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・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・
現代の超難関校出の高学歴な政治的エリートと進歩的インテリ達には、食糧安全保障が理解できない。
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2024年8月24日 産経新聞「<浪速風>令和の米騒動? 想像以上の品薄ぶりに驚き
1日も早い新米の安定供給が待たれる
品薄だと聞いてはいたが、本当にないことに驚き、慌てた。「平成の米騒動」の令和版かと騒ぎになっているコメのことだ。
▶わが家の在庫を確認したうえで、ふるさと納税でお気に入りの産地の銘柄米を返礼品に選び寄付したのは今月上旬。だが、想定していたよりも発送は遅れ、わが家の備蓄が尽きかけたことに慌てた家人が近所のスーパーを回ったが、どこもかしこも棚は空っぽ。やむなく発芽玄米を購入した翌日、待望の白米が届いた。
▶品薄の原因は昨夏の猛暑により品質が低下して市場に出回る量が減った一方、インバウンドの回復などにより外食産業の需要が急拡大したことだという。総務省が発表した7月の全国消費者物価指数によると、コメの価格は前年同月比17・2%と20年ぶりの大幅上昇となった。新米の流通が待ち遠しいが、価格も落ち着いてくれるだろうか。
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8月24日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「「米不足」本当の理由がわかった…!食糧安全保障を軽視する「日本の農政」の責任
朝香 豊(経済評論家)
作況指数「101」で米不足?
現在、米不足が大きな問題になっている。
この問題を考えていくと、今年だけの一過性の話として済ますことができるものだとは思えず、今後もっと厳しい米不足が起こりかねないことを心配すべきではないかと思う。
© 現代ビジネス
今回の米不足の原因として一般的にメディアで説明されているのは、1.昨年の猛暑と雨不足による不作、2.おにぎりブームとインバウンドなどによる需要増、3.南海トラフ地震臨時情報の発表による買いだめ行動といったものだ。
まずはこれらの要因一つ一つが、今回の米不足にどの程度関係しているのかを具体的に見ていこう。
まず、昨年は猛暑と雨不足で不作だったという話からいくが、これは本当なのかと疑うべきだ。
というのは、昨年の米の作況指数は、平年を100とした場合に101だったからだ。平年よりも1%ほど多い収穫量ということになるのであり、昨年は「不作」といえるほどの話では断じてなかったのが実際である。
ちなみに平成5年(1993年)に起こったいわゆる「平成の米騒動」の時には、北海道の作況指数が40、青森が28、岩手が30など、東北・北海道が壊滅的な打撃を被っていた。日本全国の作況指数で見ても74であり、まさに大不作であったことがわかる。
これと比べた場合に、作況指数101の去年の収穫が「不作」でなかったのは明らかだ。
去年はお米の品質は全体的にはそれほどよくなくて、精米の過程で削らなければならない部分が多かったということも指摘されているが、それはおそらく決定的なダメージをもたらすものではなかったと見ていいのではないかと思う。
今年の6月末時点の米需要に対する在庫の割合は22.2%で、2008年の18.8%や2011年の22.0%を上回っていたからだ。
精米の過程で削らなければならない部分が、昨年収穫分については米不足を引き起こすほど決定的に多いのであれば、在庫水準も2008年のレベルをさらに下回っているに違いないからだ。
とにかく作況指数101でも米不足が生じているということの重みを、わたしたちはしっかり受け止めるべきではないだろうか。
なお数十年に1回は平成5年のように作況指数が80を切るようなこともあり、終戦の年である昭和20年(1945年)には、作況指数は67まで落ち込んだ。平成15年の作況指数も90まで落ち込んでいる。
直近20年だけでみても、作況指数が98以下になったのは、平成16年、平成18年、平成21年、平成22年、平成30年と5回もある。
今年のこの米不足の騒ぎからすると、今後はちょっとした不作となるだけで、米不足のパニックが繰り返されることになりかねないことがわかる。
インバウンド、南海トラフ地震…なのか
次にインバウンド需要などによって米の消費が増えたとされている点について見てみよう。インバウンド需要による米消費量は、前年と比べ約3.1万トン増えたと推計されている。
現在の日本の年間の米の消費量は700万トンほどだから、3.1万トンというのは、実は0.4%程度のことにすぎない。これが原因で米不足が発生したといえるほどのことでは断じてないのは明らかだ。
なお、このインバウンドによる需要増におにぎりブームなどによる需要増も加わって、本年度は前年度より11トンほど需要量が増えたとされている。この11トンの伸びにしても、需要量の増加はわずかに1.6%にすぎないのであり、決してそれほど大きなものではないのだ。
関連するビデオ: 【解説】「専用米」の生産もコメ不足が深刻 そのウラに天候、外食産業の需要増、南海トラフ地震の影響 (読売テレビニュース)
この程度の需要の伸びで米不足が社会問題化するようになっている状態こそ、今の日本の米の生産のあり方の大問題を反映しているというべきではないか。
もう一つの要因としての、南海トラフ地震臨時情報は、短期的とはいえ、確かにかなり大きな影響をもたらしたとはいえるだろう。現実には宮崎での地震のあと1週間で巨大地震が起こる確率は、地震前の0.1 %程度が、地震後に0.5%程度に高まったに過ぎなかったようだ。つまり99.5%は影響ないと推測されていた。にもかかわらず、南海トラフ地震臨時情報が出たことで、首相が外遊を中止する、海水浴場が遊泳禁止に動く、特急列車を運行停止にするといった過剰反応が相次いで報道され、国民の中の不安を加速させた。
この不安に煽られた買いだめ行動によって米が品薄になり、米の在庫がなくなったことに不安を覚えて買いだめに走る人が増え、コメを見つけたら購入しようとする動きが今でも続いていると見るべきだろう。
実際南海トラフ地震臨時情報が出てから、スーパーの実感としては米の販売量は例年の1.5倍程度になっているとの報道もあった。
結果として例年並みの供給ではこの需要増加に追いつかず、「米不足」が継続しているということなのだろう。
世界的穀物不足の中での減反政策の愚
しかしながら、この程度のことで米不足が意識されるあり方のほうが、実はおかしいんじゃないかという問題提起をしたい。
この問題は根本的には、日本政府が長年にわたって進めてきた減反政策の影響が非常に大きいと見るべきではないか。
しかも減反政策は、もともと極めて望ましくない結果を生む政策だとも言える。
減反政策とは、多額の税金を使って減反奨励金を支払い、米の生産・供給を減らすことで、需要と供給の関係から米の価格を引き上げ、農家を経済的に支えようというものだが、この政策のバカバカしさをよく考えてもらいたい。
政府が多額の税金を投入して、国民の米の購入価格を高め、国民の懐を痛める政策が、まともな政策なんだろうか。
しかもそうやって値段を高めにしておいた上で、外国からの米の輸入に高い関税を課すことによって輸入を防ぎ、そんな関税を課すことを認めさせるために、諸外国に他の点で譲歩するようなことまでやっているのだ。
さらに、それによって主食たる米の生産量を減らそうというのだから、経済安全保障の観点から見ても、実に由々しき事態だと言わざるをえない。
目下ウクライナとロシアの戦争によって、穀物の輸出が滞り、肥料の原料供給にも支障が出ている中で、世界規模で穀物不足が問題になっている。
世界最大の米輸出大国であるインドが2023年9月から米輸出を禁止したことで、他の米輸出国も国内の米価の上昇を懸念して、輸出に制限を加えるようになった。
なお、2018年度で減反政策は廃止になっていると思っている人もいるだろうが、実は廃止したのは毎年の減反の数量目標だけにすぎない。生産を減らせば補助金を出すという減反政策の中心部分は依然として残っていることは見逃すべきではないだろう。
農家に米を作りたいだけ作らせて、生産・供給が増えることで米の値段を引き下げて、余ったお米は海外にどんどん輸出する方向に、抜本的に政策転換すればいいのではないか。
日本の米には十分輸出競争力があるぞ
こういうと、日本の値段の高いお米が海外で売れるはずはないとの反論がやってくるかもしれない。
では、海外で短粒種であるジャポニカ米はどのくらいの値段で売られているのだろうか。
これをネットで検索していたら、シカゴ在住のよないつかささんという方が、「アメリカでも購入できる日本米(短粒種)を食べ比べてみました」というレポートを上げてくれていることに気づいた。このレポートは2023年3月のもので、レポートが出たのは1年ちょっと前のことだ。
このレポートに、カリフォルニア州サクラメントで収穫された「こしひかり」の値段として、2kgで21.47ドルという記載があった。これはアメリカのアマゾンの販売価格だ。
これを1ドル=145円で計算すると、3113円となる。1kgで1550円程度、5kgで7780円程度となるが、これは日本と比べてかなり高いと言えないだろうか。
今は日本国内は品薄で若干高めになっているが、普段であれば5kgで2500円、1kgあたり500円くらいで、大半のお米は買えるのではないか。テレビを見ていたら5kgで2000円を超えるとお米は買わないと言っている人もいたので、米不足が報じられるようになる前には、この程度で売られているお米もあったのだろう。
だから、関税で保護しなくても、日本のお米はすでに輸出できるくらいの競争力があると見ていいのではないか。
店頭価格ではなく、卸売価格になると、当然ながらもっと安い。今年の米の卸売価格は1万5865円になったと報じられていたが、この1万5865円というのは60kgの値段である。1kgあたりでは264円ということになる。
これまで日本は減反政策を進めてきたために、反収を増加させるような品種改良をほとんどやってこなかった。カリフォルニア米の場合、同じコシヒカリでも、今や反収は5割くらい多いはずだ。反収を増加させる品種改良を今後日本で進めていけば、それだけでもお米の生産量はかなり大きく増やすことができるはずだ。そしてそれは米価の低下にも当然繋がる。
そしてこの価格低下に対しては、生産量に応じた所得補償を政府が農家に支払うようにすれば、農家は増産による価格低下のダメージを吸収できるはずだ。
同じ農業保護を行うなら、減反ではなく、こういうやり方で農業保護をすればいいのではないか。
そして国内で余った米は海外にどんどん輸出するということを考えるべきではないか。
こうしたやり方に変えた場合、品種改良にしても味とか育てやすさとかだけでなく、収量の多さも重視されていくことになるだろう。
仮に米の生産性が上がって、これに伴い60キロ1万円まで値段が下がり、年間600万トンの輸出ができるようになるとしよう。この場合には輸出金額は1兆円になる。
こうしたやり方をやれば、国内の米の店頭価格も当然下がることになる。小売価格が4割近く下がったら、パンなどの小麦製品から米に乗り換える動きは強まることだろう。
食料安全保障が重要だというなら、こういう方向に農政を転換すべきではないだろうか。
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