🌌44}─2─火山列島日本での巨大噴火と大地震が頻発する。~No.218 

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   ・   ・  {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 噴火・地震津波による甚大なる被害と災害死は、自然災害多発地帯である日本列島に住む生物の宿命である。
 それが嫌ならば日本列島から逃げだす事である。
 日本民族日本人は、逃げ出さず日本列島に住み続けた。 
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 言霊に関係なく、言葉にしようが、文字にしようが、自然災害は必ず起きる。
 自然災害は、幾種類も数多く発生する。
 逃げようが、避けようが、必ず起きる。
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 地球の地殻変動期は、インドネシアの大地震と大津波からは児待った。
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 もうすぐ「超巨大噴火」が起こる
 群馬県草津白根山が噴火し、多数の死傷者が出る大惨事となったが、今度は宮城県山形県にまたがる蔵王山でも噴火の可能性が高まった。現代科学をもってしても噴火予知は難しい。とはいえ、列島を揺るがす「超巨大噴火」はいつ起きてもおかしくない。非常事態が続く列島の地下で何が起こっているのか。
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 千年前と似ている?
 このところ地震や火山噴火が続いています。この状況は、千年ほど前の平安時代前期、貞観時代(859-877年)の前後に似ているという指摘があります。当時と現代を比較してみて、今後の備えについて考えてみましょう。
 869年に、東北地方太平洋沖地震と類似した貞観地震が発生しました。六国史の最後の国史・日本三大実録には、被災地・多賀城周辺の津波の様子が克明に記されています。ここには、津波犠牲者が1,000人にも上ると書かれています。ちなみに当時の日本の人口は現在の1/20程度、東日本大震災での多賀城市内(人口約6万人)での死者は188人でした。
 この地震の後、京都では、被災地の地名を歌枕にした和歌が詠まれています。小倉百人一首の中にある2首の歌です。清原元輔が後拾遺和歌集で詠んだ「契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪越さじとは」と、二条院讃岐が千載和歌集で詠んだ「わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし」です。「末の松山」は浪が越さず、一方、「沖の石」は乾く間もないと記されています。現在ある「末の松山」と「沖の石」は写真のように近くにありますが、東日本大震災では、沖の石は2m程度津波に浸かり、末の松山には津波は達していませんでした。
 また、15年ほど前には、東北電力女川原子力発電所の技師が、仙台平野の津波堆積物を調べ、869年貞観地震による津波被害を突き止めていました。このことが女川原子力発電所での津波被害回避に繋がったとも言われています。古文書や地中に貴重なメッセージが残されていることが分かります。
 貞観地震の前後は、天変地異の時代でした。863年に越中・越後で地震が発生、翌864年には富士山や阿蘇山が噴火し、868年には播磨・山城の地震が発生しました。貞観の富士の噴火でできたのが青木ヶ原樹海の溶岩です。この時期には、861年に福岡の直方での隕石落下、862年の新羅からの海賊来襲、866年の応天門の変や、疫病、干ばつ、水害などが続きました。このため、災いを治めるために御霊会が行われました。京都の祇園祭は、祇園で行われた御霊会を起源とするとも言われています。
 貞観地震の後も、878年相模・武蔵、880年出雲、881年京都、886年千葉などで地震が相次ぎ、887年には南海トラフでの巨大地震(仁和地震)が発生しました。この間には、近畿地方で大飢饉も発生しています。
 まさに、有史以来最も災害が多かった時期だと思われます。この時期に浄土信仰が広がったことから、当時の社会の様子が窺えるように感じます。
 この20年、貞観時代と類似して、兵庫県南部地震鳥取県西部地震新潟県中越地震能登半島地震新潟県中越沖地震東北地方太平洋沖地震が発生し、新燃岳桜島阿蘇山、口之永良部島などが噴火してきました。そして、今、首都直下地震南海トラフ地震、富士山の噴火などが心配されています。五百年、千年に一度と言われる東北地方太平洋沖地震を受けて、千年前との類似性が気になります。たとえ科学的に説明できないとしても、過去にあったことは将来起こるかもしれないと大災害の続発に備え、社会が破たんしないように、万全の準備をしておきたいと思います。(名古屋大減災連携研究センター長・福和伸夫 Yahoo!ニュース個人 2015.09.19)
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 日本列島が「火山活動期」に突入したとは言えない理由
 『巽好幸』
 巽好幸(神戸大海洋底探査センター長)
 ここ数年、友人たちから「最近火山の噴火が多いよね、大丈夫?」と問われることが多くなった。確かに、2014年の御嶽山噴火では戦後最悪の犠牲者を出し、西之島では溶岩が立派な新島を創った。他にも、阿蘇山霧島山新燃岳桜島口永良部島浅間山、それにごく小規模ではあったが箱根山でも噴火が確認された。そして2018年になった途端に草津白根山で噴煙が上がり、火山灰とガスが高速で流下する「火砕流」が発生し、6・5センチ以上の火山弾やそれより小さな火山礫(れき、気象庁は両者を区別せず「噴石」と呼ぶが、サイズという重要な情報が欠落している)が落下し、犠牲者が出た。そして今回も御嶽山と同様に「不意打ち」の噴火であった。
 世界一の火山大国、日本の火山監視体制はどうなっているのか。また、日本列島は火山活動期に突入したのか。草津白根山の動向に注目しながら、これらのことを考えてみよう。
 噴火や地震の予知とは、これらの現象に先立って起こる「前兆現象」を検知し、噴火や地震の発生場所、発生時期、規模などを明らかにすることだ。現時点で、地震については科学的に確かな前兆現象は認められないために、地震予知は不可能である。したがって、過去の地震活動の履歴に基づいて今後の地震発生の切迫度を示す「確率論的地震発生予測」が行われている。
 一方で火山活動については、火山性地震、山体膨張、火山ガス異常などの噴火前兆現象が認められる場合が多く、予知あるいは予測ができる可能性がある。日本の火山監視を担う気象庁は、国内に111座ある活火山の中で特に活動が活発な50を常時観測火山に指定して24時間体制でこれらを監視している。
 気象庁の業務を定める「気象業務法」は2007年の改正で、火山現象の予報や警報を出すこととなった。気象庁としては、観測態勢や解析が噴火予知可能な段階に入ったと認識したためであろう。しかし、現実はそれほど甘くはなかった。2014年の御嶽山、そして今回の草津白根山では「活火山であることに留意」である噴火警戒レベル1の状態で、警報が発せられることなく噴火が起こり、かけがえのない人命が失われた。このような現状では、噴火警戒レベルに対する信頼性は著しく低下し、逆にそのことで被害が拡大することが懸念される。
 わが国における火山噴火予知の歴史の中で成功例として知られるのが、2000年の北海道有珠山西山噴火のケースである。同年3月27日から始まった火山性地震地殻変動などの前兆現象を検知し、29日に北海道大学が「一両日中に噴火が始まる可能性が高い」と発表した。これを受けて自治体は避難勧告・避難指示を出し、1万人以上の住民が避難した。そして噴火は3月31日に始まり、噴煙は高さ3500メートルにも達したのである。このような速やかな対応が功を奏して1人の犠牲者も出すことはなかった。
 この成功の最大の理由は、活火山である有珠火山に寄り添って、この火山の息遣いを長年にわたり注意深く観察する「ホームドクターチーム」が存在したことだ。一般に火山は個性が強く、噴火に至る経緯やその規模は火山によってさまざまである。したがって、火山噴火に備えた監視を行うには、有珠火山での成功例を踏まえた体制が必要不可欠であるが、現状では、このようなホームドクターチームが常駐する活火山は数例にも満たない。外国の有名雑誌に発表する論文の数を業績評価の柱とするような大学では、このような観測研究は推奨されないのだろう。政府主導で、気象庁と大学、そしてリスク管理を実施する自治体を含めた一元的な火山監視体制を作ることが喫緊の課題である。
 一方で、火山大国・技術立国日本として世界に先駆けた火山研究を実施することも必要である。現状の火山観測は、噴火を引き起こすマグマの蓄積や移動を、それに伴う火山性地震の発生や、山体の膨張などの間接的な現象で検出しようとしている。いわば、腹痛の場所や痛みの種類、それに腹部の腫れなどの病状で病気を特定しようとしているようなものだ。
 現在では、多くの病院でこのような異常が認められた場合にコンピューター断層撮影(CT)検査によって異常の原因を特定し、定期的にCT検査を行って病巣の変化を確認することで治療に役立てている。同様に、火山直下に存在する「マグマ溜(だ)まり」の位置や大きさを正確に可視化することができれば、噴火予知・予測は大きく進展すると期待される。病院のCT検査ではX線を用いるが、火山の場合には地震波や電気抵抗を用いることでマグマ溜まりをイメージングすることは可能である。確かに、原理的に可能であるこのような「検査」を実際にやってみせることは簡単ではない。しかし、だからこそわが国が行わねばならないのではないだろうか。
 「異変」という言葉が大好きなマスコミ界では、しばしばあの「3・11」以降、列島は「大地動乱期」に入ったと報道がなされる。また「あおり系」の科学者の中にもそのような発言をする者がいる。超巨大地震が発生した結果、日本列島全体が異常状態となり、そのために火山噴火や地震が誘発されるというのだ。しかし結論を先に述べると、ここ数年の火山噴火の多く(西之島御嶽山阿蘇山霧島山桜島口永良部島)は3・11とは関係なく、それぞれの火山の当然の息遣いによる結果である。
 日本海溝沿いで発生する巨大地震は、太平洋プレートが沈み込むことで蓄積されたひずみが一気に解放されることで起きる。だから、地震発生前は太平洋プレートによって強烈に押し縮められていた日本列島は、地震後には逆に伸びた状態となる。この応力の劇的な変化は火山活動の活性化をもたらす可能性がある。
 この応力変化と火山噴火の因果関係は、火山の直下にある「マグマ溜まり」を缶ビールに例えると分かりやすい。十分なエネルギーを蓄えたマグマ溜まりを再現するために、缶ビールを少し振っておくことにしよう。この状態で栓を開けると、ビールが泡とともにあふれだす。同様に、圧縮から引き伸ばされた、つまり圧力が低下した状態になったマグマ溜まりでも、マグマに溶け込んでいた水や炭酸ガスなどの揮発性成分が発砲現象を起こして一気に体積が増加し、噴火に至る可能性がある。実際3・11以降、東北・関東地方のいくつかの火山、そして富士山でも火山性地震の異常が認められた(図1)。また、20世紀以降に発生したマグニチュード9クラスの超巨大地震で、例外なく近隣の火山が噴火したことも、このメカニズムによるものであろう。
 3・11前後の日本列島の応力状態については、国土地理院が展開するGPSネットワークの結果を見れば一目瞭然である(図1)。東北から関東地方では応力状態が一変したが、中部から西日本にかけてはほとんど変化していない。すなわち、九州の火山や御嶽山、それに西之島は、東日本大震災の影響を受けて活動したものではなく、いわば「日常的な」営みなのである。
 一方、浅間山や今回の草津白根山の噴火が上記のような応力状態の変化によって引き起こされたものであるかは判断が難しい。いずれにせよ、科学的に見る限り、3・11以降日本列島全体が火山活動期に入ったとは考えにくい。ただし、安心は禁物である。この列島にはいつ噴火をしてもおかしくない活火山が111座もあり、しかも図に示したような「ポスト3・11」の応力状態が数十年は続くことが予想される。
 草津白根山の麓に名湯として知られる草津温泉があるように、火山大国日本には約3100の温泉があるといわれている。私たち火山大国の民は、温泉の他にもいろんな火山の恩恵に浴している(詳しくは拙著『和食はなぜ美味しい』(岩波書店))。もちろん恩恵を享受することは大変結構なことであるが、同時に火山の試練についても理解しておくことも必要であろう。
 そのためにまず大切なことは、火山の寿命が数十万年以上あることだ。一般には、おおよそ1万年以内に活動した「活火山」以外は大丈夫、という認識があるのではなかろうか。実は、火山の寿命を考えるとこの認識は明らかに間違っている。ぜひ念のために、第四紀(約260万年前から現在まで)に活動した火山をインターネットで確認いただきたい。
 もう一つ「覚悟」しておかねばならないことは、「巨大噴火」や「超巨大噴火」も将来必ず起きることである。地震や噴火の規模と頻度には逆相関関係があり、大規模なものの発生確率は低くなる。一方で、規模が大きくなるとその被害は劇的に増大する。例えば今後100年の発生確率が1%といわれる「巨大カルデラ噴火」は、最悪の場合1億人以上の被害者を出す。災害や事故に対して覚悟を持って対応するには、被害者数に発生確率を乗じた「危険値」が参考になろう。
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 「3・11」と連動する火山、 関東以北で高まる巨大噴火の現実味
 『高橋学』
 高橋学(立命館大環太平洋文明研究センター教授)
 1月23日午前、草津白根山が突然噴火し複数の死傷者が出た。たしかにこの噴火、直前まで噴火するような前兆はみられなかった。防災科学研究所のHi-net地震観測システムでは、むしろ日光白根山付近で微細な地震が集中していた。
 ただ、筆者は、草津白根山の噴火を2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災)と関連すると考えており、地震後に噴火する火山として、草津白根山の名前を常に挙げてきた。なぜなら、世界で発生したプレート型の巨大地震の後には、必ずと言っていいほど火山の巨大噴火が起きているからだ。
 たとえば、2010年2月27日にチリ中部で起きたマウレ地震(M8・8)の場合、およそ半年後にプジェウエ・コルドン・カウジェ山が、2014年3月にはビジャリカ山、4月にはカルブコ山が巨大噴火した。2004年12月26日にインド洋大津波を引き起こしたスマトラ・アンダマン地震(M9・3)の3カ月後には、タラン山などが噴火している。
 また、2011年東北地方太平洋沖地震と似ている貞観地震(869年7月9日)では地震津波と判断される堆積物の上に、「十和田火山灰」(915年)、さらには中朝国境の白頭山で噴火した白頭山苫小牧テフラ(946年)が堆積しており、地震と火山噴火との間に関係があると推測できるのである。そのため、筆者は東北地方太平洋沖地震後に火山噴火の注意喚起を機会あるごとに行ってきた。しかし、日本列島では火山噴火があまりみられなかった。
 ところが、視野を広げカムチャッカ半島までみるならば、3年ほど前から、シベルチ山、クリュチュシュコア山、ベズイミアニ山、カンバルニー山、エベコ山など5つの火山が爆発的噴火を起こしている。2017年12月20日には、ベズイミアニ山が巨大噴火し噴煙の高さは上空1万5000メートルの成層圏まで達したのである。
 東北地方太平洋沖地震は、北米プレートの下に太平洋プレートがもぐり込んでおり、その圧力に抗して北米プレートが跳ねあがり発生したものである。地震前には北米プレートの摩擦で、太平洋プレートの移動速度は年間約10センチであった。これに対して、地震後には北米プレートの摩擦が減少し年間30~40センチへと速度を増した。しかも太平洋プレートは地下深くにおいて溶けマグマが大量に生産されている。
 北米プレート上の火山は軒並み巨大噴火の準備ができつつある。そのため、関東地方以北の火山は、いつどれが噴火してもおかしくなく、その噴火は巨大噴火・大噴火になりやすいのである。今回の草津白根山の噴火はその始まりに過ぎない。
 筆者は、よく、マスコミからどの火山が噴火しそうかという質問を受けるが、今回の場合は、マグマの生産されている場所が線状なので、単体の火山の噴火にとどまることはなく、既存の火山の火口はもちろん、それ以外の場所から噴火する可能性がある。しかも、マグマが大量に生産されていることから、一度噴火が起きれば長い期間継続する。そして、火山灰などは風下の数千キロに達することもある。
 西南日本桜島、霧島、阿蘇山などの火山は、ユーラシアプレートに位置しており、現段階では、直接的にはフィリピン海プレートの、間接的には太平洋プレートの圧力でマグマ溜まりに存在しているマグマが噴出してしまえば休止する一過性の噴火をしており、その規模も大きくない。これに対し、関東地方以北の火山は、地下深くにおいて太平洋プレートが溶けて大量にマグマが生産され続けているため、継続的で大規模な噴火になりやすいのである。
 噴石や溶岩の流出など噴火した火山の周辺に直接的に被害をもたらすだけではない。噴煙が1万メートルを超えるような場合には、火山噴出物が成層圏にまで到達し、地球を覆い太陽からのエネルギーが地球に到達するのをさえぎる「パラソル効果」により、地球の気温を数度低下させることも考えられる。
 1783年には、浅間山の噴火が旧暦4月9日(新暦5月9日)に始まり、7月7日(同8月4日)夜から翌朝にかけて最盛期を迎えた。また、同年3月12日には岩木山が噴火(4月13日)。さらにはアイスランドラキ火山の巨大噴火とグリムスヴォトン火山の噴火が起きた。これらにより、日本では天明飢饉、ヨーロッパでもフランス革命のきっかけとなった「パンよこせデモ」などが生じた。18世紀末は、ただでさえ「小氷期」と呼ばれる寒冷期であったのに、火山噴火はそれに輪をかけたのである。
 また、浅間山から大量に噴出した火山灰は、利根川本川に大量の土砂を流出させ、1783年の水害、1789年の水害などを起こした。直接、火山噴出物に覆われなくとも河川の洪水によって下流側で被害が起きる場合もある。
 一方、1985年のコロンビアのネバドデルルイス火山の噴火では、山頂付近の雪氷が融けて濁流となって谷を流下し、約100キロ離れたアルメロの街を泥流が襲った。アルメロのほぼ全域がラハールと呼ばれる泥流に飲み込まれた。しかもそれが深夜であったため、人口約2万5000人のうち、2万1000人が生き埋めとなり命を落としたのである。積雪期の火山噴火は雪崩やこのようなラハールの危険性もともなう。
 悲劇は火山噴火にとどまらない。太平洋プレートの沈み込み速度が、2011年の地震以前の数倍にも加速した。そのため、東側に続くプレートが追従できず、太平洋プレートの内部で正断層ができ、東北日本を中心に、もう一度、巨大地震が発生し津波が起きる。これがアウターライズ型地震である。明治三陸地震(1896年)に対して、昭和三陸地震(1933年)はアウターライズ地震であった。この時は、37年と長い時間がかかったが、インド洋大津波を起こしたスマトラ・アンダマン地震(2004年)の場合、8年後にアウターライズ型地震が生じている。
 東北地方太平洋沖地震の発生から7年がたち、カムチャッカ半島や千島列島で火山の爆発的噴火が起きている。アウターライズ型地震が発生したり、火山の巨大噴火が連続的に起きたりするのは時間の問題である。
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 100年近く大噴火ゼロ「異常な時代」はもうすぐ終わる
 『島村英紀
 島村英紀武蔵野学院大学特任教授)
 群馬県草津白根山が1月23日に噴火した。事前に何の警告もない噴火だったので、噴火口から100メートルあまりしか離れていないスキー場にいた人たちが被害に遭い、12人の死傷者が出た。火山学的にはこの噴火はマグマが地表まで上がってこなかった水蒸気噴火であり、2014年の御嶽噴火の10分の1以下という小さなものだった。だが、たまたま噴火口周辺に人がいたので大きな被害を生んでしまった。
 一番の関心は、この噴火がいつまで続くのか、もっと大きな噴火があるのかどうか、ということだろう。だが、火山学では、噴火の経緯を見通すことと、いつ噴火が終わるかを知ることは、噴火予知よりも、もっと難しいといわれている。今までの日本の噴火で、これらが的確に予想できたことは一度もない。
 短いものでは、御嶽山の噴火は1回きりで終わった。しかし、1990年から始まった雲仙普賢岳の噴火は6年も続き、噴火の開始から1年たってから、当時戦後最大になった火山災害を起こしてしまった。火山から出てきた溶岩ドームが崩れて大きな火砕流を出し、43人が亡くなったのだ。つまり、この草津白根山の噴火がいつまで、どういう形で続くかは、現在の火山学では分からないのである。
 噴火の規模はごく小さなものから巨大なものまで、とても範囲が広い。噴火の規模を示す指標はいくつかあるが、噴火の時に火口から飛び出したものの体積を立方メートルで表すのが一般的に行われている。火口から飛び出すものには、火山灰のほか、噴石、火山弾、溶岩などがある。火山弾というのは溶けた溶岩が飛び出して空中で固まったものである。
 容積の指標の一つとしてよく使われる東京ドームは124万立方メートルあるが、その東京ドームで数えると250杯分以上だったものを「大噴火」という。実に3億立方メートルという途方もない量だ。ちなみに2014年の御嶽噴火は、東京ドームの半分ほどだった。つまり戦後最大の犠牲者を出した御嶽噴火でさえ、噴火としてはごく小さなものだったのである。
 しかし、この「大噴火」は過去たびたび日本で起きてきた。記録がちゃんと残っている17世紀以降だと、日本のどこかで各世紀に4~6回の「大噴火」が起きてきた。起きた場所は九州や北海道が多かったが、その地域ばかりではなく、富士山や伊豆大島も「大噴火」を起こした。
 ところが不思議なことに、20世紀の初めに2回の「大噴火」があった後、現在に至る100年近くはこの「大噴火」がないのである。その2回とは1914年に起きた鹿児島・桜島の噴火と1929年の北海道・駒ケ岳の噴火だ。この先いつまでも、日本で「大噴火」が起きないということはあるまい。残り80年あまりしかない21世紀に「大噴火」が4回ほどあっても驚かない、という火山学者は多い。
 「大噴火」というものが不思議なほど起こらない、ある意味では「異常な時代」が続いているが、その状態が元に戻るきっかけが、もしかしたら東日本大震災東北地方太平洋沖地震)であったと考える根拠がある。
 2011年に起きた東北地方太平洋沖地震マグニチュード(M)9・0という、世界的にも珍しい巨大地震だった。この地震は広く日本の地下にある基盤岩を一挙に動かしてしまった。そのとき動いた量は、震源に近い牡鹿(おじか)半島で5メートルを超え、遠くに行くにしたがって徐々に小さくなっているが、それでも首都圏や富士・箱根の地下で30~40センチに達した。
 日本には太平洋プレートやフィリピン海プレートが4~8センチほど押し寄せてきているから地震も火山も多いのだが、プレートがゆっくり動いていた何年分もが、大震災で一挙に動いてしまったのである。
 世界的に見てもM9クラスの巨大地震はこれまでに7回しか知られていないが、実は東日本大震災以外のすべてで、地震後に大きな噴火が近くで起きた。御嶽噴火や今回の草津白根山の噴火があったものの、まだ大きな噴火が起きていないのは日本だけなのである。
 これまで世界で起きた例では、2004年のスマトラ沖地震(M9・3)の後、タラン山やメラピ、ケルート両火山などが地震後4カ月以降に起きているし、1964年のアラスカ地震(M9・2)後、3カ月以降にトライデント火山やリダウト火山が相次いで噴火した。
 このほか、1960年のチリ地震(M9・5)、1954年のアリューシャン地震(M9・2)、1952年のカムチャツカ地震(M9・0)など、いずれも巨大地震の直後、早ければ数カ月以内、遅ければ数年以内に大きな噴火が続いた。
 巨大地震から短くても数カ月、長ければ数年以上という時間の遅れがあるのは、プレートの動きや地下の岩盤の動きと直接関係するのが地震であるのに対して、火山活動は間接的なためである。プレートの動きが地下でマグマを作り、それが上がってくるのが噴火であるために遅れが生じる。その意味では、東日本大震災から7年たったとはいえ、日本はまだ「執行猶予期間が終わった」とは言えない情勢にある。
 次に、日本のどの火山が噴火するかは、現在の火山学では分からない。しかし、活火山だけでも110を超える日本では、いつ噴火してもおかしくない火山が多い。
 いずれ噴火することが確かで、もし噴火したら首都圏、引いては日本全体や世界にも影響が及ぶ活火山に、富士山と箱根がある。ともに活火山の中でも噴火警戒レベルが設定されている38火山に入っているほどの活動度が高い活火山である。
 それゆえ、これらの火山では密度の高い機械観測が行われているが、富士山の一番近年の噴火は1707年の宝永噴火で、箱根は1200年前が最後の噴火だから、噴火の前にどんな前兆があったかは知られていない。もちろん機械観測などなかった。
 このように富士山や箱根で各種の観測が行われているが、観測データがどこまでいったら危ないのか、その閾値(しきいち)が分かっていない。富士山や箱根はいつ噴火してもおかしくない活火山なのを忘れてはいけないが、予兆の観測には全面的に頼れまい。
1995年に発表された草津白根山の火山防災マップでは、想定火口が湯釜に限られている。しかし今回の草津白根山で噴火した草津白根山の南部、本白根山は約3千年前から約1万年前まで、盛んに噴火していたことが火山地質学の調査から分かっている。これは1983年に発行された「草津白根火山地質図」で明らかになっていた。
 ただ、歴史記録が残っている約300年間は、噴火はもっぱら草津白根山の北部、つまり白根山の山頂付近で小規模な水蒸気噴火ばかり繰り返し起きており、そこばかり警戒していて南のことは忘れていた。現行の防災マップでも、特定の火口で最近発生した小規模な水蒸気噴火だけしか示されていなかったのである。
 人間にとっては3千年というのはとてつもなく古い歴史だが、火山や地球の物差しでみれば、ごく最近のことである。富士山の300年というのも、つかの間の休息かもしれない。M9の巨大地震の影響も、地球のスケールでは「すぐ後に引き続いて」起きるものなのだ。
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