラウンドの三菱商事コンソーシアムの秋田由利本荘海域の入札価格でさえ11.99円であったが、自然条件などが異なるのは踏まえたとしても、23年6月に入札が行われた中国の洋上風力の販売費用はkWh当たり0.2元程度、すなわち4円程度であった。日本政府は30年に洋上風力の発電コストを8~9円に低減させるという目標を掲げているが、彼我の差の大きさは圧倒的である。既に経済規模で4.4倍の大きさに成長した隣国が更にエネルギーコストの面で圧倒的に安価であったとすれば、日本経済は中国に対抗していけるだろうか。
 再エネ議連顧問の河野太郎議員は消費者庁長官として、昨年12月の大手電力会社による家庭向け規制料金の値上げ申請に対して、多岐にわたる論点で値上げ幅を削り取ろうと並々ならぬ努力をしていたと記憶している。率直に言って、化石燃料の高騰を規制料金に反映させるという趣旨で本来テクニカルに進むはずの審査であったと思うが、河野長官は関西電力を中心とするカルテル問題、新電力顧客の名簿閲覧問題なども引き出して、大手電力の経営姿勢や元々の規制料金自体の効率性を問題視したのであった。結局、大手電力の規制問題は当初目指していた4月の値上げ開始から遅れること2カ月、更に値上げ幅も申請していたよりも小幅な値上げで決着させられることとなったのである。
 こうした経緯を踏まえれば、カルテルも談合することで競争を排除し、割高な価格を維持しようとするものであるが、レントも同様の非効率性を持ったものである。再エネ議連の秋本議員の贈収賄という非合法な活動も発生したことでもあるし、大手電力と同様、再エネ関連企業や再エネレントを維持している制度も、消費者庁の立場で改めて厳しく追及する理由が多分にあると言えよう。大手電力会社を執拗に追い詰めた河野長官の消費者の利益を追求する姿勢が再エネに関しても発揮されることを大いに期待している。
 堀井伸浩
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 再エネ利権に群がるグローバル派エセ保守や反宗教無神論のリベラル左派には、日本民族が数万年前の旧石器時代縄文時代から受け継いできた自然宗教・自然崇拝・自然神話の要素・素質を微塵も持っていない。
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 再エネの陰に中国共産党の存在が隠れている。
 媚中派である超エリート層と言われる超難関校での高学歴な政治的エリートと進歩的インテリ達は、中国共産党に協力している。
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