⚡9】─6─台風・豪雨で放射能汚染の稲わら・土壌の流出リスク。〜No.65  

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 2019年12月10日 産経新聞「汚染稲わら、拭えぬ流出リスク 野外に8年、台風19号で被害 
 台風19号の上陸から12日で2カ月になる。東京電力福島第1原発事故で飛散した放射性物質に汚染された「汚染稲わら」が、台風で流出したり、流出の危険性があったりしたことが判明した。原発事故後に各地で問題となった汚染稲わらは8年以上たっても処理が進まず「棚ざらし」状態で、自治体が頭を悩ませている実態が浮かび上がった。
 ■想定外の雨
 宮城県大崎市では吉田川の氾濫で、ロール状に巻いてラップをかけ屋外で保管していた105ロール(12・6トン分)が流出、県が回収した。平成28年の放射性セシウムの濃度は1キロ当たり約5000ベクレルだった。県の担当者は「(流出の)危険性を認識して保管方法について策を講じたい」としている。
 岩手県岩泉町では、町営牧場に汚染稲わら約2トンを保管。牧場内にある崖の縁から8メートルほど離れた場所に、高さ1メートル、直径1メートルの防水フレコンバッグ22個に分け、上下に防水シートをかぶせて土で覆っていた。ところが、台風19号の影響で崖崩れが発生。近くに川もあるため、中にあった稲わらなどが外部に流出すれば、広範囲にわらが拡散する恐れもあった。
 同町の担当者は「想定外の雨だったが、流出や破損はない」と説明する。現在は元の保管場所から20メートルほど離れた場所で再び防水シートをかぶせ、立ち入り禁止の措置をとっている。
 ■「処理方法決めて」
 原発事故後、高濃度の放射性物質が検出された汚染稲わらを餌とした肉用牛が汚染肉として出回り問題化。宮城県は良質な稲わらの産地として知られ、全国各地に供給してきた。
 岩泉町の農家が宮城県内の稲わらを購入しており、原発事故後も購入を継続。汚染稲わらの問題が浮上したため、同町で稲わらを測定したところ、もっとも高いところで当時1キロ当たり1万8000ベクレルが測定された。
 1キロ当たり8000ベクレル超の放射性物質を含む「指定廃棄物」は、環境省の管理下に置かれる。このため、購入元の宮城県に返却することもできず、同町で保管を余儀なくされ、汚染稲わらは行き場を失い、8年以上経過した。同町によると保管されている稲わらの放射性物質は、県が定期的に測定を行っており「現在の稲わらの放射性物質は『異常なし』のレベル」という。
 同町は今回のように流出する危険性もあることから、「早く処理方法を決めてもらいたい」と、汚染稲わらの処分を求めてきたが、国からは具体的な処理方法を示されることはなく、打開策は見通せていない。
 ■国は総点検指示
 農林水産省によると、汚染稲わらは現在、全国で約6000トンあり、これまでに処理が完了したのは3割にしか満たない。「指定廃棄物」にあたらない1キロ当たり8000ベクレル以下は普通ごみとして焼却処理するなどとしているが、住民の反発などで処理ができていない自治体も多い。
 宮城県では、放射性物質の濃度が国の基準以下の汚染廃棄物の焼却処理を実施。大崎市では試験焼却をめぐり、住民が市などに焼却差し止めの仮処分を求める事態にまで発展した。廃棄物処理の対応は各自治体でまちまちで、岩泉町のように町内で保管せざるを得ない自治体も少なくない。
 原発事故後の除染で生じた除染廃棄物も問題となっている。環境省によると、台風19号の大雨の影響で、福島県内の仮置き場4カ所で計90袋、栃木県那須町で1袋が流出。いずれも周辺の放射線量や水質への影響は確認されなかった。
 同省は国と自治体が管理する約1000カ所の仮置き場の総点検を実施。再発防止に向けて自治体と連携し、流出が起きた仮置き場に柵を設置し、木や草などの可燃物が入った比較的軽い袋は年内をめどに焼却施設に搬送するとしている。(大渡美咲、吉沢智美)
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 ■汚染稲わら問題 東京電力福島第1原発事故後、稲わらから国の基準値を超える放射性物質が検出され、餌として与えられていた肉牛が流通。国は基準値(1キロ当たり500ベクレル)を超えるセシウムが検出された牛肉を国がすべて買い上げ、焼却処分した。宮城県は良質な稲わらの産地として県外に供給。とくに平成22年は長雨で稲わらが乾かなかったことから原発事故後に収穫された稲わらも多く使われた。1キロ当たり8000ベクレルを超える場合は「指定廃棄物」として環境省の管理下に置かれる。」
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