⛻19〗─1─日本のお家芸・工作機械に「まさかのピンチ」の兆候が見えはじめた。~No.88No.89No.90 

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 2023年13日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「日本のお家芸・工作機械に「まさかのピンチ」の兆候が見えはじめた…そのウラで起きていること
 真壁 昭夫  
 不気味な兆候
 足許、わが国経済の先行きを考えるうえで、やや気になるデータが増え始めた。
 その一つが、工作機械受注の減少だ。
 高度経済成長期以降のデータを分析すると、精密な工作機械メーカーは新しい製造技術を生み出して成長を実現した。
 それは、わが国の経済成長を支えた要素の一つだ。
 工作機械に対する需要が減少しつつある背景には、いくつかの要因がある。
 写真はイメージです〔PHOTO〕iStock
 © 現代ビジネス
 まず、中国では過剰な生産能力が深刻化し、設備投資のモメンタムは弱まっている。
 ゼロコロナ政策が終了したことは世界経済にとってプラスだ。
 ただ、短期間で中国経済が持ち直す展開は考えづらい。
 過去の景気回復局面にくらべ、中国の持ち直しに時間がかかる可能性は高い。
 また、米国やユーロ圏では追加利上げが予想される。
 今後、世界的に設備投資を減らす企業は増えそうだ。
 それに伴い、わが国の工作機械受注には一段の下押し圧力がかかりやすくなる。
 加えて、短期的に国内の物価はまだ上昇するだろう。
 インバウンド需要の回復などによって個人消費は緩やかに上向きつつあるものの、わが国経済の持ち直しペースが緩慢になる可能性は高まっている。
 そうした観点から今後の工作機械受注がどう推移するか、注目に値する。
 鈍化の兆候強まる工作機械受注
 日本工作機械工業会が公表する工作機械の受注統計を確認すると、2022年半ばごろから海外からの需要の増加ペースは鈍化した。
 秋ごろからは、前年同月比でみた外需の変化率はマイナスに転じた。
 地域別にみると、中国、米国、欧州のいずれにおいても需要は減少しつつある。
 1月の速報によると、受注総額は前年同月比9.7%減少した。
 全体の約7割を占める外需の落ち込みは、13.2%と相対的に大きい。
 示唆されるのは、世界的な設備投資の勢い=モメンタムの低下だ。
 コロナ禍の発生後、世界全体のデジタル・トランスフォーメーションは急加速した。
 例えば、テレワークは増え、スマホやパソコンなどのITデバイス需要も一時的に急増した。
 メモリ、ロジック半導体の需要も押し上げられた。
 そうした要素に支えられ、わが国の工作機械受注は増えた。
 しかし、いつまでも需要が増え続けることは考えづらい。
 2021年春ごろから世界的に物価は上昇し始めた。
 同年11月にはパウエルFRB議長が“物価上昇は一時的”との認識の誤りを認め、2022年には一時、3倍速(0.75ポイント)の追加利上げが実施された。
 ウクライナ紛争などを背景に物価高騰が深刻化したユーロ圏などでも金融は引き締められた。
 一方、中国ではゼロコロナ政策の長期化や不動産市況の悪化によって景況感が悪化した。
 加えて、世界経済がウィズコロナに移行するに伴い、スマホやパソコンの需要は減少した。メモリ半導体の市況も急速に悪化している。
 データセンタ関連の設備投資などを絞る企業も増えた。
 わが国では電子部品やモータを製造する企業は想定以上の需要減とコスト増加に直面し、業績を下方修正している。
 その結果として、工作機械受注は減少している。
 不透明感高まるわが国経済
 それは、わが国の経済にとって無視できないマイナス効果を与えるだろう。
 今後の展開として、短期的に、国内工作機械メーカーの収益に下押し圧力がかかる恐れは高まりやすい。
 背景にはいくつかの要因がある。
 まず、ウクライナ紛争や半導体をはじめとする先端分野での米中対立先鋭化などによって、世界的に企業は長期の視点でリスクを取りづらくなっている。
 米国では想定された以上に労働市場は過熱気味に推移している。
 サービス業の景況感も相応に強い。
 上昇ペースは弱まったが、依然として物価水準は高い。
 米国以外の国と地域に目を向けると、中国を除いて物価は高止まりしている。
 2月のECB理事会では、景気後退懸念が高まっている中にあってもECBは利上げを継続する考えを明確に示した。
 主要先進国を中心に多くの中央銀行は追加利上げを実施すると考えられる。
 企業や家計の利払いコストは増え、世界的に設備投資は一段と減少するだろう。
 新興国に関しても、弱い動きは増え始めた。
 その一つが東アジアの新興国だ。
 コロナ禍発生以降の世界経済において、半導体や日用品などの供給基地としてアセアン地域の重要性は一段と高まった。
 しかし、ここにきて世界的なメモリ半導体などの市況悪化、中国向け輸出の減少などによってマレーシアなどで景気の持ち直しペースは鈍化している。
 今すぐに大きく経済環境が悪化することは考えられないが、先行き不透明感は高まっている。
 民生、産業用を問わず、あらゆるモノの製造には、精緻な製造技術を実装した装置が欠かせない。
 そうしたモノづくりの力を磨くことによって、わが国の工作機械メーカーは外需を取り込み、景気回復に重要な役割を発揮してきた。
 その分野で需要が減少し始めていることは、今後の国内経済の下振れ要因が増えていることを示唆する。
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