🍘40〗ー1ー有能な官僚はモラハラ政治家に嫌気をさして早期退職者していく。~No.123No.124No.125 

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 2023年5月20日 YAHOO!JAPANニュース ニューズウィーク日本版「「そして誰もいなくなる」日本の官僚
 <個人的な要求が通らないと予算承認を妨害してくる議員、役人を怒鳴りつけてせいせいしたいだけの人々......社会が変わらなければ官僚の仕事も変わらない>
 中央官庁からの人材流出が懸念されている STANISLAV KOGIKUーSOPA IMAGESーLIGHTROCKET/GETTY IMAGES
 中央官庁の官僚に早期退職者が増えている。自己都合で退職した20代の総合職は2019年度には86人。13年度は21人だった。昨年9月、河野太郎デジタル相は、中央官庁の人材流出に危機感を示し、「霞が関の崩壊が始まっている」と述べた。政治家、マスコミに罵られながらの連日の超過勤務では、やる気も湧かず、家庭も成り立たないというわけだ。
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 そこで政府は、まず勤務条件の改善に取りかかった。人事院の研究会は、勤務終了後から開始までに原則11時間の間隔を義務付ける案などを提案した。だが、役人OBとして、そのような措置は実現できない、と思う。夜中の3時に退庁して数時間寝た後、9時には登庁することもある職場で、11時間の休息!? それより、勤務時間が長くなる理由を分析して改善する──こういう姿勢でなければ物事は動かない。
 背景には、日本が連絡と調整を重視する社会なので国会議員などに「ご説明」する機会が多いこと、国会では議員が大臣などと大所高所の議論をするのではなく(欧米の議会では大抵そうなっている)、細部を答えさせて揚げ足を取ろうとする場合が多いこと、予算作成時期には財務省主計局の主査クラスから資料の提示を夜中でも至急に求められることなどがある。
 それぞれ必要なことだ。財務省も少人数で予算請求を精査しているので、きれい事は言っていられない。しかし非合理なことも数多い。省庁の課長級を説明に呼び付けたことで得意になる議員、首相や大臣が国会での質疑応答で立ち往生しないよう(一晩での)資料作成、翌朝早くの説明は日常茶飯事。自分の抱える案件に予算が付かないと困るので、夜遅くまで待機し、主査から電話があれば飛んで行く。所定の超過勤務手当は出ない。
■官僚は永遠の存在ではない
 それでも、役に立つこと、面白いことで超過勤務するなら構わない。外務省の場合、交渉事や要人の外国訪問の前は事務が集中するので、課長は椅子の上、課員は事務机の上やソファで仮眠するのはざら。それでも懸案が片付けば達成感があったものだ。
 嫌だったのは、個人的な要求が通らないと外務省予算の国会承認を妨害したり、省庁幹部にねじ込んで担当者の更迭を迫る議員。あるいは、一部で不正を働く役人が発覚すると、省全体で不正をしているかのように決め付けられ、罵られることだ。
 <AIを活用すれば役所の事務は大幅に整理される>
 「役人は偉い」、あるいは「役人は上意下達、命令一下で機械のように動く」と思っている人が多いのも問題だ。多くの省庁では上下の間で議論はあるし、多くの政策は上意下達よりもボトムアップ、つまり事務方で情報を集めて分析し、上司と議論しつつ練り上げていくやり方なのだ。だから、その「偉い」役人を怒鳴りつけてせいせいしたいだけとか、上から圧力をかければ動くだろうと思っている人々には、腹が立つ。
 つまり、社会の在り方が変わらないと、役人の勤務条件は変わらない。一律に休息時間を決めても、それを実行するのは難しい。案件を熟知し、連絡・協議先を把握しているのが1人しかいなければ、3~4時間の睡眠でまた出勤せざるを得ないだろう。
 官僚は永遠の存在ではない。今の国家の在り方も永遠ではない。先進国では人種、民族が混交し、今や多民族を超え「雑民族国家」化している。政府の世話にならずともやっていける個人にとって、国家や役人はもはや旧時代の存在だ。事務に人工知能(AI)を活用すれば、役人の事務は大幅に整理されるだろう。
 今の体制での勤務条件の改善もだが、時代の変化を考慮した議論が必要だ。
 河東哲夫(外交アナリスト)
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 2021年10月19日 日経ビジネス「残業地獄だけでない 「キャリア官僚」が不人気になった理由
 長時間残業のひどさが、「霞が関」不人気の大きな要因に……(写真=PIXTA
 「省庁の残業代 18%増要求 環境省47%増・厚労省34%増 長時間労働浮き彫り 来年度予算」。こういうタイトルの記事が、朝日新聞の10月8日朝刊で1面トップを飾った。
 もう30年以上前のことになるが、筆者は社会人生活のスタートで2年間だけ、霞が関の中央省庁でキャリア官僚として働いた経験がある。当時のことを思い出して感慨深かった。
 記事によると、2022年度予算案の編成に向けた概算要求で、主要な中央省庁の残業代(超過勤務手当)要求額を集計してみたところ、前年度の当初予算に計上された額より18.4%も多い約385億円になったという。
 「首相官邸が残業代を労働実態にあわせて支払うように各省庁に指示したことが背景にある」「実態にあわせた要求の急増は、いわゆる『サービス残業』が横行していた可能性を示している」と、記事の最初の方に書かれていた。
 「……可能性を示している」ではなく、「……ことが強く示唆されている」といった書きぶりの方がぴったりではないかと、すぐに思ってしまった。同じように考える人は、霞が関で働いた経験のある人の間ではかなり多いのではないか。SNSやブログなどで見かける、匿名で発信されている中央省庁の勤務実態は、「国会待機」と呼ばれる非合理的な業務負担の重さを中心に、昔とほとんど変わっていないように見える。
 筆者の昔の経験では、中央省庁のサービス残業は、いわば当たり前だった(むろん、民間企業も含めてそれが暗黙の了解になっている、古い時代だったとも言えそうなのだが)。出勤時間は民間企業に比べるとかなり遅めだが、年末にかけての繁忙期になると、毎日終電で退庁するような日々を過ごしていた。
 残業時間の記録簿は「フィクション」
 そして、残業時間の記録簿は「フィクション」であり、年度の予算上で許容される上限以内に収まるよう、日々の退勤時間を調整して記録していた。その際に上司の1人から言われたことを、今でもはっきりと覚えている。
 「予算を握っている大蔵省(当時はまだ財務省に改称される前だった)は残業代が満額出るけど、他の省庁は予算がある範囲内でしか残業代は出ないんだよ」
 学生時代のアルバイトではむろん、そんなことはあり得なかった。おかしな話だと思ったものの、社会の厳しさとはそういうものなのかと、自分を納得させた瞬間でもあった。
 その頃、ある都市銀行に就職していた高校時代の1年先輩から話を聞く機会があり、勤務実態を尋ねてみた。彼が言うには「勤務先である支店のシャッターが開くより前から仕事をしておかないと回らないから、近所の喫茶店に入って早朝から仕事をするのが普通だよ。ビルの警備員さんがカギを開けてくれたらお店に入り、デスクで仕事を続けるんだ」。
 なるほど、民間会社でもサービス残業はあるのかと、妙に納得して安心した思い出がある。誤解のないようにあらためて確認しておくが、これは30年以上も前の話である。
 そして、朝日新聞が掲載した省庁別の要求額の表を見ると……やはりと言うべきか、1つの明確な特徴が見て取れた。財務省の22年度要求額(本省分)は「24.7億円(21年度当初予算比の増加率はプラス0.3%)」となっている。この「プラス0.3%」という増加率が、他の省庁と比べて、目立って低いのである。霞が関勤務時代に筆者が先輩から聞いた話が、間接的に裏付けられた形である。
 誤解のないように付け加えると、当時の大蔵省はあまりにも過酷すぎる激務で有名だった。特に年末にかけての「予算の季節」には、1週間くらい自宅に帰れない人もいると言われていた。中庭の同じ場所で2年続けて飛び降り自殺者が出たという話もあったくらいである。
 昔はチェックが緩かったのでよく他の省庁の食堂に出入りしていたのだが、大蔵省の地下の食堂は、夜遅くでもいつもにぎわっていた。自宅に帰る前ではなく、これから夜中まで仕事をするためのエネルギー補給で、食事をしていたわけである。
 ちなみに、財務省の次に増加率が小さいのは農林水産省(プラス6.3%)で、その次が法務省(プラス8.5%)である。一方、増加率が大きいのは順に、環境省(プラス47.4%)、厚生労働省(プラス34.6%)、総務省(プラス32.0%)、内閣府(プラス28.0%)、国土交通省(24.8%)、文部科学省(プラス22.9%)などである。
 記事によると、財務省は今回の各省庁からの残業代増額要求について「業務が十分効率化されているかなどを精査した上で、必要な残業代の増額には応じる見通しだ」という。国家公務員の世帯にとっては、とりあえず良い話である。
 しかし、中央省庁の長時間・深夜労働などの厳しい実態までが、今回の動きによって変わってくるわけではない。また、本来もらえるはずのお金が22年度からはしっかりもらえるという話であり、21年度以前に遡及してサービス残業分の賃金を取り戻せるというわけでもない。国家公務員は、労働基準法の適用対象外である。
 なぜ優秀層から人気がなくなったのか
 霞が関の中央省庁に職を求めようとする優秀な学生が目立って減少したと言われ始めて久しい。その間、民間企業では「働き方改革」が着実に進められている。官庁と民間を比べた時に民間を選ぶ人が増え続けると、公務員の「質」の低下が進みかねない。近年、国会に提出される法案などの記載ミスが多発して国会でも一時問題になったが、その原因について考えてしまうこともある。
 上記の記事には、国家公務員の「サービス残業」の解消に政府が動き始めた理由として、「民間企業で働き方改革が進むなか、残業を理由に官僚になるのを避ける人が増え、採用にも支障が出始めているからだ」と書かれていた。もっとも、ある省で働く30代の男性キャリア官僚は、そうした動きについて、「マイナスがようやくゼロになったイメージだ」という、実にドライなコメントをしていた。
 さらに言えば、キャリア官僚を志望する優秀な学生が目立って減少している大きな理由の1つは、渡り鳥的なパターンも含む「天下り」による生涯所得の最終局面での上積みという一発逆転的な人生コースが、世間の批判を浴びてほぼ完全に閉ざされる方向になったからだと、筆者は以前から考えている。
 官僚OBでそうした見方を口にする人は、筆者のほかにもいる。民間の名のある企業に比べると、中央省庁で過酷な勤務実態に耐えている公務員の給与水準は、はっきり言えば一段も二段も低い。
 大手商社に就職した妹の1年目のボーナスの額に、キャリア官僚2年目だった筆者は驚がくしたものである。そして筆者は、金融市場の「魔力」に加え、給与水準の相対的な高さにも引き寄せられて、霞が関に満2年務めた時点で都市銀行へと転職することになった。
 当然とはいえ金銭面の利得に大きな期待ができず、政治主導の世の中になって官僚の持つ力にも陰りが出ているとなると、難しい試験をパスする必要もある中央省庁のキャリア官僚は志望しない、という話にもなりかねない。
 どんなに給与で民間企業より劣位であっても、また勤務実態がより過酷であっても、お金もうけといった私利私欲ではなく公共の利益のために働くことが生きがいだというような高邁(こうまい)な志を持っている人の数がすごく多ければよいのだが、現在の日本では逆に、かなりの少数派だろう。
 高邁な人の数が多ければいいが……
 そんなことを考えている時、公務員志望者が減っている原因を探る調査が実施されるというニュースが飛び込んできた。人事院が、21年の就職活動を終えた大学生らを対象に、国家公務員を志望しなかった理由を尋ねる実態調査を10~11月に実施する。
 21年春に実施された国家公務員採用試験で、幹部候補となる総合職(大学院修了・大卒程度)の申込者数は5年連続で減少しており、今回は過去最少の1万4310人。コロナ禍で地方出身者が地元での就職を望んだという事情や民間企業との人材の奪い合いという事情もあるが、長時間残業など中央省庁の「負のイメージ」も影響しているとみられると、時事通信は報じた。人事院がどのような回答選択肢を設けて、どこまで学生の本音に迫ることができるのか。筆者としては興味津々である。
 いずれにせよ、霞が関が今後どのように変わっていくかは、日本の将来に影響してくる。民間企業ですでに働いている人も含めて、決して人ごとではないように思う。
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