🍘58〗ー1ー日本円貨は「世界最弱の通貨」で「困った時の強い通貨」ではない。~No.168 

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   ・   ・   {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・    
 2025年11月21日 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン「【トリプル安】日本円が再び「世界最弱の通貨」に躍り出た…海外の投資家が「日本売り」をはじめたワケ
 (出所=米連銀(FRB))
■年初来安値を更新しそうなドル円レート
 高市早苗首相が就任後、円安に拍車がかかっている。まず外生的な要因として、米連銀(FRB)による追加利下げ観測の後退がある。ただし、だからといって、日米間の金利差はそれほど拡がっていない。そうなると、内生的な要因が円安のドライバーだと考えられる。つまり、高市政権による財政拡張・金融緩和路線が材料視されている。
 【写真をみる】いま一番頭を抱えている政治家
 そもそも高市首相の経済運営観はハト派であり、自民党総裁に就任する前から消費減税の可能性に含みを持たせたほか、日銀の利上げに対するけん制を行うなどしていた。そのため、高市政権が発足後、長期金利の上昇とともに円高ドル安が進んでいたが、いざ政権の関係者が大型の補正予算を組む方針を示したことで、流れが急加速した。
 ここで、今年のドル円レートを振り返ってみよう。年初1月1日のドル円レートは、終値で156円87銭だった(図表1)。1月10日にザラ場で158円89銭まで円安が進んだが、その後は円高トレンドとなり、4月22日には取引時間中の最高値となる140円87銭まで円高が進んだ。しかし、この日をピークに、ドル円相場は再び円安に向かう。
 そして、11月20日には、終値で157円48銭まで円安が進んだ。高市政権が発足した10月21日の終値が151円94銭だったから、この間に5円、3%も円安が進んだことになる。一方で、長期金利は、終値で1.656%から1.816%まで急上昇している(図表2)。名目GDP(国内総生産)の2倍以上の債務を抱える日本政府にとっては脅威だ。
■新政権発足で債券価格は“暴落”
 さらに注目されるのが、超長期国債、具体的には40年債流通利回りの水準だ。40年債の利回りは高市政権が発足した10月21日の終値で3.362%だったが、11月20日には3.731%まで上昇している。債券価格は文字通り“暴落”しており、こうした状況が続けば、日本は財政発の本格的な金融危機に突入する恐れが大きくなる。
 ところで、4月にかけての円高は、いわゆる“トランプ関税”に伴い発生したドル不安を反映して生じた動きだった。米トランプ政権の経済運営に対する不信感から米債でありドルが売られたわけだが、この不安定な地合いは小康状態にあるとはいえ、払拭(ふっしょく)されたわけではない。いわばドル不安の中、さらに円が売られているわけである。
 一方で、ユーロはドルに対して堅調を維持している。年初、1月1日のユーロドルレートは、終値で1ユーロ=1.0355ドルだった。その後、ドル不安の受け皿に選ばれたユーロの相場は上昇が続き、9月17日にはザラ場で1.1919ドルまでユーロ高が進んだ。11月20日の終値は1.1529ドルだが、年初来の上昇率は11%を超えている。
■ドル不安の受け皿になったユーロ
 この間、フランスの政治危機も生じており、欧州連合(EU)に不安定要素がなかったわけではない。確かにフランスの政治危機はユーロ売りの材料となったが、結局は今年、ドルに対して強いままである。その結果、ユーロの対円レートは180円を超えるに至り、1999年1月の発足以来となるユーロ高円安を更新することになった。
 EU全体を見回すと、確かにフランスの財政状況は深刻だが、一方でかつて財政が危機的だったスペインやイタリアは、健全な財政運営を維持しており、金利は安定している。その結果、ユーロの信用力は保たれている。言い換えると、日本の円安は、やはりその信用力の源泉である国債の金利の上昇、つまり国際価格の下落によるものだ。
 金利上昇には“良い金利上昇”と“悪い金利上昇”がある。トランプ関税が発表された際、米債から資金が抜けて、金利が急騰した。これは信用力の低下を反映した“悪い金利上昇”であり、ドル不安が生じた。円が売られている以上、今の日本で生じている金利の急騰を、成長期待を反映した“良い金利上昇”だと説明することには無理がある。
■なぜ円安が問題なのか
 円安であれば輸出企業の業績が上向く。特にトランプ関税で負担が強まる輸出企業にとって、円安は大きなクッションとなる。一方で、円安であれば輸入業者は悲鳴を上げる。要するに、円安は物価高に拍車をかける。今の日本国民は物価高に喘いでいる。物価高を抑制するなら、円高に誘導して輸入物価を引き下げる必要があるのは明白だ。
 それに、今回の円安は債券安を伴っている。債券安を伴うということは、企業の資金調達コストも増えるということだ。仮に格下げともなろうものなら、企業の資金調達コストは跳ね上がる。そのコスト負担の増大を円安でカバーできるのは輸出業者だけで、国民の生活に密接な輸入業者は、さらに苦しい立場に追い込まれてしまうことになる。
 円安になればなるほど、輸入コストは増大し、小売価格に転嫁されていく。国民はますます、物価高に喘ぐことになる。給付金や減税で物価高を緩和しようとしても、それが財政の悪化につながれば、金利はさらに上昇、債券安と円安が進む。政府と日銀が介入することもできるが、それは一時的な痛み止めに過ぎず、問題は解決しないままだ。
 国民は物価高に苦慮している。それを軽減するのが政治の責務なら、政府はまず、円高を通じて輸入を、ひいては総供給を増やして、供給面から物価の安定に取り組む必要がある。そもそも、給付金や減税は需要の刺激につながるため、物価高対策にはならない。むしろ物価高を促すものであるから、やるとしても、対象を限定する必要がある。
 それに、減税をやるなら、供給の刺激につながる企業向けの減税が望ましい。具体的には設備投資減税などであるが、最初は重点分野を絞るにせよ、徐々に対象を一律化したほうが理想的である。結局、どの産業が成長するかを選択するのは市場原理であるからだ。そして、減税を大規模にやるなら、歳出の削減とフルセットで行う必要がある。
■最弱通貨に躍り出た日本円
 ドルは今年、FRBが利下げを行っていることや、トランプ関税に伴うドル不安を受けて、世界的に下落している。確かに、各国との間で関税交渉がまとまっていることや、そもそも米国の中でトランプ関税に対する違憲判決が出る公算が大きいことなどから、今年の春に比べると、トランプ関税に起因するドル不安は和らぎ、小康状態にある。
 とはいえ、トランプ大統領の政権運営は不確実性の塊であり、その意味では世界経済は依然として、ドル不安の渦中にある。そのドルよりも円が売られている事実を、われわれはかなり冷静かつ厳格に受け止めなければならない。高市政権が発足して以降、急速に進んだ円安は、財政悪化懸念の高まりに伴う“悪い金利上昇”による円安だ。
 少なくとも、金融市場は20兆円ともされる大型の補正予算が、日本経済を強くするとは考えていない。ゆえに、日本国債は売られ、円も売られる。地合いに応じては株式も売られており、典型的なトリプル安、つまりは“日本売り”が生じている。政府及び日銀は、現状を冷静に受け止め、可能な限り早く軌道を修正すべきではないだろうか。
 状況を楽観視し、対応を遅らせれば遅らせるほど、金融市場は牙をむき、景気を強く圧迫することになる。高市首相のバランス感覚、調整能力に期待したいところである。
  (寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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 土田 陽介(つちだ・ようすけ)
 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員
1981年生まれ。2005年一橋大学経済学部、06年同大学院経済学研究科修了。浜銀総合研究所を経て、12年三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。現在、調査部にて欧州経済の分析を担当。

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 10月24日 日経BP日経BOOKプラス「はじめに:『円ドル戦争40年秘史 なぜ円は最弱通貨になったのか』
 その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は河浪武史さんの『 円ドル戦争40年秘史 なぜ円は最弱通貨になったのか 』です。「序章」の一部をお届けします。
 『円ドル戦争40年秘史 なぜ円は最弱通貨になったのか』
 [画像のクリックで別ページへ]
 【序章】
 <中略>
 最強通貨だった円の転落を決定づけたのは何なのか。一つは2011年の東日本大震災だろう。サプライチェーンが破壊されて生産拠点の海外流出が加速した。原子力発電所の停止で貿易収支も黒字体質から赤字体質へと変化した。
 本来であれば円安は輸出を後押しして日本の国内総生産(GDP)にプラスとなる。ところが、そうした通貨と貿易のメカニズムはうまく機能していない。家電や半導体といったかつて日本を代表した輸出産業は、以前ほどの国際競争力を持たない。24年の貿易統計をみると、輸出額は107兆912億円と前年比6.2%増えた。ところが輸出数量指数でみると、2.6%減の102.9(2020年=100)と3年連続のマイナスだ。貿易収支も赤字のままで、実需の円売りが続いて円安は止まらない。
 円がここまで安くなった大きな理由は日米金利差にある。13年以降の日銀の大規模金融緩和が円売りトレンドを定着させた。その上、日銀は物価上昇率が2%を超えても政策金利を引き上げず、インフレ率を差し引いた実質金利はマイナス2〜3%と他国に比べて著しく低い。通貨は金利が低い方から高い方へと流出し続ける。それが長期円安の根底にある。
 日本はなぜ金利を上げられないのか。それは、日本経済が金利上昇に耐えうる強さを持たないからである。政府部門をみれば1000兆円を超す財政赤字を抱え、大幅な利払い負担の増加に耐えられない。国債金利の上昇は日本の民間銀行にも巨額の債券含み損をもたらすリスクがある。日本の産業界も30年間の超低金利政策で、不採算事業の整理といった新陳代謝を進めてこなかった。
 日銀は金利引き上げを躊躇しており、日米金利差はいつまでも埋まらない。その経緯とメカニズムは本書で詳述するが、過大債務と超低金利の放置のツケが最後に円を著しく減価させて「安いニッポン」をつくりあげたのだ。
 ドル円相場の後ろには常に米国がいた。1985年のプラザ合意は「双子の赤字」に苦しんだロナルド・レーガン大統領の圧力があった。バブル崩壊後の超円高もビル・クリントン大統領の厳しい対日政策が引き起こしたものだ。2008年のリーマン・ショックはFRBの大規模緩和を呼び起こし、2度目の超円高を日本経済にもたらした。「米国第一」を掲げるトランプ政権内には、中国などを巻き込んでドル高是正を目指す「第2プラザ合意」の構想がある。米国は同盟国として日本の経済成長を後押ししつつも、それが自国の脅威になるとドル円相場を使って露骨に圧力をかける冷徹さがある。
 本書は1985年のプラザ合意から40年という節目をとらえて、円の栄枯盛衰を描くものである。それは通貨戦争とも言える経済外交史そのものであった。最強通貨から最弱通貨への転落は、このまま第2の敗戦と評価されて終わるのだろうか。
 河浪 武史
 日本経済新聞社ワシントン支局長
 1995年日本経済新聞社入社。日銀、財務省、金融機関などを長く取材した。2015年から6年間、ワシントン特派員として第1次トランプ政権やFRB(米連邦準備理事会)の取材も担当。国内外の政策決定の舞台裏に精通する。21~25年は金融部長として金融政策・金融ビジネスの報道を統括した。25年4月より現職。単著に『みずほ、迷走の20年』『日本銀行 虚像と実像』がある。…詳細を見る
 円ドル戦争40年秘史 なぜ円は最弱通貨になったのか
 河浪 武史 著
 2,420円(税込)
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 11月12日 東洋経済ONLINE「主要10通貨で日本円は今年も最弱の通貨の見込み。来年は米ドルは買い戻しで再び強くなり、海外勢による円売りアタック開始のリスクも。
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 佐々木 融 : ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト
 APEC首脳会議参加で韓国を訪問したトランプ米大統領。各国からの巨額の対米直接投資が約束されている (写真:Getty Images)
 アメリカのトランプ大統領に振り回された2025年も残り2カ月を切った。「あっという間の1年だった」と言いたいところだが、さまざまなサプライズがあり、個人的には「長い1年だった」気がする。
 結局、今年も円は弱い通貨だった。そう言うと疑問に感じる方もいるかもしれないが、年初来では、円は主要10通貨の中で最下位争いをしている最中だ。今年は米ドルが最も弱いので、米ドル/円相場だけを見ていると円が強いように思える。だが、実際には米ドルも円もともに弱く、今のところ米ドルのほうがより弱いので米ドル/円相場の上値が重くなっている。
 実際、円はスイスフランに対して史上最安値を更新し、ユーロに対してもユーロ導入以来の最安値をつけている。そのほかの通貨に大きな変動がなく、米ドル/円相場が1ドル=156円台半ばまで上昇して今年を終えれば、今年の最弱通貨は円となる。
 円の弱さは金利差だけではない
 ちなみに、10月末時点では、今年主要10中央銀行の中で日本銀行だけが25ベーシスポイント(bp)の利上げを行い、ほかの9中銀はすべて利下げを行った。それでも円が弱いのだから、円の弱さは金利差だけでは説明できない。ちなみに24年も利上げを行ったのは日銀だけでFRB(米連邦準備制度理事会)を含めた7中銀が利下げを行っている。それでも円は弱い通貨となっていた。
主要10通貨で円の順位は、21年が最弱通貨の10位、22年は9位、23年も10位、24年は8位となっている。22年、24年も円より弱かった通貨との差は1%程度しかなかったため、4年連続でほぼ最弱通貨といってよいだろう。今年もこのままでいけば5年連続となる。
 これに対して主要10通貨の中で強さが目立ったのはスイスフラン、北欧通貨、ユーロなどヨーロッパ通貨だ。トランプ大統領の強引な関税政策などを嫌気して世界の投資家が投資資金の一部をアメリカからヨーロッパにシフトさせた可能性が考えられる。
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Reuters
Commentary

 11月20日 外国為替フォーラム「コラム:円は今も安全通貨か、高市政権下で見えた過去との違い
 Jamie McGeever
 アングル:為替介入までの「距離」、市場で読み合い活発化 160円警戒とも
 写真は円紙幣と米ドル紙幣。3月19日撮影。Reuters/Dado Ruvic
 [オーランド(米フロリダ州) 19日 ロイター] - 世界的な株安でさまざまな資産クラスの値動きが不安定化している今、安全通貨とされる円が力強く上昇する条件が整っている。ところが実際に円は急落し、動揺した投資家にとっての避難先という、円に長年与えられてきた役割に疑問が投じられつつある。
 今週に入って円はドルに対して10カ月ぶりの安値に沈み、対ユーロでは過去最安値を更新。ここ数カ月の値動きはG10通貨で圧倒的な最弱ぶりを見せており、政府・日銀による介入観測が高まっている。
 ここで鍵を握っているのは日本国内の問題だ。高市早苗首相はまるでトランプ米大統領の政策を参照するように、大規模な財政出動を打ち出すとともに、物価が高止まりしている中でも中央銀行にできるだけ低金利を維持させようとしている。
 だから国際金融市場が神経質になっているにもかかわらず、投資家が急いで円買いに動かないのもうなずける。
 これまで円がドル、スイスフランとともに主な安全通貨とみなされてきたのは、巨額の経常黒字保有と数十年にわたる超低金利ないしゼロ金利に由来する。
 そうした環境が円キャリートレードを生み出し、日本の投資家は黒字を高利回りの外国資産に転換した結果、日本は長年、世界最大の債権国であり続けた。国際通貨基金(IMF)によると、今年6月末時点で日本が保有していた外国株・債券は差し引きで3兆6200億ドル(約568兆円)だった。
 過去の国際金融市場の混乱時には、これらの資産の一部が日本国内に環流しただけでも、急速かつ大規模な円買いにつながった。
 しかし足元でそのような現象は起きていない。恐らく市場の動揺がまだそれほど激しくないからか、あるいは使い古された表現だが「今回は状況が異なる」のかもしれない。
 <逆風の国内政策>
 率直に言えば、高市政権の政策には円にとってのプラス要素が全くない。
高市氏に近い自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は、政府が近く策定する経済対策の裏付けとなる2025年度補正予算案について総額25兆円(1610億ドル)超を確保すべきだと提言した。これは最近浮上していた見積もりよりも多く、前年度の920億ドルよりはるかに規模が大きい。また高市氏は、日銀が利上げしないことが望ましいとの考えも示唆している。
 市場は素直に反応し、日本の10年国債利回りは17年ぶりの水準まで跳ね上がり、スワップ市場では日銀が数カ月以内に利上げする確率が急低下した。
 スタンダード・チャータードのG10FX戦略責任者を務めるスティーブン・イングランダー氏は、日本国内に起因するマイナスのショックが非常に多い局面では、円の安全通貨としての地位は厳しくなると指摘。「円は実質ベースでも名目ベースでも利回りが非常に低く、これを克服するには多大な時間がかかる」と述べた。
 <ドル側の要因>
 日銀の金融引き締めプロセスは既にゆっくりかつ漸進的になっている。利上げは今年1月にようやく0.5%にしたのが最後で、実質金利はなお大幅なマイナス圏にある。これはキャリートレードの温床と言える。
 為替レートは2つの通貨それぞれの事情が反映されるのが自明の理なので、日銀の利上げ時期が遅れる可能性があるのに加え、米連邦準備理事会(FRB) も利下げを当面見送る様相になってきた状況は、円強気派にとって二重の打撃だ。今年下半期のG10通貨の値動きを見ると、円が最弱で推移してきた半面、ドルは最も上昇している。
 米国や世界の市場の混乱が今後数週間でさらに大きくなれば、円キャリートレードの一部が巻き戻され、円の安全通貨としての魅力が復活するケースはあり得る。
とはいえ日本の国内政策が現状のようである以上、今回は円が安全通貨となるのはより難しいのではないだろうか。
 (筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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 筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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 Jamie McGeever has been a financial journalist since 1998, reporting from Brazil, Spain, New York, London, and now back in the US again. His experience and expertise are in global markets, economics, policy, and investment. Jamie's roles across text and TV have included reporter, editor, and columnist, and he has covered key events and policymakers in several cities around the world.
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 2024年7月3日 JBpress「唐鎌大輔の為替から見る日本
 世界最弱通貨となった「堕ちた円」、トルコやアルゼンチンを下回る2024上半期の驚きのパフォーマンス
 名目実効ベースで8.7%下落した日本円、物価上昇率を加味した実質ベースでは半世紀ぶりの安値継続
 唐鎌 大輔
 インフレの加速によって通貨が大きく下落しているアルゼンチン。日本も似たような道を歩みつつあるのだろうか(写真:ロイター/アフロ)
 2024年上半期の名目実効為替相場を比較すると、日本円の下落率は弱い通貨として知られるトルコリラやアルゼンチンペソを下回った。
 2022年以降の下落率で見れば、トルコリラやアルゼンチンペソを上回ったが、それでも-35.5%とG7の中で最弱通貨だということに変わりはない。
 物価上昇率を加味した実質実効為替相場で見れば、円安の度合いはさらに高まる。実質ベースの通貨安を考えれば、インフレによる調整が不可避だ。
 目次
 正真正銘の最弱通貨
 対ドル変化率で見た円の本当の実力
 「堕ちた通貨」と化した日本円
 円安調整のために不可避なインフレ
 (唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

 正真正銘の最弱通貨
 早いもので2024年も下半期に入った。2024年上半期を終えたところでの円の現在地を整理しておきたい。
 結論から言えば、円の現在地は悲惨な状況と形容せざるを得ない。主要な通貨の強弱を横並びで比較するにあたっては、名目実効為替相場(NEER)の強弱を見るのが分かりやすい。
 ※NEERとは、日本円と各国通貨の為替レートをそれぞれの国との貿易額などで加重平均したもの。各国の物価上昇率は反映していない。
 図表①では、G7やスイスといった主要通貨に中国、韓国、そして弱い通貨の代表格としてアルゼンチンやトルコも加えている。
 【図表①】
 2024年の主要通貨の名目実効為替相場(NEER)
 6月25日時点のNEERは円が▲8.7%と最弱、これにトルコリラ(▲7.8%)、アルゼンチンペソ(▲5.6%)、スイスフラン(▲3.5%)と続いている。このうち、スイスフランは昨年まで圧倒的な騰勢を誇っていたことを思えば、あくまで反落の範疇と言える。
 日本円は、いよいよトルコリラやアルゼンチンペソを下回るパフォーマンスになったということだ。
 過去2年間、しつこいほど強調しているが、こうした大局的な視点を抜きにして「円安は金利差の結果。構造的な性質はない」と主張するのは浅薄すぎる。トルコリラやアルゼンチンペソが下落していることを対米金利差で語る者はいないだろう。
 ちなみに、日次で確認できる国際決済銀行(BIS)のNEERでは64カ国の通貨について確認可能だが、円の▲8.7%は全64カ国中で見ても最悪のパフォーマンスだ。
 対ドル変化率で見た円の本当の実力
 NEERに関し、図に掲載されていない通貨も含め、下落幅の大きい順に5つ並べると円、トルコリラ(▲7.8%)、ブラジルレアル(▲7.2%)、アルゼンチンペソ(▲
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 ここからは、JBpress Premium 限定です。
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 2022年10月19日 東洋経済ONLINE「円安でも「円は安全通貨」世界が認める歴史的背景
 アメリカドル・スイスフランに並ぶ納得の理由
 DJ Nobby(福永信彦) : 経済キャスター・ラジオDJ
 最近「円安」とよく聞きますが、お金の価値ってどうやって決まるのでしょう(写真:artswai/PIXTA)
 「老後2000万円問題」「社会保障費の増大」「円安」「高校での金融教育の必修化」……不安にさせる経済トピックに欠かない今日この頃ですが、とはいえ、今まで経済について目を背けていた人にとっては「よくわからないだらけ」なのも事実でしょう。
 ではまず最初に知るべき、経済トピックスとは? 経済キャスター・ラジオDJで、音声プラットフォーム・Voicyではフォロワー8.3万人の配信者でもあるDJ Nobbyさんの著書『実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!』から一部抜粋・再構成してお届けします。
 お金の価値って、どうやって決まるの?
 金本位制の時代まで、お金には「金と交換できる」という価値がありました。でも、現在はそうではありません。よく考えてみると紙幣自体に大きな価値は無く、実際はただの紙。
 それでも買い物ができるのは、そこに“信用”があるからです。そして、お金の価値は常に変動しています。かつてはゆるぎない「金」という共通の後ろ盾がありましたが、いまはそれがありません。では、お金の価値はどうやって決まるのでしょうか。世界の「基軸通貨」であるアメリカドルの変遷とともに、考えていきましょう。
 第二次世界大戦後期の1944年、アメリカドルを基軸とした「ブレトン・ウッズ体制」が始まりました。これは、アメリカドルと各国の通貨をほぼ固定のレートで結びつけるという体制です。アメリカドルと各国通貨のレートを固定することにより、第二次世界大戦後の経済を発展させることを目的としていました。
 アメリカドルが基軸通貨になるまでは、イギリスポンドが事実上の国際通貨として機能していました。当時のイギリスは海外に植民地を有しており、交易を積極的に行っていたことがその背景になっています。
 また、金本位制によりポンドの裏付けとなる金が存在し、信用力が高かったことも後押ししました。しかし、植民地との活発な貿易によってイギリスの金が海外に流出し、結果的に国力を削がれることとなりました。
 対してアメリカドルは、ブレトン・ウッズ体制の中で金本位制を採用しつつ、ドルと金の価値を固定しました。これによりドルを仲立ちとして外国通貨と金の価値が固定されるという2段構えの仕組みが作られ、実質的にアメリカドルが基軸通貨となる体制が整ったのです。
 ブレトン・ウッズ体制下で、日本円は1米ドル360円に固定されました。もともと終戦直後に設定された軍用交換レートは1米ドル15円でしたが、日本のインフレ(円の価値が下落)が急速に進み、1948年には1米ドル270円まで上昇。
 実際は、急激な価格変動により1米ドル160円~600円の間で複数レートが混在していました。
 1米ドル360円の単一レートに固定されたのは、1949年2月。当時の池田大蔵大臣とGHQ経済顧問であるジョセフ・ドッジの合意によるものです。これは「ドッジ・ライン」と呼ばれる財政金融引き締め政策で、目的は日本経済の自立・安定でした。
 アメリカドルの信用崩壊
 1960年以降アメリカの金保有量が激減したため、金とアメリカドルの交換が困難となりました。それまで世界的に優位に立っていたアメリカですが、なぜ金保有量が減ってしまったのでしょうか。それには大きく分けて2つの理由があると言われています。
①ベトナム戦争の長期化 揺れ動く通貨価値
 1955年11月から、ベトナム戦争が始まりました。この戦争が長期化し、アメリカの財政状況が悪化。軍費が増大し、アメリカからドルが流出しました。
②アメリカへの輸出増加
 第二次世界大戦後、アメリカはヨーロッパ諸国に多額の融資を行いました。それによりヨーロッパは復興に向かい、段々と輸出量が増加。比例して、たくさんのアメリカドルが外国に流出しました。
 上記2つの理由により、アメリカからどんどんドルが出ていったのです。諸外国はドルの過剰供給を不安視し、金本位制に基づき金との交換を進めました。その結果、アメリカが保有していた金の量が減ってしまったのです。
 基軸通貨であるアメリカドルの信用が揺らぎ、ブレトン・ウッズ体制の継続は不可能となりました。その結果、1971年8月にニクソン大統領が「金とドルの交換停止」を発表(ニクソンショック)。それまでの固定相場制は崩壊し、同年12月に新しい通貨体制(スミソニアン体制)が採用されました。
 狙いは、ドル安によるアメリカの輸出増加・外貨獲得です。日本円の価値も、1ドル360円から308円まで上昇しました。しかし、スミソニアン体制は長続きしません。1973年以降、日本を含む各国は「変動相場制」に移行しました。
 揺れ動く通貨価値。お金の価値の決まり方
 変動相場制に移行し、通貨の価値は常に変動するようになりました。では、変動相場制においては通貨の価値はどのように決まるのでしょうか。
 答えは、市場原理。すなわち需要と供給です。
 多くの人が必要としている通貨の価値は上昇し、逆に魅力のない通貨の価値は下落します。グローバル化した社会では貿易や投資などさまざまな目的で、国境を越えるお金の取引が日常的に行われています。お金のやり取りは主に銀行の「決済機能」を使って行われており、銀行間で異なる通貨をやりとりする「外国為替市場」が形成されています。
 東証プライム市場の取引高が1日250~350億米ドルであるのに対し、外国為替市場の取引高は1日約6兆米ドルと桁違いの金額になります。このように莫大な金額が取引されるなかで、金融政策や経済状況、企業の業績などのさまざまな要素が交錯しながら通貨の価値が決定されていくのです。
 外国為替市場で取引を行うには、いかに速く正確な情報を手にできるかが大変重要になるのです。
 各通貨の相対価値は常に変動しており、それは「通貨強弱」という見方で比較することができます。これは為替レートをもとに、過去の変動率から通貨の強弱を可視化したツール。最も勢いのある通貨は「最強通貨」。逆に下落率が高いと「最弱通貨」と呼ばれます。
 コロナ禍で大きく変動する通貨価値
 実は2021年、円は世界的に見て「最弱通貨」でした。その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大の市場への影響があります。2020年に世界的に景気が低迷し、そこから回復する中で欧米の株価は順調に推移。特にアメリカ企業の株を買う動きが強まったことでドルを買う市場参加者が増加、円は相対的に売られることが増えました。この動きが年間を通して継続したことで、世界的に見て円が弱くなってしまったのです。
 世界にはたくさんの通貨があり、外国為替市場を通じて常に取引されています。各通貨の価値は情勢によって変動しており、円を基準に考えると、タイミングにより「円安」になったり「円高」になったりしています。では、世界から見て特に安定感のある通貨というものはあるのでしょうか? 
 実は、円は多くの市場関係者から「安全通貨」と認識されています。その理由を紐解いていきましょう。
 外国為替市場で中心的な役割を担うのが、基軸通貨。外国為替や国際金融取引の中心を担う通貨です。ブレトン・ウッズ体制以降、事実上の基軸通貨は一貫してアメリカドル。アメリカドルが基軸通貨である理由は、「各国政府が持つ外貨の残高が最も多い」から。
 では、そもそもなぜ基軸通貨が必要なのでしょうか。
 それは、「ハブとして機能する通貨があると効率的」だからです。
 例えば、日本円からハンガリーフォリントに交換をするとき。まずドル=円のレートでドルに交換し、そのドルを今度はドル=ハンガリーフォリントのレートでハンガリーフォリントに交換するという取引をします。円=ハンガリーフォリントの取引は一般的にはあまり多く行われないため、アメリカドルというハブを経由することで、効率的、かつコストを抑えた取引が可能になるのです。
 戦争や主要国の金融政策の大幅変更など、予測が難しい変動が起きたとき、特に買われやすいのがアメリカドル・スイスフラン・日本円です。
 アメリカドルは基軸通貨のため、多くの市場関係者からの信頼の厚い通貨です。また、スイスは永世中立国。政治的に安定しており、他国の影響を受けにくいとされています。このように、アメリカドル・スイスフランには政治的・経済的に買われやすい基盤があります。
 世界マーケットで「安定通貨」と呼ばれていた「円」
 では、なぜ日本円は国際的に見て「安全通貨」と言えるのでしょうか。
 そこには、大きく分けて3つの背景があります。
●低金利である
 低金利通貨である日本円は、世界情勢が落ち着いている局面においては魅力的な通貨ではありません。比較的高金利のアメリカドルやユーロに投資するほうが有利だからです。その際に投資家は、“金利の低い通貨で資金を調達し、金利の高い通貨に交換して運用”するという取引を行います。この取引は「キャリートレード」と呼ばれており、“日本の金融機関から円を借りる→円を売る→高金利通貨を買う→投資する”という流れです。
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 ところが世界情勢が緊迫すると、多くの投資家はリスクを低減するために持ち高を手仕舞います。「キャリートレード」も例外ではなく、“投資していた株や債券などを売る→代金として受け取った高金利通貨を売る→円を買う→日本の金融機関に資金を返済する”という動きが活発になるのです。
●デフレ国である
 デフレ国である日本では、モノの価格が下がり続けています。これは逆の見方をすると、通貨の価値が上がり続けているとも言えます。すなわち、通貨の価値がモノを通じて担保されているため、有事の際にも安全だろうという考え方です。
●世界最大の対外純資産がある
 対外純資産とは、日本政府や企業・個人が外国に保有する資産(対外資産)から負債(対外負債)を差し引いたもの。有事の際には、日本の投資家は海外の資産を売却して円に戻す可能性が高く、円が買われやすくなるという考え方です。
 このように、有事の際には円が買われやすくなるため、「円は安全通貨」というのが市場の定説になっているのです。
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 DJ Nobby(福永信彦) 経済キャスター・ラジオDJ
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