🌌14}─5・C─地球上には食糧生産に使える土地はもう残っていない。地球温暖化と大地の砂漠化。〜No.61 

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 2023年3月20日 YAHOO!JAPANニュース Forbes JAPAN「食糧生産に使える土地はもう残っていない?
 80億超の口をまかなう注目の肥料 photo by shutterstock.com
 人口減少のニュースを耳にすることの多い日本国内ではあまり実感する機会は少ないかもしれないが、世界の人口は80億人を超え、現在も増え続けている。来たる人口100億時代へ向かって、食料生産を増加させる必要性が指摘される反面、それに伴う土地や資源の不足や環境への悪影響などの課題も見受けられる。
 そこで、将来を見据えた食料の生産について、Soilgenic Technologies LLCのCEOであるJeff Ivan氏と立教大学サステナビリティ学部教授でSoilgenic Technologies LLC.の取締役も務めるPatricia Bader-Johnston氏に伺った。
■食糧生産に使用できる土地は残っていない
 まず、地球規模で、人類というものを見ることで現状を理解していきたい。地球上の生物のどの程度が、人類と人類に関係する生き物なのか、ご存じだろうか。
 Bader-Johnston氏は、以下のように語った。
 「地球上の生きとし生けるもののうち、質量でいえば 90%近くが人間やペット、牛、豚、鶏で占められています。 つまり、『野生動物』と呼ばれるものは 10%以下しか残っていないのです。現在、人間1人に対して牛が約2頭、人口が80 億人以上ですから、160億頭です。 2050年には人間の人口が 100 億人に達すると予想されているので、何頭分になるか考えてみてください。すでに、アマゾンの熱帯雨林の3 分の1以上が、主に牛の放牧のために伐採されています。地球上に残された耕作可能な土地は、地球表面の約9%に過ぎません。」
■地球環境に配慮した「農法」の見直しが求められている
 問題は土地の量だけにとどまらない。現在の農法では、環境への悪影響も指摘されている。
 Bader-Johnston氏によると、温室効果ガス排出量の24%は農法に起因するもので、 ニュージーランドのように歴史的に自然のままの川がある国では、酪農場の過剰な集中が、国内のほぼすべての川の窒素濃度を、安全とされるレベルよりも10%以上高くする原因となっているという。
 食料をどのように栽培するかに焦点を当てて考えてみよう。
 現在、農業の効率を高め、より少ない土地でより多くの食料を生産できるようにする、クライメート・スマート・テクノロジーや細胞培養による食肉生産などの限られた土地でより多くの家畜を飼育する必要性を減らすことができる技術も数多く出てきている。これは、将来の人口増加を考える上でも、気候変動を1.5 度以下に抑えるために、温室効果ガスを削減することに注力する上でも、注目に値するという。
 では、現在の農法がどのような流れで生まれ、どのような影響を与えてきたのだろうか。Ivan氏は次のように語った。
 「現代の農業は、土地がより多くの食料を生産できるようにする肥料に依存しています。元々、1800年代後半の農業用肥料は天然肥料でした。しかし、その供給は枯渇し、作物の収穫量は制限され、人口の増加とともに、世界は食糧不足でした。 何百万人もの人々が飢え死にする事態に陥ってしまいました。
 1900 年代初頭になり、アンモニアの大量生産を可能にしたハーバー・ボッシュ法と合成肥料の開発により、人類の人口は今日のような数まで増加することとなりました。 しかし、これら肥料は効率が悪く、環境に対する損失につながることもあります。
 現在、私たちはさまざまな問題に直面しています。 例えば、農業による温室効果ガスを考えた場合、排出量の70%は肥料に関連しています。生産と輸送で 40%、肥料の使用で60%。これは年間約12億5000万トンの温室効果ガスを排出していることに相当します。 窒素肥料を使用すると、土壌中のバクテリアによって安定した窒素が硝酸態窒素に変換され、この過程で亜酸化窒素(N2O)が生成されるのですが、この排出物は、C02の排出物の265倍もの温室効果等の威力を持ちます。
 さらに、肥料の非効率的な使用による窒素やリン酸の流出が水質汚染を引き起こし、水面下の生物を窒息させ、酸素を奪う有毒な赤潮の一因となっていることも分かっています。」
■新技術で農業界に変革をもたらす企業たち
 先のような課題が挙げられる中、従来の方法とは違う革新的な新技術で挑む企業がある。例えば、ハーバー・ボッシュ法とは別の形でアンモニアを生成するグリーンアンモニアという技術においてリードするアイスランドのATMONIA 社だ。
 Ivan氏によると、グリーンアンモニアは、風力、太陽光、水力などのグリーンエネルギーで製造され、製造過程でCO2を排出しないため、現在のプロセスで年間約5億トンの温室効果ガスの削減が見込まれるという。ATMONIA 社は、再生可能エネルギー、水、空気を利用してアンモニアを生成する、特許取得済みの触媒を利用したグリーンアンモニア技術を開発。最近では、触媒技術の開発にも成功し、中東のいくつかの国で持続可能なアンモニア生産にグリーンアンモニア技術を適用することでSABICと合意したことを発表した。
 また、窒素効率の改善に関しては、Soilgenic社が環境への影響を大幅に軽減する革新的な技術を開発した。Ivan氏は次のように語った。
 「国連は『持続可能な窒素管理に関するコロンボ宣言』を承認し、2030年までに植物の成長に必要な窒素の損失を50%削減することを求めています。 カナダやオランダなどの政府は、すでに窒素の温室効果ガス排出を30~70%削減する政策を実施しています。農業界は窒素の損失削減に努めていますが、大幅な削減は、効率向上肥料(EEF)技術を使用して肥料効率を向上させることに依存しています。
 窒素の損失は、地上ではアンモニアガスとして、地下では土壌細菌が窒素を硝酸塩という還元型の窒素に変換することによって起こります。この硝化の過程で、かなりの量の温室効果ガスが発生し、窒素は水路に流出する可能性があります。 窒素の損失の最大70%は地下で発生する可能性があるのです。
 Soilgenic社は、肥料の効率を高める40以上の特許を開発し、気候変動に対応した肥料を提供しています。この技術は、窒素を損失から守るだけでなく、最終的には生分解して肥料になります。 窒素が安定した状態で植物に供給され、同時に土壌から水路に溶け出すことがないため、地上での損失を最大96%防ぎ、温室効果ガス排出を最大90%削減することが可能です。
 また、その他にも、農業で使われている技術の多くに、土壌や水を汚染するプラスチックが使われていることも課題に挙げられます。政府の政策では、農業でコーティング剤として使用されるプラスチックを禁止し、代わりに環境に優しい生分解性の技術に焦点を当てる方向に進んでいます。Soilgenic社は昨年、こうしたプラスチック技術の代替となる生分解性コーティング技術でも特許を取得しました。
 肥料の効率を上げることで、植物がより多くの窒素を吸収できるようになり、農家は作物の収穫量を増やすことができます。これは、人口が増え続けている今、重要なことです。 この1年で地球上の人口は80億人に達し、2050年には100 億人になると予測されています。つまり、成⻑する世界を養うためには、食料生産を50~70%増加させる必要があるのです。
 この1年、私たちは物流の遅れによる食料安全保障の課題だけでなく、ロシアとウクライナの戦争による課題も見てきました。 世界の人口の半分は合成窒素によって維持されており、合成窒素がなければ食料安全保障は危うくなります。 世界では3人に1人が中程度から重度の食糧難に陥っており、7億7千万人が栄養失調に苦しんでいます。 2015年以降、飢餓は増加の一途をたどっており、世界人口の8%が飢餓に直面していると言われているのです」
■100億人という人口を前にして、私たちは合成肥料を使うか、人を養うかの選択を迫られている
 最近では健康志向な方も増え、オーガニック農法に基づいた食品を買い求める人々もいるが、人口増加という観点から見るとどうなのだろうか。
 Bader-Johnston氏は「初期の農業はすべてオーガニックでしたが、当時使われていた肥料の栄養価が低かったため、作物の収量は貧弱でした。有機はとても重要なのですが、現在使われている有機肥料の大部分を占める下水をリサイクルした汚泥には、大量のマイクロプラスチックやその他の化学物質が含まれていることが判明しています。これらが植物に吸収され、私たちはそれを消費しているのです。
 また、100 億人を養うために必要な膨大な量の作物を、有機物を施し、地域の再生農法を用いるだけで育てられると考えるのは、かなり困難なことです。100億人という人口を前にして、私たちは合成肥料を使うか、人を養うかの選択を迫られています。 もし、合成肥料の製造につきものの問題、つまり排出ガスをなくし、プラスチックを使わず、土壌の健康を損なわず、 水系への窒素の流出をなくすことができるならば、効率向上肥料(EEF)はかなり説得力のある製品ではないでしょうか」と語る。
■効率向上肥料(EEF)の導入は簡単なのか
 ここで気になるのは効率向上肥料(EEF)の導入の難易度だ。せっかくの良い技術も、地球規模の課題解決をするならば、広まらなければならない。
 Ivan氏は、Soilgenic社の技術は肥料のコーティング剤や添加剤として簡単に導入できるという。特許により、肥料製造の上流工程で処理を可能にしたことで、 低コストの「気候変動対応型窒素肥料」ができあがった。これを他の肥料と混ぜて農家に販売することで、農家は、見た目も扱いも従来のものと変わらない肥料を手に入れることができる。ただし、温室効果ガスの発生は90%少なく、土壌の種類や農法にもよるが、平均16%収量が増加する。農家にとっては、投資に対して6倍のリターンが得られると同時に、環境にやさしい肥料を使用できるようになり、プラスに働くというのだ。
 また、肥料工場に追加するのは簡単で、生産工程で効率向上技術を肥料に吹き付けるだけでよく、すべての尿素窒素工場で、この技術を簡単に採用し、クライメート・スマート窒素を実現することができるという。Soilgenic社は、年間 700mmt にのぼる肥料からの温室効果ガス排出を削減するための、迅速かつシンプルなソリューションを、各国政府が非常に迅速に行動し、これをすべての肥料に義務付けることを望んでいる。
 Bader-Johnston氏は「私が最も気に入っているのは、私たちにその意志があり、政府がそれを義務化するために行動すれば、世界中に大きな影響を与えながらすぐに実行に移せるという点です。 気候変動対策の世界では、『ムーンショット』と『アースショット』についてよく話題にします。これはまさにアースショットです。大きな変化を迅速にもたらすとともに、今ある農地で 100 億の人々を養うことができる現実的な道筋を示すものであり、脆弱な淡水システムを保護することもできるのですから。」と語った。
■窒素効率改善の最前線を走るSoilgenic社の今後のビジョン
 最後に、Soilgenic社の今後の展望について、Ivan氏に伺った。
 「私たちは、温室効果ガス排出量と環境への影響を低減する技術の集約と開発に重点を置いています。また、土壌に作用して栄養分の吸収を高めながら土壌の健康を増進させるバイオ活性剤などのバイオ技術にも力を入れています。ナノテクノロジーは、栄養塩の利用率の向上から農業投入物の削減まで、農業の効率化に大きな役割を果たすでしょう。ナノテクノロジーは農業の発展分野であり、Soilgenic社は新しい革新的な技術の開発において重要な役割を担っています。
 グリーン肥料技術は、肥料生産の改善と温室効果ガス排出量の削減にもつながります。 この分野は、窒素の温室効果ガス排出削減のための完全なソリューションを提供するために、私たちが開発したい大きな分野です。
 その他では、アクアムのような空気から水を作る (AWG)技術は、世界中で水不足が大きな問題となる中、農業の分野で重要な役割を果たすと思われます。 AWG技術は農業の大きな課題を解決するものであり、農業をより効率的かつ持続可能なものにするための大きな技術革新であると言えます。」
 人類が自然環境と共存していくために、クライメート・スマート・テクノロジーを有し、現状改善に働きかける企業たち。彼らは、将来訪れるであろう人類の課題を自分事として捉え、具体的な解決に取り組んでいる。彼らが何をどのように解決しようとしているのかを理解しようとすることが、人類共通の課題について考えるきっかけになると嬉しい。私たちの多くは人口問題や環境問題の専門家ではないだろうが、だからといって無関心でいるわけにはいかない。
 森若 幸次郎 / John Kojiro Moriwaka
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