💫10}─2・②─人類は自然環境の変化で特異的な「協調性」を手に入れた。〜No.78 

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 ホモ・サピエンスのみが人類として生き残れた理由は、ムラ人を増やして膨れ上がった集団を一つにまとめた協調性であった。
 その協調性から、最初に発生したの宗教で、次に発生したのが王権であった。
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 2024年12月9日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「なぜ人類だけが特異的な「協調性」を手に入れられたのか…決定的な出来事は「自然環境の変化」だった
 ハンノ・ザウアー、長谷川 圭 の意見
 人種差別、経済格差、ジェンダーの不平等、不適切な発言への社会的制裁…。
 世界ではいま、モラルに関する論争が過熱している。「遠い国のかわいそうな人たち」には限りなく優しいのに、ちょっと目立つ身近な他者は徹底的に叩き、モラルに反する著名人を厳しく罰する私たち。
 この分断が進む世界で、私たちはどのように「正しさ」と向き合うべきか?
 オランダ・ユトレヒト大学准教授であるハンノ・ザウアーが、歴史、進化生物学、統計学などのエビデンスを交えながら「善と悪」の本質をあぶりだす話題作『MORAL 善悪と道徳の人類史』(長谷川圭訳)が、日本でも刊行される。同書より、内容を一部抜粋・再編集してお届けする。
 高知大学卒業。ドイツ・イエナ大学修士課程修了(ドイツ語・英語の文法理論を専攻)。同大学講師を経て、翻訳家および日本語教師として独立。訳書に『10%起業』『邪悪に堕ちたGAFA』(以上、日経BP)、『GEのリーダーシップ』(光文社)、『ポール・ゲティの大富豪になる方法』(パンローリング)、『ラディカル・プロダクト・シンキング』(翔泳社)などがある。
 『MORAL 善悪と道徳の人類史』 連載第7回
 『進化心理学が明らかにする“人類が現代社会で幸せになれない理由”…どうして私たちは過剰に砂糖を摂取してしまうのか』より続く
 人間だけの「特別な」進化
 モラルの歴史にとって重要なのは、過去の進化のどの特性が、人間の協調心を形成したのかという疑問だ。人間に、ほかでは見られないほど自発的で非常に柔軟な協力意欲が備わっているのは、なぜだろうか?
 人間に特異的な進化—つまり、アメーバや両生類、あるいはほかの哺乳類では見られない人間だけの進化—にとって決定的な出来事は、極めて不安定な自然環境で起こった。当時は天気が予測できなかった、という意味ではない。人類の祖先が数世代にわたって急激な気候の変化に見舞われていた、という意味だ。
 本来ならゆっくりとあるいはマイルドに、もしくはゆっくりかつマイルドに変わる気候が、一気に変わった。不安定な自然環境を生き抜くには、食糧、移動能力、住居の点で、それまで以上の柔軟性と可塑性が必要になる。柔軟性と可塑性があるから、私たちの祖先は体の形を変えることなく、新たな生活環境になじむことができた。
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 技術力を初めて手に入れたことで、厳しい自然にもよりよく対処できるようになり、新たな環境で生き残れた。加えて、気まぐれさを増しつつある環境では、リスクを共有するほうが有利だった。毎年、3~20ほどの小屋が嵐で吹き飛ばされるのはわかっているが、誰の小屋が不運に見舞われるかわからないのなら、社会にある種の安全保障システムを敷いて、集落のメンバーを運命の気まぐれから守るほうが何かと都合がいい。
 大型の哺乳類の出現には、集団で狩りをすることで適応した。共同で狩りをする動物はほかにもたくさんいるが、人間ほど高い正確さと協調性を示す例はほかにない。そうこうするうちに、大型動物の肉を手に入れなければ生きていけないほど環境が厳しくなった。
 協力のネットワークを広げる
 そのような背景では、集団意図、つまり「我々意識」を育み、狩猟という複雑な能力を学び、協力して実践することが進化として有意義だった。狩猟への参加や獲物の分配などを取り仕切るための詳細な制度も同時に発展した。
 こうして、協調性を有する生物になった人類は、自然と社会から協力作業の果実を収穫できたのである。いわゆるスケールメリット(規模がもたらす利益)が生じ、協力を通じて得られる利益は、協力のネットワークを広げることで大きくなっていった。経済学者が「規模に対する収穫逓増」と呼ぶこの現象では、私たちの行動に応じて成果が一定に増えるわけではなく、ときに爆発的に増加する。
 たとえば、ゾウやシマウマを狩るには6人の狩人で構成されるグループが必要だと考えてみよう。この場合、5人で狩りに出るか6人で行くかの決断の違いで、成果の差はウサギが5匹か6匹かではなく、ウサギ5匹かあるいは“ゾウ1頭”かの違いに拡大する。
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 このような協調形態をモデル化した理論として「シカ狩り」が知られている。この思考ゲームには、2人のプレーヤー(AとB)と2つの選択肢(シカ狩りとウサギ狩り)が登場する。シカを狩るには、プレーヤーは協力しなければならない。
 ウサギは1人で狩れる。そのため、プレーヤーは互いに行動を“合わせなければならない”。もしAがシカを、Bがウサギを追うのなら、Aは腹をすかせて手ぶらで家に帰ることになる一方で、Bはシカという大物を手に入れるチャンスを逃したことになる。両者ともにシカ狩りを選択した場合にのみ、最適な状況が実現する。
 『人類の祖先は「殺しも略奪もいとわないギャング」…「敵対」や「暴力」は人類に特異的な「協調」と表裏一体だった』へ続く
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