🍘50〗ー1ーバブル崩壊後の過去30年で日本の格差は危険なレベルにまで拡大した。~No.147 

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  2024年3月21日 YAHOO!JAPANニュース ニューズウィーク日本版「過去30年で日本の格差は危険なレベルにまで拡大した
 <富の格差の度合いを測る「ジニ係数」を見ると、今の日本の格差は許容範囲を超えている>
 世帯収入の「ジニ係数」で日本社会の格差の実態がよく見える Prazis Images/Shutterstock
 日本は格差社会になりつつあるというが、富の格差の度合いを測る指標として「ジニ係数」がある。人々の暮らしの格差を測るには、個人の収入よりも生計の単位である世帯収入のデータで計算するほうがいい。
 【グラフ】世帯収入のジニ係数が0.4を超える都道府県(1992年と2022年)
 2022年の総務省『就業構造基本調査』によると、年収が分かるのは5463万世帯。うち年収200万円台が811万世帯と最も多く、300万円未満の世帯が全体の3分の1を占める。これは世帯の単身化や高齢化が進んでいることによる。年金で暮らす高齢世帯だと100万円台、いや2桁もザラだ。
 ここで計算するジニ係数は、各階層の世帯数と、各階層の収入総額の分布のズレを数値化するものだ。「世帯数では●%でしかない富裕層が、富全体の▲%を占有している」といった現実を可視化する。各階層が手にする富(収入総額)は、階級値を使って算出する。年収200万円台の世帯の年収は、一律に中間の250万円とみなす。この階層の世帯数は811万世帯なので、収入の総額は250万円×811万世帯=20兆2638億円となる。
 <表1>は同じやり方で、14の階層の世帯数と、各々が手にする富量を割り出したものだ。
 <表1>
 真ん中の相対度数を見ると、年収300円未満の世帯(①~③)は世帯数では36%を占めるが、得ている富は全体の12%でしかない(黄色)。一方、世帯数では11%しかいない年収1000万円以上の層(⑪~⑭)が、富全体の31%を得ている(青色)。
 当然ながら、社会の富は均等には配分されていない。問題は、これが許容範囲であるかどうかだ。世帯数と富量の分布のズレは、右欄の累積相対度数をグラフにすることで可視化される。横軸に前者、縦軸に後者をとった座標上に、14の階層のドットを配置して線でつなぐと<図1>のようになる。この曲線をローレンツ曲線という。
 <図1>
 曲線の底が深いほど、各階層の世帯数と富量の分布の隔たり、すなわち収入格差が大きいことになる。ジニ係数は色付きの面積を2倍した値だ。極限の不平等状態の場合、色部分は四角形の半分となるので、ジニ係数は0.5を2倍して1.0となる。逆に完全平等の場合、曲線は対角線と重なるのでジニ係数は0.0となる。現実の不平等は、この両端の間のどこかに位置する。
 上図の場合、色部分の面積は0.2087なので、ジニ係数はこれを2倍して0.4174となる。一般にジニ係数が0.4を超えると、常軌を逸して格差が大きいと判断される。よって今の日本の世帯収入格差は、許容範囲を超えていることになる。
 同じ方法で1992年の世帯収入ジニ係数を計算すると0.3790で、この30年間で格差が広がっていることが分かる。47都道府県別の数値も計算し、危険水域(0.4)を超えた県に色を付けた地図にすると<図2>のようになる。
 <図2>
 左右の地図の違いが大きい。1992年では世帯収入ジニ係数が0.4を超える県は10県だったが、2022年では大半の県が危険色に染まってしまっている。「失われた30年」における格差社会化の進行だ。2022年で最も高いのは高知県で0.4456となっている。
 世帯の単身化・高齢化も背景にはあるが、それだけではないだろう。各県のジニ係数は、単身世帯や高齢世帯の割合とは相関していない。単身世帯の増加とて、結婚して家庭を持てない者の増加という、貧困の文脈でとらえることもできる。持てる者と持たざる者の格差が広がっていることは、多くの人が肌で感じているはずだ。
 政府の役割は、所得の再分配によってこうした格差を是正することだ。相次ぐ増税で、国の税収は過去最高になっているが、近年の内訳を見ると、所得税法人税よりも消費税が多くなっている。税金には累進性を持たせるべきであって、その逆のことをしている場合ではない。
 <資料:総務省『就業構造基本調査』>
 舞田敏彦(教育社会学者)
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 2月28日 YAHOO!JAPANニュース ニューズウィーク日本版「生涯賃金から見える日本の学歴格差、男女格差、地域格差
 舞田敏彦(教育社会学者)
 生涯賃金格差
 生涯賃金で見ると男女差、地域差はかなり大きい Eviart/Shutterstock
 <大卒女性の生涯賃金は高卒男性より少なく、東京と沖縄では1億円近くの差がある>
 2022年の総務省『就業構造基本調査』に、正規職員の年収分布が出ている。それをもとに20代前半の大卒男性正社員の年収中央値を計算すると306万円。同年齢の女性大卒正社員は283万円だ。この時点で20万円以上の差があるが、定年間際の50代後半では男性が758万円、女性が625万円と、133万円もの違いになる。
 大卒は22歳から59歳まで38年間働くのだが、毎年の賃金を累積した「生涯賃金」で見ると、男女でとてつもない差になっていそうだ。生涯賃金を出すには、個人を入職から退職まで追跡し、各年齢時点での年収を累積しなければならないが、単年の調査データによる便法推計もできなくはない。
 上記の『就業構造基本調査』から、大卒男性正社員の年収中央値を計算すると、20代前半が306万円、20代後半が398万円、30代前半が481万円、30代後半が554万円、40代前半が610万円、40代後半が672万円、50代前半が747万円、50代後半が758万円。これら全部を足すと4525万円。8つの時点の年収の合計値だが、これを4.75倍すれば38年間の年収合計の近似値になる。
 これによると、大卒男性正社員の生涯賃金は2億1721万円と見積もられる。<表1>は同じやり方で、男女正社員の学歴別の生涯賃金を試算したものだ。
 大卒男性は2億1721万円であるのに対し、大卒女性は1億7160万円。同じ大卒正社員でも、生涯賃金に4500万円以上の開きがある。退職金も含めれば、差はもっと大きくなるだろう。
 学歴の差も大きい。高卒を100とすると、男性は大卒が126、大学院卒は149となる。女性は大卒が157、大学院卒は200と、男性よりも学歴差が大きい。高等教育進学の効用は、男性より女性で大きいと言えるかもしれない。
 性別と学歴を絡めてみると、女性の生涯賃金は一段下の学歴の男性より低くなっている。大卒女性は高卒男性より低く(黄色)、院卒女性は大卒男性より低い(青色)。就いている職種の違いにもよるが、女性の場合、家事や育児等の負荷がかかるためでもあるだろう。スーツ姿の男女が陸上競技のスタートラインについているものの、女性のコースには家具や家事道具といった障害物が配置されているSDGsのポスターが話題になった。上記のデータは、不当なジェンダー格差の表れとも見るべきだ。
 予想されることだが、地域による差もある。<表1>と同じやり方で、47都道府県別に正社員男女の生涯賃金を計算してみた。値が高い順に並べたランキングにし、上位10位と下位10位を取り出すと<表2>のようになる。
 男性を見ると、東京の2億4136万円から沖縄の1億4880万円までの開きがある。この両端では、同じ男性正社員でも生涯賃金に1億円近くもの差が出る。経済学者エンリコ・モレッティの「年収は住むところで決まる」というテーゼを彷彿させる。
 分布の性差も明白で、男性では沖縄を除く全県で1億5000万円を超えるが、女性でこのラインを超えるのは東京と神奈川しかない。地方の女性正社員の40年間の稼ぎの総額は1億1000万円ほど。1年あたりの年収は280万円ほどで、自活するのも容易でない。
 地方では物価が安いというメリットがあるものの、収入が少ないというデメリットのほうが大きいように思える。子どもの大学の学費などは、全国どこでも同じだ。これも地方から人口が流出する要因で、都会の大学で多額の奨学金を借りた若者は、稼げない地元にUターンするのをためらう。まずはこうした生活格差を埋めないことには、地方創生も進みそうにない。
 <資料:総務省『就業構造基本調査』(2022年)>
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