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2024年8月11日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「実際のところ、宇宙はどれくらい大きいのか…銀河10万個分を超える「途方もない数字」
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 によ
138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか?
本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。
*本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
無限に広がる大宇宙、と言うけれど…
無限に広がる大宇宙。皆さんも、これまで数え切れないほど、夜空を見上げてこられたのではないでしょうか。筆者も、かつて過ごした東京のような都会であれ、兵庫県南部のベッドタウンの加古川であれ、イギリス湖水地方に近い田園地帯に囲まれたランカスターであれ、数え切れないほど夜空を見上げてきました。
それぞれ多い、少ない、の違いはありますが、いつどこであっても夜空には星々が凜としてきらめいています。人生のそれぞれの状況に応じて、時には目が覚めるような明るさにハッとさせられた経験をおもちの方もいらっしゃるでしょう。
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私たちは、目まぐるしく変わる日常を生きています。しかし、いつ見上げても、夜空の星々は、まったくその姿を変えないかのように宇宙に浮かんでいます。皆さんも、この一見、不変であるような宇宙が、いったいいつから存在し、そしてどこまで遠く続いているのか? その果てしない大きさと悠久の時の流れに、思いを巡らせたことがあるのではないでしょうか。
実は、夜空の星座の配置などがいつ見ても変わらない、つまり宇宙は不変であるかのように見えることは、宇宙、もしくは銀河系(われわれの銀河)がとてつもなく大きいということと関係があります。簡単に言うと、光の速度で飛んで約10万年かかる天の川銀河の全体の見た目を変更するためには、少なくとも10万年以上かかるからなのです。
実際、宇宙はどれくらい大きいのか?
次に、宇宙がどれほど大きいのか、宇宙の階層性を小さいものから大きいものまで、順を追って見ていきましょう(「図:宇宙の階層性」)。
宇宙の階層性(画像提供:NASA)
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人間の身長は、近似的に考えて、1mくらいと言うことができます。これを基準に、単位をmで表していきましょう。
地球の直径は約1万2000キロメートルです。つまり、約1000万mのオーダーです。1000万はゼロが1の後に7個並ぶので、数学では10⁷mと表します。
一番近い天体は、地球の衛星である月です。月までの距離は約38万キロメートルで、光の速さの秒速30万キロメートルで進むと約1秒、つまり約1光秒の距離です。月の大きさは、地球の約4分の1です。見かけの大きさを角度で表すと、約0.5度です。
一番身近な自分で光っている星、つまり恒星は太陽です。地球からの距離は約1億5000万キロメートルで、約10¹¹mのオーダーです。光速で進むと約8分です。つまり約8光分の距離ということができるでしょう。太陽の大きさは、地球の約100倍です。月よりずっと遠くにあるので、見かけの大きさを角度で表すと、偶然、月と同じ約0.5度です。地球では日食と月食が両方起こり得るという奇跡的な位置関係にあります。
この見かけの大きさの偶然の一致がなければ、月も太陽も違う天体であるという概念が、より早く人類に認識されたでしょうし、地動説は、もっと早くに唱えられていたかもしれませんね。
太陽系から銀河団までを一望
次に大きな階層は、太陽系です。太陽を中心に太陽の重力で引き寄せられて回っている惑星、小惑星、彗星などの天体が形づくるのが太陽系です。典型的な大きさは約1兆m、10¹⁶mです。太陽系を飛び出すと、お隣の恒星であるαケンタウリまでは、約4.3光年。1光年は、約10¹⁶mです。
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太陽を含む約1兆個の恒星の集合体である天の川銀河が、次の階層となります。大きさは約10万光年、つまり約10²¹mです。ここからは、天の川銀河を「われわれの銀河」と呼ぶことにしましょう。古くからの名前である「銀河系」は、他の銀河と紛らわしいので、特別な場合以外はなるべく使わないことにします。われわれの銀河の周りには、お供の小さい銀河(伴銀河)があります。アニメの宇宙戦艦が行ったことでも有名な大マゼラン雲もその1つで、距離は約16万光年先にあります。お隣の銀河であるアンドロメダ銀河までの距離は約250万光年で、約10²²mです。
その上の階層は、銀河が約50個から100個以上集まった銀河団です。大きさは約10²³m、つまり約1000万光年です。銀河団全体が熱い電子のプラズマに覆われ、銀河団全体から約1000万度のX線が放射されていることが知られています。
信じられないくらい巨大な超銀河団、そして…
銀河団もある程度まとまっていて、銀河団を100個以上、つまり銀河を1万個以上含む、超銀河団を形成していることが明らかになってきました。超銀河団の大きさは約1億光年以上、つまり約10²⁴m以上です。われわれの銀河を含む超銀河団は「ラニアケア超銀河団」と呼ばれ、ハワイ語で無限の天空を意味します。2014年にハワイ大学のグループが初めて提唱しました。皮肉にも、われわれの銀河を含む構造は、なかなか遠くから詳しく見ることができないので、真の姿の発見が遅れる傾向があるのです。ラニアケア超銀河団の直径は約5億2000万光年、つまり約10²⁵m、質量は銀河を10万個含む重さ(10¹⁷太陽質量)です。
超銀河団も十分に大きいのですが、実は宇宙をもっと大きなスケール、100億光年の長さのスケールで観測すると、こうした銀河の大規模な構造ですら、一様に見えてくることが知られています。100億光年とは、現在の宇宙の年齢が138億歳なので、ほぼ宇宙年齢をかけて光が到達する距離、つまり宇宙の地平線の大きさです。一様とは、横にずらしても同じ模様であるという意味です。また、回転させても同じ模様である(等方と言います)こともわかってきました。観測から導かれる性質ですが、この一様等方性を「宇宙原理」と呼びます。
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宇宙原理に従うと、この宇宙には大きなスケールで見ると、特別な場所はない、ということになります。私たちが住んでいる、地球、太陽系、われわれの銀河、銀河団、超銀河団は、特別な場所ではなく、宇宙にありふれている場所であるとする原理なのです。次に説明する、コペルニクス原理が天動説をくつがえして地動説を唱える状況と似ています。また、138億光年より先に、何もない、とは言っていないのです。実は、われわれ理論物理学者は、その外のことを計算で知っているのですが、観測で確定したわけではありません。科学者は実験で検証されていないことは報告せず、わからないと言わざるを得ないのです。
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さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする。
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