🍙3〗─1─近代日本の『〈メイド・イン・ジャパン〉の食文化史』~No.2No.3No.4 ①

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 2020年9月24日号 週刊文春「文春図書館 
 『日本食礼賛』はどこからきたのか
 『〈メイド・イン・ジャパン〉の食文化史』 畑中三応子  春秋社
 〔評者〕原田実
 今年の8月、農林水産省が公表した2019年度の食料自給率(カロリーベース)、前年度比1ポイント上昇だがその比較の対象である2018年度の自給率が過去最低とされているのだから、頼りない数字であることに変わりはない。
 本書は、今世紀になってから急激に進んだ『国産食品』『日本食』礼賛の傾向がいかにして形成されたかを検証したものである。
 近代日本では急激な人口増加が生じ、比較的自給率が高い米にしても明治30年代には他国から輸入せざるを得なくなった。
 さらに台湾や朝鮮を植民地化してからは、米供給の海外への依存はさらに大きくなった。その結果、日本人の味覚に合わないインディカ米輸入で生じた『外米』への悪印象が後に国産食品志向の一つの原点となる。
 一方で、やはり明治後期に、食生活の西欧化を批判し、その土地でできたものを食べるのが健康への道だという食養生の思想も勃興し、後世の自然食や粗食の礼賛を準備することになる。
 敗戦で植民地を失ってからは不足分の食料をアメリカからの移入で賄う時期が続き、日本はアメリカの余情農畜産物処理の場となる。これにより乳製品、パン、パスタなどの消費が増え、食の西欧化が一気に進む。
 だが、1950~70年代にかけて粗悪な食品添加物(てんかぶつ)や公害による食品汚染の危険性が周知されるにつれ安全な食べ物に対する消費者の希求は強まった。
 また、食べ物と健康の関係への関心が高まるにつれて、戦前の食養生の流れをくむ健康法がリバイバルし、それが1980年、政府の中で生まれた『日本型食生活』という言葉は健康的だというイメージが生まれた。
 さらに80年代から90年代前半のグルメブームの中で国産食品は美味で安全というイメージを付与されてブランド化が進む(その典型例が高級和牛)。
 つまり、現代日本における日本食・国産食品礼賛は、食の自給が困難という現実からの逃避として形成されたものだというわけだ。
 興味深かったのは1977年にアメリカ政府が国民に食生活改善を訴えた『マクガバンレポート』のくだり。単にカロリー・脂質・塩分などの過剰摂取を控えるよう勧める内容で日本にはほとんど言及していないこの報告が、日本では日本型食生活の優位を記した文書として宣伝されてしまったという。
 さて、本書では、日本の食糧管理の脆弱さを批判するとともに、食料交易の活発さが、食文化の多様性という長所にもつながっていることを指摘する。日本食の『伝統』にこだわると日本の食糧事情の短所も長所も見逃すことになる。食の全体像を俯瞰うる上で読まれるべき一冊である。」
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〈メイド・イン・ジャパン〉の食文化史
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 日本は、食糧・物資・エネルギー(石油・天然ガス・ウラン)をアメリカ及びアメリカの影響下の国と地域から自由に購入し、金融・情報・通信・諸サービスをアメリカに依存し、水上及び海上の交通・運輸・輸送の自由をアメリカ軍に頼っている。
 自給自足不可能な資源欠乏国日本は、外国に頼らなければ生きていけない。
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 少子は農家にも及び、高齢化と後継者不足が深刻となり、外国人農業労働者を雇わないと農産物の生産ができなくなりつつある。
 人口激減する日本農業において、日本人農家にこだわるか外国人農業に切り替えるかの二者択一の時が迫っている。
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 戦後、日本政府は戦前までの反省から、日本が海外に依存せず自活できる理想の人口数は7,000万人前後と分析した。
 政治家・官僚・学者・経営者そしてメディア関係者などの高学歴出身知的エリートは、米・魚介類による栄養不足の日本食を小麦・畜産肉の栄養豊富な欧米食に変えるべきだと、食生活の改革を推進した。
 パン・肉食の学校給食にならされた子供たちのコメ離れが急速に進み、日本人が米を食べなくなり米を生産すればするほど余剰米が増えて社会問題化した。
 女性が働きに出るようになると調理する時間がない為に、手間が掛かる和食から調理に簡単な欧米食へと家庭料理が変わり、伝統的お袋の味が消え始めた。
 輸入食材による欧米料理が多くなると、国産食材による食料自給率は下がり始めた。
 それに追い打ちをかけるように、日本食材を中国で生産し大量輸入して安価で市場に流す事で値段の高い国産食材は、「同一性能商品であれば安価は売れ高価は売れない」の市場原理で淘汰されていった。
 日本の家庭料理で調理される農産物・食料品の多くが、中国から輸入されている。
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