📉86】─1─既に中国の科学技術は日本を追い抜いている。~No.198No.199 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・  
 バブル崩壊後の日本には、戦前の日本よりも科学技術力がない。
 現代の政治家、官僚、資本家・経営者、メディア関係者などには、戦前の軍人や企業家に比べて科学技術への理解力がない。
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 2024年6月20日 YAHOO!JAPANニュース BUSINESS INSIDER JAPAN「科学技術大国「中国」が上位独占、インドも急伸…Natureの研究ランキング。日本の存在感は?
 中国が科学技術大国としての存在感を確固たるものにしつつある。
 イギリスの科学誌natureなどを出版するSpringer Nature社が6月18日、学術論文の発表数などをもとに世界の大学や研究機関をランキングした「Nature Index Research Leaders 2024」を発表した。そこで顕著になったのは、中国やインドといったアジアの国々の隆盛だ。
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 ※2024年版のランキングは、2023年に出版されたSpringer Nature社以外も含む145の学術論文、7万5707報をもとに作成された。論文の数だけではなく、そのシェア(貢献度)などを踏まえてランキングが決められる。
 トップ10を中国がほぼ独占。米スタンフォード大はトップ10圏外に
 毎年話題になるNature Indexのランキングだが、2024年版では総合ランキングトップの中国科学院を筆頭に、トップ10に中国の大学・研究機関が7つランクインするなど、中国勢が2023年に引き続き上位を席巻する結果となった。
 トップ10にランクインした中国以外の大学・研究機関は、アメリカのハーバード大学(2位)、ドイツのマックス・プランク協会(3位)、フランス国立科学研究センター(7位)だった。トップ10常連だったアメリカのスタンフォード大学は、2023年の6位から2024年版では15位と大きく順位を落とした。なお、大学に限定するとトップはハーバード大学になるが、10位までの残り9大学は全て中国の大学だった。
 国ごとに論文数などを比較すると、上位5カ国は順に、中国、アメリカ、ドイツ、イギリス、日本。
 2023年版では、中国が初めて自然科学分野でトップになったことが話題となった。ただ、健康科学分野を合わせた総合順位では2位に甘んじていた。2024年版では、総合順位でも中国がアメリカを上回り、名実共にトップの座をつかんだ。
 生命科学、化学、地球環境科学、健康科学、物理科学という5つの分野別に見ると、中国は化学、地球環境科学、物理科学の3部門で世界トップに。生命科学、健康科学ではアメリカが依然としてトップだった。
 また、2023年には「インド」の急成長が目立った点も特徴だという。総合ランキングではオーストラリアとスイスを抜いて、2023年版の11位から9位に順位を上げた。
 評価対象になった論文のシェア(貢献度)ではトップの中国には遠く及ばないものの、「成長率」では中国の13.6%増に対して、インドは14.5%増と「中国と同等以上」だった。natureによると、インドの急伸の背景として、過去10年間での大学数の増加や、学生向けのフェローシップの多さといった要因が考えられるという。
 低下する欧米の優位性。日本の存在感は…?
 世界に対して、日本はどうか。
 国内に目を向けると、総合ランキングでトップになったのは2023年から1つ順位を上げた東京大学の19位。次いで、4つ順位を下げた京都大学の47位。大阪大学の69位(前年は78位)と続いた。なお、国際卓越研究大学として認定が決まった東北大学は、前年から5つ順位を下げた104位(国内では4位)だった。
 また、北海道大学が世界総合ランキングで119位(前年141位)、名古屋大学が128位(同154位)、物質・材料研究機構が191位(前年212位)と、大きく順位を伸ばした。なお、2019年に質の高い論文の割合が高い研究機関ランキングで東大を上回る日本トップの9位に選出されたことで知られる沖縄科学技術大学院大学(通称:OIST)は、発表している論文数が少ないこともあり、このランキングでは世界で500位圏外。国内でも16位にとどまっている。
 三ツ村 崇志
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 2021年6月35日 BUSINESS INSIDER JAPAN 有料会員限定「「大隅先生、日本の科学は死んでしまったんですか?」ノーベル賞学者に聞く、日本の科学の行方
 三ツ村 崇志 [編集部]
 2021年ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎博士。
 プリンストン大学の真鍋淑郎博士が2021年のノーベル物理学賞を受賞した。
 「日本人がノーベル賞を受賞」と盛り上がる一方で、日本では、科学を育む土壌の喪失が危惧され続けている。
 文部科学省、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の調査によると2020年、日本はコロナ関連の論文数で世界14位。質の高い論文ランキング(全分野)でも、9位から10位へと順位を落とし、サイエンスの現場で強い存在感を放っているとは言いがたい状況だ。
 東京工業大学榮譽教授の大隅良典博士は、日本の科学の行く末を憂い続けている科学者の1人だ。
 細胞内部の自食作用、オートファジーのメカニズムの解明で2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅博士は、その後、公益財団法人・大隅基礎科学創生財団(以下、大隅財団)を立ち上げ、科学者の好奇心を起点とした「独創的な研究」の支援に精力的に取り組んでいる。
 日本のアカデミアが抱える課題、そして科学を再興するためにこの先何が必要なのか。大隅博士に話を聞いた。
 大隅良典(おおすみ・よしのり):東京工業大学榮譽教授。大隅基礎科学創成財団 理事長。「オートファジーの仕組みの解明」により2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞。大隅基礎科学創生財団では、基礎科学の発展、企業との新しい関係構築に向けてさまざまな取り組みを進めている。寄付はこちらから。
 「日本の科学技術の衰退、間違いない」
 大隅良典氏
——コロナ禍でのワクチン開発や気候変動対策における技術開発など、昨今、日本の科学技術の存在感が薄いように感じています。大隅先生は、日本の「科学技術」の現状をどう認識していますか?
 大隅良典博士(以下、大隅):難しい質問ですが、体力的にはやっぱり衰退しているというのは間違いないと思います。
 単に「(研究に対する)お金が足りない」という問題ではなく、日本の研究力そのものが落ちているのではないかと思っています。
 日本では、基礎科学の研究では大学が大きな役割を果たしてきました。ただ、大学の研究力が落ちてきている。
 その一番大きな要因は、若い科学者を育てる土壌の崩壊だと思います。
——「土壌の崩壊」というと、何が起きているのでしょうか?
 大隅:まず、博士課程へ進学する大学院生が減っているということが、ものすごく深刻です。
 昔は、大学院生がどんどん研究に参加する流れがあり、その積み重ねが日本の科学を支えていました。
 今は「ポストドクター」(以下、ポスドク)のシステムがあり、私も多くの方と研究してきました。ただ、今はポスドクを募集しても、そもそも人材が少なくなっているように感じます。
 博士号の取得者は欧米や中国と比較して少なく、かつ減少していて、若い層が育たない。
 このままいけば、私は間違いなく日本のサイエンスはどんどん落ちていってしまうと思っています。
 「余裕のない社会」がもたらしたもの
 博士課程
 日本国内における分野別の博士課程入学者数の推移。直近では微増しているものの、2003年をピークに減少傾向だ。
 出典:Flourishを用いて編集部が作成。
—— 若い世代が科学者を目指さなくなった原因は何だと感じていますか?
 大隅:いろいろ問題はありますが、社会全体の問題なのではないでしょうか。
 科学だけがすごく伸びやかな社会というのはありません。やはり日本の社会全体が余裕を失ったのだと思います。
 経済的に余裕を失い、社会全体が内向きになった。若者が研究者になるというリスクの大きなことをやるよりも、「安定したところに就職して欲しい」という親の意見に抗することができなくなってきている。
—— どんどん科学者を目指す若者が居なくなっていった場合、研究現場には何が起きるのでしょうか?
 大隅:大学院では、ドクター(博士課程の学生)がいたことでサイエンスが守られていたんです。研究室の中でドクターがマスター(修士課程の学生)を指導することで、彼ら自身も(下の世代も)伸びていくシステムとなっていました。若い世代が少なくなると、それが失われてしまう。
 また最近では、ドクターに進まないことを前提としたマスターの学生が増えていることも問題の一つです。大学院が就職するための予備校のようになってしまい、研究者を養成できていないと感じています。
—— 修士卒で企業に就職しするケースは、確かに理系の一般的なキャリアとなっているかもしれません。ただその中には企業内で研究する道を歩むような方もいると思います。
 大隅:確かに企業でも研究者になれると指摘する方もいます。これはあるところは正しいし、あるところは幻想です。
 「どうせ研究するなら、大学で無給でやるよりも企業で研究した方がいい」
 というのが、一般的な学生たちの意識のように感じます。ただ、修士課程で終わると研究者が何たるかということを知らずに終わってしまうことが多いんです。
 だから研究の楽しさも、大変さもよく知らない。ただ言われたことをこなしている間に、修士課程が終わってしまう。
 我々の分野であれば、修士課程では研究室の指導教員からテーマをもらい、博士課程に進むと自分で研究テーマを選ぶ。こうやって研究者としての階段をのぼっていくものでした。
 もちろん、優秀な人は勝手にその階段をのぼっていきますが、学生全体を見ると、マスターの間にいかに論文を出すかということを考えて、研究室の指導者から言われた通りに作業する意識の若者が増えているような気がします。
 今の学生は「どの研究室が就職に有利か」「どの研究室なら論文が出るか」「どの仕事をやれば一流雑誌に通るか」ということへの興味が強く、自分が本当に興味があるものを深める時間が足りていないのではないかと思います。
—— それは、大学の研究環境の問題というよりも、それまでの教育環境の問題でもあるように感じます。
 大隅:恐らくそうでしょうね。昔の方が、その点はやはり余裕があったのだと思います。
 私はね、やっぱり「面白い」と思うことが、科学の根源だと思うんです。
 「これで人類が救える」といったような高尚なことだけで、人は科学をやっているわけではないんです。
 知りたいと思った疑問を解くことが楽しい。正しいことを理解する、それ自身が楽しいことだと思える社会になることがとても大事なのかなと思います。
 大隅財団の活動の中で、社会には科学に純粋に興味を持っている人たちが少なからずいることがわかりました。そういった「芽」をちゃんと育てていかない限り、日本は変われないのではないかと感じています。
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 2021年 BUSINESS INSIDER JAPAN「「中国の科学技術力、圧倒的」大隅博士が語る、日本の科学の未来。選択と集中の果てにあるものとは?
 三ツ村 崇志 [編集部]
 岸田文雄首相
 10月8日、所信表明演説をする岸田文雄首相。
 「成長戦略の第一の柱は、科学技術立国の実現です」
 10月8日、岸田文雄首相が所信表明演説で語ったこの一言は、筆者にとって衝撃だった。
 「日本は、科学技術立国である」
 ことあるごとに聞かされてきたこのフレーズが、すでに過去の産物であるという現実を、首相自らが認めている発言ともとれたからだ。
 日本を取り巻く経済環境が厳しくなる中で、この先どうすれば科学を再び育んでいくことができるのか。
 日本のアカデミアが長年抱えてきた「選択と集中」の弊害や、近年注目される中国の躍進。そして、科学技術立国の再実現に向けたこれからの企業と大学の関係について、前編に続き、細胞内の「ごみ」をリサイクルするシステム「オートファジー」の研究で2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した東京工業大学榮譽教授の大隅良典博士に話を聞いた。
 大隅良典(おおすみ・よしのり):東京工業大学榮譽教授。大隅基礎科学創成財団 理事長。「オートファジーの仕組みの解明」により2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞。大隅基礎科学創生財団では、基礎科学の発展、企業との新しい関係構築に向けてさまざまな取り組みを進めている。寄付はこちらから。
 中国の躍進で問い直される「日本の科学」
 大隅良典氏
 東京工業大学大隅良典博士。
——日本では、すぐに役に立つ研究への研究予算の「選択と集中」が進められてきました。大隅先生はよく「選択と集中」の問題点を指摘されていますが、あらためてその弊害を教えて下さい。
 大隅良典博士(以下、大隅):選択と集中はあってもいいんです。
 ただ、それを進める条件は「基礎」があることです。今は、科学の広い裾野を切り捨てた上で、選択と集中をしようとしている。それは間違ったメッセージです。新しい科学は、裾野の広い知の体系から生まれてくるものです。
 このままでは、日本の科学の底が浅くなってしまう。
 なにも、あらゆる分野に多額の資金が必要だというのではありません。
 研究者の好奇心に基づいたことをコツコツと研究できる土壌を育て、知の裾野を広げておかなければ、次の世代の科学は育たない。その喪失を早めていることが、選択と集中の最大の弊害なんだろうと思います。
 私は、このままだと、10年後にノーベル賞をもらえるような人が出てくることはなくなってしまうのではないかと思っています。
 2016年のノーベル賞受賞時にスピーチをする大隅良典先生の写真。
 2016年にノーベル賞を受賞した際に、スピーチをする大隅良典博士。
——そういう意味では、近年あらゆる分野で中国の躍進が注目されています。大隅先生は、中国の科学技術の進歩についてはどう捉えていますか。
 大隅:まず、お金のかけ方が違いますよね。私は昔、植物学の研究室にいたのですが、数十年前は中国ではイネ以外の研究にはなかなかお金が出ていなかったようですが、今では、何でも研究できる自由度があると聞きます。
 中国はまさしく国策で科学技術振興を進めているので、資金力も半端ではありません。投資の意思決定も早いので、原理が分かっていてあとは力仕事になるような分野では、もう圧倒的です。
 大学もたくさん作られていて、研究の場(ポスト)も増えている。研究者になることに対して、中国の社会には不安が少ないように感じます。
——若手も研究者を目指しやすいですね。
 大隅:そうですね。ただ、私はまだ「中国のサイエンス」にはなっていないのだろうなと感じています。現在の中国の科学は、欧米に留学していた人材が戻ってくることで、欧米のスタンダードに則って研究している状況です。
 そういう意味では、日本のサイエンスは(数やスピードで中国には敵わない中で)何を目指したら良いのかを考えなければいけないと思います。
——「日本式」ともいえる科学への取り組みが必要になるというわけですね。
 大隅:日本には、必要なときに必要なお金が投資されるシステムがありません。
 何に対しても「欧米で流行し始めたら日本でも導入しましょう」となってしまう。日本で新しい技術が生まれても、「日本の面白い技術だぞ」となかなか力を入れようとしないんです。
 科学技術立国の実現に向けた、企業と大学の役割
 共同研究費
 日本の大学等の民間企業等との共同研究等にかかる受入額の内訳。2019年は、800億円を超えた(NISTEP科学技術指標2021より)。
——最近、産学連携や大学発ベンチャーなどが増えています。企業と大学の距離間が近くなりすぎると、「役に立つ研究」への集中が加速されるようにも感じます。大隅先生が考える企業と大学の理想的な関係はどのようなものでしょうか?
 大隅:今は大学が貧しくなっているので、とにかく企業との共同研究費を稼ぐのが至上命題になっています。
 例えば、企業の下請けのような仕事をたくさん受ければ、企業から数億円という資金を得ることはできるでしょう。でも、それはいい関係とは言えません。
 私は、企業における研究と大学における研究の役割が何なのかを明確に意識することが重要だと思っています。
 財団を運営している中で、大学に基礎研究を望んでいる企業がたくさんあるということを知りました。
 昔は、企業にも中央研究所のようなものがあり、自分たちで基礎研究も進めていました。しかし今は、基礎研究をやるような企業はほとんどありません。
 「その人は本当にテレビを見ているのか」が分かる、驚きの技術
 大学は企業にできない基礎研究を進め、企業はそこから自分の目で使える知識や技術を見定め、引っ張り上げることが仕事なんです。
 大学発ベンチャー
 大学発ベンチャーの累計数。2010年代後半から急激に数が増えている。
 出典:令和2年度産業技術調査事業「研究開発型ベンチャー企業と事業会社の連携加速及び大学発ベンチャーの実態等に関する調査」大学発ベンチャー調査調査報告書
——短期的な製品開発のような形での連携は本質的ではないと?
 大隅大学発ベンチャーなどで成功する事例がたくさん出てきていることはもちろん歓迎すべきことです。それはそれで進めれば良いと思います。
 ただ、初めに(前編参照)お話した「人材の育成」という意味では、大学も企業も利害関係は一致しているんです。企業も意欲的な学生に来て欲しいはずです。
 今は、
 「すごく優秀だと思って採用したけれども、言われたことを淡々とこなすだけの学生が増えている」
 と耳にすることが多いんです。
 企業が単にお金をつぎ込んで自分たちの利益を求めるのではなくて、企業との関わりによって大学の研究力がアップする。そこで育った人材が企業に加わることで、企業の研究力もアップすることにつながる。
 そういう関係を築くのが理想だと思っています。
——基礎研究への投資が、まわりまわって企業にとっても利益になるということを認知してもらう必要がありそうですね。ただ、企業がそのような支援をできるかどうかは、経営環境とも関係する難しい問題ではないでしょうか。
 大隅:各企業の内部留保金はものすごく大きいので、大胆に踏み出せないのは考え方の問題だと思います。
 海外の企業で成功例が出てくれば、日本でも風向きが変わるかもしれませんね。
 私自身、独立した直後、研究費が非常に少なかった頃に、ある企業から研究会へ誘われました。そこでは「発酵」の面白さを学ばせていただき、何年かにわたって研究費を200万円ずつ頂きました。
 それはとてもありがたかったし、私との議論の間で彼らは「とても儲からせていただいた」と仰っていました。
 そういう関係がね、私は理想なんじゃないかと思います。
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