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8月21日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「知ってはいけない、世界の《残酷な常識》「脱原発社会」のウラで、日本メディアが報じない「環境NGO」のヤバすぎる実態
川口 マーン 惠美 作家
福井 義高 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授
一般に、巨悪に立ち向かう弱小な組織といったイメージを持たれる「環境NGO」。だが、実際は強大な権力と潤沢な資金で世界の政治を動かしている恐ろしい組織なのである。
ドイツは石炭をベースに発展してきた国で、電力発電はその4割を石炭と褐炭に頼っている。そんなドイツで、「環境NGO」はドイツ全土に分布している。
登録されている会員はなんと1100万人。その巨大組織の圧力で、国は「脱原発」を決め、さらには「2038年の脱石炭」を決めている。恐ろしいことに今や「環境NGO」はドイツの世論形成を牛耳る一大勢力となっているのだ。
ドイツ在住のベストセラー作家・川口マーン惠美氏が青山学院大学教授・福井義高氏を相手に巨大組織「環境NGO」のドイツにおける実態を語る。
※本記事は、『優しい日本人が気づかない 残酷な世界の本音―移民・難民で苦しむ欧州から、宇露戦争、ハマス奇襲まで』より一部を抜粋編集したものです。
『優しい日本人が気づかない 残酷な世界の本音 - 移民・難民で苦しむ欧州から、宇露戦争、ハマス奇襲まで』
日本人が知らない、世界の《残酷な常識》連載はこちら
「国際環境NGO」とドイツ政府との癒着
川口マーン惠美(以下川口):緑の党のロベルト・ハーベックが大臣の経済・気候保護省では、2023年4月になって、NGOとの異常な癒着や、関係機関での大掛かりな縁故採用がスキャンダルとして報じられました。
ロベルト・ハーベック(写真:gettyimeges)ロベルト・ハーベック(写真:gettyimeges)
主要メディアはあたかも今、初めて明るみに出たかのように報道しましたが、もちろん、彼らは前々からすべて知っていた。私だって知っていたのですから当然です。
「過小評価されるグリーン・ロビーの権力」という長大な論考が独大手紙『ディ・ヴェルト』のオンライン版に載ったのは2021年4月30日でした。
綿密な取材の跡が感じられる素晴らしい論文で、読んだとき、私は久しぶりにジャーナリズムの底力を感じたものです。
巨悪に立ち向かう弱小な組織といったイメージの環境NGO(非政府組織)が、実は世界的ネットワークを持ち、政治の中枢に浸透し、強大な権力と潤沢な資金で政治を動かしている実態、多くの公金がNGOに注ぎ込まれている現状、そして、批判精神を捨て、政府とNGOを力強く後押しするメディアの癒着を暴いているのです。
この論文によると、環境NGOは地味な草の根運動を装っていますが、エネルギー政策、および地球温暖化防止政策に与える影響力という意味では、今や産業ロビーを遥かに凌いでいるといいます。脱原発や、脱炭素にも、もちろんNGOが絡んでいます。
そこでまず脱原発について私が異常だと思ったのは、2011年の福島第一原発の事故の後にドイツ政府は倫理委員会を招集したのですが、そのメンバーに電力会社の代表や研究者がほとんどおらず、聖職者や社会学者が加わっていたことです。
つまり、科学的視点を欠いた人たちが2022年の脱原発を決めたのです。しかも音頭を取ったのが、長年、国連環境計画の事務局長を務めていた環境問題の大御所、クラウス・テプファーでしたから、結果ありきの脱原発でした。もちろん、テプファーを引っ張ってきたのはメルケル首相です。
また、その7年後の2018年に、脱石炭について審議するために招集された「成長・構造改革・雇用委員会」(通称・石炭委員会)では、聖職者はいなくなっていましたが、今度は環境NGOがたくさん座っていた。
おかしいでしょう、彼らが大事な政策決定に口を出せるなんて!しかも、脱石炭を審議する会議なのに、石炭輸入組合の代表は傍聴することさえ叶わなかったのです。
ドイツは伝統的に石炭をベースに発展してきた国で、発電は今も4割を石炭と褐炭に頼っているのに、長年続いたこの産業構造を、突然トップダウンで終了させるのは、ものすごく無謀な話です。
性急な脱石炭は、企業の株主の権利を侵害するし、また、何万もの炭鉱や関連業種の労働者から生活の糧をも奪うことになります。
そこで石炭委員会は各方面への補償と、影響を受ける州の産業構造改革のため、2038年までに少なくとも400億ユーロを投下するとしました。
大盤振る舞いはいいとして、財源はどうするのか。代替産業もわからぬまま山積する問題をほっぽり出して“遅くとも”2038年の脱石炭というスケジュールだけが決まっているのが、現在のドイツです。
しかし、それに反対したのが緑の党で、なぜ、反対かというと、2038年では遅すぎるので、スケジュールをもっと早めろと異議を唱えたのです。そして、それを後押ししているのが自然・環境NGOです。
これらのNGOはドイツ全土にあり、登録されている1100万人の会員が、今やドイツの世論形成を牛耳る一大勢力となっています。
実際、緑の党はNGOを味方につけ、脱炭素の大波に乗って2021年12月に政権入りを果たしました。
福井義高(以下福井):少なくともドイツの場合、環境保護というのはもともと左翼の専売特許というわけではなく、19世紀のドイツ・ロマン主義あるいはもっと先まで遡れる、保守的な人にも訴求力のあるテーマです。
したがって、緑の党を支えるドイツの環境保護運動は、日本のような上っ面なものではなく、ドイツ社会に根を下ろしているように思えます。
一方で脱炭素達成のための風車建設を推進
川口:もちろんその通りで、自然を大切にするのはいいのですが、今や、彼らのやろうとしていることが環境保護に役立っているかというと、実際には矛盾が多すぎます。草の根として頑張っている人たちは、正しい情報を得ていないのではないかと思います。そして、その矛盾の根源が、政治とNGOの堅固なタッグです。
すでにNGOは政府の専門委員会に加わっていることは、先ほど申しました。彼らは、政治家の外遊にもしばしば同行し、国際会議ではオブザーバーとして常連席を持っていたりと、権限が膨張しています。
たとえば、現開発相のスヴェニャ・シュルツェは、環境相だった2019年、マドリッドでの国連気候行動サミットに出席中に、「NGOの人たちとの会話は私にとって非常に重要だ。我々は同じ問題のために戦っている」とツイートしています。
また2月には毎年恒例の「ミュンヘン安全保障会議」が開かれていますが、ダボス会議同様、民間主催のこういった国際会議のほうが、公式の国際会議である国連などよりも実力を強めているように感じます。
ここでは産業界の有力者や、NGOを支援する大資本家など集って、都合の悪い国家の首脳は呼びません。民主主義を強調しながら、戦争も政治も「民営化」だといわんばかりに、仲間内で世界政治を決めていく。
そもそも選挙で選ばれたわけでもない人間が税金で行動し、国政や法案の策定にまで口を挟むこと自体がおかしいと、私は思っています。ところが、ドイツでは事もあろうに、国、州政府、そしてEUも、各種NGOにかなりの財政支援を行っているのです。
もっとも、このやり方は、風力発電の拡大を唱えているNABUの方針に抵触します。実際に、鳥の保護と風力発電の拡大は両立できないとNABU内部でも問題となっているらしく、風車の建設規制を訴えるNGOに移る会員も出てきたそうです。
実は、シュルツェ前環境相もNABUのメンバーだそうです。つまり、日頃からNGOを称賛し、鳥の保護を訴えつつ、一方では、脱炭素達成のために風車の建設も推進していて風力発電事業者との距離も近い。結局、どちらからも重宝されていたのでしょう。これではNGO幹部に対する不信は募る一方です。
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…つづく<知ってはいけない、世界の《残酷な常識》日本人は気付かない、ゼレンスキー英雄説の「危ない実態」…専門家が警告>でも専門家による日本人が知らない世界の本音を明かします。
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