📉35】─2・A─日本の最高学府の大崩壊。国公立大で起きているパワハラ・大量解雇のヤバすぎる事態。 〜No.76 

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 2023年2月13日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「日本の最高学府の「大崩壊」が始まった…京大ほか国公立大で起きている「ヤバすぎる事態」
 週刊現代,田中 圭太郎
 全国の大学では国による統制やトップによる独裁化が進み、弊害としてハラスメントの横行、非常勤教職員の大量解雇などの問題が起きている。背景にある大学政策と、大学崩壊の現状をレポートする。
 国家による「支配」
 大学は教育と研究の場であり、社会の規範となるべき存在だと多くの人は思っているだろう。ところが今、全国の大学関係者から「大学が壊れてしまった」と嘆く声が聞こえてくる。
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 「しかも、今後さらに大学界に激震が走ると考えられています。莫大な予算を投入する代わりに政財界が大学運営の舵取りをする『国際卓越研究大学』の制度が、令和6('24)年度からの導入を目指して進められているからです。経済安全保障に大学の教育と研究が組み込まれるなど、大学を国策に沿って統制しようとする動きも加速しています」(国立大学関係者)
 大学のあり方を大きく変えてしまったのは、小泉政権下で行われた'04年の国立大学法人化と私立学校法の改正だった。
 国立大学は法人化により自主性や独立性が確保できるとされていたが、実際には運営費交付金が10年にわたり削減され、自主性も独立性も侵害されている。学長選考では教職員による選挙が廃止され、「学長選考会議」が決定する仕組みに変わり、事実上、教職員の意向は学長選に反映されなくなった。
 私立学校法の改正では学長ではなく、経営責任者である理事長を学校法人のトップに位置づけたことで、思いのままに大学を運営する理事長も現れている。
 この流れに拍車をかけたのが安倍政権下の'14年に行われた学校教育法改正だった。教育や研究にかかわる事項について審議するための機関だったはずの教授会は、学長による諮問機関へと格下げとなり発言権を失った。
 同時に行われた国立大学法人法の改正では、学長の選考方法自体を学長選考会議が決められるようになっている。委員の多くは学長が任命するため、学長は独裁が可能だ。その結果、トップの任期を撤廃したり、執行部が独裁化や私物化に走ったりする大学が増えている。
 国の方針に逆らったトップが解任されてしまった例もある。北海道大学の名和豊春前総長は防衛装備庁の助成を受けた軍事研究からの撤退を決めたほか、大学として加計学園獣医学部新設に強く異を唱えていたところ、'20年6月に文部科学大臣から総長を解任された。
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 解任は職員へのハラスメントを理由にしているが、前総長は「まったく覚えがない」として国と北海道大学を提訴した。現在も係争中だが、裁判の過程で学内の機関に誰からもハラスメントの相談自体がなかったことが判明している。
 '21年には、国は学長選考会議を「学長選考・監察会議」という名称に変更して、文部科学大臣が任命する監事の権限を強化した。別の大学関係者が語る。
 「文科省の影響下にあるこの監事は、総長や学長の行状を会議の議題にできます。すると、北海道大学前総長のような、国の意に背くトップを解任しやすくなり、国による間接支配と統制が進んでしまうと危惧されているのです」
 自治も自由も奪われる
 ガバナンス改革と称してきたが、実際は完全な改悪である。また、国策の失敗により起きている問題はこれだけではない。
 全国で大学執行部と教員や学生との間の訴訟が急増しているのだ。特に異常な訴訟が起きているのが京都大学だ。
 京都大学は自由な学風を持った大学として知られている。しかし、その学風は「変質した」と教員や学生は口を揃える。
 その一つが、大学のキャンパス内に建つ学生寮吉田寮の問題だ。
 吉田寮は現役の学生寮では日本最古で、全ての学生に門戸を開いている。経済的な事情を抱えた学生には欠かせない存在だ。老朽化しているとはいえ、耐震性があることも認められている。
 ところが'19年から'20年にかけて、吉田寮の寮生45人が大学に訴えられた。一方的に寮からの立ち退きを求められたのだ。
 吉田寮自治会と大学側は現棟の補修について2000年頃から団体交渉を重ねてきた。しかし、大学は'17年に突然交渉を打ち切った。吉田寮の寮生が明かす。
 「当時一般の学生や院生など約100人以上が入寮しているにもかかわらず、老朽化を理由に新規入寮の停止と全寮生の退舎を求められたのです」
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 自治会は話し合いの再開を求めたが大学は提訴に踏み切った。学生が裁判を闘うことは経済的にも精神的にも負担が大きすぎる。
 裁判は他にもある。大学は'18年に大学構内外の立て看板を一斉撤去する。看板を撤去された職員組合表現の自由に抵触するとして、大学を提訴している。琉球人遺骨を盗掘された遺族が大学に返還を求めた訴訟などもあり、京都大学が抱える裁判の数は際立っている。
 文科省出身の学長が就任したことで大混乱となっている大学もある。
 山形大学では'07年、文科省事務次官を務めていた結城章夫氏が、退任のわずか20日後に学長に選出された。文科省OBの国立大学学長は初めてだった。その後、結城氏および次の学長の小山清人氏が在籍する時期にかけて、山形大学は官民から多額の予算を獲得するが、そこで次々とトラブルが起きる。
 「週刊現代」2023年2月11・18日合併号より
 国公立大学が抱えている問題は、これだけにとどまらない。後編記事『いま「日本の国公立大学」で起こっている、パワハラ・大量解雇の「異常な実態」』では、パワハラや大量解雇などが横行し、機能不全に陥っている大学の現状をレポートしよう。
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 2月13日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「いま「日本の国公立大学」で起こっている、パワハラ・大量解雇の「異常な実態」 まともな研究が不可能に
 週刊現代,田中 圭太郎
 全国の大学では国による統制やトップによる独裁化が進み、弊害としてハラスメントの横行、非常勤教職員の大量解雇などの問題が起きている。背景にある大学政策と、大学崩壊の現状をレポートする。
 大学・学生の自由が奪われている現状を紹介した前編『日本の最高学府の「大崩壊」が始まった…京大ほか国公立大で起きている「ヤバすぎる事態」』に引き続き、まずは文科省OBの結城章夫氏が学長を務めている山形大学で、立て続けに起こったトラブルの内情を紹介しよう。
 雇用破壊の「最前線」
 '16年に設置したリチウムイオン電池の研究開発拠点「山形大学xEV飯豊研究センター」では、センター長による複数の職員に対するパワハラが明らかになった。しかしセンター長への処分は減給約1万円と軽かった。
 米沢市に'11年に開所した工学部有機エレクトロニクス研究センターでも、教授によるパワハラが発覚した。国が求めるベンチャー企業の立ち上げに山形大学も参加し、実績を出そうとしていたが、実態はずさんなものだった。同センターの関係者が証言する。
 「教授は着任したスタッフにいきなりベンチャーを立ち上げろと指示します。けれども、資金を出すわけではありません。スタッフに個人的に多額の借金をさせた上でベンチャーを立ち上げるように強要するのです」
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 ある研究員はパワハラ被害に遭いながらベンチャーを設立したにもかかわらず、次年度の雇用を断られたという。
 '20年6月には、センター3階の研究室で火災が起きた。山形県警は翌'21年3月に、火災の数日後に自死していた男性スタッフA氏を現住建造物等放火未遂の疑いで容疑者死亡のまま山形地検書類送検した。本件で大学は公式な説明をしていないが、前出の関係者はパワハラの疑いを指摘する。
 「自殺したAさんは多くの仕事を背負わされていた。火災が起きる半年ほど前から苦しんでいる姿を見ていました」
 多くのスタッフがパワハラを受けていた実態を、被害者と山形大学職員組合が調査した。一方で、教授らによる国立研究開発法人などから獲得した研究費約3000万円の不正使用が明らかになった。不正への加担を拒否したスタッフもパワハラを受けていた。
 山形大学は'22年3月にようやく不正使用を認めた。しかし、パワハラに関しては否定している。
 調査に当たった教職員は「山形大学の執行部にはコンプライアンスの意識が欠如している」と憤る。これが天下り学長をいち早く受け入れ、予算の獲得に奔走した大学の実態なのだ。
 多発する雇用止め
 大学では、雇用破壊も深刻だ。前出の国立大学関係者が打ち明ける。
 「'04年以降、運営費交付金が削減された国立大学だけでなく、私立大学も専任教員を減らしており、任期制の教員や非常勤講師の割合が高くなっています。今、その非常勤講師が切り捨てられる事態が進んでいるのです」
 '13年に労働契約法が改正され、有期雇用労働者が5年以上勤務した場合に無期雇用転換権を得られるようになった。
 ただしすべての有期雇用者が5年で無期雇用転換権を得られるわけではない。特定のプロジェクトなどで雇用されている教員や研究者の場合は、無期雇用に転換できるのは10年後とする任期法や科学技術イノベーション活性化法など特例も存在している。
 とはいえ、大学の非常勤教職員はこれらの法律で守られるようになるはずだった。だが、実態は真逆だ。転換権を得る5年や10年を迎える前に彼らは次々と雇い止めされているのだ。
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 '18年に非常勤職員が大量に雇い止めされたのが東北大学だ。試験を受けて合格すれば限定正職員になれるとしたが、1140人の非常勤職員のうち、3割近くは試験を受けられないか不合格となり大学を去った。1人が大学を提訴しているが、一審、二審で敗訴している。その後、限定正職員の解雇も始まっている。
 さらに、今年3月末には特例の10年を迎える教職員160人以上が、雇い止めされる見通しだ。
 また、大阪大学は非常勤講師の5年での無期転換を認めず、独自のルールで雇用期間は10年を上限としている。東海大学は、非常勤講師は5年ではなく10年を超えなければ無期雇用が認められないと主張。この主張自体法令違反の可能性が高い上、両大学とも3月末に10年直前の多くの講師を雇い止めする方針で、どちらも講師が訴訟を起こしている。
 大学の混乱は、教育を受ける学生にも悪影響を及ぼしているのだ。雇用崩壊やトラブルで教育と研究がままならない大学や、教員不足で学生が希望する授業を受けられなかった大学も存在する。
 まともな研究が不可能に
 現在、政府による大学支配の総仕上げと疑われる事態が進行している。それが冒頭の国立大学関係者が明かした「国際卓越研究大学」の認定だ。
 これは国が「稼げる大学」を支援するシステムで、政府が創設した10兆円ファンドの運用益を、認定した5〜7大学に分配する制度だ。運用益は年間3000億円を見込み、昨年12月から募集が始まっている。ただし、大学運営のモニタリングは内閣総理大臣財務大臣のほか、閣僚と財界関係者らで構成される内閣府総合科学技術・イノベーション会議が行う。
 大学の最高意思決定機関も新たに設置され、大学法人のトップは文部科学大臣が任命する。大学が政財界に完全にグリップされることになるのだ。
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 「トップクラスの大学が軍事研究や経済安全保障に関係した研究などに誘導される危険性が高まっています。軍事や経済安全保障に少しでも関わる研究は、国際的な学術誌などに研究成果を公開することが制限される恐れもある。民主的な研究は行われなくなり、このままだと大学は崩壊してしまいます」(京都大学大学院の駒込武教授)
 ここで触れたトラブルはあくまで氷山の一角だ。国策の失敗を認めることもなく、さらに大学という最高学府を機能不全に導く施策が推し進められようとしている。まさに国家の存亡にかかわる危機なのだ。
 この愚行を、今すぐ止めなければならない。
 「週刊現代」2023年2月11・18日合併号より
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