・ ・ ・
関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
2021-08-14
🍠23〗─1─大正桜島噴火と日本軍部の救護活動。大正3(1914)年。~No.69
・ ・ ・
2024年2月17日 MicrosoftStartニュース プレジデントオンライン「「警察官のなり手10年で6割減」教員、自衛官、整備士…エッセンシャルワーカー不足で生活維持ができなくなる日
2017年2月28日、荷物を入れた台車を運ぶヤマト運輸の配達員。宅配便国内最大手のヤマト運輸は、インターネット通販の普及とともに急増している荷受量を抑制する検討を始めた。労働組合の要求を受け、ドライバー不足や長時間労働の常態化など労働環境の悪化に対応する
© PRESIDENT Online
人手不足は介護、建設、物流業界だけの話ではない。すでに自動車整備士や保線作業員、薬剤師、教員といったエッセンシャルワーカーの不足が深刻化しているだけでなく、私たちの生活の安全を直接守る警察官や消防士、自衛官のなり手が激減しているという――。
※本稿は、古屋星斗+リクルートワークス研究所『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
2040年に1100万人余の労働供給が不足する
私たちリクルートワークス研究所が、2040年までに日本全体でどれくらい働き手がたりなくなるのか、労働の需要と供給をシミュレーションしたところ、次のような日本社会の未来の姿が浮き彫りになった。
① 2040年に1100万人余の労働供給が不足する
労働供給不足の規模は、2030年に341万人余、2040年には1100万人余。およそ現在の近畿地方の就業者数が丸ごと消滅する規模である。
② 労働供給は今後、加速度的に減少していく
社会における労働の供給量(担い手の数)は、今後数年の踊り場を経て2027年頃から急激に減少する局面に入る。2022年に約6587万人であった労働供給量は、現役世代人口の急減にともなって2030年には約6337万人、2040年には5767万人へと減少していく。
③ 労働需要はほぼ横ばい
社会における労働の需要量(消費量)は、今後も横ばい、微増傾向で推移する。労働需要が減少しない背景には、2040年までの日本社会においては高齢人口が減少しないことがある(高齢人口のピークは2040年代半ばと推定されている)。
高齢人口は医療、福祉業や物流、小売業など労働集約的な対人サービスに対する依存度が高く、こうした業種に従事する職種を中心に労働力の消費量は今後も増加する可能性が高い。
人材確保は最優先の経営課題
これから深刻化する労働供給不足は単なる人手不足論ではない。後継者不足や技能承継難、デジタル人材の不足などといった産業・企業視点からの問題ではなく、「生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなるのではないか」という問題なのである。
そう考えると、全国津々浦々で毎日のように報じられる、さまざまな業種・職種で人手が不足しているというニュースが、違った視点で見えてくるのではないか。
介護、建設、物流が足りていないことは言わずもがな。現場ではギリギリの状況が続いており、早晩、人手が足りないことに起因してサービス水準を切り下げることになるだろう。
介護現場の問題は私たちの生活の質(QOL)に直結する問題であるし、住宅の建設が遅れたり、宅配サービスが休日に届かなくなったりといったことは早晩起こる可能性が高い。建設や運輸の人材難の問題は、災害後の支援や復旧の遅れにもつながる。つねに災害と隣り合わせの社会である日本において、大きな問題となっていく可能性が高い。
観光・飲食に関してもまったく人手は足りていない。2023年の夏に九州に行った際、飲食店の経営者が、「もっとお客さんを入れられるんですが、これ以上入れると従業員が辞めちゃうので、今は完全予約制にして、さらに席の数を減らしてなんとかやっています」と話してくれたことを憶えている。
他方で、別のホテル経営者は、「またコロナみたいなことがあるかもしれないので、とにかく儲けられるうちに儲けないと従業員を養えない。今は従業員にちょっと無理してもらってでもお客さんを受け入れていますし、そのために臨時賞与を出しました」と言っていた。方針はまったく違うが、人手が足りていないことには変わりない。
インバウンドで盛り上がる観光や飲食業では労働需給が急速に逼迫(ひっぱく)している。こうした状況が、人材確保を経営課題のなかで最も優先的に取り組まなくてはならないテーマとしている。
エッセンシャルワーカーが足りない
生活を維持するために必要な働き手の数を供給できなくなる「労働供給制約」は、シミュレーションでも取り上げた職種だけに起こっているのではない。こんな職種でも、といったところでじつは起こっている。
調査をしていた私たちも、驚かされることが多くあった。以降に挙げていくのは、あくまで一例である。
自動車整備士に代表されるような整備に関する仕事も人手が足りていない。ドライバー職種の人手不足はよく言われているが、ドライバーの人たちが「安全に、そして“普通に”車を運転する」ことを支えることすら覚束なくなるかもしれない。それは車に限らず、鉄道や飛行機でも同様の状況が広がっている。
鉄道やバスを運行するある会社は、次のように言う。
「鉄道の運転士は自動化でなんとかなるかもしれないが、最大の問題は保線作業員や電車の整備、駅の管理を担うスタッフの確保です。運転士の人数はじつは少数で、鉄道の運行に必要な人員の4分の3はこうした作業員や整備士たち。この人員が今、一番足りていないんです」
人が乗る、物を運ぶ機械を滞りなく運行させるための点検・整備という仕事が人手不足で機能不全を起こしたとき、それは私たちの生活が滞ることを意味する。
薬剤師も足りていない。とくに地方で深刻となっている。医療従事者というと病院で働く、医師・看護師・技師・さまざまな専門職といった医療スタッフが想起されるが、私たちの健康を支えるエッセンシャルワーカーがいるのは病院だけではない。さらに言えば、エッセンシャルワーカーと言われる専門職だけがいればいいわけでなく、そのエッセンシャルワーカーの仕事を成立させている多くの仕事があることも忘れてはならない。
副校長が“代打”で担任を持つ
学校の先生も足りていない。これも大きな話題になっているが、次のようなことが私の身のまわりでも実際に起こっている。
知人の小学生の子どものクラスに担任の先生がおらず、副校長の先生が“代打”を務めているそうだ。必要な先生を確保できず、致し方なく、本来、担任クラスを持たないはずの管理職である副校長が穴埋めをしている。
聞けば、こうしたクラスに年度の途中から新任の先生が着任することもあり、その場合には1年の途中で担任が代わるそうだ。クラス説明会では、「なぜうちの子が担任のいないクラスに選ばれたのですか」といった質問が保護者からは出たという(教員不足を嘆きたいのは副校長もだろう)。
問題は教員不足が、改善の兆しのまったく見えない状況で、一過性の問題ではないことだ。この傾向が加速すれば、数年後には「なぜうちのクラスに担任をつけてくれたのですか」という質問を、保護者がすることにもなりかねない。
顕在化する警察官、消防士のなり手不足
例を挙げるなかで最後に取り上げたいのが、警察官や自衛官といった私たちの生活の安全を直接守る仕事の人手が足りなくなってきていることだ。警察官の不足はまだ顕在化していないが、じつは応募者数の急速な減少というかたちで、今後数年でまさに顕在化しようとしている大きな課題である。
たとえば、鹿児島県警では2014年度の応募者数は1025人。これに対して2023年度では387人(南日本新聞、2023年5月30日)。1025人から387人だ。私も思わず目を疑った。ここ10年で、じつに6割減となっている。
もちろん警察官に対するニーズの増減や定員の過不足もあろうが、警察官に対する必要性がここ10年で「6割減」になっていることは考えられず、率直に言って生活者の1人として不安としか言いようがない。
大阪府警では、2018年度に1万人台だった応募者数が2022年度は6789人と、こちらはここ数年で3割以上減ってしまっている(朝日新聞、2023年2月26日)。
都市部・地方部を問わず、このように警察官のなり手も急減している。警察官や消防士の不足も、今後大きな社会問題となっていくだろう。
公務員の人材獲得が困難になっている
もちろん、人口動態の問題だけではなく、民間企業が働き方改革や賃上げなどを積極的におこなった結果として、公務員の待遇・環境面での魅力が相対的に低下していることも大きな原因だ。
しかし、そもそも思い出していただきたいのは、こうした民間企業の待遇・環境改善競争は若手採用難を背景に加速しているのだ。労働供給制約によって、民間企業における待遇・環境改善による若手の取り合いが加速し、結果としてその競争についていくことができていない公務員の人材獲得が困難になっている。そう、すべては労働供給制約によって引き起こされているのだ。
さらに、自衛官も同様の状態にある。2021年度までの10年間で応募者数は26%減少している。2022年度に9245人を採用する計画だったが、実際の採用者数は4300人程度で、大幅な“採用計画未達”となった。民間企業であれば採用責任者のクビが飛びかねない。
安全保障は言うにおよばず、災害対応でも存在感を増し、あまつさえ「防衛力倍増」と言われているが、今後の日本が供給できる人材の量で自衛隊のミッションは達成可能なのだろうか。
ここに挙げた職種は本当に一部に過ぎない。しかし、労働供給制約がどういった社会をつくろうとしているのかは想像いただけたのではないか。
私たちの生活を維持するあらゆるプロ・専門職、そしてそのプロたちを支える人すら足りない。企業は人材を取り合い、なんとか人材を獲得しようと、さまざまな競争が起こる。
人材の“ゼロサムゲーム”
話はそれるが、私は労働供給制約社会で効果的ではない解決策は、「余っている分野から足りない分野に人を動かす」などの「人を動かす」発想だと考える。
地方創生の文脈で、さまざまな移住促進施策が打たれているが、日本全体で人が足りなくなる、いわば人材の“ゼロサム、マイナスサムゲーム”なのだから、人を右から左へ動かすことで解決することはない。ある地域に人が動けば、その人が前にいた地域の人手が足りなくなるだけだからだ。
各業種の人手不足対策でもそうだ。介護人材の人手不足を介護職の働き方改革により解消したとする(もちろん介護職の働き方改革自体は重要だ)。すると何が起こるか。今度は看護師や技師などの医療スタッフが足りなくなる可能性が高い。教員不足の問題を解決しようと教員の待遇が突然よくなったとする。すると今度は警察官や消防士が足りなくなったりするのだ。
そもそも絶対的な労働供給数が足りないのだから、人の取り合いは社会全体から見た場合に有効な打ち手とはなりえない。特定の職種の待遇改善で何とかなる問題ではない、それが労働供給制約社会なのだ。
人の力を拡張する、人がいろんなシーンで活躍する、そんな新しい発想が必須だと考えるのはこういった理由がある。こういった話は具体的に近刊『「働き手不足1100万人」の衝撃』で詳述している。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- 古屋 星斗(ふるや・しょうと) リクルートワークス研究所主任研究員 1986年岐阜県生まれ。リクルートワークス研究所主任研究員、一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事。2011年一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興・避難者の生活支援、「未来投資戦略」策定に携わる。2017年4月より現職。労働市場について分析するとともに、学生・若手社会人の就業や価値観の変化を検証し、次世代社会のキャリア形成を研究する。 ----------
-
-
-
-
-
-
-
-
・ ・ ・