🌌54}─1─山間部における甚大な土砂災害は経済優先の無謀な森林伐採にある。~No.262 

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 日本・日本人は自然を愛し大事にする、はウソである。
 自然を大切にしたのは、自然を神と崇め災害は神の怒りと恐れていた昔の日本人で、科学で神を否定しデータで災害を合理的に分析する現代の日本人ではない。
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 2021年9月25日 MicrosoftNews 東洋経済オンライン「無謀な森林伐採が「土砂災害」を招いている事実 林業が山間部の災害に与える小さくない影響
 橋本 淳司
 © 東洋経済オンライン 国が林業の成長に力を入れ始めた一方で、林業における取り組みよって土砂災害や洪水が起こりやすくなっている可能性もある。写真は2019年の台風19号で大きな被害を受けた球磨川流域の皆伐地(筆者撮影)(写真:筆者撮影)
 日本の治水対策がこのほど大きく変わったのをご存じだろうか。今年5月「流域治水関連法」が公布され、7月にその一部が施行された。改正の背景には、豪雨災害、土砂災害が激甚化・頻発化していること、さらに気候変動の影響により今後、降雨量や洪水発生頻度が増加することが見込まれていることがある。
 「流域」とは降った雨が一筋の川の流れとして収斂するエリア。一級河川で考えると日本には109の流域がある。従来は、主に河川管理者が、「河川区域」において、堤防やダムなどを整備し治水を行っていた。
 が、改正後はこれに加え、流域に関わるあらゆる関係者が協働し、山間部など上流部の集水域から、平野部で洪水に見舞われることの多い氾濫域まで、流域全体を視野に入れて治水に取り組むことになったのだ。
 森林が山崩れや洪水を防ぐことへの期待
 流域における治水を考える上で、重要なのが森林の存在だ。林野庁によると、森林は国土面積の67%を占める。内閣府による世論調査では対象者の約半数が森林に「山崩れや洪水などの災害を防止する働き」を期待しており、多くの人が森林は下流における災害を食い止める役割を果たしている、と考えている。
 ところが、その森林の存在を脅かしているのが林業である。戦後木材自給率は輸入材に押されて低下し、2002年には18.8%と最低を記録したが、この事態を打開するため、国は林業の成長産業化を推進。国産材を安定的に供給するために、これまで不明だった森林境界や所有者を明確にしたり、高性能林業機械の導入や林業作業道の整備などを進めている。
 需要を促進する手も打った。住宅用以外に公共建築物、強度・断熱性・耐震性を高める加工をしたうえでのマンション建材、バイオマスエネルギー用材としての活用を促進。その結果、2019年の木材自給率は37.8%と、2011年から9年連続で上昇している。
 実際、こうした林業の取り組みが、洪水や土砂災害につながる可能性を示唆した調査も出ている。9月15日に自伐型林業推進協会が発表した「災害と林業〜土石流被害と林業の関係性の調査報告」がそれだ。
 「2011年、台風12号の影響で紀伊半島では、一部地域で雨量が2000ミリを越えるなど記録的な豪雨に見舞われました。このとき雨量が同じでも、林業の施業方法によって、崩れている森林とそうでない森林がありました」と、自伐型林業推進協会の中嶋健造理事長は調査のきっかけについて語る。
 林業には2つの方法がある
 「林業の施業方法」は、「短伐期皆伐」と「長伐期多間伐」の主に2つある。短伐期皆伐施業とは、一般的に「木は植えてから50年で切る」と決め、広範囲を一斉に伐採。禿山になった後、植林を行う。
 伐採や運び出しを効率的に行うため、例えば20トン級のバックフォーや10トン級のトラックなど、大型機器を利用する。こうした機器を森林に入れるため、作業幅も4メートル以上と広くなるのが特徴だ。
 一方、長伐期多間伐施業は、1つの山を拠点に、毎年2割程度の間伐(密になった林地の木を切ること)を繰り返す。残った木が高品質の木に成長する。小型機械を使用するため、作業道の幅は2メートル〜2.5メートル程度だ。
 今回、自伐型林業推進協会が重点調査した土砂災害現場は以下のとおりだ。
 2016年台風10号豪雨災害(岩手県岩泉町)
 2017年7月九州北部豪雨災害(福岡県朝倉市)
 2018年7月西日本豪雨災害(岡山県西粟倉村)
 2019年台風19号災害(宮城県丸森町)
 2020年7月豪雨災害(熊本県球磨川流域)
 これらの多くの場所で、皆伐地や林道作業道を起点とした、崩壊が発生。2019年台風19号災害(宮城県丸森町)と、2020年7月豪雨災害(熊本県球磨川流域)については、衛生画像、ドローンなどを活用しながら詳細な調査を行った。
 2019年に関東、甲信、東北地方に甚大な被害をもたらした台風19号では、丸森町で10人死亡、1人行方不明と、自治体単位では全国で最多の犠牲者を出した。
 一般的に土砂災害の原因は、雨量、地形・地質、土地利用にあるとされる。台風19号が襲った2019年10月12日から13日の総雨量は700ミリを超え、丸森町内の阿武隈川本流と支流が氾濫。このため「想定外の雨が原因」と報道された。だが、地形や地質も見逃せない。丸森町は傾斜が急で、斜面崩壊が起こりやすい。また、崩れやすい真砂土(花崗岩が風化したもの)のエリアも広がる。
 崩壊の起点は林業作業道
 一方、これまであまり言及されていなかったのが林業である。自伐型林業推進協会は丸森町で崩壊の多かった廻倉地区を調査した。
 54の崩壊箇所のうち、皆伐地が35件(65%)、作業道起因の崩壊が16件(30%)、林道・公道起因の崩壊が2件(4%)と、林業施業が起因となった崩壊が98%を占めた。放置人工林や未整備林の自然崩壊は1件(2%)。これまで災害時に崩れるのは手入れをされていない人工林が多いと言われていたが、今回の調査では1件だった。
 2021年12月、筆者は中嶋氏とともに丸森町廻倉地区に行った。崩壊場所の1つは、11世帯39人が暮らした集落だった。3人の命が失われ、1人が行方不明となった場所だ。
 崩壊の起点は林業作業道だった。崩れ始めた場所の幅は2メートル程度だったが、土砂が斜面を流れるうちに、崩れやすい真砂土を巻き込み巨大な土石流となったようだ。真砂土は水分を含まない時はさらさらとしているが、水分を含むとべとべとの泥になり、がっちり固まって斜面を削りながら流れてくる。
 崩壊地のなかに植林されたエリアもあった。2002年に大規模な山火事が発生。火事後に植林されたが、スギはまだ樹齢が若く、土地を安定させるには至っていなかったと考えられる。
 次に、2020年7月豪雨災害についても調査を行った。球磨川流域では50人が亡くなり、現在も2人が行方不明のままだ。
 ここでも雨量、地形・地質、土地利用という観点から考えてみる。まず、大雨をもたらす線状降水帯に流域全体が覆われた。気象庁によると線状降水帯は東西276.5キロにおよぶ過去最大規模のものだった。7月3日午後9時〜7月4日午前10時の13時間にわたって熊本、宮崎、鹿児島にかかり、総降水量の最大値は653.3ミリだった。ここでも「想定外の雨が災害の原因」という報道が多かった。
 地形や地質を考えると、球磨川流域では降った雨が、谷筋から支流に入り、人吉盆地で球磨川本流に合流する。また、もともと崩れやすい地層で、雨が降ると土砂災害が発生したり、川底での堆砂が進み、洪水を誘発する。
 最後に土地利用(林業)だ。自伐型林業推進協会による調査によると、球磨村の183の崩壊箇所のうち、皆伐地が82件(45%)、林業の作業道、林道・公道起因の崩壊が90件(49%)、放置人工林や未整備林の自然崩壊は11件(6%)だった。
 崩れ方はさまざま
 筆者は2021年9月に球磨川流域へ行き、作業道の崩れ方を調査した。崩れ方はさまざまである。たとえば法面の崩壊だ。道幅を確保するために切土(アカ色)が高くなり、また盛土(黄色)が水分を含むことにより崩壊が発生していた。
 また、本来は水が流れる谷なのに、水の流れを無視して道を作ったため、豪雨時にその部分が崩れたケースもあった。水の流れを予想して管を道路の下に入れておいたが、脆弱な土壌がパイプのなかにつまり、豪雨時に道を吹き飛ばしたケースなどさまざまだ。
 下の写真は被害の大きかった八代市坂本地区で撮影したものだが、谷をまたぐ作業道をつくるときに管によって排水処理を行おうとしたものの流出した土砂によって目詰まりしている。
 球磨川の上流域である、水上村五木村多良木町人吉市へ向かう林道を調査すると、皆伐地の崩壊箇所が数多くある。かなりの土砂量が出ている。それらの土砂は球磨川に入り、川底での堆砂が進み、洪水の原因になっている。
 一方で林業施業は改善されてはいない。阿武隈川流域(宮城県丸森町が所属)でも、球磨川流域でも「上下流・本支川の流域全体を俯瞰し、国、県、市町村が一体となって流域治水を実施する」ことになっている。
 「災害の火種を」作り、「火消しに奔走」
 しかし、球磨川流域では、土砂災害が派生した場所の上流部で、伐採が進んでいる。大型の機械を用いて、1日で50ヘクタール以上を皆伐し続けている。これが第2、第3の災害を引き起こす可能性がある。
 一度崩れた山は崩れ続ける。砂防堰堤を作るしかないが、それはすぐに埋まってしまう。対症療法にしかならない。「災害の火種」を自分たちでつくり、自分たちで砂防ダムをつくるなど「火消しに奔走」している。
 こうした現状から脱却すべきだ。流域治水の実効性を上げるには、流域全体における土地利用を見直す必要がある。特に山間地の土砂災害が及ぼす影響に十分配慮し、流域自治体相互の連携を深める必要がある。」
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