🌀19〗─3─コロナ禍の日本で「病床不足」が起きたのか「厳しすぎる現実」~No.137No.138 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2024年6月23日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「意外と知らない、コロナ禍の日本で「病床不足」が起きたのか「厳しすぎる現実」
 人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」
 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。
 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
 2020年12月、病床の41・9%は使用されず
 コロナ禍は、医療提供体制の脆弱さも明らかにした。新型コロナウイルス感染症の人口当たりの感染者数が英国や米国などの10分の1以下だったにもかかわらず、病床が足りなくなるという、世にも不思議なことが起きたのである。病床不足は、繰り返し緊急事態宣言が繰り返し発出される事態を招いた。
 病床の不足といえば、「コロナ前」から団塊世代が75歳以上人口となり、患者数の激増が予想される2024年以降の懸念材料となっていた。コロナ禍が先回りして2024年以降の医療現場をわれわれに突き付けたということである。
 感染症には短期間に患者が激増するという特殊性はあるが、そうした要因を除いても日本は人口当たりの病院数、病床数が先進各国の中で突出して多い。なぜ、そんな日本で病床不足が現実のものとなったのだろうか? 
 それは、病床数こそ多いものの、重症患者を診るには医療体制が不十分であったり、病院同士の役割分担が不明確だったりしているためだ。しかも、認知症患者も入院する精神病床が病床数を押し上げているという要素もある。
 高齢化に伴って疾病構造が変化していくこともあり、地域ごとの病院の再編は「コロナ前」から求められていた。医療提供体制の脆弱さもまた、コロナ禍が見せつけた「積年の宿題」であったのだ。もう少し早く地域医療構想に基づく病床の再編が実現していたら、こうも簡単に医療が逼迫する事態とはならなかったであろう。
 実際に何が起きていたのかを見てみよう。財務省の資料によれば、2021年1月に緊急事態宣言が発出された東京圏では、2020年末時点で療養病床などを除いた一般病床の使用率は低下していた。つまり、使用されていない病床の割合が増えていたにもかかわらず、入院先が決まらない患者が増加した。東京都では2021年1月17日現在、最大7700人を超した。
 これは東京圏だけでない。全国の病床使用率は2020年12月末時点で、一般病床と感染症病床を合わせた88万9788床のうち、使用されていた病床は58・1%にあたる51万6975床にとどまり、残る41・9%の37万2813床は使用されていなかったのだ。
 驚くことに、「コロナ前」の2019年12月の病床使用率は62%であり、医療提供体制の逼迫が叫ばれながらも、むしろ低下していたのである。
 長期入院患者の6割が「コロナ感染症以外」で入院を継続
 なぜこのようなことになったのか? 
 日本の場合には病院数の81・6%、病床数の71・3%を民間病院が占め、その多くは200床未満の小規模病院であるためだ。コロナ患者に対応するためには感染リスクがある場所を区切らなければならず、しかも感染症に対応できる専門医の確保と、一般病床の何倍もの看護師を必要とする。別の病気で入院中の患者を他の病院に転院させなければならないといった煩雑な業務も発生する。
 国や自治体からコロナ患者の受け入れを要請されても、小さな民間病院ではそう簡単に対応できないというのが実情なのだ。結果として、体制が整っている公立・公的病院(日本赤十字社など)、民間でも大規模な病院に患者が集中することになったのである。
 実は、病床当たりの医療従事者が少ない医療機関ほど受け入れ実績は少ない。厚労省の資料によれば、100床当たりの常勤換算医療従事者数(その病院で働いている医療従事者の平均数)で受け入れ実績を見ると、110人未満の病院で割合が大きく下がり始めている。
 もちろん病床数の問題だけでなく、感染症の専門医が少ないという事情もある。そして、病床不足にさらなる拍車をかけたのが、病院の役割分担と連携のまずさであった。全国医学部長病院長会議の調査結果(2021年1月19日)によれば、1月6日時点で緊急事態宣言都県における中等症・軽症病床の利用状況は「症状無し患者」が33・0%、「疑い患者」が13・6%を占めていた。
 全国自治体病院協議会の実態調査結果(2021年3月25日)でも、入院患者の47・0%は軽症であった。患者が次々と運び込まれるという非常事態であり、やむを得ないところもあるが、もう少し調整がうまくいっていれば、重症患者の受け入れを優先・拡大できた可能性が大きい。
 他方、大学病院の38%、公立病院の32・1%で後方支援体制が整っていなかったことも、再調査から明らかになった。症状が落ち着いても転院できない患者がいたのである。医療機関の連携がもう少し整っていたとしたら、結果は違っただろう。
 医療機関同士の連携不足といえば、目を疑う事例が見つかった。大阪府の資料によれば、コロナ患者受け入れ病院のヒアリング調査(2021年2月5日時点)の結果、「20日以上の長期入院患者187人のうち6割にあたる113人が『コロナ感染症の症状以外』の理由で入院を継続していた」というのだ。
 「転院調整中」が42人、「受入先なし」が5人であった。見逃せないのが、「コロナ以外の疾患」が27人もいたことである。病院間の連携がとれていれば転院可能だったはずだ。
 さらに「その他」が39人も含まれているが、その理由は明らかにされていない。まさか病院での治療を必要としなくなってもなお入院していた人は含まれていないとは思うが、コロナ患者以外が長期入院していたのでは病床をいくら新設しても間に合わない。
ただし、小規模の民間病院がコロナ患者を受け入れていないと批判することはお門違いである。先にも触れたが、能力的に、受け入れることが無理だからだ。むしろ、果たすべき役割は、コロナ以外の患者の受け入れであった。こうした役割を果たしていた民間病院もあったが、限定的だった。「コロナ前」に、地域医療構想に基づく役割分担と患者転院の調整機能が強化されていたら、大病院の負担はある程度は軽減できたことだろう。
 コロナ患者の治療が一部の病院に集中したことで、医療従事者の繁閑は勤める医療機関によって大きなバラつきが生じることにもなった。日本病院会などの調査によれば、月間80時間以上の時間外労働をした医師数は2020年4~12月のすべての月で前年を下回っている。コロナ禍で過酷な労働環境に置かれたのは、医療従事者の一部なのだ。
 もちろん、コロナ患者の治療を直接行っている病院の医療従事者以外にも、PCR検査を行う診療所の医師らの"体を張った"活躍もあった。コロナ患者治療の最前線に使命感を持って立ち続けている医療従事者の方々には深く敬意を表したい。
 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。
 河合 雅司(作家・ジャーナリスト)
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