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何故、日本は改善・改良に意欲的積極的に行うわりにイノベーションに気後れして行わないのか。
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日本におけるイノベーションの代表的成功例は万博における「丹下健三の大屋根」と「岡本太郎の大陽の塔」で、相反する組み合わせ、異質なモノ・対立するモノを一体とし、矛盾と混乱を鎮め、静かな空気的調和を生み出していた。
それがメイド・イン・ジャパンの魅力であったが、現代日本には魅力は消えイノベーションも存在しない。
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2022年7月25日 MicrosoftNews 現代ビジネス「低迷する日本の研究力…米国に渡った研究者が思う「日本の希望」 日本の優れた人材をどう活かすかが重要だ
山田 かおり
日本の国民は皆勤勉で真面目で働き者だ。ノーベル賞受賞者も多数輩出し、一昔前までは科学立国になることを期待されていた。ところが論文引用数や大学ランキングなどの数値で見る日本の地位は下がる一方だ。なんでこんなことになってしまったのか、ここから巻き返すにはどうしたらいいのか、そう考察する記事はいくつもある。当記事では在米研究者の目から見た日本の問題点と改善点について提案したい。
日本の科学の“現在地”は
1990年代後半から日本の科学の衰退は始まった。実際、データを見ると2000年過ぎからの大学からの論文数減少より前に、企業からの論文は1996年から減少傾向になっている。
そして、Top10%被引用論文数で見ると、1997-1999年頃は世界4位だったが、その後、どんどん順位を下げ、2017-2019年では10位に後退している*1。
急上昇中の中国や、大国であるアメリカは科学に多くの予算をかけているから、強い。それも理由の一つだ。
しかし科学にかける予算を見てみると、決して日本は諸外国に引けを取らない。2020年度の科学技術研究費は、19兆2365億円で、世界的に見てもアメリカ、中国に次ぎ3位だ*2。GDPも世界3位*3であることを考えても妥当と言える。ではその予算の使い方が、成果に結びついていないのだろうか。このことについては後から考察する。
日本の研究者は少ないのか?
まずは研究者の数という視点で見てみよう。
人口100万人当たりの研究者の数は、日本が5331人、アメリカは4412人、イギリスが4603人、ドイツが5212人など、欧米と比べてもとりわけ多いわけでも少ないわけでもない*4。中国(1307人)やインド(253人)は人口が多いためか人口比での研究者の数は少ないが、トップ層が目覚ましい活躍を見せている。近年の成長ぶりからするとまだまだ伸びしろがあるともいえる。一方の日本はこの25年間ずっと安定している。
そして、日本の特徴として博士号取得者が少ないという点があげられる。2018年のデータでは年間の新規博士号取得者数は、人口100万人当たりイギリスは375人、ドイツでは336人いるが、日本では120人である*1。研究者の数は匹敵していても、学士卒や修士卒が多く、特に企業研究者では顕著である*5。
だがこれは1997年以前もそうだったし、日本の科学の衰退の直接原因ではない。企業からの論文の減少は、1991-1993年のバブル崩壊のあおりを受け、企業が基礎研究や論文執筆から手を引き、応用開発や特許など直接製品に結びつくような研究開発に舵をきったからであろう。
いずれにせよ、ポストの数の制限もあり研究者数を増やすことは得策ではないし、低迷の原因は研究者数の多寡にはない。むしろ、現在博士号を所持しているが十分に活かされていない人材が蓄積していると考える。
平成8年(1996年)度~12年(2000年)度に政府指導でポストドクター1万人計画が行われ、博士号取得者は増加した*6, 7。しかしポスドクや任期付きの若手研究者のその後のキャリアパスは不透明であり、長年問題となっている*7, 8。いまだ他国より博士号取得者が少ないにもかかわらず*1、博士号所持者の行き場がない、人材を活かせていないというのは深刻な問題であろう。これに関してはのちに詳しく述べる。
「研究時間の減少」の背景を考察する
さらに、日本の研究者は研究以外のことにも忙殺されている。
2002年(平成14年)と2018年(平成30年)を比べると研究にかける時間が46.5%から32.9%と大きく減少している*1。それに比して増えているのは教育活動や社会サービス活動だ。もちろん教育に時間を費やすのは教員としては本業だが、日本とアメリカで大きく異なる点がいくつもある。
そこで、研究時間の減少の背景を下記の3点から考察してみたいと思う。
(1)研究室内での教育業務の負担と補佐する人員の数
(2)「教育専任教員」の存在
(3)リサーチ・アドミニストレーター(URA)の存在
(1)研究室内での教育業務の負担と補佐する人員の数
まず注目したいのが、教員一人当たりの指導する大学院生の数、そしてもう一つ、教員の研究遂行にあたり支援してくれる人員の数だ。
まず一つ目の、教員と大学院生の比を見てみよう。大教室で講義をする学部生のうちは教員と学生の比はそれほど問題にならない。教員と大学院生の比にしても、大学ごとにばらつきはあるが、例えば日本の国立大学では教員1人当たり大学院生2.1人である*9。アメリカでも約140万人の教員に対して310万人の大学院生、すなわち教員1人当たり2.2人と、一見変わらないように見える*10。
だが、その実態は全然違う。指導教員1人と多数の大学院生の討論で研究が進む分野もあるが、指導教員による密接な指導が必要な分野では、特に人数比が重要となる。研究室で実験を行う分野、たとえば生命科学系などだ。
© 現代ビジネス 写真はイメージ/photo by iStock
効率よくインパクトのある論文を出せるような理想の研究室構成員人数に関する論文がある。サイエンス誌*11のほうでは、平均的な研究室の大きさは指導教員(PI)1人に加えてポスドク研究員5人、大学院生3人、研究補助員2人と述べている。ネイチャー誌*12のほうでは、PI1人に加えて平均6人と述べている。構成についての言及はないが、一般的にはポスドク研究員2人、大学院生3人と研究補助員1人あたりか。
この理想をおさえた上でアメリカでのケースを見てみよう。
アメリカでは大学教員は主にProfessor(教授)、Associate Professor(准教授)とAssistant Professorからなる。日本と違い、それぞれ独立した教員であり、独立研究室を持ち、PIになれる。
Assistant Professorは日本の助教とは異なるので日本語での対訳はない。テニュアトラック(無期雇用教員になる前の審査期間)の独立教員であり、研究室を立ち上げ業績を積むとAssociate Professor(テニュア、すなわち無期雇用教員)に出世する。Associate Professorは日本における准教授に近い職種である。Assistant ProfessorもAssociate ProfessorもProfessor職であり、教授会にも出席する。
まずはAssistant ProfessorであるPI1人の研究室から始まり、最初に雇うのは多くが研究補助員だ。PI自ら実験を行い、研究補助員が補佐をする。次に大学院生もしくはポスドクが参加、だんだん研究室の規模は大きくなってくる。いずれもPIの研究費から雇われるため、誰をどう雇ってどう運営していくかが生き残りの肝になる。
特に大学院生は、最初のうちは技術的にも論理的な考え方的にもきめ細かな指導が必要になるから、やたらと人数を増やすと指導がいきわたらなくなる。PIとポスドク、博士号を持つ者の複数の目で包括的な指導と実務的な指導の両方をするのが望ましい。
外部から取得した競争的資金に応じて、ポスドクや研究補助員の数も増えていくが、彼らの数を踏まえ、十分に指導ができる学生の数を考えながら慎重に学生の受け入れ数を検討し、人数を増やしていく。活発でうまくいっている研究室はやはり上記の理想の構成員数に近い構成だ。
また、アメリカでは大学院生ごとに教員複数人から構成されるコミッティが形成され、中間発表や研究の進み具合や指導教員との関わり方についても客観的な目で見守られていて、指導がいきわたるようになされている。つまり、アメリカの場合、教員一人当たりの指導する大学院生は2.2人であったとしても、複数のポスドクによる指導の補佐や、他の教員の分担もあり、十分な指導ができる体制にある。
一方、日本の研究室の構成はどうだろうか。もちろん研究室にもよるだろうが、実験を主に行う生命科学系の講座制の研究室では教授1人、准教授1人、助教1人~3人、他は全部大学院生というのが一般的ではないだろうか。
博士課程に進む院生が多い一部の国立大学でも、修士学生が全員博士課程に進むわけではない。例えば大学院の博士課程3年生~1年生まで各学年1人、修士課程2年生~1年生が3人ずつ、学部で卒業論文のために配属された大学4年生が4人(計13人の学生)くらいの規模を例に挙げる。秘書1人いるかもしれない(いないかもしれない)、研究補助員やポスドク研究員はいない研究室のほうが多いのではないだろうか。
仮に教授1人(教授会等で忙しく、実質的な指導はしづらい)、准教授と助教2人が13人の学生をそれぞれ分担し、教授が直接指導できない場合、1人当たり4~5人ほどの学生の指導に追われることになる。自然と博士課程の学生も後輩の面倒を見ることになり、未熟なまま間違ったやり方が浸透してしまう危険性もあるし、失敗の連鎖に入り込んで苦しむこともある。
つまり、こうした研究室だった場合、外から見た教員と大学院生の比は一見同じでも、補佐をしてくれるポスドク研究員や研究補助員の数が少ないこと、卒業研究のための大学生も多いことから、少ない指導教員が多くの学生を抱えることになる。欧米の、大学院生1人あたり、博士号持ちで、実質的に指導できる人が研究室内に1~2人、研究室外にも相談できる教員が3~4人いる状況とはだいぶ違うのではないだろうか。
前述の2論文では構成員が1人増えるごとに生産性は上がるが15~20人を超えると逆に生産性は下がるという。
欧米の一般的な研究室における20人クラスの研究室はProfessor1人、Research Assistant Professorが2~3人、ポスドク5~7人、院生5~7人、研究補助員3~4人くらい。ほとんどは熟練した研究者であり、前述の講座制の研究室の例のようにほとんどが院生という状況とはかなり違うのではないだろうか。
研究の生産性を上げるには…?/photo by iStock© 現代ビジネス 研究の生産性を上げるには…?/photo by iStock
また、研究者に対する研究補助者の数も日本はかなり少なく、1人当たり0.25人だ*1。
ヨーロッパ諸国の0.58人、中国1.28人と比べても非常に少ない。アメリカでも、それぞれの研究室に研究補助員がいて様々な技術的補佐をしてくれているし、コアファシリティが充実しているから専門的な実験や解析の委託もできるし、実験動物の世話などもきめ細かくやってもらえる。研究者は、様々なサポートを受け、実験を計画したり解析したり考察したりここぞという実験に集中して手を動かしたり、効率よく研究に専念することができる。
ただ、日本の研究室でも変化が起きていると感じる。今もほとんどが院生という研究室もある一方、講座制をやめ、教授以外の教員にも独立研究室を持たせる大学も増えている。
PI(教授、准教授、または専任講師)のもとで、学生たちが研究をする。前述の効率のいい研究室構成を踏まえて考えてみてもいいだろう。受け入れた学生の数は適切か、十分に指導をできる博士号を持った研究員(助教やポスドク)はいるか、研究補助員は十分か。
研究室を運営していくうえでは、研究費を取得し、論文を出していくことが重要だ。もしも忙殺されてうまく回っていないようであれば、大学院の教員を増やすことも検討されたい。一度独立教員を増やし、各研究室あたりの学生数を制限して効率よく論文を出し競争的資金を取れるようにしてから学生を徐々に増やすほうが学生にとってもいいのではないか。研究室の資金によって、学生ができる研究にも制限があるのだから。
(2)「教育専任教員」の存在
研究に割ける時間が減少している一因に教育専任教員の不足もあげられる*13。
アメリカでは、教員によって、研究、教育、臨床(医学部の場合)が各自適度な比率で分かれている。研究を主に担う教員も、教育を主に担う教員もいる。
たとえば主に教育に携わる教員の給料は100%大学から出るので研究費取得にあくせくする必要はない。多くの場合9ヵ月勤務の契約、つまり9ヵ月勤務分の給料が保証されている。残り3ヵ月はたっぷりと夏休み・冬休みを取れることになっているのだが、この間、研究をするというオプションもある。こうしたケースは多くの場合、他の研究者の研究費の分担分、例えば統計を担当する数学者などだ。厳密にいうと夏休みの間だけ研究するという縛りではなく、自分の持ち時間のうち3/4は教育、残り1/4は自由に使えるので研究をしたければしてもいいということである。
研究に関わりたい、追加給料がほしい数学者と、研究計画にしっかりした統計的分析を加えて補強したい基礎研究者や臨床研究者の利害関係が一致している。彼らはワークライフバランスも取れ、夏休みもしっかりとる。
また、臨床をメインにする教員も研究をするかどうかはオプションで、医学実習などの指導も受け持つ。臨床・研究・指導のバランスは人による。
一方、研究をメインにする教員は、給料の多くの部分を自らが取得した研究費で賄うが、授業などの教育に対する負担は少ない。研究室に所属する大学院生の指導、研究発表の審査員、他の研究室の院生の指導コミッティに参加することなどが適宜あるのと、オムニバス形式の授業の1~2回分をするくらいだが、この程度も人による。研究費を長らく取得していない教員は教育への比重が多くなるし、その分研究に専念したい教員の負担が軽くなる。
(3)リサーチ・アドミニストレーター(URA)の存在
また、日本では独立行政法人化以降、事務仕事が増えて研究に割ける時間が取れない、という愚痴はよく耳にする。一つには、日本の事務仕事がきっちりしすぎているからというのはあるだろう。丁寧で細かい確認は日本人の美徳の一つであるが、研究者の時間を浪費させている点は否めない。こういう仕事を丸投げできる人達がいたら、と考えたことはないだろうか。
アメリカでは様々な事務仕事を補佐してくれる事務員が多数いる。特許を取る時も大学の知財部が書類の作成、弁理士とのやり取りなど全部担当してくれる。各ベンチャーへの売り込みも適宜やってくれる。動物実験計画書や治験計画書などの作成のサポートや、研究費申請書の書類送信、新しく雇う研究員のビザ関連の手続きや、共通機器の修理など、それぞれ担当する事務員が適切に処理してくれる。研究者は研究にかかわる部分に集中してしっかり仕事をすればいい。
それらの仕事のいくつかは、博士号を持った事務員が担当している。特許や動物実験計画書、治験計画書の作成と審査などは、博士号を持ち、研究を経験した者たちが担当してくれているので、当然ながら科学的な記述も読める。
こういった仕事を担ってくれる人たち、すなわちリサーチ・アドミニストレーター(URA:University Research Administrator)という職種は日本にもあり、その必要性を説く意見が広まってきている。
その活動の内容はと言うと、「研究財源の多様化に伴う外部からの研究費の獲得、研究プロジェクトの企画立案、研究環境の整備、管理運営などのマネジメント業務、研究により生み出された知的財産の活用、契約・広報その他の業務といった多様な研究支援活動」*14とあり、多岐にわたる。日本では169機関で1,459人のURAが活動しているが、機関で活動するURAがわずか1人~少人数という機関も多い*15。
職務内容が多岐にわたることを考えると、1人ないし数人で担うには無理がある。筆者の勤務する州立大学ではそれらの職務は学科ごと、もしくは学部を統括するオフィスで多数の事務員が分担している。
繰り返すが、研究を支えるうえでURAの活動は非常に重要だ*16。もっと人員を充実させ、各業務を分担して効率よく研究を支えることが、研究者一人一人の生産性を向上させ、インパクトのある論文を生み出すことにつながるだろう。
研究費の分配は?
ここまで「研究者の数」という論点、そして「研究時間の減少の背景にあると考えられる3つの要素」について述べてきたが、最後に冒頭にも少し触れた「予算の使い方」について考察してみたいと思う。
冒頭で述べたように、日本が費やす研究費の総額は、他国に比べて遜色ない。2020年度の科学技術研究費19兆2365億円のうち、国・地方公共団体は3兆3600億円である*17。もちろん官民合わせて5年で研究開発投資総額120兆円を目指すという目標*6はすばらしいが、現在これほどの多額な研究費をつぎ込んでいる割に、研究力が衰退しているのは解せない。
こういう話題では「運営交付金が減ったからだ」という声が多く上がる。研究室を運営していくうえで安定した財源があれば、安心して研究に精を出し、成果が上がるだろう、という声だ。しかし2004年に1兆2415億円あった運営費交付金は年々減っているが、2020年でも1兆807億円あるし*17、その分競争的資金も増加している。
「いや、競争的資金は過度の『選択と集中』で上位大学に集中してしまっている」という話は多々耳にする。だが、競争が激しいことが研究力を衰退させるだろうか。日本の科研費の採択率は2021年(令和3年)で27.9%。高額な基盤研究Sから少額の基盤研究C、研究活動スタート支援、若手研究、挑戦的研究(萌芽)など多数あるが、ほとんどの科研費は額が少なく、その分採択率が高く多数に配っている。
アメリカなどは人件費も含むので単純に比較はできないが、たとえばアメリカで最もポピュラーな研究費であるR01(5年で約2億円)を例にとって考えてみよう。アメリカでは個人の研究者がとる研究費から筆頭研究者である自分自身や分担研究者、ポスドク研究者などの人件費の一部を出す。R01の半分を人件費に費やすとすると、実験費用は1億円ほど、すなわち日本でいう基盤Aくらいの規模にあたる。
そんなR01の採択率が10~14%ほどだ。駆け出しのAssistant Professorから歴戦のProfessorまで皆R01を狙う。他の大型のものや小型のものもあるが、申請書のほとんどはR01である。この採択率を考えるとアメリカでも競争はかなり激しいと思うが、研究力は衰退しているだろうか。
アメリカに比べれば、日本は「選択と集中」しておらず、かなり広く配っていると言える。また2020年度(令和2年)の予算額は戦略的創造研究推進事業(CREST・さきがけ・ACT-X)が418億円*18、AMEDが1274億円*19、WPIが59億円*18,20とある。日本を担うトップの研究者たちへの研究費としては多くはない。
日本の優れた人材をどう活かしていくか
研究費も研究者の数も他国にひけを取らない。そんな日本の研究力はなぜ衰退してきたのか。それは研究者が研究をする時間を十分与えられていないからではないのか。
研究補助者や、コアファシリティや、研究事務の人員を増やし、研究者を研究に専念させてはどうか。先ほど、競争が激しいことが研究力を衰退させることはないのではないか、とアメリカを例にとって述べた。日本の研究者もそうだろう。十分に研究する時間が取れて研究に専念できるなら、競争的資金を確保することもできる。
日本には人材が豊富にある。もちろんアカデミア教員のポストを取れる人数は限られている。それはどの国でもそうだ。だが、博士号を活かす他の職が、他国には豊富にある。
研究補助者やコアファシリティの管理者や教育専任教員、研究事務・URAは大学雇用であり、多くは任期無しで福利厚生もある安定した職だ。アメリカの教員でもテニュアと呼ばれる無期雇用教員職を取るまでは任期はあり、厳しい競争と資金の確保に疲れているアカデミア研究者もいる。企業(研究職のみならず、営業や開発も)に移る人も多いが、政府の研究支援関連職や、大学勤務の研究支援職も人気だ。
競争社会であってもアカデミア研究者を続けたい人は続ければいい。そうでない人材も多数、研究支援職に採用して活かしていくことで、研究専任職の生産性をより高め、全体として国の研究力を強くしていけるのではないか。
日本には優れた人材が豊富にある。こうした人材を活かしていくことこそ、研究費を有効に活用する最大の戦略であろうと思う。研究費と言えば研究室に配られる運営費か競争的資金という、研究者が消費する資金のことばかりが話題になるが、研究者自身の人件費、また研究を支える者達の人材活用こそ、日本の研究発展につながる投資であろう。そこは大学、ひいては各大学に運営交付金を支給している政府にしっかりと予算を組んでいただきたいところだ。
【参考文献】
1.文部科学省『令和4年版科学技術・イノベーション白書』(第1章)
2.OECD. Gross domestic spending on R&D.
3.GDP Ranked by Country 2022.
4.UNESCO Science Report2021. Researchers per million inhabitants by country, 1996-2018 (in full-time equivalents).
5.平成25年教育再生実行会議提言「修士号・博士号取得者数の国際比較」
6.文部科学省『令和4年版科学技術・イノベーション白書』(第2章)
7.日本の研究力低下の 主な経緯・構造的要因案 参考データ集
8.文部科学省 関連する政府方針(「博士人材の産学を越えた活用促進」関連)
9.国立大学協会(2020)「2019年国立大学法人基礎資料集」
10.National Center for Education Statistics(2022). Characteristics of Postsecondary Faculty.
11.Elisabeth Pain(2015).Staffing labs for optimal productivity.Science
12.Chris Woolston. Bigger is not better when it comes to lab size. Nature 518, 141 (2015).
13.文部科学省 科学技術・学術審議会総会(第66回)資料3-2(2021)「我が国の研究力強化に向けたエビデンス把握について」
14.文部科学省『令和4年版科学技術・イノベーション白書』(第3章)
15.山崎 光悦. 高橋 真木子(2020)「リサーチ・アドミニストレーター(URA)2020の現状」.科学技術振興機構 産学官連携ジャーナル.
16.Sara Reardon(2021). ‘We’re problem solvers’: research administrators offer guidance to working scientists.nature.
17.総務省「2021年(令和3年)科学技術研究調査結果の概要」
18.文部科学省 科学技術・学術審議会学術分科会(第76回)資料4(2020)「令和2年度文部科学省予算(案)のポイント」
19.令和2年度予算における 統合プロジェクトの概要 – AMED
20.文部科学省. World Premier International Research Center Initiative(WPI).」
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