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2024年8月31日 MicrosoftStartニュース マネーポストWEB「“農政の憲法”改正論議で決定的に欠落している「20年後に農業従事者8割減」という不都合な事実
このままでは農業従事者の数は先細るばかり(写真:イメージマート)
先の国会で“農政の憲法”と言われる「食料・農業・農村基本法」が改正された。1999年の施行以来初めての改正は、ロシア・ウクライナ戦争や気候変動による食料不足が懸念される中で、食料安全保障の体制強化を図ろうというものだ。しかし、作家・ジャーナリストの河合雅司氏(人口減少対策総合研究所理事長)は、政府の議論からは「日本農業の最大のウイークポイント」に対する解決策が見えないと指摘する。最新刊が話題の河合氏が解説する(以下、同書より抜粋・再構成)。
【グラフ】50代以下は20.4% 基幹的農業従事者数の年齢構成
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国連の世界食糧計画(WFP)によれば、世界で飢餓に苦しんでいる人は最大8億2800万人にのぼる。背景には、世界人口の爆発的増加や開発途上国の経済発展がある。消費量の増加に生産力が追い付かないのだ。開発途上国の急速な経済発展は、地球温暖化を推し進める要因にもなっており、食料がリーズナブルな価格で手に入らなくなる可能性は小さくない。
こうした状況に、政府は“農政の憲法”と言われる「食料・農業・農村基本法」を改正した。1999年の施行以来初めてで、食料安全保障の体制強化を図ろうというのだ。
とりわけ政府が懸念しているのが、コメや小麦などの穀物だ。ウクライナ侵略の余波で小麦価格は過去最高を記録し、さらにはトウモロコシや大豆といった、日本が輸入に大きく依存する農産品が軒並み高騰したためだ。世界規模での本格的な食料不足となれば、日本も十分な量を確保できる保証はないとの危機感である。
だが、食料・農業・農村基本法の改正にあたって政府が示した内容の柱は、【1】食料輸入が困難になる不測時に政府一体で対策を講じる体制・制度の構築、【2】主食用米からの転換や肥料の国産化、【3】食品アクセス問題への対応、【4】適正な価格転嫁を進めるための仕組みの創設──などだ。「農政の転換」という割には、インパクトに欠ける。
具体的には、食料供給が著しく不足する兆候が見られた段階で首相をトップとする対策本部を立ち上げ、コメや小麦、大豆など重要品目や数量を設定。商社やメーカーなどに輸入拡大や計画的な出荷調整を求める。生産者に対しても増産を要請する。必要に応じて政府が補助金を出す。事態がさらに悪化した場合には、事業者に食料確保に向けた計画策定、変更を指示できるようにし、応じなければ20万円以下の罰金を科すなどとしている。
もちろん、不測の事態となった際の生産者への増産要請など評価できる内容も少なくないのだが、日本農業の最大のウイークポイントは農業従事者の先細りである。担い手の激減という難題を解決することなしに、日本の食料安全保障は見えてこない。
基幹的農業従事者のうち50代以下はわずか2割
農業の担い手不足は危機的だ。農林水産省によれば、基幹的農業従事者の平均年齢(2023年)は68.7歳だ。2000年に240万人だったが、2023年には116万4000人と半数以下となった。このうち、50代以下は23万8000人に過ぎない。
60代が24万3000人(全体の20.9%)、70代以上が68万3000人(同58.7%)を占めている。この年代は今後20年で引退することが予想されるが、そうなれば基幹的農業従事者は8割減る。影響は10年もしないうちに色濃く表れるだろう。
担い手不足は農地(耕地)の縮小に直結する。耕作放棄地や用途転用が進み、2023年は429万7000ヘクタールとなった。最大だった1961年(609万ヘクタール)と比べ179万3000ヘクタールほど少ない。毎年の減少が止まらないのだ。
今後、基幹的農業従事者が激減すれば、農地面積はさらに急減するだろう。多くの人は意識していないだろうが、日本人は“飢餓”と隣り合わせなのである。
【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、最新の統計データに独自の分析を加えた未来図を示し、これからの日本が人口減少を逆手に取って「縮んで勝つ」ための方策を提言している。
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