🍘45〗ー1ーメディアがひろめる「日本ダメ論」。“まったくの見当違い”といえるワケ。~No.139No.140 

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 2023年12月4日 YAHOO!JAPANニュース THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)「メディアがひろめる「日本ダメ論」…“まったくの見当違い”といえるワケ【経済の専門家が解説】
 (※写真はイメージです/PIXTA
 昨今の円安について、メディアやエコノミストの否定的な意見が目立ちます。しかし、日本の低成長力は今にはじまったことではなく、それ自体が円安の原因ではないと、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏はいいます。メディアがひろめる「悪い円安論」「日本ダメ論」が見当外れであり、日本は円安によってもたらされるさまざまなメリットを享受すべきといえる理由について、武者氏が解説します。
 「日本ダメ論」の横行
 [図表1]円の実質実効レート推移 出所:日本銀行、武者リサーチ
 11月中旬、円が急落、ドル円は151.6円という1990年以来のほぼ3年ぶりの円安となった。
 通貨の実力を示す円の実質実効レート(2020年=100)の下落は更に極端で、2023年9月末現在72.4と、1ドル308円のスミソニアン体制時(1971~1973)の83.6に比べても13%安という歴史的安値に落ち込んだ。
 “悪い円安論”がメディアとエコノミストの間で語られはじめた。産経新聞は日本の名目GDPが独、印に抜かれ世界4位に落ちる見込みと述べ、日本の地盤沈下を報じた。日経新聞は円弱時代との自嘲に満ちた記事で、円安を引き起こす日本の弱点をあげつらっている。資本が成長力の弱い日本から逃げていき円安になるとの議論で円安を解釈している。
 しかし日本の低成長力は今にはじまった話ではない。2010年以降の円高時代には、巨額の資本が成長率が高い海外へと流出したのに円高が続いた。日本がだめだから円安になっている、という「日本ダメ論」は成り立たないのである。
 “金利差仮説”や“経常収支仮説”では説明がつかない円安進行
 [図表2]ドル円レートと日米長期金利差とFFレート推移 出所:ブルームバーグ、武者リサーチ
 金利差に着目した円キャリートレードの増加という説もある。確かに世界最低金利の日本は調達通貨としては大いに魅力的、特に2年前まで日本以下のマイナス金利であったドイツなど欧州金利の急上昇で日本円の、調達通貨としての魅力は高まっている。
 しかしキャリートレード円高になれば大幅な為替損を生む。1ドル150円の時に1ドル借金し1ドル100円という円高の下で返済するとすれば、150円返すためには1.5ドルが必要になる。
 ドル円が151円という1990年以来の33年ぶりの円安になっている時に、更なる円安に人々は賭けているのであろうか。だとすればそれは著しいギャンブルといえる。
 そもそも、ここ数週間日米金利差が縮小しているのに、円安が進行している。また対円どころかほぼ全通貨に対して、円安が進行している。利下げをしている中国人民元タカ派姿勢を後退させている韓国ウォンに対してさえ円が安くなっているのである。
為替市場の「注目材料」は変化している
 [図表4]為替ヘッジ付き米国国債投資のリターン、円リターンとユーロリターン※為替ヘッジコスト(3ヵ月物)込み出所:ブルームバーグ、武者リサーチ
 この“正体不明の円安”を何とかせよとのコメントがみられはじめた。国民の実質所得を奪っている物価高の元凶が円安だとすれば、日銀は金融引き締めに転じなければならない。
 植田日銀はおそらく円安容認批判の先手を打ったのであろう。市場の意表をついて7月末に続いて10月末にもYCCの再調整(長期金利の上限の1%突破容認)というサプライズを演出したが、それはまったくの空砲に帰した。
 為替市場が金利差縮小に反応しなくなっているのであるから、今の円安は日銀の矩を超えていると言わねばならない。
 [図表4]は米国10年国債投資の為替ヘッジもののリターンであるが、日本の投資家が円ヘッジをした場合金利差を著しく上回るヘッジコストにより、1%以上のマイナスになる状況が1年以上にわたって続いていることがわかる。
  [図表5]は円とユーロのドルヘッジコストの推移であるが、2022年後半以降日本円のヘッジコストが極端に上昇し、9月以降6%という高水準で推移している。
 それまでほぼ連動していた両者か大きく乖離し、直近では4%の格差が生じている。ヘッジコストには市場が織り込んでいる相場観と見られるので、日本円には突如として「金利差以上の先安観」が形成されるに至ったのである。
 市場参加者に見えていない「円安の正体」とは
 金利差でもない、景況感でもない、貿易収支でもない、資本収支でもない理由によって、今や日本円の相場先安観が形成されている。この円先安観はどこから来ているのだろうか。それは米当局の意志に他ならない。
 11月の米財務省による為替監視リスト(中国、ドイツ、マレーシア、シンガポール、台湾、ベトナム)から再度日本(対米貿易黒字第5位の)が外れた。中国・台湾・韓国という、地政学的危険地帯に集中しているハイテク製造業の産業集積を安全な日本に移転するしかない、という覇権国米国の国家戦略遂行の手段が、この超円安なのだと考えざるを得ない。
 神田財務官、イエレン財務長官は「水準そのものが判断材料ではなく、あくまでボラティリティー(変動率)が問題」で同一歩調を取っている。
日本は今の“円安の僥倖”を享受すべき
 [図表6]米財務省による貿易相手国為替監視指標(2023/11)
 市場関係者もエコノミストも為替に関する因果関係を逆転させなければいけない。為替は経済実態の結果なのではなく、原因なのだということを知らなければならない。
 かつて、日本はデフレで円の購買力が強まっているのだから円高は当然だ、円高という現実を受け入れるべきだと多くのエコノミストが主張していた。
 しかしその円高が日本の競争力を奪い、企業とビジネスチャンス、雇用、資本の海外流出を促進し、日本の内需を痛めつけたことでさらにデフレを進行させた。円高とデフレの悪循環を断ち切ったのは、円安誘導を起点にリフレを実現しようとしたアベノミクスと黒田異次元緩和によってであった。
 為替は将来の経済を決定する最も重要な指標であることを忘れるべきではない。日本の産業復興を切望する米国が、円安を誘導しているのだ。
 韓国が2008年から2013年の著しいウォン安の過程で飛躍的に競争力を強め、日本のハイテク企業をなぎ倒したが、円安の定着は日本の劇的再台頭を準備するだろう。
 日本は巨大な製造業立国として、サービス(観光)立国として再登場するだろう。それにより長期的に日本の強い円は復活する。
 日本は今の円安の僥倖を享受するべきであり、間違っても円高誘導等、無駄な抵抗をするべきではない。
武者 陵司
 株式会社武者リサーチ
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