🌌32}─6─海洋プラ汚染の発生源は衣類から大量のマイクロファイバー。 〜No.156 

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 2020年5月2日 msnニュース AFPBB News「衣類から大量のマイクロファイバー、海洋プラ汚染の発生源に
 © JEFF HAYNES / AFP コインランドリー(2006年6月1日撮影、資料写真)。
 【AFP=時事】極地の氷冠から水深1万メートルのマリアナ海溝(Mariana Trench)まで、家庭の洗濯機から吐き出された微小な合成繊維片(マイクロファイバー)が海洋の至る所を汚染している──。
 世界は近年、使い捨てプラスチック製品の弊害に目覚め、結果として数十の国でその使用を制限・禁止する法律が制定され始めている。プラスチックごみは大量に海に流入し、ウミガメから海鳥のアジサシまでのさまざまな野生生物に絡み付いたり、死んだクラゲのように海中を浮遊したりする。
 だが、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの顕微鏡でしか見えないほどの微小片による海洋汚染については、その主な発生源がこれまであまり注目されてこなかったと専門家らは指摘している。
 英プリマス大学(University of Plymouth)の研究者、イモージェン・ナッパー(Imogen Napper)氏は、大半の人は気付いていないが「大半の衣服はプラスチックでできている」と話す。
 AFPの取材でナッパー氏は、「衣類は定期的に洗濯されるが、洗濯1回につき膨大な数の繊維片が剥がれ落ちる」「これが自然環境に流出するプラスチック汚染の主要な発生源の一つとなっていることが考えられる」と指摘した。
 英エレン・マッカーサー財団(Ellen MacArthur Foundation)の2015年の報告書によると、世界の繊維生産量は年間5300万トンに上り、毎年50万トンのマイクロファイバーが河川に流出していることが推定されるという。また、海洋保護活動組織のオーシャンワイズ(Ocean Wise)も、米国やカナダの平均的な家庭からは毎年、5億片以上のマイクロファイバーが自然環境に流出していると発表している。
FREDERIC J BROWN / AFP 海(2016年1月12日撮影、資料写真)。
 海洋生物学者らは、プラスチック製のポリ袋がウミガメにとって有害なのと同様に、マイクロプラスチックが微小な海洋生物に害を及ぼしていることはほぼ確実だと指摘する。
 ■魔法のような解決策はない
 天然か合成かにかかわらず、繊維の微小片の大部分は水処理課程で捕捉されるが、それでも900トン近くが海洋に流出してしまう。さらに、発展途上国では水処理で捕捉されない微小片がこれを大きく上回り、海洋に流入する大量のプラスチックをさらに増大させている。
 最近の研究では、衣類を洗濯する際に流出する微小片を削減する方法──単純に衣類を洗濯する頻度を減らすという明白な対策以外──に重点が置かれてきた。
 オランダのNGOプラスチックスープ財団(Plastic Soup Foundation)」の活動家、ローラ・ディアス・サンチェス(Laura Diaz Sanchez)氏は、「洗濯をする場合は、温度を下げることで影響を軽減できる。繊維は30度を超えるとより分解されやすくなる」と指摘する。
 また、「研磨作用のある粉洗剤より、液体洗剤の方が良い」としながら、乾燥機の使用も避けるべきとした。
 購入する衣類をより少なくすることも同様に重要だ。初めて洗濯する衣類から大量のマイクロファイバーが放出されることは、これまでの研究で明らかになっている。
 結局のところ、魔法のような解決策は存在しないのだ。「唯一の解決策は、何一つ衣類を身につけないことだろう」と、サンチェス氏は言う。イタリアの高分子・複合物・生体材料研究所(IPCB)の研究者、フランチェスカ・デ・ファルコ(Francesca de Falco)氏も、この問題に対処する最善のアプローチは、衣類製造、洗濯、水処理という、全ての段階に合わせて解決策を講じることだと主張する。
 他方で、それぞれの合成繊維に見られる「織り方」の特性などが影響を及ぼすことも考えられるという。
 状況改善のための取り組みの一環として、一部の服飾ブランドは科学者らと連携し、ダウンジャケットや伸縮性のあるTシャツなど、マイクロプラスチックを特に放出しやすい衣類を対象に対策を講じ始めている。
 天然繊維の採用が解決策となるだろうか──専門家らは、問題はそれほど簡単ではないと指摘する。例えば綿の場合だと、栽培するために膨大な量の水と農薬を必要するといった側面がある。
 プリマス大のナッパー氏は、「われわれは『ファストファッション』文化の中で暮らしている。実際にどのくらいの衣類が購入されているかを考えてみると恐ろしくなる」とコメントしている。
 【翻訳編集】AFPBB News
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🌀7〗─16─感染恐怖から医者・看護師に対する非難中傷と差別。~No.55No.56 

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 日本人は分別がつかない状況に追い込まれると、時として味方を敵とし、敵を味方とする、奇行に暴走する癖を持っている。
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 感染恐怖で医療機関に駆け込む人びとで医療崩壊を起こしてる。
 医療崩壊中で、感染の危機がありながら目の前の感染者の治療に専念する医師や看護師達。
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 医師や看護師に対して、暴言を吐き暴力を振るう日本人が少なからず存在する。
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 感染拡大防止に努力している医師や看護婦をバイ菌のように白い眼で見る。
 病院で感染症治療に当たろうとする医師や看護師の子供を預かる事を拒否する人びと。
 病院で感染症治療に当たろうとする医師や看護師の子供をバイ菌とイジメ・意地悪する子供たち。
 誰しもウイルスやバイ菌をうつされたくないのが人情であり、日本人はとくにそうした思いが強い。
 君子危うきに近寄らず。
 火中の栗を拾わず。
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 4月28日 産経WEST「感染と誹謗中傷恐れ帰宅できない医師 地方病院も極限
 新型コロナウイルスの感染拡大で、感染者を受け入れる医療機関の危機感が高まっている。マスクや防護服といった医療装備品は不足し、感染防止などの観点から自宅に帰れない医師もいる。家族と面会ができなくなった入院患者らのストレスも募る。こうした状況は大都市圏だけでなく地方にも広がり始めているようで、医療関係者からは「行政機関がしっかりとバックアップしてほしい」と悲鳴にも似た声が上がっている。
 患者のストレスも増加
 「なんで家族に会わせないんだ!」
 4月上旬、岡山県感染症指定医療機関に指定された病院のナースステーション。20代の女性看護師は、電話口で入院患者に怒鳴られて謝る同僚の姿に、患者たちのストレスが増えているのを感じとったという。
 この病院では感染拡大防止のため、3月に入院患者との面会を禁止した。着替えなどの差し入れは、看護師らが運搬役を務める。ただ、長期入院患者の中には家族との面会を楽しみにする人も多く、ナースステーションまでやってきて抗議する患者もいたという。
 この病院が新型コロナの感染者を初めて受け入れたのは3月下旬。一時的に病棟を隔離扱いとし、経路となるエレベーターや階段を封鎖した。女性は「やはり怖かった」と振り返る。カルテも他の患者と異なり、担当外の看護師はアクセスできないといい、情報の扱いも厳重だった。
 物資も不足してきた。かつては「1日に20枚くらい使っていた」というマスクも、今は貴重品。口元にガーゼをあてて交換しながら1日1枚で乗り切り、持ち帰ったマスクを家で洗って使い回ししている。
 女性は「まだ在庫はあるけれど、いつなくなるかもわからない」と、不安を募らせている。
 「防護具もう足りない」
 4月21日、岡山県庁で開かれた「岡山県感染症対策委員会」でも切実な声があがった。特に指摘が多かったのは、ガウンやエプロンといった個人用防護具(PPE)の不足だ。
 川崎医科大学(同県倉敷市)の尾内一信教授は「感染者の割合は東京の20~30分の1の規模だが、PPEはもう足りていない。長期戦になると感染管理ができなくなる」と危機感を募らせた。
 家族への感染予防や誹謗(ひぼう)中傷を避けるために帰宅できない医師もいるといい、岡山市立市民病院(岡山市北区)の今城健二副院長は「今月に入り、帰宅困難の医師が増えている」と明かした。
 こうした中で、医療関係者らが行政に求めたのは、物資を安定的に供給するように企業と病院をつなぐ、橋渡し役だ。
 今城氏は「防護服は、病院が企業にオーダーメードで作ってもらうのは効率が悪い。“兵站(へいたん)”は行政主導でやってほしい」と要望し、帰宅困難な医師らを念頭に、宿泊施設の確保も求めた。尾内氏も「県内のいろいろな企業がPPEを製作し、現場に供給するシステムを作れないか。2、3カ月分ができれば長期戦に対応できる」と述べた。
 岡山県は早ければ5月上旬にも、PCR検査の検体採取を行う施設を新設する予定。屋外テントなどを設けてドライブスルー方式で行う方式を想定しているが、県健康づくり財団付属病院(岡山市)の西井研二院長は「現地で感染が広がらないようにと現場はものすごく神経を使うため、簡単なことではない。夏場になると防護服では大変な暑さで、熱中症にもなりうる」と述べ、医療態勢を拡充するにも注意が必要だとした。
 新型コロナとの闘いで、医療機関はさまざまな困難に直面しており、行政機関には支援するための方策を打ち出すことが急がれている。」
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🌀7〗─15─アベノマスクも懲りない野党の「政治ショー」~No.79No.80No.81 

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 マスクでも懲りない野党の「政治ショー」
 「マスクも撤回してください」。蓮舫参院議員のツイートのように、「モリカケ」「桜を見る会」に続き、野党はいわゆる「アベノマスク」の追及に余念がなさそうだ。政府の甘さのツケが回ったことは確かでも、政策そのものまで否定できようか。このままでは「政治ショー」に騙される人たちがまたもや続出するに違いない。
 お次はアベノマスク、野党の「炎上商法」にまた騙される人たちへ
 『田中秀臣』 2020/04/28
 田中秀臣上武大学ビジネス情報学部教授)
 7年超にわたる第2次安倍晋三政権の中で、「モリカケ」といえば、学校法人森友学園大阪市)と加計学園岡山市)をめぐる問題だった。これに首相主催の「桜を見る会」が加わり、さらに最近では「アベノマスク」が加わりそうである。
 総称すると、「モリカケ・桜・アベノマスク」というのだろうか。本当にあるのかないのか分からない「疑惑」を、一部マスコミや野党、それに反安倍政権の識者たちが盛り上げていく、この一種の炎上商法には正直、ほとほと呆れている。
 保守系論客がしばしば利用している言葉の中に、「デュープス」というものがある。原義には共産主義運動との関連があるが、そんな「高尚」(?)な活動とはおそらく無縁だろうから、本稿では、単に「騙されやすい人」という意味でデュープスを使う。「モリカケ・桜・アベノマスク」は、まさにこのデュープス向けの「食材」である。
 今回で200回を迎える本連載でも、「モリカケ「桜」両問題について、たびたび取り上げてきた。国会でも何年にもわたって議論されているが、デュープスが目指している安倍首相の「疑惑」は少しの証拠も明らかにされていない。
 さすがに何年続けていても、安倍首相の「疑惑」が明らかにならないので、デュープスたちは、首相を「嘘つき」とみなす傾向がある。自分たちが「疑惑」の証拠を提供できないので、その代わりに他人を「嘘つき」よばわりするのだろう。
 これでは、単なる社会的ないじめである。だが、こういう意見を持つ人は多く、中には著名人も安倍政権や首相を嘘つきだと断ずる傾向がある。全く安倍首相もお気の毒としかいいようがない。
 ただし、デュープスが生まれる経済学的背景もある。私はしばしばこれを「魔女狩りの経済学」と呼んでいる。
 新聞やニュース番組、ワイドショー、そのほとんどが「真実」を報道することを目的としてはいない。あくまで販売部数や業界シェア、視聴率を目的とした「娯楽」の提供にある。
 これは経済学者でハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ジェンセン元教授の指摘だ。ジェンセン元教授の指摘は多岐にわたるが、ここでは主に2点だけ指摘する。
 ニュースに対して読者や視聴者が求めるのは真実追求よりも、単純明快な「解答」だ。専門的には「あいまいさの不寛容」という。
 たとえ証拠と矛盾していても、複雑な問題であっても、単純明快な「答え」が好まれる。ニュースの消費者の多くは、科学的な方法を学ぶことにメリットを見いだしていない。
 そのため、ニュースの消費にはイメージや直観に訴えるものが好まれる。実際に筆者の経験でも「安倍首相は悪いことをすると私の直観が訴える」と言い切る評論家を見たことがある。
 さらに、ジェンセン元教授の興味深い指摘が「悪魔理論」だ。これが「魔女狩りの経済学」の核心部分でもある。要するに、単純明快な二元論がニュースの読者や視聴者に好まれるのである。
 善(天使)vs悪(悪魔)の二項対立のように、極端なものと極端なものを組み合わせて論じる報道への関心が高い。特に、政府は「悪魔」になりやすく、政府のやることは全て失敗が運命づけられているような報道が好きなのだ。
 根拠のある政府批判は当然すべきだ。だが、この場合の政府批判は、単なる「娯楽」の消費でしかなく、事実に基づかなくても可能なのである。
 「モリカケ「桜」両問題も、「魔女狩りの経済学」の構図にぴたりと当てはまってきた。「疑惑」は「安倍首相は権力側の悪い人なので、何か悪いことをしているに違いない」とでもいう図式によって生み出されている。この魔女狩りの経済学に、今度は新型コロナウイルスの感染防止策として全世帯に配布する2枚の布製マスクが加わりそうである。
 マスクについては、新型コロナ危機が始まってから、医療や介護現場に代表される供給不足問題に加え、一般のマスク不足が一貫して問題視されていた。政府は当初、民間の増産体制によってこの問題を解消できると予測していたようだ。
 だが、その目論見は完全に外れた。特に、民間の需要は底が知れないほどで、ドラッグストアには連日長蛇の列ができ、インターネットでは高額転売が横行した。これは明らかに政府のマスク政策の失敗だったといえる。
 結局、供給解消を狙って、さらに増産体制を強化し、ネットなどでの高額転売禁止、医療機関へのサージカルマスクの大量供給、福祉施設教育機関への布マスクの配給を矢継ぎ早に行った。特に、サージカルマスクなどの高機能マスクは、地方自治体を経由していると供給不足に対応できないとして、国がネットの情報を利用して、不足している医療機関への直接配布を決定した。
 だが、それでも医療需要に十分応えているわけではない。政府のマスクに関する甘い見立てのツケはいまだに解消されてない。
 問題のキーポイントは、マスクの増産と割り当て(供給統制)を同時に進めるべきだったのに、前者に依存して後者を当初採用しなかったことにある。危機管理が甘いといわれても仕方がない。
 国際的な成功例である台湾では、マスク流通を政府が感染初期から完全に管理している。購入には国民健康保険に相当する「全民健康保険」カードを専用端末に挿入する必要があり、一人当たりの購入数も週2枚に限定されている。さらに、履歴は「全民健康保険」カードに記載され、徹底的に管理されている。
 他方で、マスク増産に軍人も起用して、今は大量生産に成功し、日本など海外に輸出するまでになっている。これに対し、日本政府は現在に至るまで、あまりに不徹底で戦略性に欠けている。
 当初のマスク予測を誤ったツケが、俗称「アベノマスク」をめぐる一連の騒動の背景にもなっている。ただし、このときの「背景」は合理的なものよりも、モリカケ・桜問題に共通する「疑惑」や感情的な反発を利用した、政治的思惑に近いものがある。マスコミもアベノマスクを恰好の「娯楽」として、ワイドショーなどで率先して報道している。
 このアベノマスクに関しては、反安倍系の人たちが率先して批判しているが、それには幼稚な内容が多い。顔に比べてマスクが小さいという主旨だが、顔の大きさに個人差があるのは否めない。
 そういう幼稚な批判におぼれている人以外には、人気ユーチューバーの八田エミリ氏の動画「アベノマスク10回洗ったらどうなる?」が参考になるだろう。簡単に内容を説明すると、実際に届いた新品のマスクについて紹介した動画で、14層ある高い品質であり、洗濯すると多少小ぶりになるが、何度の使用にも耐えられるものであった。マスク不足に悩む人たちには好ましい対策だったろう。
 一部では不良品があり、その検品で配布が多少遅れるようだ。マスコミはこの点を追及したいし、全体のマスク政策をおじゃんにさせたいのだろう。だが、現在配布を進める全世帯向けの半分にあたる6500万セットのうちに、どのくらいの不良品があるか、そこだけを切り取って全体のマスク政策を否定するというのは、まさに魔女狩りの経済学でいう「あいまいさの不寛容」そのものだ。
 おそらく、この「あいまいさの不寛容」におぼれたデュープスを釣り、その力で政権のイメージダウンを狙うのが野党の戦略だろう。そのため、補正予算の審議でもこのアベノマスク問題が取り上げられる可能性が高い。まさに愚者のための政治ショーである。
 なお「あいまいさの不寛容」の観点で言えば、不良品が多く発見された妊婦用マスクと全世帯向け配布用マスクは異なるが、多くの報道で「巧みに」織り交ぜることで、さらなるイメージダウンを狙っているようだ。全世帯用にも不良品が見つかるかもしれないが、その都度対処すればよく、マスク配給政策そのものを否定するのはおかしい。マスクの全世帯配給に、少なくともマスクの需給環境を改善する効果はあるだろう。
 また、マスク配給の当初予算が466億円だったのが、実際には91億円で済んだ。これは予算の使用が効率的に済んだのだから好ましいはずだ。
 だが、立憲民主党蓮舫副代表は違う見方をとっている。蓮舫副代表は、予算が余ったのだから「ずさん」であり、ならば「マスクも撤回してください」と要求している。
 なぜ、予算が少なく済んだことが批判され、なおかつマスク配給政策全体を撤回しなくてはいけないのか。デュープスであることぐらいしか、この理由に思い当たる人は少ないのではないだろうか。
 現在の日本では、新型コロナ危機で、数十兆円規模の経済危機が起きている。これに立ち向かうために、大規模でスピードを早めた経済政策が求められている。
 例えば、企業の家賃のモラトリアム(支払い猶予)も喫緊の問題だ。このままの状況が続けば、6月末には多くの中小企業で「コロナ倒産」の急増を生んでしまうだろう。
 だが、与野党ともに家賃モラトリアムについては、あまりにもスピード感に欠けた提言してかしていない。マスク問題も、政府のマスク買い上げや規制強化の遅れにより、現在まで障害を残している。
 本来であれば、家賃モラトリアムや、さらなる定額給付金の供与など、経済対策のスピードをさらに加速させる必要がある。アベノマスクのように、ワイドショーで溜飲を下げるデュープス相手の話題にいつまでもこだわる時間は、少なくとも国会には残されていない。
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🌀12〗─5─中国発武漢肺炎、「ポストコロナ」大不況。~No.117No.118No.119No.120  

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 「ポストコロナ」世界経済戦にどう臨む?
 新型コロナウイルスの感染者や死者数は、欧米に比べ抑えられているが、経済的打撃は深刻だ。そもそも危機管理や安全保障の無策が根底にある日本だけに、終息に周回遅れをとれば、「ポストコロナ」の世界経済戦に負け、大不況を招く恐れがある。感染拡大防止はもちろん、官民が長期戦に備えた戦略を立てなければならない。
 安全保障無策の日本、終息周回遅れが招く「ポストコロナ」大不況
 『小倉正男』 2020/04/27
 小倉正男(経済ジャーナリスト)
 新型コロナウイルス感染症による経済の停止は、1929~30年代の世界大恐慌以来の景気後退とされている。現状の世界経済は誰も見たことがない事態に陥っている。大恐慌以来のものなのか、あるいは大恐慌を超えるものなのかは、現状では判断がつかない。
 「大変調」は、すでに世界中に現れ始めている。自動車産業一つを取り上げても、全世界の自動車工場のほぼすべてで生産が止まっている。需要の落ち込みに加えて部品の欠品などが影響している。そうしたことは誰も想像することができなかった光景だ。自動車だけではない。半導体・液晶関連の製造装置、工作機械、電子部品などすべての生産が休止、あるいは生産遅延となっている。それが眼前にある。
 新型コロナウイルスの発生源となったのは中国・武漢だが、その武漢で一足早く自動車工場が再稼働に踏み出している。中国は新型コロナウイルスを終息させたとアピールしたいのだろうが、試験操業段階にあるとみられる。自動車は部品の裾野が極めて多様だが、車載用半導体など電子部品を含めて部品産業も生産・物流が停滞している。自動車生産のサプライチェーンはいまだ寸断されている。
 アメリカでは3月中旬からの5週間で2600万件を超える失業保険申請が行われている。全労働人口の17%の人々が一挙に失業者になっている。リーマンショックどころか、これも大恐慌以来の記録的な現象だ。一人好況だったアメリカが暗転、原油先物価格が史上初の「マイナス価格」になった。
 世界の経済活動のほぼすべてが停止している。供給過剰で、原油先物で売り手が買い手に代金を支払うといった異常事態だ。銀行でいえば、貸し手の銀行が借り手に金利を払うといったようなものである。原油需要がガタ減りになっており、世界経済が限界に近づいているというシグナルといえる。
 日本では、目先の決算に「変調」が現れている。この4月末~5月が決算シーズンになる。3月期決算企業でいえば本決算にあたるが、予定していた決算発表の期日が遅れることを公表する企業が相次いでいる。「緊急事態宣言で会計・監査業務が間に合わない」という事情を上げている。決算説明は各企業とも軒並みに電話会議、インターネット動画などで行うとしている。
 20年3月期決算では、一般的に第3四半期(10~12月)は消費増税で業績が低下、第4四半期(1~3月)は通常なら期末の稼ぎ時だが、新型コロナウイルスによる経済停止に直撃されている。おそらく売り上げ、収益を下方修正する企業が続出する。
 変調はそれだけではない。新年度、すなわち21年3月期は売り上げ、営業利益など収益の予想数字を表示しない企業が続出する。21年3月期については、企業サイドは新型コロナウイルスの終息時期が見えず、したがって経済の停止状態をいつ解除できるのかが判明しない。売り上げ、収益とも「苦渋の決断だが、合理的な算定ができない」としている。
 株式マーケット筋は、「新年度の予想数字については表記しない企業の評価はネガティブ。一般的には大幅減収減益でも予想数字を表示する会社の方を評価する」としている。企業サイドは「新型コロナウイルスの終息、再稼働の先行きが見えるようになったら、すみやかに予想数字を公表する」と答えるのが精一杯だ。
 日本経済が直面している問題はそこにある。経済の出口は、新型コロナウイルス感染症をいつ終息させられるかにかかっている。メドがつけば経済の停止状態から脱出できる。
 しかし、いまだ暗中模索でいつ出口にたどり着けるか判明しない。この5~9月のうちに終息できるのか。それが最も理想的だ。あるいは年内の12月まで引きずるのか、最悪のケースで2021年まで影響が残るのか。一時的に終息させたとしてもウイルスだけに二波、三波とぶり返すこともあり得る。厄介極まりない。
 緊急事態宣言は7都道府県から全国に対象地域を広げて発令されている。東京都など首都圏を筆頭に全国の大都市・都心部から人影は大幅に減少した。テレワーク・在宅勤務が急速に拡大している。
 ただし、首都圏などで見ても東京都内、郊外の商店街やスーパーは平常通りに営業している。都内、郊外とも通常以上の客で混雑している。特に、都内のスーパーは夜までには棚が空になるといった具合だ。昼までに行かないと何も置かれていない。郊外でも夫婦、子供など家族全員で買い物に来店している。また、都内、郊外とも価格が全般に上昇している。
 都心部から人が減ったとしても、神奈川県、千葉県などの海岸沿いはクルマが渋滞になるなど、一時的に人出が増えたケースもある。このため、東京都などの自治体からは「ステイホーム」と自粛が懸命に呼びかけられている。
 ただし緊急事態宣言といっても要請ベースで強制力は伴わない。休業補償などが十分ではない。アメリカ、フランス、ドイツなどの主要都市の都市封鎖(ロックダウン)と比べると緩いという印象が拭えない。
 それだけに日本は新型コロナウイルスの終息、封じ込めには世界の主要国に比べて遅れる可能性が否定できない。終息、封じ込めというものがともあれ早期に実現できればよいが、遅れる可能性が強まっている。
 新型コロナウイルスの終息に一定のメドをつけて、ある時点で経済の停止を解除したとしても本格的な再稼働には至らない可能性もある。経済の「V字型」回復という楽観論があったが、「L字型」底ばいの長期不況になるとみておくべきだ。現時点では安易な楽観論は禁物で、最悪の想定に立つべきである。
 「L字型」不況が長引けば長引くほど、懸念されるのは経済の縮小均衡による中小企業、個人商店などの倒産、閉店、廃業である。日本政策金融公庫の「無利子無担保融資」などセーフティーネットを活用して最悪の事態を回避する方策が奨励されている。だが、経済の底ばいが継続すれば資金繰りが追いつかない。中小企業、個人商店の体力が持たなくなる。
 仮に、日本が新型コロナウイルスの終息に「周回遅れ」になるなら、経済への打撃は計り知れない。首都圏の都心部、あるいは郊外にある飲食店などは現状でも厳しいが、長引けば大変な事態に追い込まれる。新型コロナウイルスの不安が残るとすれば、都心部の企業などはこのままテレワーク・在宅勤務が定着することもあり得る。都心の飲食店は苦境から脱出できない。
 非上場企業のみならず、上場している企業もそれは同様だ。21年3月期の売り上げ、収益の予想数字を打ち出せないとすれば、株式マーケットは外国人機関投資家などの売り圧力に晒される。株価低迷が長期化するとすれば、内部留保を分厚く貯め込んだ企業は耐久力を持てるが、そうした企業ばかりではない。
 アメリカに「企業再生ファンド」というものが生まれたのは大恐慌時代といわれている。大恐慌時代にアメリカでは一般企業だけではなく銀行までが取り付け騒ぎでバタバタ倒産した。市場経済ベースで企業を売り買いすることで再生事業が行われた。
 大金持ちの個人投資家機関投資家がファンドに資金を投じて、ファンドは体力を失った企業を底値で買い叩いて手に入れる。ファンドはその企業にプロの経営者を送り込み、2~3年で企業を再生して第三者に高値で売却する。ファンドは膨大な利益を出して、投資家に高い利回りで報いる。市場経済の過酷さを体現したやり方で一般には「ハゲタカ」という異名で呼ばれている。
 新型コロナウイルスがもたらす不況では、おそらくファンドが世界中で企業を底値で買収するといった行動に出るとみられる。ファンドにすれば100年に一度のチャンスだ。新型コロナウイルスがなければ、普通に優良企業だったものをファンドは安値で手中にする。文字通り大恐慌以来のチャンスが到来する。
 そうしたクライシス(危機)を考えるなら、新型コロナウイルスの終息がいつになるか、すなわち終息時期は「ポストコロナ」の日本経済に決定的なファクターになりかねなない。
 日本経済の再稼働で遅れをとるとすれば、体力が弱った日本企業が狙われることになる。中国などが世界に先行して経済の再稼働に成功すれば、買い手に回る可能性も出てくるに違いない。国、あるいは地方自治体は「L字型」不況が長期化したケースに備えて、中小企業などを防衛するためのシミュレーションをしておかなければならない。
 上場企業においても、たとえばソフトバンクグループなどは17兆円(2019年末)を超える有利子負債を抱えている。おそらく現状では有利子負債はさらに膨張しているとみられる。企業買収で所有企業をやたら増加させてきた「持つ経営」が危機に立たされている。4兆5千億円の資産(所有企業)売却で財務体質を改善するとしているが、そこに新型コロナウイルスによる大不況や株価低迷が追いかぶさってきている。
 所有企業売却では「投げ売り」に追い込まれるという最悪事態も考えられる。ソフトバンクグループが所有している半導体関連ハイテク企業などを売却するとすれば、中国などの企業が買い手として名乗りを上げてきても不思議ではない。買い手としては安値で買えるのだから千載一遇にほかならない。
 企業がむざむざ他国企業やファンドに買われないようにするということでは、通貨の円高、そしてとりわけ株高を「防護壁」にすることが基本的な政策だ。買い手としては、円が高く、さらに株価が高いなら、高い買い物になる。手を出しづらい。たとえ買われるにしても日本に入ってくる資金は、経済を回してくれるわけで貢献してくれる。円安、株安では買い手にはよいことばかりで経済への寄与は希薄でしかない。
 日本銀行は上場投資信託ETF)買い入れの拡大でテコ入れして株式マーケットの底上げを行っている。ただ、これは主として株価暴落の不安心理を解消することを狙ってのものだ。日銀の行動はやむを得なかったかもしれない。
 だが、株価の低落が続くとすればETFの評価損が発生する。日銀の財務毀損が避けられない。財務毀損ぐらいで日銀が倒産することはないが、日銀が発行している通貨である円への信頼は低下する危険性がある。極端な円安に振れるとすれば、悪性インフレ懸念が生じる。資本が逃げ出すわけだから株も売られる。日銀はETF購入拡大をといった政策を継続できなくなるリスクがある。
 株価低迷が長期化して、いざというクライシスに直面したときに日銀は有効な手段を持てなくなる公算がなくはない。日銀にしても、国にとって魔法の杖、いや魔法の輪転機であり続けられるわけではない。
 実質的に「国家ファンド」といわれる年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)にしても本格化させてきた株式運用で身動きが取れなくなっている。日本を含む世界の株価が上昇して評価益が出ているときはよい。
 だが、株価が低落しているときは評価損を抱える。仮にも国民に支払う年金資金であり、リスクを抱え続けることはできない。GPIFも動けないといった場合、国は安全保障などの面から待ったをかける政策手段が何もない事態になりかねない。日本はいざというときに使うべき最終手段を“先食い”してきたきらいがある。
 日本の危機管理(クライシスマネジメント)対応が問われている。それによって経済のサバイバル、経済がどう生き残るかという構図が決められる。当然、新型コロナウイルスの終息を急ぐことが第一の要件だ。新型コロナウイルスとの闘いは集中型で一気にやるしかない。主要各国がロックダウンなどを断行していることがそれを証明している。闘いが長期に及べば、その国の経済は疲弊が避けられない。そうなれば、経済もそして国も共倒れにほかならない。
 確かに新型コロナウイルスといった疫病による厄災は想定外に近いものだったかもしれない。ただ、今はウイルスとの闘いを含めて国の安全保障を考えてこなかった咎(とが)めを受け止めるときに違いない。しかし、打つ手が何もないというわけでもないに違いない。新型コロナウイルスの終息、そして「ポストコロナ」という有事対応に持てるすべてを投入して、世界経済という過酷なアリーナで敗北者に甘んじることは避けなければならない。
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🌀7〗─14─日本は自然災害多発地帯であり疫病・感染症爆発危険地帯である。~No.53No.54 

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 2020年4月23日 産経新聞「コロナ禍で南海トラフ地震が起きたら 自己防衛がカギ
 新型コロナウイルス感染拡大の状況下で、南海トラフ地震や豪雨災害など自然災害が発生したときに備え、自治体は避難者の分散化と避難所の衛生管理に向けた取り組みを始めた。防災研究者は「災害関連死が増える可能性があり、住民も自己防衛するべき」と各家庭での備蓄の点検を求めている。(編集委員 北村理)
 自然災害が発生した際、被災者が避難する避難所は新型コロナウイルスが感染拡大する「3密」状態になるとし、内閣府は4月1日、自治体に対し被災者の分散化、衛生管理の徹底を通知した。これを受けて、各自治体は6月の梅雨をめどに準備を始めた。
 平成30年の西日本豪雨の被災地、岡山県総社市は、被災者を受け入れるキャンプ用テントと空き家・アパートを分散配置し、新型コロナが感染拡大しない避難場所の確保を検討している。同市は28年に発生した熊本地震の際、被災者571人を1カ月間156張りのテントに収容。登山家の野口健さんのアドバイスのもと、医療NGO「AMDA」などとの生活・医療支援を実施し、災害関連死が220人にのぼった被災地で「救急搬送ゼロ」の実績がある。今回その経験を生かす。
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 総社市はこれまで、新型コロナウイルス対策として、全世帯に災害時備蓄品のマスク48万5千枚と感染対策の冊子を配布。市民の意識は高まっているとみられるが、それだけに3密状態になる可能性がある避難所に行くことを躊躇(ちゅうちょ)する懸念がある。
 片岡聡一市長は「命を守る避難が大切であることを訴えるためにも、避難場所が十分確保されることを伝える」としている。
 ただ、被災地では医療機関も被災し、けが人、ストレスや慢性疾患の悪化などで多くの患者が生じる。これに新型コロナ感染への対応が加われば医療崩壊につながり、災害関連死も増加する。政府は「感染症対策の物資・資材供給などを行う」としているものの、住民の自己防衛も不可欠だ。
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 災害時の備蓄を研究する奥田和子・甲南女子大名誉教授は「断水が健康・衛生状態を悪化させる最大要因」と指摘。飲料水▽消毒液など水が不要の衛生用品▽肺炎防止に効果がある口腔(こうくう)ケア用品▽基礎疾患をコントロールする薬やお薬手帳の確認を求める。
 また、災害時はトイレが不足しがちのため、被災者の行列が生じる。新型コロナウイルス感染の要因になるため、家庭でも簡易トイレの備蓄が必要だ。現在簡易トイレは除菌効果がある錠剤で衛生的に処理できる商品があり、インターネット販売などで入手できる。
 奥田氏は「住民の備えが災害関連死を防ぐ力となる」と訴えている。」
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 4月25日 産経新聞「【主張】北日本の巨大地震 避難前提に感染症対策を
 北海道と東北地方北部の太平洋側では、東日本大震災マグニチュード(M)9.0=を上回る規模の巨大地震の発生が切迫しているという。
 内閣府が北海道沖の千島海溝と東北北部沖の日本海溝震源とする海溝型地震の新たな想定を公表した。
 新型コロナウイルスとの戦いは長期化を覚悟しなければならない。だからこそ、地震津波をはじめとする災害への備えを単純かつ確実なものにしておくことが重要だ。
 千島海溝で想定される最大級の地震はM9.3で、根室市からえりも町にかけての北海道南東部の太平洋岸は20メートルを超える大津波に襲われる。
 日本海溝では東日本大震災震源域の北側でM9.1の地震が想定される。青森県八戸市岩手県宮古市では津波の高さが25メートルを超え、震源域から離れた福島県南相馬市浪江町でも20メートルに迫る大津波になるという。
 いずれも、過去6500年に北海道・東北地方の太平洋岸を襲った18回の津波による堆積物から、起こり得る最大級の地震を想定した。また、最も新しい17世紀の大津波からは、発生周期(300~400年)に相当する年数が経過しており、「切迫している」と判断した。
 建造物の耐震化、そして「揺れたら逃げる」という津波防災の大原則を徹底したい。
 今月13日、低気圧による強い風雨で千葉県鴨川市の一部住民に避難勧告が出されたが、避難所に逃げた住民は皆無だった。新型コロナウイルスに感染するリスクを考慮した結果だろう。しかし、ひとつ間違えれば多くの命が失われかねない「危険な判断」だったと認識する必要がある。
 津波や土砂崩れ、洪水、高潮などの水の猛威から命を守る手立ては避難以外にはない。
 一瞬にして命がのまれる津波や土砂災害から逃れることを、感染症防護より優先すべきなのは当然のことである。
 住民が避難行動を徹底するためにも、国や自治体は避難所の環境改善に早急に取り組むことが求められる。「雑魚寝」状況の解消、高齢者や乳幼児らのケア、感染が疑われる住民の検査と隔離など課題は山積している。感染症対策の遅れが、避難行動を鈍らせることは、あってはならない。」
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 現代日本人には、歴史力がなく、自分が好きな物語、自分の都合の良い物語をでっちあげる。
 日本の歴史には、勧善懲悪やハッピーエンドなど存在しない。
 言葉に出そうが出すまいが、自然災害も感染症拡大も起きる時は起きる。
 起きた時にどうするかが、言霊の霊力である。
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 現代日本は責任逃れで、前例主義、事勿れ主義、先送りである。
 責任逃れの嘘と誤魔化しと詭弁、そして問題を解決せずに先送りする。
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 武士は四の五のと言い訳せず、武士に二言はなく、口に出した言葉に責任をとり、違えれば切腹した。
 現代日本には、武士・サムライはいない。  
 現代日本人には、武士・サムライ、武士道や大和心を語る資格はない。
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 昔の庶民(百姓や町人)と、現代の左翼・左派、リベラル派・革新派、メディア関係者さらには右翼・右派、一部の保守派も無関係である。
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💫10}─1・B─デニソワ人DNA解析。デニソワ人・ネアンデルタール人・現生人類との交雑判明〜No.76No.77 

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 2020年4月19日 読売新聞「サイエンス
 DNA解析 絶滅人類復元
 デニソワ人 現生人類と交雑判明
 
 デニソワ人に関する驚きの1つは、ネアンデルタール人と同様に、現生人類と交雑が判明したことだ。ニューギニア島メラネシア人やオーストラリアの先住民らは、DNAの4~6%がデニソワ人由来と推定された。
 ほかのアジアのアジアの現代人のDNAにも交雑の証拠が残っている。ペーボ教授の同研究者であるデービッド・ライク教授らの分析によると、南アジアに住む人の一部はDNAの0.3~0.6%、日本人を含む東アジア人は0.2%がデニソワ人由来だった。ライク教授は、デニソワ人の交雑が起こったのは、5.4万~4.4万年前と推測している。
 現代人のDNAに残っているのは、ほとんどが生存に影響しない無害な部分とみられるが、チベットの人々は、高地など低酸素環境で有利に働く遺伝子の変異をデニソワ人から受け継いでいる。」
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 4万年前 デニソワ人。シベリア・アルタイ山脈のデニソワ洞窟にネアンデルタール人とは違う、新種の旧人が住んでいた。
 アジア内陸部に移住した現生人類は、ネアンデルタール人やデニソワ人と交配して新たな子孫を産みながら東アジアやチベットに生息圏を広めていった。
 いつしか、デニソワ人はネアンデルタール人と共に忽然と絶滅した。
 ネアンデルタール人の喉仏(のどぼとけ)は、ホモサピエンスに比べて少し上にあった為に、母音の発音が難しく言語体系が整わずコミュニケーションが発達しなかった。
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 デニソワ人のDNAの謎解明か 16万年前にチベット高地に適応 研究
 2019年5月2日 10:23 発信地:パリ/フランス [ フランス ヨーロッパ チベット アジア・オセアニア ロシア ロシア・CIS ]
 1980年に中国甘粛省夏河の白石崖溶洞で見つかった下顎骨の右半分だけをデジタル処理した画像。独マックス・プランク進化人類学研究所提供(2019年4月29日提供)。(c)AFP / Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology / Jean-Jacques HUBLIN
 【5月2日 AFP】チベットの山岳地帯で見つかった初期人類デニソワ人(Denisovans)の顎骨の化石から、人類はこれまで考えていたよりもはるかに早い時期に高地での居住に適応していたことが分かったとする論文が1日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。デニソワ人の化石がロシア・シベリア(Siberia)南部以外で発見された例はこれ以外になく、見つかった顎骨は少なくとも16万年前のものと思われる。専門家らは、現生人類(ホモ・サピエンス)の一部が低酸素の条件に耐えられるよう進化した謎を解く鍵になるとみている。
 デニソワ人は、同時代に生きていたネアンデルタール人と同様に、解剖学的現代人である現生人類によって絶滅に追い込まれたとみられているが、デニソワ人の存在が初めて明らかになったのは10年前。シベリア南部のアルタイ山脈(Altai Mountains)にあるデニソワ洞穴(Denisova Cave)で発掘された指節骨の破片1個と臼歯2個によって特定され、約8万年前のものとされた。
 しかし、チベットの僧侶が30年近く前に地元でたまたま発見していた化石から、研究者らは今回、デニソワ人はこれまで考えられていたよりはるかに人数が多く、時代もはるか昔にさかのぼるとの結論を導き出した。
 論文の主著者で、独マックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)の古人類学者ジャンジャック・ユブラン(Jean-Jacques Hublin)氏は、「個人的な見解では、これは私が立てていた作業仮説を裏付けている。つまり、35万年前から5万年前の中国および東アジアの(ヒト族の)化石はおそらく、ほぼ全てデニソワ人のものではないかという仮説だ」と主張している。
 最近発表された別の研究論文では、人類がヒマラヤ(Himalaya)山脈北方の広大な山岳地帯であるチベット高原に到達したのは約4万年前とみられるとされていた。ユブラン氏は、「だが、今回の私たちの発見は4倍も古い」として、「非常に驚くべきことだ」と述べている。
 ■シベリアのデニソワ人になぜ低酸素症を防ぐ遺伝子変異が?
 顎骨の発見はさらに、人類学者を何年も悩ませてきた謎への答えを示している。
 研究者らは2015年、高地に住むチベット人漢人には、血液に酸素を行き渡らせるヘモグロビンの生成量を調整する遺伝子「EPAS1」に変異がみられることを発見した。
 チベット人から見つかった変異は、ヘモグロビンと赤血球の生成量を大幅に抑制し、標高4000メートルを超える高地に行ったときに多くの人が経験する低酸素症の問題を防いでいる。この変異は、標高700メートル未満のシベリアで発見されたデニソワ人のDNAで見つかったものとほぼ同じだった。
 ユブラン氏は、その理由は誰にもつかめていなかったとして、「デニソワ人が高地に住んでいたことは知られていなかったため、この遺伝子(EPAS1)は彼らの生存にとっては不要だ(と考えられていた)からだ」と説明し、こう続けた。
「だが今、その理由が分かった。このDNAは(シベリアの)デニソワ人のものではなく、チベットのデニソワ人のものだったのだ」 (c)AFP/Patrick GALEY
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 NEWSJAPAN
 「母はネアンデルタール人、父はデニソワ人」 ロシアで発見の化石 DNA鑑定で
 2018年08月23日
 ヘレン・ブリッグス BBCニュース
 昔々ロシアの洞窟で、異なる種の旧人類2人が出会った。5万年後、科学者らは2人には娘がいたことを突き止めた。
 この洞窟で発見された骨から検出された遺伝子によって、この骨の持ち主の少女はネアンデルタール人の母とデニソワ人の父を持つことが分かった。
 学術誌「ネイチャー」に発表されたこの発見は、現生人類に最も近いヒトの生活について、貴重な情報をもたらしてくれた。
 ネアンデルタール人とデニソワ人は我々と同じヒト属だが、違う種に属している。
 独マックス・プランク進化人類学研究所(MPI-EVA)の研究員ビビアン・スロン博士は、 「これまでの研究から、ネアンデルタール人とデニソワ人の間に子どもができていたことは推測されていた」と話した。
 「しかし実際に両者の間にできた子どもを発見できるとは思っていなかった」
 人類はネアンデルタール人の子孫?
 現在、非アフリカ系の人類の遺伝子にはネアンデルタール人を起源とするものが少量含まれている。
 そのうち一部地域に住んでいる人はさらに、アジア地域に住んでいたデニソワ人の遺伝子も持っている。 
 何世代にもわたって受け継がれてきた遺伝子によって、種の異なるヒト同士で交配があったことが示されている。
 しかし、デニソワ人とネアンデルタール人両方の化石が見つかっているのは、シベリアのアルタイ山脈にあるデニソワ洞窟だけだ。
 さらに、これまでにDNA鑑定を受けた化石人類はとても少なく、20体以下だという。
 スロン博士はBBCニュースの取材で、「このとても少ない鑑定の中から、種の異なる父母を持つ個体を見つけた」と話した。
 他の研究なども考え合わせれば、「人類の進化の歴史は全て、混血によって成り立っているという説が浮上してくる」という。
 ネアンデルタール人とデニソワ人とは?
 ネアンデルタール人とデニソワ人は、ユーラシア大陸で同じ時期に生きていたことが分かっている。
 ネアンデルタール人は西側で、デニソワ人は東側で、共に4万年前ごろまで生きていた。
 その後、ネアンデルタール人が東に移住していくことで、デニソワ人や、現生人類の祖先に出会った可能性がある。
 MPI-EVAのスバンテ・ペーボ所長は、「ネアンデルタール人とデニソワ人が出会う機会はそれほど多くなかっただろう」と話した。
 「しかし一度出会えば、私たちがこれまで考えていた以上に頻繁に交配していたはずだ」
この家族について分かっていることは?
 数年前にデニソワ洞窟でロシアの考古学者が見つけた骨のかけらから、この少女の物語は始まった。
 骨は独ライプツィヒで遺伝子分析を受けた。
 カナダ・トロント大学のベンス・バイオラ氏は、「このかけらは長い骨の一部で、この人物が少なくとも13歳に達していたと推測できた」と説明する。
 研究者らは、この少女の母親はそれまでデニソワ洞窟に住んでいたネアンデルタール人より、西欧地域に住んでいたネアンデルタール人に遺伝的に近いと推測している。
 つまり、ネアンデルタール人は絶滅する数万年前から、欧州東西とアジアの間で移住を繰り返したことになる。
 遺伝子分析ではさらに、デニソワ人の父親には少なくとも1人、ネアンデルタール人の祖先がいたことも明らかになった。
 (英語記事 DNA shows cave girl was half Neanderthal)
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 両親はネアンデルタール人とデニソワ人 交雑の初証拠
 2018/9/8
 ネアンデルタール人女性の復元像。2008年に公開されたこの像は、古代のDNAの解析結果を利用して作成された最初の復元像だった(PHOTOGRAPHY BY JOE MCNALLY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
 ドイツにあるマックス・プランク進化人類学研究所の博士研究員で古遺伝学者のビビアン・スロン氏が約9万年前の骨片のDNAを調べたところ、ネアンデルタール人のDNAとデニソワ人のDNAを、ほぼ等量持っていることが判明した。科学者たちは、数種のヒト族がいた時代、交雑があったと考えていたが、交雑によって生まれた子の存在が実際に確認されたのは今回が初めてだ。
 「ありえない」――ビビアン・スロン氏は当初、分析結果を信じられなかった。彼女は何かの間違いだろうと考えた。スロン氏は、骨片の別の部位からもサンプルを採集し、改めて分析したが、結果は変わらない。それでも疑念は払拭できない。最終的に6つのサンプルを分析してみたが、分析結果は変わらなかった。その骨片は、10代の少女のもので、母はネアンデルタール人、父はデニソワ人だった。
 この発見は、2018年8月22日に科学誌「ネイチャー」に発表された。2種のヒト族の交雑によって生まれた子どもの初の決定的な証拠であり、古代のヒト族同士の関係の理解を進めるヒントだ。
 米ハーバード大学の遺伝学者デイビッド・ライク氏は、「ものすごい発見です」と言う。「交雑の第一世代の子など見つからないと思っていましたから」。同氏は今回の研究には関与していない 。
 彼女は、どんな少女だったのだろう? 彼女の化石は、人類の歩みの研究に、今後どんな影響を与えるのだろうか?
 デニソワ人はどんなヒト?
 人類の系譜にデニソワ人が加わったのは2010年、つい最近のことだ。そのため、デニソワ人についてわかっていることは、まだ少ない。
 2010年、マックス・プランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ氏が率いる国際チームが、シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟で発掘されたヒト族の小指の骨と親知らずの歯から、未知のヒト族のDNAが発見されたと発表した。新たに発見されたヒト族は、洞窟の名称にちなんでデニソワ人と名付けられた。
 その後の研究により、デニソワ人がネアンデルタール人と近縁で、約39万年前に共通の祖先から分岐したことが明らかになった。彼らは、ネアンデルタール人が絶滅に向かいはじめた4万年前頃まで生きていたようだ。
 では、デニソワ人は、どんなヒトだったのだろう。外見は? 何人ぐらいいたのか? 発見されたシベリアの洞窟のまわりだけに生息していたのか? 疑問をあげればキリがない。一番の問題はデニソワ人の化石が非常に少ないことだ。科学者がデニソワ人について知るためには、同じ洞窟から発見された4人のデニソワ人の3本の歯と1本の小指の骨という、ごくわずかな手がかりに頼るほかないのだ。
 動物の骨に紛れて放置されていた少女の骨片
 今回の研究に使われた骨は、2012年にデニソワ洞窟で発見されたもの。分析の結果、約9万年前に13歳前後で死亡した少女の腕か脚の骨の破片であることがわかった。
 幅が5ミリ程度しかないこの骨片は、見た目からはヒト族のものとはわからない。実は、同じ洞窟で発見されたライオンやクマやハイエナなどの数千個の骨片と一緒に置かれ放置されていたものだった。
 シベリアのデニソワ洞窟は、ネアンデルタール人、デニソワ人、初期の現生人類の化石が見つかっている唯一の場所である(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC)
 数年後、英オックスフォード大学のサマンサ・ブラウン氏が、放置されていた数千個の骨片に含まれるコラーゲンペプチドを調査して、それぞれの骨がどの動物かを分類した。その過程で、今回調査されたヒト族の骨片が見つかったのだ。
 スロン氏は発見されたヒト族の骨片のミトコンドリアDNAを調べた。ミトコンドリアDNAの遺伝物質は母親からのみ受け継がれる。すでに、このときの分析結果は2016年に「ネイチャー」に発表され、この骨がネアンデルタール人を母にもつヒト族のものであることが確認されている。
 「これだけでも大興奮の発見でした」とスロン氏は言う。「けれども核DNAを調べはじめると、興奮はさらに高まりました」。核DNAは母親と父親の両方から受け継がれるため、父系もたどることができる。「そのとき、この骨のDNAに少し変わったことがあることに気付いたのです」とスロン氏。
 まず、父系はデニソワ人の遺伝的特徴とはっきり一致した。ただ、この少女のゲノムは驚くほど多様性に富んでいた。そこで両親の遺伝的な近さを調べるため、ヘテロ接合性を調べた。両親が同種であればヘテロ接合性は小さく、ヒト族の別々の種ならヘテロ接合性は大きくなるのだ。
 少女の骨は「ヘテロ接合性が大きかった」と、米カリフォルニア大学サンタクルーズ校のコンピューター生物学者リチャード・E・グリーン氏が言うように、交雑だとわかったのだ。同氏は、今回の研究に携わっていない。
 古代、交雑していたのはデニソワ人とネアンデルタール人だけではないと考えられている。ネアンデルタール人は、おそらくアフリカを出た直後から現生人類と交雑をはじめている。今日、ほとんどのヨーロッパ人とアジア人のDNAの約2パーセントはネアンデルタール人に由来するものだ。同じように、デニソワ人の痕跡も残っていて、現代のメラネシア人のゲノムの4~6パーセントはデニソワ人から受け継いだものだ。
 交雑したヒト族と私たちに直接的な類縁関係があるかどうかを特定するのは難しい。しかしライク氏は、デニソワ人の祖先をもつ人は全員、多かれ少なかれネアンデルタール人の祖先をもっていると言う。
 ヒト族の交雑はよくあった?
 新たな研究は、ヒト族同士の交雑が以前考えられていたよりも一般的だった可能性を示唆している。というのも、これまでに塩基配列が決定されたヒト族はほんの一握りという状況で、今回交雑による第一世代の子が見つかったからだ。スロン氏は、この確率は「衝撃的」だと語っている。
 ただ、グリーン氏は、その原因はサンプリングの偏りのためではないかと指摘する。洞窟では骨が保存されやすいし、おそらく多様な集団が出くわすことも多かっただろう。「洞窟は更新世ユーラシアの婚活バーのような場所だったかもしれません」と氏は冗談っぽく続けた。
 現在、デニソワ人について分かっていることは、発見された3本の歯と1本の小指の骨から導き出されたものだ(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC)
 研究が進み、ほかにも交雑の痕跡がわかっている。少女のデニソワ人の父親にも、ネアンデルタール人の祖先がいた形跡がある。また、2015年には、ルーマニアの洞窟から、わずか4~6世代前にネアンデルタール人の祖先がいた人の顎の骨が発見されている。
 今回の発見は、ヒト族どうしが自由に交雑する古代世界の様子を垣間見せてくれると、ライク氏は言う。「こうした発見があるたびに、人類に対する見方が大きく変わります。ワクワクしますね」
 (文 Maya Wei-Haas、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
 [ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年8月24日付]
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 謎の古代人類 デニソワ人の骨格をDNAから復元
 2019/10/7
 謎に包まれたデニソワ人の想像図。最新研究によると、狭い額やがっしりした顎など、デニソワ人は多くの点でネアンデルタール人に似ていたようだ(ILLUSTRATION BY MAAYAN HAREL)
 謎の多い古代人類「デニソワ人」の骨格を再構築することに研究者が初めて成功、2019年9月19日付けの科学誌『セル』に発表された。
 デニソワ人は数万年にわたりアジアに暮らしていたと考えられているが、その化石は、小指の骨と頭蓋骨の破片、割れた顎骨、数本の歯しか見つかっていない。
 この謎の人類の骨格を浮かび上がらせるため、今回の論文を執筆したデビッド・ゴクマン氏は最も説得力ある証拠を利用した。DNAだ。
 イスラエルエルサレムヘブライ大学の博士課程学生だったゴクマン氏らは、デニソワ人の小指の骨から抽出したDNAを調べて骨格に関する32の特徴を抽出、デニソワ人の骨格を提案するという快挙を成し遂げた。
 「科学が夢の国を見せてくれた」
この研究は、デニソワ人のプロポーションについて具体的な数値を与えるものではないものの、現生人類(ホモ・サピエンス)やネアンデルタール人と比較したときにデニソワ人がどのように見えるかを示している。
 「このような手法で過去を再現できるのはすばらしいことです。科学が夢の国を見せてくれました」と、スペイン国立人類進化研究センターのマリア・マルティノン=トレス所長は喜ぶ。
 ナショナル ジオグラフィック協会も助成している今回の研究は、新たなデニソワ人化石発見につながるヒントも与えてくれる。科学者たちはここ数年、ヒト族の系統樹にうまく当てはまらない化石をアジア全域で多数発見している。しかし、比較に使えるデニソワ人の骨がほとんどなく、温暖なアジアの化石からDNAを抽出できる可能性も低いため、こうした化石の多くが「旧人」という曖昧な分類の中でくすぶっている。
 新たに提案された特徴は、こうした化石を同定するのに役立つかもしれない。今回の研究はすでに、中国河南省許昌市近郊で発見された2点の頭蓋骨の破片がデニソワ人のものである可能性を示唆している。
 この研究は「人間とは何か」という大きな問いにも関わると、研究チームを率いたエルサレムヘブライ大学のリラン・カーメル氏は説明する。かつて地球上には多様な種類のヒト族がいたのに、生き残ったのはホモ・サピエンスだけだった。その理由は誰も知らない。
 「今回の研究は、この疑問に答えるための大きな一歩です」とカーメル氏は言う。
 85%の精度で予想
 デニソワ人の存在が最初に報告されたのは2010年のこと。シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟から出土した1本の小指の骨と1本の大きな歯から抽出されたDNAが決め手となった。
 「DNAのみに基づいて新種の人類が発見されたのは、科学の歴史上初めてでした」とカーメル氏は言う。「新種と同定されたものの、その姿は謎に包まれていました」
 その後の遺伝学的研究から、デニソワ人の姿が徐々に見えてきた。デニソワ人は少なくとも40万年前にはネアンデルタール人から分岐していて、ネアンデルタール人がヨーロッパと中東に定着したのに対し、デニソワ人は東に進んでアジアまで来た。途中、デニソワ人は現生人類の祖先と交雑し、その遺伝子の特徴は今でもアジア系集団に残っている。
古人類学者は伝統的に、化石骨格を利用して古代ヒト族を分類してきた。しかし、デニソワ人の化石はなかなか見つからず、その姿を復元できずにいた。
 そこでカーメル氏らの出番となった。DNAは、身体的特徴を決定するタンパク質の設計図のようなものだ。しかし、この設計図は本のように単純に読むわけにはいかず、どの文字の連なりがどのタンパク質に対応していて、個々の遺伝子がどのくらい活性化しているかがわかっていないと読み解くことができない。
 進化の過程で遺伝子の活性が抑えられる場合があるが、その方法の1つが、DNAの特定の場所にメチル基のタグをつける「メチル化」である。例えば、ゲノムの特定の場所に付いていたメチル基が失われると、さまざまな種類のがん細胞がいっせいに成長を始めることがある。
 デニソワ人の発見の報告から約1年後、ゴクマン氏らは古代人類のDNAにたまたま保存されていたメチル化のパターンを調べていた。彼らはネアンデルタール人と現生人類のゲノムのメチル化のパターンの地図を作り、解剖学的特徴や疾患と関連づける研究をしていたが、さらに大胆な一歩を踏み出すことにした。DNAのメチル化を利用してデニソワ人の身体的特徴を予想しようというのである。
 現在は米スタンフォード大学の博士研究員であるゴクマン氏は、「どんな結果になるのか、確信はもてませんでした。過去にそんな研究は行われていなかったからです」と説明する。
 メチル化が果たす役割を見きわめるため、研究チームはヒトのさまざまな疾患の基礎となる遺伝子変異のデータベースを詳細に調べた。遺伝子変異はメチル化と同じように特定の遺伝子を不活化する。データベースは、特定の変異によって指が長くなるか短くなるかなど、変化の方向を知るのにも役立った。
 研究チームは用心のため、遺伝子と無理なく結びつけられるような骨格上の特徴だけを予想した。例えば、1つの特徴をコントロールする遺伝子が複数あるときには、各遺伝子の変化の方向が同じである場合にのみモデルに含めることにした。
 「つまり、ある特徴について、遺伝子Aが『アヒルに似ている』と言い、遺伝子BもCも同じことを言っている場合にかぎり、『アヒルに似ている』と予想するのです」とゴクマン氏。「『ガチョウに似ている』と言う遺伝子が1個でもあれば、その特徴は予想から除外します」
 こうして同じ方向の変化だけを集めた彼らは、同じ方法で、現生人類と比較したときのネアンデルタール人チンパンジーの骨格の違いを予想してみた。その結果、85%の精度で骨格の違いを予想することができた。
 ネアンデルタール人に似ているが
 Jason Treat, NG STAFF. SOURCE: Liran Carmel and others, Cell, September 2019.
 意外ではないかもしれないが、研究の結果は、狭い額やがっしりした顎など、デニソワ人の外見が既知の最も近い親戚であるネアンデルタール人によく似ていることを示している。けれども重要な違いもある。
 「私たちが見ているのはネアンデルタール人ではありません」と、ニュージーランド、マッセイ大学のマレイ・コックス氏は言う。「現生人類ともネアンデルタール人とも大きく異なる、第三のグループの人類です。非常に興味深いものです」
 注目すべきは頭頂骨(頭蓋の上部にある左右一対の四角形の板状骨)の幅の広さだ。河南省で発見された10万~13万年前の2点の頭蓋骨の破片は、この頭頂骨の幅が非常に大きかった。そのうちの1点の測定値は同時代のものの中で最大だった。多くの専門家がこの化石はデニソワ人だろうと考えているが、DNAがないため断定できずにいる。
 今回の研究は、頭頂骨の幅が現生人類やネアンデルタール人よりも広いことが、デニソワ人の手がかりとなると予想する。河南省で出土した頭蓋骨化石の8つの特徴のうち、7つが研究チームの予想と一致していた。
 カーメル氏はそのときの気持ちを「最高の喜び」と振り返り、「神からの啓示のような発見でした」と語る。
モデルを検証する機会は2019年の5月にもあった。チベット高原のはずれにある洞窟で デニソワ人の顎の骨が発見されたのだ。シベリア以外の場所でデニソワ人の化石骨が発見されたのはこれが初めてだった。この発見を聞きつけたゴクマン氏は、すぐに自分たちの予想があっているかどうかチェックした。驚いたことに、下顎の高さから歯列弓の長さまで、新たに記載された特徴のすべてが一致していた。
 見事としか言いようのない研究
 今回の研究は早くも古人類研究者たちを熱狂させ、予想値と各種の化石との比較が始まっている。中国の古脊椎動物学・古人類学研究所(IVPP)の呉秀傑氏は、今回提案されたデニソワ人の特徴は、中国北部の許家窯遺跡で発見された正体不明の化石とよく一致しているようだと言う。
 ただし、特徴のすべてが一致しているわけではなく、エナメル質の厚さや指先の幅の広さなどは一致していない。しかし、カナダ、トロント大学の古人類学者でデニソワ人の化石形態学の第一人者であるベンス・バイオラ氏は、こうした特徴に固執していると全体像を見落とすことになると指摘する。
 「見事としか言いようのない研究です」と彼は言い、限られた情報から最大限の知見を引き出した研究チームの努力を讃える。今回のモデルの精度は、小さな化石をデニソワ人のものと特定できるほどは高くないが、将来の研究の指針として大いに役立つはずだと彼は言う。
 ロンドンの自然史博物館のクリス・ストリンガー氏は、「古代のゲノムから探り出すことのできる情報の限界を広げるもので、胸が踊るような研究です」と言う。ただし、この研究は「推定に推定を重ねたもの」であるため、今後、科学コミュニティーによる評価が必要だと付け加える。
 例えばコックス氏は、今回の研究でデニソワ人集団内のばらつきがどの程度見落とされているのか不明であると指摘する。コックス氏自身の研究を含め、デニソワ人の遺伝学的研究からは、この集団が非常に広範にわたっていて、一部の集団は数万年にわたり独立に進化していることがわかっている。ある系統のデニソワ人は、ネアンデルタール人との違いと同じくらい、ほかの系統のデニソワ人と異なっていた。
 非営利組織トランスレーショナル・ゲノミクス研究所のヒト遺伝学の専門家ニコラス・バノビッチ氏は、今回調査された「メチル化」について、遺伝子の活性を微調整するボリュームのつまみのようなものとたとえる。したがって、研究チーム自身も強調しているように、予想される骨格の特徴は、現生人類やネアンデルタール人と比較した場合にのみ明らかになるものだ。変化の大きさを測ることは今回の研究の範囲外である。
 とはいえコックス氏をはじめ、研究者たちは今回の研究に興奮している。「デニソワ人の形態については、私たちはほとんど何も知らないのです」と彼は言う。「どんなに小さな知見でも、私たちには大きな意義があるのです」
 (文 Maya Wei-Haas、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
 [ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年9月24日付]
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🌀12〗─4─世界の常識としてのロックダウン。マレーシア。~No.115No.116 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・ 
 アジア諸国にとって、現代の日本は手本とする国でもなく、学ぶところも真似るところも少ない。
 日本の魅力は、戦争に強かった明治時代まで古い日本であって、戦争を忌避する平和な現代の日本ではなかった。
 日本を訪れる外国人観光酌は、現代日本の街並みではなく昔の町並みを見、現代日本人ではなく昔のサムライや忍者に憧れている。
 現代の日本は信用され、現代の日本人は愛されている、はウソである。
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 2020年4月20日 msnニュース 東洋経済オンライン「マレーシア「日本を追い抜いた」感染抑制の成果 国境封鎖に加え地域ごとの厳格な管理を徹底
 海野 麻実
 © 東洋経済オンライン クアラルンプール市内のスーパーマーケットでは、入店前に必ず体温チェックのうえ、“ソーシャル・ディスタンス”を1m以上保つことが求められる(筆者撮影)
 日本より約1カ月早く、事実上の国境封鎖をアジアで初めて断行したマレーシアで、少しずつその「ロックダウン効果」が見え始めている。
 当初、日本より感染者数、死亡者数ともに大幅に少なく、3月前半までは目立った感染者数の伸びも確認されていなかったマレーシア。しかし、3月15日に突如として前日の35人から190人と急速に1日当たりの新規感染者数が増加した後、連日100人超の新規感染者数を記録し続け、4月初旬までの間には同200人を超える日も出ていた。
 「マレーシアの窮状が示す集団行事の巨大リスク」(2020年3月24日配信)で詳しく報じたように、クアラルンプール郊外のモスクで行われた大規模礼拝が集団クラスターとなったこともあり、マレーシアでは3月下旬において大幅な感染者数の伸びが続き、日本の感染者数を一時は一気に追い抜く事態となっていた。
 これを受けて、マレーシア政府は非常に早い対応を見せた。翌3月16日にはムヒディン首相が緊急会見をして、わずか2日後の18日からの事実上の国境封鎖と活動制限令(一部を除く原則的なロックダウン)開始を宣言。当初2週間の予定で出された活動制限令は2度にわたって延長されて、4月28日まで続くことになり、その間、市民の外出制限は日増しに強化されるなか、ここ数日は状況に変化が見られている。
新規感染者1日100人超の状態を脱しつつある
 新規感染者の急速な増加を示した3月15日からちょうど1カ月後の4月15日、1日当たりの新規感染者数は100人を下回り85人、(翌日16日には110人となったものの、)17日69人、18日54人、19日84人と、1カ月ほど続いていた1日当たり新規感染者数100人超の状態を脱しつつあるように見受けられる。
 一時は日本の累計感染者数も追い抜いたものの、昨日(4月19日)時点で、日本の感染者数1万0361人、死亡者数161人に対して、マレーシアの感染者数は5389人、死亡者数は89人となっている。約半月前の4月2日時点では、日本の感染者数2384人、死亡者数57人に対し、マレーシアの感染者数は2908人、死亡者数45人と、マレーシアの感染者数のほうが多かったものの、この2週間ほどで立場は逆転している。
 もちろん、国全体の人口は日本が約1億2600万人、マレーシアは約3100万人と4倍近い開きがあり一概に比べられないものの、一足早く封じ込めを断行したマレーシアの新規感染者数が減っている実例は、現在、急速に新規感染者数が拡大している日本とは対照的だ。
 マレーシアではどのように感染拡大の封じ込めを行なってきたのか。
 現在、マレーシア保健省は、感染の危険性に応じて、国内の地域を4つに分けている。具体的にはレッドゾーン(41以上の陽性反応症例が出た地域)、オレンジゾーン(21から40の陽性反応)、イエローゾーン(1から20の陽性反応)、グリーンゾーン(陽性反応の症例なし)だ。
 生活必需品や食料も「配給制」に
 地域内で患者数が41人以上になるとレッドゾーンとみなされ、国が集中的に消毒作業を行い、警察と軍隊により監視が強化される。レッドゾーン内で、急な感染拡大が生じた際には、現在発布されている活動制限令の強化版が適用され(強化された活動制限令EMCO)、原則的にその地域への出入りが完全に規制されて事実上の完全封鎖。住民の外出は一切許可されない。生活必需品や食料は「配給制」となり、住宅から”ソーシャル・ディスタンス(社会的な距離)”を取って置かれたものを受け取る、という徹底した厳戒態勢が敷かれる。食料の配給は防護服に身を包んだ職員から受け取る徹底ぶりだ。
 マレーシアで暮らす多くの日本人にとっても決して他人事ではない。多くの駐在員やロングステイの日本人が暮らす首都クアラルンプールやジョホールバルでも、レッドゾーンに指定される地区は数多く点在する。
 当初は地域ごとにレッドゾーンが指定されていたが、クアラルンプール市内では、日本の百貨店そごうや観光シンボルでもあるKLタワーなどが立ち並ぶエリアにあるコンドミニアム(マンション)で17人の感染者が発生したことから、このコンドミニアム全体が危険ゾーンと見なされ、強化された活動制限令(EMCO)が敷かれた。これにより、このコンドミニアムの住民は一切の外出が許可されなくなった。
 帰国のために空港に行く際にも(州をまたぐ移動となる場合)警察の許可証を基本的に得ることが推奨されており、もはや身近に迫った、我が身に明日にでも降りかかるかもしれない深刻な事態として受け止められている。
 筆者の住むクアラルンプール中心部にあるコンドミニアムでも、まだ感染が拡大する前の1カ月以上前の段階で、「コンドミニアム内で中国本土から帰国して新型コロナウイルスの検査を受けた住民がいる」との通知が張り出されていた。その住民の検査結果は陰性だったにもかかわらず、そのような情報がこまめに共有される厳格ぶりは徹底しており、住民の意識も徐々にこの1カ月で高まっている。
 ちなみに、マレーシアのコンドミニアムには、ジムやプールなどの共用施設が備わっているものが多いが、そうした施設もすべて閉鎖され、コンドミニアムの敷地内でのジョギングさえも禁止されている。スーパーマーケットでも入店前には客1人1人に対して体温検査が義務付けられており、37.6℃以上の場合は入店を拒否される。レジの前もソーシャル・ディスタンスを保つために1メートル以上の間隔を置いてテープが床に貼られており、これらを守れていない店舗については、巡回している警察から厳重な注意を受けることとなる。
 外食禁止でテイクアウトか宅配のみ
 さらに、マレーシア政府は、東南アジア版ウーバーイーツとも言える飲食宅配代行サービスのグラブフードやフードパンダなどのオンラインサービスを積極的に利用するよう、国民に呼びかけている。首相自ら、外食はしばらく我慢してデリバリーサービスを頼もう、と緊急会見で訴えており、今やいっさいの外食は禁止されてレストランはテイクアウトか宅配注文のみ受け付けている。
 フードパンダでは「コンタクトレス・デリバリー」と銘打ったサービスを開始。バイクのドライバーと注文した客が、受け取り時に接触することがないよう“最大限の安全”を確保するため、客に自宅の外に受け取り場所を設けてもらい、ドライバーが配達したことをスマートフォンのアプリを通じて連絡する、という仕組みをスタートさせている。オンラインで支払いまですべて完了できるシステムのため可能となる。
 これも、政府から指示されている、最低でも1メートルの「ソーシャル・ディスタンス」を守るための対策であり、各バイクのドライバーは配達ごとに手洗い、消毒を徹底するよう会社から指示されているという。
 ムヒディン首相は、国民に向けてこう強く宣言した。
 「国民の皆さんが、未来に向けて私たちの日常生活において実践しなければならない“新たなノーマル”の意味をきちんと理解してくれると信じています。かつて、握手は“ノーマル”な習慣でした。しかし、今は違うのです。ウイルスに感染することをまず避けるため、握手は出来ません。尊敬の念を込めてお辞儀をしましょう、これが新しい“ノーマル”です」
 アジア初の事実上のロックダウンに踏み切ったマレーシア、その効果が今後続くかどうか。今の日本にとっては大いに参考になる事例といえよう。」
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