⚡44】─1─さらば「日本製」…まもなく日本の「基幹産業」がどんどん消えてなくなる!〜No.216No.217 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2021年3月24日 YAHOO!JAPANニュース 週刊現代「さらば「日本製」…まもなく日本の「基幹産業」がどんどん消えてなくなる!
 自動車、製鉄、電機…ぜんぶ終わる
 週刊現代講談社
 月曜・水曜発売プロフィール
 戦後日本をグイグイと引っ張り、何百万、何千万もの国民を食わせてきた基幹産業が見る影もない。時代は流れ、「日本製」の文字から往時の輝きはとうに失われた。現場ではいったい、何が起きているのか。
 火が消え、人が消えた
 「ねえちゃん、いいちこもう一杯くれんか!」
 汗と油で顔を光らせた男たちが、煤けた作業着姿で大声をあげる。1600℃の高温で大量の鉄鉱石を溶かし、月に数百万トンの鉄を錬成する「高炉」の周辺は、気温50℃にも達する。
 三交代制で働く彼らは、仕事が終わると昼夜となく街の角打ちに繰り出し、イワシを糠味噌で炊いた塩辛い「ぬかだき」を肴に焼酎を呷るのだった―。
 鉄の街・福岡県北九州市ではかつて、そんな風景がそこかしこで見られた。昔を知る同地の日本製鉄OBが言う。
 「製鉄労働者を乗せて九州東部を縦断する日豊本線の車両はいつも混み合っていて、床一面タバコの焦げ跡だらけでした。
 小倉の繁華街には飲み屋だけでなく立ち食いうどん屋、パブが所狭しと並び、毎晩ごった返していた。ヤクザもいたし、諍いも毎日のように起きていましたが、血気盛んな労働者たちがこの街の経済を回していたのです」
 '80年代には、北九州市の鉄鋼製品出荷額は年間1兆円を誇った。鉄が無数の人の暮らしを支え、地域を潤していたのだ。
 だが令和を迎えた今、その面影はない。昨年夏には、日本初の製鉄所・官営八幡製鐵所に源流をもつ歴史あるこの地で、またひとつ高炉の火が消えた。製鉄最大手の日本製鉄が、所有する2基のうち1基の休止を決めたのである。
 「6基の高炉がフル稼働し、10万人を超える人々が働いていた八幡地区も、現在は高炉1基に3000人が従事するのみ。北九州では、もはや『鉄の時代』は終わりを告げているのです」(前出・日本製鉄OB)
 この数年、北九州市は全国でもワーストの人口減少数を記録している。製鉄業という最大の強みが崩れ、街全体が徐々に地盤沈下しつつあるのだ。
 こうした事態は、他の地域でも起きている。日本製鉄は'23年までに茨城県鹿嶋市和歌山県和歌山市広島県呉市にある各製鉄所の閉鎖や高炉の休止に踏み切る。さらに業界2位のJFEホールディングスも、神奈川県川崎市保有する高炉1基の休止を決めた。
 コロナ禍以前から日本の粗鋼(加工前の鉄)の生産量は低落を始めていた。一昨年にはリーマン・ショック直後の'09年以来10年ぶりに1億トンを割り込み、昨年には8319万トンと、なんと半世紀前の'69年と同水準にまで低下。戦後日本を牽引してきた製鉄業界に、かつてない異変が起きているのは間違いない。
 日本製鉄社長の憤怒
 製鉄大手のみならず、その足元の二次メーカーも体力を失いつつある。
 茨城県かすみがうら市では近年、小学校の統廃合が相次いでいる。同地に大規模な拠点を置くワイヤー製造メーカー・東京製綱の業績が'10年代以降低迷し、従業員数が減り続けていることが、その理由のひとつだ。同社の関係者が言う。
 「この10年ほど霞が浦の人口は右肩下がりを続け、商店も潰れてゆく一方です。うちは創業から100年以上が経っていますが、ずっと物づくり一筋で営業やマーケティングが大の苦手。
 グローバル展開が求められる中、なかなか国内市場依存から脱却できず、赤字を垂れ流している。近く抜本的なリストラもあるのではないかと社員は身構えています」
 エレベーターなどに使われる鉄鋼ワイヤーの国内最大手である東京製綱は、以前から日本製鉄が筆頭株主だった。しかし先月、その日本製鉄が業績不振を見かねて東京製綱の敵対的TOB(株式公開買い付け)に踏み切り、経済界には衝撃が走った。もはや「後がない」鉄鋼業界の現状を物語る一件と受け止められたのだ。
 「国内の鉄鋼需要はすでに頭打ちで、日本の鉄鋼企業は無理にでも海外に打って出なければいけない状況です。しかし日本製鉄をはじめとする大手を含め、確たる戦略もないままここまで来てしまった。このままでは本格的に海外メーカーに太刀打ちできなくなると、ようやく尻に火がついたというわけです」(全国紙経済部デスク)
 '90年代までは、当時世界最大手の新日本製鐵を皮切りに、川崎製鉄住友金属工業の3社が世界の粗鋼生産量トップ10に食い込んでいた。しかし'19年のランキングに目を移すと、トップ10に名前があるのは新日鐵住友金属が合併して生まれた日本製鉄(3位)のみ。
 中国や欧州の製鉄大手は合従連衡を繰り返して急成長を遂げ、価格競争で優位に立っている。日本の各社も、川上から川下まで束にならなければ戦えない状況に追い込まれたのである。
 さらにもうひとつ、日本の製鉄各社はいま、致命的な難題に直面している。世界で大きな潮流を形作りつつある、「二酸化炭素排出ゼロ」という足枷をはめられてしまったのだ。
 「実現までに10年、20年はかかる。ゼロからの研究開発を、個別の企業でやり続けるのは無理だ」
 昨年12月17日、日本製鉄社長で日本鉄鋼連盟会長を務める橋本英二氏は、同連盟の会見でこう声を荒らげた。菅政権が「脱炭素」の徹底を業界に求めてきたことに対する、あからさまな苦言だった。
 冒頭でも触れたように、製鉄には高炉と呼ばれる巨大な溶鉱炉が欠かせない。しかし高炉を使うと、鉄1トンを生産するのに2トンもの二酸化炭素が排出されてしまう。
 そのため、日本製鉄をはじめ各社は、二酸化炭素排出量を激減させられる「水素製鉄」と呼ばれる手法を研究しているが、実現への道のりは険しいという。今回、日本製鉄・橋本社長は本誌の取材にこう吐露した。
 「二酸化炭素を出さない製鉄は、人類未到の技術です。水素製鉄では、還元(鉄鉱石から鉄を取り出す作業)に水素を使うことによって二酸化炭素の排出量を抑えるのですが、水素は500℃以上の高温にさらされると高確率で爆発してしまう。鉄の精製は高温でないとできませんから、塩梅が非常に難しいのです。
 欧州で水素製鉄の技術が実用化されたとの報道もありましたが、作れる鉄は月産わずか10トン程度にすぎません。我々は毎月450万トンを生産しなければならない。お話になりません」
そしていま、この技術で日本は中国に後れを取っているという。
 「中国の鉄鋼メーカーは国有企業ですから、政府の後ろ盾で水素製鉄の技術開発にバンバン投資している。一方で日本政府は、二酸化炭素削減のために炭素税(排出量に応じて課される税金)を鉄鋼業に課すといいます。
 小泉(進次郎)環境大臣にも言ったのですが、排出量の削減には研究開発が不可欠。そちらにカネをかけるべき時に、税金を取るなんて逆効果です。
 ここで中国に負けたら、世界は中国産の鉄を使うようになり、日本の鋼材は使用禁止になるかもしれません。政府の支援がなければ我々は『アウト』ですし、日本経済の息の根も止まってしまいます」
 政府の全面的バックアップを受ける中国のメーカーに、落日を迎えた日本の製鉄各社が渡り合うのは絶望的だ。これでは10年と時をおかずして、早々に明暗が分かれることになりかねない。
 エンジンと雇用が消える
 いまこの国の産業を襲っているのは、ゲームのルールの激変である。鉄鋼業界がさらされている二酸化炭素削減という「新たなルール」に、ギリギリと締め付けられている業界は他にもある。自動車業界だ。
 「2020年代の半ばからは、仕事が減ると思っていてください」
 ガソリンエンジンの製造に関わる中小のメーカーは最近、トヨタをはじめ大手からこのような「宣告」を受けているという。自動車業界を長年取材するジャーナリストの井上久男氏が言う。
 「トヨタ豊田章男社長は最近、日本自動車工業会の会長としては『EV化を推進するとビジネスモデルが壊れる』とか、『火力発電のウエイトが高い今の電力事情では、EV化を進めても抜本的な二酸化炭素排出削減にはつながらない。
 国のエネルギー政策とセットで考える必要がある』と、急速なEVシフトに否定的な考えを示しています。
 しかしトヨタの社長としては、本音では『いずれEVや自動運転車が主流になる』とも考えているようです。実際、昨年には主にエンジン製造を担当する下山工場(愛知県みよし市)の生産ラインを2本から1本に減らしています。
 ガソリンエンジンの需要が減っていくことは織り込み済みということです。業界では豊田社長の発言は『二枚舌』ではないか、といった声も聞かれます」
 EVの部品数はガソリン車と比べ3分の2、およそ2万点と圧倒的に少ない。電池とモーターとセンサーで動くEVでは、ガソリン噴射装置、点火プラグ、排気系のパイプやマフラーなどが丸ごと不要だからだ。そして部品が減る分だけ、下請けの仕事も減ることになる。
 EVがもたらすのは、トヨタが武器としてきた「カイゼン(改善)」では太刀打ちできない断絶だ。
 かつて蒸気機関内燃機関が発明された際には馬車が駆逐されたが、今度はモーターがガソリンエンジンを駆逐する。裾野まで含めればおよそ550万人の雇用を抱える自動車産業が、今と同じだけの規模を遠からず維持できなくなることは目に見えている。
 「トヨタに限らず、これまで内燃機関で食べてきた人たちを背負ったまま、日本の自動車メーカーがEVへの完全転換を遂げるのは至難の業でしょう。
 トヨタはようやく『ウーブン・シティ』でEVや自動運転の実証実験を始めるといいますが、すでに年間50万台のEV自動運転車を販売するテスラには圧倒的な差をつけられている。トヨタ本体も競争に敗れ、5年ほどで凋落する可能性があると見ています」(ジャーナリストの大西康之氏)
 パナソニックも下請けに
 ここまで見てきたような鉄鋼業界、自動車業界が直面する困難には、共通した「根本的な原因」がある。それは、「他のどの国にも作れないと思っていたものが、いつの間にかどの国でも作れるものになっていた」という厳しい現実から、目を背けてきたことだ。
 まったく同じ失敗をいち早く経験したのが、家電メーカーである。
 「技術っちゅうのは、ウナギ屋の秘伝のタレみたいなもの」
 こう豪語したのは、'98年から'07年までシャープの社長を務めた町田勝彦氏だ。町田氏は「液晶一本足打法」で全経営資源を液晶の生産に投入した。
 「我が社の高品質な液晶は誰にもマネできない」という自信に裏付けられた決断だった。そしてそれは、しばらくの間は正しかったのだ。
 だが、あっという間に韓国や中国のメーカーは「秘伝のタレ」を完璧に模倣した。大画面液晶はありふれたものとなり、同社は破綻の瀬戸際に追い込まれて、'16年には台湾メーカーの鴻海(フォックスコン)傘下となった。液晶の製造にも携わった経験のある、同社のベテラン社員が言う。
 「結局『秘伝のタレ』だというのは町田さんの思い込みに過ぎなかった。『亀山モデル』で一世を風靡したシャープも、今ではアップルに液晶を安く卸す下請け同然です。'90年代から'00年代にはあれだけ下に見ていた中国のメーカーと比べても、同列どころか下の立場になってしまった」
 シャープだけではない。今まさに、同じ道を辿りつつあるのがパナソニックだ。パナソニックはテスラと'11年にEV用電池の生産で協業に入ったが、テスラはいつしか韓国のLG化学、中国の寧徳時代新能源科技などとも取引を始め、「出入り業者のひとつ」になってしまった。
 さらに昨年9月には突如、テスラが自社で電池の内製を進めていると明かし、ますます立場が危うくなった。
 「テスラは各国のメーカーを天秤にかけ競争させて、安く電池を作らせようと考えているだけです。このままでは美味しいところを全部持って行かれて、あのパナソニックですら『ただの下請け』になりかねません。
 しかしこれが、リスクを取って新しいビジネスや付加価値を生み出そうとしなかった企業の末路なのです。
 家電や電機に限らず、この30年というもの、日本のメーカーの経営者は赤字を防ぐことばかり考えてきた。勝負を避けて後手後手の思考を続けている限り、日本の産業が復活する日は来ないでしょう」(前出・大西氏)
 21世紀に入って20年が過ぎ、いよいよかつての成功体験は意味を失いつつある。鉄と自動車、そして電機という屋台骨を失ったとき、果たしてこの国はまだ、自分の足で立っていられるのか。
 10年後に待ち受けるのは、戦後の日本人が経験したことのない荒涼とした時代かもしれない。
 『週刊現代』2021年3月13日号より
   ・   ・   ・   
 2023年1月25日7:04 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「日本に「スタートアップ企業」が驚くほど少ない「致命的な原因」
 規制緩和なくしてスタートアップなし
 なぜ、アメリカ経済は活力があり、日本経済は活気がないのか。この疑問に対する一つの答えは、「スタートアップ(=急成長する新興企業)の少なさ」に見出すことができる。
 【写真】5年後、10年後に「生き残る会社/消えている会社」を実名公開!
 10億ドル以上の時価評価額をもつ非上場企業を「ユニコーン」というが、日本ではこのようなスタートアップが極端に少ない。アメリカの調査会社CBインサイツによると、'22年10月時点で、世界には1198社のユニコーンが存在する。このうち646社はアメリカ企業であり、日本はたったの6社しかない。スタートアップへの投資額('20年)を比較してみても、アメリカは1429億ドルもあるが、日本はその3%程度にとどまる。
 このような状況を変えるために、岸田文雄政権もスタートアップ育成に力を注ぎ始めている。'22年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を公表し、新年の年頭記者会見でも新興企業を増やすための「規制緩和」を訴えていた。
 今回、政府が目標として掲げたのは2つ。(1)現在8000億円程度しかない日本国内におけるスタートアップへの投資額を、5年後('27年度)に10倍強の10兆円程度に引き上げること、(2)日本を世界有数のスタートアップの集積地にするために、将来的にはスタートアップを10万社創出し、ユニコーンを100社創出することだ。
 これらの実現を目指し、「5か年計画」では3つの柱を掲げている。
 第一の柱は「スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築」。メンターによる起業家の支援や、海外における起業家育成の拠点の創設、海外起業家・投資家の誘致拡大といった内容が記載されている。
 第二の柱は「スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化」で、具体的には官民ファンド等の出資機能の強化、銀行等による融資促進などがある。
 そして第三の柱は「オープンイノベーションの推進」。公募増資ルールの見直しや、事業再構築のための私的整理法制の整備、スタートアップへの円滑な労働移動といった内容が記載されている。
 25ページにも及ぶ「5か年計画」については筆者も基本的に異論はないが、大きな疑念があるのも事実だ。
 それは、本当に規制緩和が進むのかという点だ。たとえば世界の50ヵ国以上ではライドシェアが普通に認められているにもかかわらず、日本では解禁される気配もない。ライドシェアとは'10年にアメリカで始まった「Uber」に代表されるサービスのこと。海外では、自家用車をタクシーのように使うことができるため利便性が高く、爆発的に普及している。
 一方、日本ではライドシェアが道路運送法に抵触する。「Uber」も日本に上陸しているものの、自家用車は使えないためタクシー配車サービスとして運営されている。法改正しない理由は、タクシー会社やバス会社といった既得権に配慮しているからだろう。
 しかしこの程度の法改正もできないのに、スタートアップ育成に必要な規制緩和が進んでいくのだろうか。新年の年頭記者会見で岸田総理は「挑戦を妨げる規制は、断固、改革していきます」と述べたが、その覚悟が問われることになる。
 「週刊現代」2023年1月28日号より
   ・   ・   ・