🦋5〗─2─失われた30年の原因は「コストカット」と「海外投資」だった。平成元(1989)年~No.12 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 収益悪化に苦しむ日本企業は、グローバル・アナリストの発言やメディアの起死回生報道を信じて、未来の為のイノベーションと現状のリノベーションを放棄し、日本人従業員を経営を悪化させるリスク要因としてリストラし、国際競争力強化の名目で国内工場を海外に移転させ安価な現地労働者を雇い国内産業の空洞化を悪化させた。
 団塊世代の経営者は、日本を衰退させ崩壊させようとするアナリストやメディアの狂言鵜呑みにして、民族の歴史的伝統的文化的宗教的家族的「忠誠心・愛社精神・滅私奉公」の忠臣蔵社会体質を日本から消し去り、社員を助ける運命共同体会社を社員を助けないブラック会社へと改悪して行った。
 そうした彼らこそが、超エリート層と言われる高学歴の政治的エリートと進歩的インテリ達である。
   ・   ・   ・   
 2023年5月15日 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン「なぜ「失われた30年」を止められなかったのか…経産省が「結果を出せなかった」と反省するバブル崩壊後の誤算
 1990年代以降、日本は成長できない国になった。世界1位だった国際競争力は34位に転落し、日本人の給料は30年も横ばいの状態が続いている。「失われた30年」はどこかで止められなかったのか。経済産業省で産業政策を取り仕切る飯田祐二・経済産業政策局長に聞いた――。
 【図表】IMD世界競争力ランキングの推移(1989-2022)
■「失われた30年」の原因はどこにあるのか
 ――なぜ日本は成長できない国になってしまったのでしょうか。
 過去30年間、日本経済の成長は低迷しています。潜在成長率は3%台から1%未満になり、かつて世界1位だったIMD世界競争ランキングは34位(2022年)になり、国際競争力も低下しています。
 私は入省して34年目ですので、よく言われる「失われた30年」は自分のせいじゃないかと思う部分もあります。いろいろ手を打ってきたのですが。
 90年代以降、様々な制約を取り払い企業間の競争が活発になれば経済が活性化すると考え、規制緩和などの構造改革を実施してきました。それまでの特定産業の育成を目的とする政策から、規制緩和や減税など市場環境を整えることを目的とする新自由主義的な政策へと転換していったわけです。
 ところが、そうした政策は結果として期待通りにはいきませんでした。経済成長は停滞し、給料の上がらない国になってしまいました。規制を取り払えば企業は元気になり、うまくいく――。そういうわれわれの考え方、環境づくりが結果につながらなかったのだと思います。
■「コストカット」と「海外投資」で活力を失った
 ――新自由主義的な産業政策で日本はどうなったのでしょうか。
 実はここ10年ほど、日本の資本金10億円以上の企業は売上額がほとんど変わっていません。内訳を見ると売上原価が下がって利益が増えている。つまりコストカット型になっているんです。
 本来なら、経済回復に向けて新しいことに挑戦していかなければいけなかった時期に、日本全体が、特に国内においてコストカットの方向に進んでしまったのです。
 その一方、日本企業は海外にどんどん投資をしていきました。96年末に31兆円だった対外直接投資残高は、2021年末時点で229兆円に拡大しています。
 なぜ日本企業の投資先は国内ではなく海外だったのか。それは収益率が高かったからです。国内企業のROA(総資産利益率)は3~4%程度でしたが、対外直接投資の収益率は6~8%程度。企業にとっては海外に投資することが合理的な選択だったのです。
 日本は人口減少だけでなく、円高や電力不足といった「6重苦」に直面していました。企業には、今後も高い成長が見込める海外のほうが魅力的だったのです。投資減税や立地補助金を設けて国内投資を呼びかけてきたのですが、思うように効果を上げられませんでした。
 問題は、海外投資の収益が現地で再投資されることが多く、国内の賃金上昇や労働生産性の向上に結び付かなかったことです。これが失われた30年の大きな要因となりました。
 こうした日本経済の悪循環に大きな危機感を抱いてきました。だからこそこれまでの新自由主義的な政策に代わる新機軸が必要となったのです。
新自由主義の失敗から生まれた「新機軸」
 ――「新機軸」とは何でしょうか。
 これまでの産業政策は、市場機能が重視され、官は民の邪魔をしないことに徹していました。官の役割は企業が活動しやすい市場環境を整えることだったのです。
 こうした考えを改め、社会・経済の課題解決に向けて、官も一歩前に出て大胆な国内投資を呼び込もうとするのが「新機軸」です。
 すでに米国・欧州連合(EU)を含む世界各国ではグリーン・デジタル分野などを中心にこれまでにない産業政策で国内・域内投資の喚起策を次々と打ち出しています。
 例えばアメリカのインフレ削減法です。予算規模は4330億ドル(約58兆円)、名前はインフレ対策ですが中身は大半が国内投資の喚起策です。例えば、EVの組立工場を国内に誘致するため、EV税額控除の対象を「北米で組み立てられたもの」に限る立地要件を設けています。
 欧州連合(EU)は、脱炭素政策やデジタルへの移行を進めるため1.8兆ユーロ(約256兆円)の大型予算を組み、電池や半導体などのサプライチェーンの欧州回帰を進めています。気候変動問題を主導しつつ、製造業の中国依存・デジタルの米国依存を低減させようとしています。
 人口減少が続く日本でも、挑戦しがいのある分野があります。①炭素中立型社会、②デジタル社会、③経済安全保障、④新しい健康社会、⑤災害に対するレジリエンス社会、⑥バイオモノづくり革命の実現という課題は、今後の成長市場と言えるでしょう。
 世界的な社会課題を起点に、企業の投資先として日本が積極的に選ばれるような、長期持続的な成長が見込める魅力的な市場環境をつくり、将来期待を高め、国内投資やイノベーション、国民の所得向上につなげる――。これが新機軸の大きな考え方です。
■企業の「国内回帰」の動きが始まっている
 ――経済安全保障も「新機軸」の一つなんですね。
 そうです。私たちは昨年、台湾のTSMC熊本県に建設する新工場の整備費用として、最大4760億円の補助金支給を決めました。日本国内に半導体の生産場所を確保できたことは、経済安全保障上とても大きな意義があると思っています。
 工場建設だけではありません。これが地域活性化や人材育成、経済全体の底上げにもつながっています。すでに九州エリアには約1000社が集まり、半導体を核にした広範囲なサプライチェーンができています。関連の製造品出荷額は約1.5兆円。全国シェアの4割を占めるようになりました。
 地域に雇用を生み出し、賃金アップを牽引する役割も果たしています。半導体生産のためのデジタル人材を育成しようと、地元に専門の学科や学校を作ろうとする動きも出てきています。国内投資によって経済の好循環が生まれる「新機軸」の成功事例になっています。
 今後は、日本の「Rapidus」(ラピダス)のほか、蓄電池分野にも支援を行う予定です。九州だけでなく、このモデルを全国に広げていくことで日本を再び成長できる国にしていきたいと考えています。
■「安い日本」は最大のチャンス
 ――30年間も低迷した国内投資がそう簡単に増えるでしょうか。
 これまで投資減税や立地補助金など、企業の国内投資を増やそうと一生懸命手は打ってきました。何もしてこなかったわけではありません。でもそれだけでは足りなかった。
 少子高齢化が進む日本より、経済成長率は海外の方が高いわけです。中国だけでなく、米国やEUが大きな予算を組んで国内に工場を作れば有利になる仕組みを作っています。そこで「補助金を準備したのでどんどん日本に投資してください」と呼び掛けるだけでは、企業が日本に戻ってくるメリットは薄いのだと思います。
 しかし近年、多くの日本企業が国内投資に意欲的になっています。続々と国内生産を強化する方針が公表されているんです。
 2023年3月の企業短期経済観測調査(日銀短観)によると、2022年度の設備投資計画実績見込みは前年度比+11.4%と同時期としては過去4番目の高水準の伸び率となっており、2023年度の見通しは同+3.9%と同時期としては過去最高となっております。国内回帰が進む理由は4つあると思います。
■国内回帰が始まった4つの理由
 第一に、日本人の人件費が相対的に安くなってしまったということ。日本企業の部長級の平均年収はタイと比較して約120万円少ないというデータもあり、優秀な人材に適切な報酬が支払われていない状況です。日本の大卒者平均初任給(ボーナス込み、年収)は351万円で、米ニューヨーク州最低賃金でフルタイム労働をした場合の年収397万円を下回るほどです。
 第二に、コロナ禍やウクライナ戦争に端を発した供給制約の拡大です。以前は安い場所でモノを作ることが企業にとって一番でしたが、不確実性が高まったことで海外進出のコストが大きくなりました。経済安全保障の観点からも、安定した日本国内に生産拠点を移そうという動きにつながっているんです。
 第三に、洋上風力やバイオテクノロジーといった国内の新しい成長分野に投資する企業が増えたこと。そして第四の理由は、この30年で日本が「安い国」にかわったこと。1990年代の日本は物価高・円高で、国内外の価格差は大きくなるばかりでした。しかし20年以上デフレが続き、賃金や物価が上がらない状況が続きました。足元では急激に円安が進み、海外から見ればすべてが安くなってしまったのです。
 国内投資(名目設備投資額)が100兆円を超えたのは、バブル経済だった1991年度の1回だけ。ところが2027年度に再び115兆円を超えることを目標とする民間の動きが出ています。投資環境がそろっているという意味では、まさに今がチャンスなんです。
■日本が出遅れたら、見捨てられる可能性がある
 国内回帰が進みつつあるとはいえ、企業が活動しやすい環境だけでなく、魅力的な市場がなければ企業は海外に行ってしまいます。日本が他国に比べて魅力的な投資先であることが必要です。
 日本も米国やEUのような大規模な国内投資喚起策を打たないと、特にグローバル化できる力を持っている企業には見捨てられてしまいます。
 日本が安くなっている、諸条件がそろっている今こそが最大のチャンスであり、同時に最後のチャンスでもあると、そう思っているんです。ここで企業にしっかり国内投資や賃上げをしてもらう、国はそれに必要な環境や原資を確保できるよう対策を打つ、これが不可欠だと考えています。
■日本には大きなポテンシャルがある
 ――今後の日本の成長エンジンはどの分野でしょうか。
 半導体や蓄電池といった分野に加えて、脱炭素社会と経済成長の両立をめざす「グリーントランスフォーメーション」(GX)が成長エンジンのひとつになると思っています。今後10年間官民あわせて総額150兆円を超える投資を実現することを目指し、自動車や鉄鋼、化学、再生可能エネルギーなど22の分野で工程表をまとめています。
 気候変動対策として米国ではインフレ削減法において10年間で約3690億ドル(約50兆円)の国による投資支援を、EUは10年間で官民あわせて1兆ユーロ(約142兆円)の投資実現を表明しています。日本は両者に比べて遜色のない規模になっています。
 GX実現に必要な技術は日本にたくさん眠っています。特に化学や機械、自動車などのメーカーには大きなポテンシャルがあると期待しています。GXはコストも時間もかかりますし、すぐに結果が出るわけではありません。民間企業だけでは難しいこの分野に市場をつくり、投資を活性化させるのが私たちの役割です。企業に任せきりにするのではなく政策を通して後押ししていく考えです。
 また、経産省では「サステナビリティトランスフォーメーション」(SX)を進めています。長期的かつ持続的な企業価値の創造に取り組んでいる企業を選定する「SX銘柄」というものもつくります。投資家にこの部分に目を向けてもらって、市場のプレッシャーをもって多くの企業にSX経営を取り入れてもらおうということですね。
■スタートアップが日本を復活に導く
 ――新機軸ではスタートアップを重視しています。その理由を教えてください。
 私は以前から、スタートアップは日本経済にとって非常に大事であり、国として応援しなければいけないと思っていました。昨年「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、スタートアップへの投資額を2027年度に現在の10倍以上の10兆円規模にする目標を定めました。
 挑戦する企業がどんどん出てこないと、日本に新しいものは生まれません。ですから彼らが目の前にある課題に対して自由な発想で取り組めるような環境をつくることが大事です。
 そのためにも、人材も資金力も豊富な大企業がスタートアップと積極的にコラボレーションしていくべきだと思います。日本企業では研究開発を自社内で行う「自前主義」の文化が根強くあります。日本経済の復活には、社外組織と連携して、外から良い技術やアイデアを取り入れる「オープンイノベーション」が不可欠です。
 製薬業界など一部では大企業とスタートアップの連携が進んでいますが、もっと多くの業界に広がってほしい。われわれもオープンイノベーション促進税制などでこれを推し進めていきます。
 日本企業の中でイノベーションが生まれにくくなってしまったのには、90年代の新自由主義的な政策の影響もあるかもしれません。バブル崩壊で、企業は一気に保守化していった。リストラの嵐が吹き荒れる中で国が「自由に挑戦してください」と言っても、状況として難しかったんだと思います。このときにしっかり手を打つべきだったという思いがあります。
 だからこそ国が前に出て、民と一緒に社会課題の解決に向かって一緒になってやっていく新機軸に大きな意味があるのだと思います。
■「最大で最後のチャンス」を逃してはいけない
 ――新機軸の今後の展望について教えてください。
 新機軸のもう一つの柱は、日本の社会経済システムの基盤、つまりOSを組み替えることです。これは私たち経済産業省自身も同様です。
 「100点を取るまでやらない」という役所的な考え方のままでは、世界との差が開いていくばかりです。大事なことは走りながら考えること。新機軸ではEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:証拠に基づく政策立案)の重要性を強調しています。失敗を恐れず、データを活用し政策効果を適宜検証しながら政策を進めていく必要があります。
 挑戦にはリスクが伴いますが、海外の国々はすでに企業に任せきりにせず、官民が一緒になって挑戦する新しい産業政策を進めています。日本が失われた30年を取り戻すには今が正念場。最大で最後のチャンスです。私たちはこの「新機軸」をもとに、国内投資の拡大、イノベーションの加速、国民所得の向上の3つの好循環を実現させ、日本を再び成長できる国にしたいと思っています。
 経済産業政策局長 飯田 祐二 構成=辻村洋子
   ・   ・   ・