💫10}─1・G─現代人では1〜4%の遺伝子がネアンデルタール人に由来している。〜No.76No.77 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 2022年10月9日 MicrosoftNews「4万年前のDNA読んだ ノーベル医学生理学賞・ペーボさん
 ネアンデルタール人の骨格模型と並ぶスバンテ・ペーボさん=2010年、ドイツで(共同)
 今年のノーベル医学生理学賞が、ドイツ・マックスプランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ教授(67)に贈られると、3日に発表されました。沖縄科学技術大学院大客員教授を務めるなど、日本と縁の深い研究者です。ペーボさんは約4万年前の化石から、ネアンデルタール人のDNAを読み取ることに成功し、考古学や人類学を全く新しい学問に変えました。その結果、私たち現代人の遺伝子には、絶滅したネアンデルタール人に由来する部分があることも分かったのです。 (森耕一)
◆人類の祖探求に革新的手法確立
 私たちの祖先はどこから来たのか−。何百年も研究者が追い求めてきた謎への探求を、ペーボさんは、この二十年で一気に前に進めました。それまで、こうした謎は化石を発掘し、骨の形や当時の痕跡を調べることで研究されてきました。
 ペーボさんはそこに、急発展した遺伝子を調べる技術を持ち込みました。授賞するスウェーデンカロリンスカ研究所は「全く新しい分野を開き、人間とは何かを探求する新たな基盤を築いた」と評価します。足跡をまとめた著作「ネアンデルタール人は私たちと交配した」(文芸春秋)が二〇一五年に日本で発売され、注目を集めました。
 オンラインで記者会見する、ノーベル医学生理学賞に決まったペーボさん
◆寄り道
 スウェーデン出身のペーボさんは大学生になるころ、古代エジプトに興味を持ち、エジプト学を専攻しました。しかし一九八〇年代のエジプト学は昔ながらの手法で「将来性が感じられない」と医学部に移ります。
 分子や遺伝子のレベルで生命に迫る「分子生物学」が急速に発達しつつあった時代で、「ウイルスと免疫防御」というテーマで研究を進めました。
 ところが、やはり古代エジプトへの憧れを消せなかった大学院生のペーボさんは、「ミイラの遺伝子を調べられないだろうか」と考えます。スーパーで買ってきた子牛のレバーを、こっそり研究室の片隅で乾燥させ「ミイラ」にして、DNAを調べることを試みました。においがきつく、すぐ仲間にばれてしまいますが「この実験が全ての始まりだった」と振り返ります。
 その後、医学部で手に入れた分子生物学という強力な武器を持って、考古学の世界へ戻ります。この分子生物学への寄り道が、遺伝学と考古学という分野の融合へとつながったのです。
 難しいのは、DNAは化石のようには残らないことです。化学物質のDNAは時間とともに壊れます。また、一緒に埋まっている微生物や、発掘する現代人のDNAも混ざり合ってしまいます。古い化石からDNAを取り出せるのか、本当に昔からのものと証明できるのか、不可能にも思われる挑戦でした。
◆進歩
 ペーボさんの歩みは、まさに遺伝子解析技術の歩みと軌を一にしていました。研究にとって欠かせない技術が誕生します。コロナ禍でおなじみになった「PCR法」です。狙ったDNAを大量に増やす技術です。これで、わずかに残ったDNAを増やすことができます。
 ペーボさんは、研究者の遺伝子が混ざり合わない「クリーンルーム」をつくり、九〇年代前半までには、古い動物の化石からDNAを取り出し、遺伝子を調べることを可能にしました。
 次に、人類にとって最も近い進化の隣人であり、三万年前に絶滅したネアンデルタール人の遺伝子解析に挑み始めました。このころになると、DNAを高速で読み取る「次世代シーケンサー」が登場し、コンピューターも急速に発展しました。何万年も前のDNAの断片を読み取り、断片の情報をコンピューターによってつなぎ合わせて、遺伝子の全体像を明らかにすることが現実味を帯びてきます。
 ペーボさんは、貴重な骨を入手するために各国の博物館や政府と交渉し、遺伝子解析やコンピューターの世界的な研究者をつないで、壮大な研究を実現する「監督」としての才能を発揮します。
◆現代に
 そしてついに二〇一〇年、ネアンデルタール人の遺伝子の解読を成し遂げます。その調査からは、ヨーロッパやアジアの現代人では、1〜4%の遺伝子がネアンデルタール人に由来していることが分かったのです。これは、ネアンデルタール人と現代人が、共存していた時代に交配したことを意味します。
 確立した手法は別の驚くべき成果も上げます。シベリアの洞窟から見つかった角砂糖一かけらほどの骨の遺伝子を調べたところ、ネアンデルタール人に近い別の人類「デニソワ人」のものであることが分かったのです。わずかな骨の遺伝子から新しい人類が見つかりました。
 ペーボさんの業績によって次に広がった分野は、この解読された遺伝子の役割を調べることです。現代人の中にあるネアンデルタール人の遺伝子が、感染症への免疫の働きに影響していることや、デニソワ人由来の遺伝子を持つチベットの人々が、高度の高い地域での生存に有利なことなどが見えてきました。
 ペーボさんは著作の中でこう述べています。「現代人とネアンデルタール人のゲノムを比較すれば、その(現代人の)繁栄を支える遺伝的基盤を見つけることができるだろう。そう思うからこそ、私は何年にもわたって、ネアンデルタール人のゲノムを回収するために、数々の技術的な問題と格闘してきたのだ」。遺伝子研究の技術はどんどん進んでいます。人類の歴史がさらに明らかになっていくと期待されます。」
   ・   ・   ・