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2022年10月7日 MicrosoftNews 現代ビジネス「二酸化炭素がたとえ減っても訪れる「絶滅の危機」 温暖化だけではなかった人類の前途多難
明るくなる太陽
もうすぐ地球の生物は絶滅する。なぜなら現在、地球の生物は2つの環境条件の板挟みになって、どうにもならない状況に追い込まれているからだ。
2つの環境条件のうちの1つは、太陽が少しずつ明るくなっていることだ。
誕生したころの太陽の明るさは、現在の約70%ぐらいだった。それが時間とともに明るくなって、現在のような太陽になったのである。
これは確かな事実だが、そうであれば、昔の地球は現在よりもずっと寒かったことが推測される。太陽が暗ければ、地球に届くエネルギーも少ないと考えられるからだ。地球の歴史の前半は、平均気温が氷点下の、氷に閉ざされた世界だったはずなのだ。
しかし、地質学的な証拠によれば、地球の歴史の大部分は温暖な環境だったことがわかっている。もちろん出来たばかりの地球はたいへんな高温だったし、一時的には地球全体が凍り付くスノーボールアース状態になったこともあるけれど、45億年におよぶ地球の歴史のうちの40億年以上は、液体の水を湛えた海のある、生命が棲むのに適した環境だったのだ。
これは不思議なことで、「暗い太陽のパラドックス」と呼ばれることもある。
【写真】「暗い太陽のパラドックス」とは?© 現代ビジネス 【写真】「暗い太陽のパラドックス」とは?
パラドックス解決のカギを握る2つの物質
暗い太陽のパラドックスの説明として、かつては二酸化炭素濃度の変化が有力だった。太陽がだんだん明るくなって、地球の温度は上がっていく。いっぽうで、温室効果ガスである二酸化炭素がだんだん減って、地球の温度は下がっていく。それらの効果が相殺して、地球の温度はだいたい一定に保たれてきたというわけだ。
大気中の二酸化炭素は、水に溶けると炭酸になり、鉱物を溶解する。これは化学的風化の一つだが、その結果、二酸化炭素は石灰岩などに変化して、堆積物として固定されることがある。こういう過程によって、二酸化炭素は大気中から減少していくのである。
ところが最近、二酸化炭素だけでは、太陽の明るさの増加を打ち消すためには足りないことがわかってきた。そして、二酸化炭素以上の温室効果ガスであるメタンの濃度変化が重要だと考えられるようになった。
生物が死んで、微生物によって嫌気的に(酸素を使わずに)分解されると、二酸化炭素とメタンが生じる。メタンは酸素によって分解されるが、地球の歴史の前半は酸素発生型の光合成は行われていなかったため、大気中の酸素濃度は低かった。そのため、大気には高濃度のメタンが存在し、太陽の暗さによる寒冷化を打ち消していたのだろう。
つまり、暗い太陽のパラドクスは、二酸化炭素とメタンの濃度によって説明されているのである。
急増する二酸化炭素
生物を追い詰める2つの環境条件のもう1つは、大気中の二酸化炭素濃度が減っていることだ。二酸化炭素濃度の減少だけでは、暗い太陽のパラドックスを説明できないことを述べたが、とにかく大気中の二酸化炭素濃度が減少していることは事実である。ただし、これは長期的に見た場合であって、短期的に見れば、二酸化炭素濃度は上昇している。
まずは短期的な話をしよう。過去80万年で考えれば、地球は氷期と間氷期を周期的に繰り返しており、二酸化炭素濃度は安定していた。氷期には約180ppm、間氷期には約280ppmと周期的に変動はしていたけれど、全体的には安定していたのである。
ところが産業革命以降、二酸化炭素濃度は急上昇し、現在は約410ppmに達している。この原因は、いくつもの研究によってほぼ特定されており、化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の燃焼と森林の伐採がおもな原因である。この二酸化炭素濃度の増加によって、気温が上がっただけでなく、大気中の水蒸気量が増えたために極端な降水が生じやすくなったことは周知の事実である。
【写真】二酸化炭素濃度の増加© 現代ビジネス 【写真】二酸化炭素濃度の増加
減少する二酸化炭素
次は長期的な話である。長い目で見れば、二酸化炭素濃度は着実に減少している。そして二酸化炭素は、地球上の生物のほとんどを養っている光合成の材料だ。数千万~数億年前には、現在の数倍から数十倍も二酸化炭素があったので、植物も光合成の材料に困ることは、ほとんどなかった。
しかし、現在の二酸化炭素レベルは、光合成をなんとか行えるギリギリのラインに近づいている。つまり、このまま二酸化炭素が減り続ければ、光合成は停止し、地球上の生物の大部分は死に絶えることになる。
大部分の植物は、光合成を行うために、だいたい150ppmの二酸化炭素が必要である(光合成回路の種類や温度などによるので、これは大ざっぱな目安である)。ところが最近の氷期における二酸化炭素濃度は約180ppmなので、かなりきわどいところまで減少していることがわかる。
もっとも、一般的な光合成回路(C3回路)とは別にC4回路という特殊な光合成回路を持つ、トウモロコシやサトウキビのような植物もいる。これらの植物は二酸化炭素濃度が10ppm以下でも光合成が行えるので、しばらくは大丈夫そうだ。しかし、大部分の植物にとっては、すでにのっぴきならない状況になっているのである。
板挟みになる地球の生物
それでは、どうしたらよいのだろう。これ以上二酸化炭素を減らせば、植物の光合成が停止して、地球上の生物は共倒れになってしまう。そうかといって、二酸化炭素濃度を現状で維持していても、少しずつ明るくなる太陽によって気温が上昇し、海は蒸発して、生物はじりじりと焼け死ぬのを待つだけだ。もちろん二酸化炭素濃度を増やせば、焼け死ぬ時期がさらに早まることになる。
いや、これは、どうしようもないのである。地球に生命が生まれたのが、およそ40億年前で、地球の生命が終焉を迎えるのは、おそらく約10億年後になる。地球の生命の存続期間は約50億年で、私たちはすでにその8割を終えているのだ。
ただし、約10億年後と言ったのは、地球から完全に生命がいなくなる時であって、それ以前から壊滅的な状況は始まっているだろう。たとえば、二酸化炭素濃度がこれ以上減少すれば、すべての森林(C3回路しか持たない植物が多い)が地球上から姿を消すはずだ。その場合、たとえC4回路を持つ植物は生き残るにしても、光合成の総量は激減するだろう。
ある見積もりでは、地球上のすべての光合成産物の4分の1を、人類が消費していると言う。もしそうなら、森林が姿を消した時点で光合成産物は激減するので、人類も大きな被害を被り、絶滅かそれに近い状態に陥るだろう。
それからしばらくすると、太陽はますます明るくなり、地球の温度はますます上昇し、C4回路を持つ植物も絶滅する。つまり、光合成が完全に停止するので、とうぜん人類も絶滅する。
© 現代ビジネス 【写真】枯れたトウモロコシ
そして地球は、地下の鉱物から得られるわずかなエネルギーによって、少数の生物がなんとか生きているだけの星になってしまう。そして、約10億年後には、最後まで生き残った生物も絶滅し、地球は乾燥した灼熱の惑星へと変化していくだろう。
私たちがするべきこと
長期的に見れば、私たちは絶滅する。それは仕方のないことで、考えても詮無いことだ(太陽系外へ逃れるという選択肢はあるけれど)。私たちが考えなくてはいけないのは、短期的なことである。
私たちの歴史を振り返ると、かつて一部の地域では、奴隷を使うことが当たり前であった。奴隷を使っていた人のなかには、思いやりのある優しい人もたくさんいただろう。そういう人は、きっと奴隷に対しても優しかったに違いない。でも、そうであっても、奴隷を使うことは許されることではない。奴隷制は、かつては大した問題とされてはいなかったが、現在から見れば深刻な人権問題なのだから。
そして、地球の温暖化やそれに関するエネルギー問題も、奴隷制と似たところがある。現在では大した問題だと思わない人もいるかもしれないが、将来的には、きっと深刻な人権問題になるはずだ。
自分たちは二酸化炭素を排出していないのに、地球温暖化の被害を受ける人たちはたくさんいる。また、これから生まれてくる新しい世代の人々は、なんの責任もないのに、今の私たちのせいで、地球温暖化の被害を受けるかもしれない。これは明らかに人権問題だ。
ということで、長期的な視点を持ちつつも、とりあえずは、短期的な視点で対応しなくてはならない。降りかかる火の粉は、払わなければならないのである。
【写真】乾燥した灼熱の惑星© 現代ビジネス 【写真】乾燥した灼熱の惑星」
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