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電気自動車とは、プラモデルの金属板で、荒っぽくいえばブリキの「おもちゃ」である。
昭和時代の日本は、プラモデル大国として精巧なプラモデルを大量に生産して子供達に提供していた、それが日本のもの作り科学技術大国の象徴でもあった。
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2023年1月24日 YAHOO!JAPANニュース 週刊現代プロフィール「トヨタが中国企業に「敗北」する日がやってくる…日本の基幹産業を襲う「悲劇的な結末」
井上 久男
とまらない世界の「EVシフト」。新興中国企業「BYD」が勢いにのるなか、日本だけが取り残されていく。日本は、そして日本を代表する自動車メーカー「トヨタ」はどうなるのか...。前編記事『トヨタが「世界一」から転落し、日本の自動車産業の「ヤバすぎる大崩壊」が始まる…!』に引き続き紹介する。
中国企業では珍しく「地に足が着いた」動きをする
'95年に電池メーカーとして中国・深センで創業したBYDは、'03年から自動車事業に参入した。'08年には米国の著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が投資したことで一躍、名を馳せた。
現在の社員数は29万人超と、日産やホンダを上回ってトヨタの約37万人に迫り、ITエレクトロニクス、都市モビリティ事業なども手掛ける。
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'21年12月期の売上高は、前年比38%増の2161億元(約4兆842億円)。'22年3月にはガソリン車の製造を中止し、EVとプラグイン・ハイブリッド車(PHV)に経営資源を集中させた。
日産自動車の元技術者で、複数の中国の自動車メーカーで勤務した経験がある島影茂氏は、BYDの経営についてこう評価する。
「中国の自動車会社では珍しく地に足が着いた動きをしている。現実的な対応がうまい会社だ」
それを如実に示しているのが、日本企業への接近である。
よきパートナー」では終わらない「BYDの野望」
たとえば'10年には、群馬県の金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、ものづくりの力を飛躍的に向上させた。
さらにBYDは、得意とする薄型のEV向け「ブレードバッテリー」などで多くの特許を取得しているのだが、意外なことに「自動車業界でそれらの特許を最も多く引用しているのが、実はトヨタ」('22年11月7日付日本経済新聞)だという。
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EVで出遅れるトヨタはBYDの技術を高く評価していると見られ、'20年4月、両社でEV研究開発の合弁会社を深センに設立すると発表している。その成果の第一弾が、'22年10月に初公開した、中国市場専用の共同開発EV「bZ3」だった。
BYDが、トヨタをはじめ日本の製造業にとっての「よきパートナー」であり続けるだけならば、大いに結構と思うかもしれない。だが、同社の経営をさらに詳しく見ていくと、彼らの抱く「野望」がそれに止まらないことは明白だ。
EVの時代になると、自動車の生産もパソコンのように、水平分業(複数の企業が得意分野を分担する形)の産業構造になるとの見方もあるが、BYDは完全に垂直統合モデルを推進している。巧みな提携戦略で、あらゆる技術の内製化を進めているのだ。
電池も半導体も内製化するBYDの「自前主義」
たとえばEVの要である電池だ。BYDは南米やアフリカで、バッテリーの素材に欠かせないリチウム鉱山の採掘権を取得しており、すでに今後10年分の備蓄を押さえているとされる。
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米中貿易摩擦も巧みにかわし、'22年3月には米国の半導体企業・エヌビディアと自動運転に関するAI(人工知能)の開発で提携することで合意したと発表。早速、同社製のAIを導入する計画だという。
さらには、EVのモーター制御に不可欠のパワー半導体も内製を進める。自動車産業調査会社「フォーイン」で中国の自動車産業を担当している周錦程アナリストが言う。
「こうした動きからわかる通り、BYDは自前主義を貫いています。この調子で内製化を加速させていけば、全世界での社員数は近いうちに90万人に達する―との見方さえ出ているのです」
「トヨタは日本を去る」か
'23年の元旦、トヨタに関するこんな記事が業界で話題になった。
「トヨタは日本を諦めつつある 豊田章男社長のメッセージ」(ITメディアニュース)
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概要はこうだ。トヨタ現地法人が60周年を迎えたタイでは、雇用面や税収面で貢献している自動車産業に対して、政府や国民から感謝の念がある。だが日本では、トヨタがいくら頑張ろうと、マスコミも政治家もリスペクトしない。このままでは早晩、トヨタは本社を海外に移すだろう―。
トヨタ関係者が言う。
「こうした記事が出たのは、'22年12月に章男社長が一部の記者に『うちは日本にこんなに貢献しているのに、日本人には自動車産業に対する感謝の気持ちがない』と語ったことが影響しているのではないか」
確かに、1月5日に開催された日本自動車工業会の賀詞交歓会でも、「コロナ禍でも雇用を増やしたのに、日本では『ありがとう』という言葉が聞こえてくることはありません」という章男社長のメッセージが代読された。憤りは相当に深いようだ。
日本企業が9割シェアを占める「東南アジア」の動き
こうした発信は、日本政府がEVシフト一辺倒にならないようにするための牽制の意味合いもあるだろう。EVで他社の後塵を拝するトヨタは、水素燃料やバイオ燃料などの有用性を訴えてきた。「思惑通りに運ばないなら、日本から出ていくぞ」という一種の「脅し」であると見られる。
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だが、こんな内向きな姿勢でトヨタはBYDのような勢いに乗るEVメーカーの攻勢を防ぎきれるのだろうか。というのも、まさにこれから彼らが本気で注力しようとしているのが、東南アジアでの事業なのである。
BYDは今、中国本国からの輸出で対応していた海外販売を現地生産に切り替えようとしている。'22年9月には、'24年までにタイで年産15万台の能力を持つ同社初の海外乗用車工場を建設すると発表した。
タイやインドネシアなど東南アジア市場は、日本の自動車メーカーが9割近いシェアを持つ金城湯池。その東南アジアにもEVシフトの波は押し寄せているが、日本勢の動きは鈍い。今のうちに、BYDは得意とするEVやPHVを大量投入し、日本の牙城を一気に崩そうとしているのだ。
東南アジア攻略に乗り出すのは、BYDだけではない。SUVで台頭した中国の「長城汽車」もタイでEV事業を強化しており、「'21年に先行発売した小型EVは受注開始後48時間で6000台以上の注文が入り、話題になった」(前出・周氏)。同社は'23年からタイでEVの生産を始める計画だ。
またインドネシアでは、中国の上海GM五菱が'22年からEVの生産を開始した。同年11月に同国のバリで開催されたG20首脳会議では、同社のEVが公用車に採用されている。
舞台に立とうとすらしない「トヨタ」の「内向性」
東南アジアで猛攻を仕掛け始めた、中国勢の動きに焦ったのだろうか。トヨタは'22年12月、タイで売れ筋のピックアップトラックのEVモデルの試作車を公開、'23年から現地生産すると発表した。まさに防戦一方である。
日本メーカーはEVに関する高い技術を持ちながら、発想や行動が内向きになっているがゆえに、それを活かしきれていない。
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今年1月5日から8日、米ラスベガスで世界最大の家電見本市「CES」が開催された。その参加者はこう語っていた。
「近年のCESは、家電と言いつつ、事実上『自動車見本市』の様相だ。しかし、海外の企業が次々とEV関連の新技術を提案しているのに、日本の自動車メーカーの存在感は全くない」
今年はホンダとソニーが共同開発して'25年に市場投入するEVのブランド名「AFEELA(アフィーラ)」が発表されたくらいで、トヨタは出展自体を見送った。「出展すれば否応なくEVが話題になるから、それが嫌で避けたのではないか」と見る向きもある。技術やアイデアがないわけではないのに、舞台に立とうとすらしていないのだ。
就業人口の8%に当たる約550万人もの雇用を抱える自動車関連産業は、日本の屋台骨である。その基幹産業が今、EVシフトという大変革に直面している。
そのような重大局面に、業界トップ、しかも日本を代表するトヨタが真正面から向き合おうとしていない。それでは国民に「このまま中国の軍門に下っていいのか」と言われても、文句は言えないだろう。
「週刊現代」2023年1月28日号より
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次世代自動車産業界として水素自動車と電気自動車の選択は、かっての家庭用ビデオテープにベーター方式とVHS方式の選択に似ている。
電気自動車とは、無責任に言うと「プラモデル」であり、手作りのラジオや無線機のようなモノで、特別な知識や技術がなくても部品と説明書があれば興味がれば子供でも作れる。
それ故に、日本はソニーがこだわったベーター方式のように水素自動車にこだわり続けている。
電気自動車とは、日本人が得意とする変革のイノベーションではなく、欧米人や中国人が得意とする破壊のイノベーションである。
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現代日本には、戦後のもの作り科学技術大国の原動力となった変革のイノベーションをもたらした「ジャパン・アズ・ナンバーワン」も明治の近代的殖産興業や軍国的富国強兵の原動力となった破壊のイノベーションをもたらした「メイド・イン・ジャパン」もない。
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1月24日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「トヨタが「世界一」から転落し、日本の自動車産業の「ヤバすぎる大崩壊」が始まる…!
世界の「EV化」の流れは決した。だがトヨタをはじめ日本勢は、現実を見つめ、遅れを取り戻そうとすらしていない。勢いに乗った新興中国企業に、日本の「屋台骨」が一気に叩き壊されてしまうのか。
【マンガ】外国人ドライバーが岡山県の道路で「日本やばい」と驚愕したワケ
「半導体不足」だけではない「日本車の販売不振」
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日本のクルマの売れ行きが、'70年代後半と同じ水準まで落ち込んでいる―。そんな衝撃的なニュースが、年初から自動車業界に流れた。'22年の国内新車販売台数は、前年比5.6%減の420万台。前年割れとなるのは4年連続で、東日本大震災が発生して大幅減産となった'11年をも下回り、45年前の水準に戻ってしまった。
一方で、躍進したのがインドだ。新車販売台数は前年比25.7%増の約473万台に達し、日本を追い越して中国、米国に続く世界3位に浮上。日本が長年守ってきた地位を奪う形となった。
日本車の販売不振には、半導体不足による減産が大きく影響している。市場ニーズは回復しているが、それに対応できなかったのだ。特に落ち込みが激しかったのがトヨタである。乗用車の販売台数では同社の減少幅が最大で、12%減の約125万台だった。
ただ、半導体不足は各国共通の事情ではあるものの、'22年の中国の新車販売は2%程度伸びた。GMも米国で新車販売を約3%増やし、トヨタを抜いて首位の座を奪い返した。言い訳が許される状況ではない。
日本勢の不振の背景には、何があるのか。少子高齢化、若者のクルマ離れ……トヨタをはじめ、国内メーカー関係者の多くは、そうした外的要因を口にする。
「EV」での出遅れ、中国からの「黒船」
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しかし最大のネックが、ついに一般の消費者にも浸透し始め、ガソリンスタンドの廃業が目立つ地方などで本格的にニーズが生まれている電気自動車(EV)で、日本勢が総じて出遅れていることにあるのは、もはや明らかだろう。
'22年は日本国内でもEVの販売が前年比2.7倍の約5万9000台となり、初めてシェア1%を超えた。最も売れたEVは日産自動車が発売した軽EV「サクラ」の約2万2000台だが、独ベンツや韓国の現代自動車などの輸入EVは、前年比107倍となる約1万4000台売れている。
トヨタは'22年、初のEV「bZ4X」を発売したものの、わずか1ヵ月でリコールとなった。早くからEVを市場投入してきた日産を除いて、日本の自動車メーカーは大きく後れを取っている。
そしてうかうかしている間に、ついに中国から「黒船」がやって来てしまった。1月31日、深センに本社を置く自動車メーカー「BYD」が、日本でEV乗用車の販売を開始するのだ。
テスラを超えて、いま世界一勢いがある自動車会社―BYDをそう評する業界関係者は多い。'22年のテスラの販売台数は前年比40%増の約131万台だったのに対し、BYDは約2.8倍の91万台(EVのみ)と、伸び率でテスラを大きく上回った。
破竹の勢いが株式市場でも好感を持たれ、昨夏には株式時価総額で独フォルクスワーゲンを追い抜き、1位のテスラ、2位のトヨタに次ぐ世界3位に浮上した。
日産を上回った「ATTO3」のすごさ
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BYDが日本で発売するEVはSUVの「ATTO3」。価格は税込み440万円で、1回の充電で走行可能な距離は485km(WTLCモード)と、日産の主力EV「リーフ」を上回る。
筆者は昨年12月、この「ATTO3」に試乗した。モーターで駆動するEVはガソリン車を上回る加速性能をもつが、あえて加速を抑え、「ガソリン車に近い乗り心地にすることで、これから乗り換える人にも違和感を与えないようにしている」と担当者は説明する。
同社は日本法人の「BYDオートジャパン」を'22年7月に設立。国内でまず22店舗を設け、'25年までに100店舗に増やす計画だ。ホンダや日産、輸入車の販売を手掛けるVTホールディングス(本社・名古屋市)傘下の企業などが販売を担う。
日本法人社長には、三菱自動車出身で、フォルクスワーゲンジャパン販売の社長も務めた東福寺厚樹氏が就任した。氏は'90年代半ばに三菱の北米事業の再建に貢献した実績が評価され、'00年に三菱と独ダイムラーが資本提携した際の交渉にも関わった。
「中国製かどうか」ではなく「使い勝手とデザイン」
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日本市場に参入するうえで、何を重視しているのか。東福寺氏はこう語る。
「『中国製にしてはすごい』と言っていただくことが、ひとまずの目標です。製造は中国の工場ですが、日本からエンジニアが出向いて品質をチェックしています。
また、私が専門としてきた販売の視点で言うと、かつてはエンジンの性能にわくわくしてクルマを買う顧客がたくさんいましたが、今は『ボンネットを開けたことすらない』という人も多いのが現実です。
つまり、ユーザーの関心はメカニックに対する興味よりも、移動の快適性のほうに移っている。BYDはそこに気付き、強化しています。中国本国仕様車の車載端末には多数のアプリが入っていますが、日本仕様車の端末でも、使えるアプリをこれから増やしていきます」
「ATTO3」のインテリアは「スポーツジム」をイメージしてデザインされているという。全体に曲線が多く、日本車とは異なる印象だ。
「今は日本の若者も中国製かどうかなんて意識しませんから、使い勝手とデザインがよければ買ってくれるはずです」(東福寺氏)
「ATTO3」は中国だけでなくオーストラリア、タイなどで先行販売されており、30~40代のファミリー層を中心にすでに14万台が売れた。
「EVシフト」とは、動力源がエンジンからモーターに移行することだけを指すのではない。その本質はクルマの「スマホ化」、つまりクルマの使い勝手の良さがソフトウェアの優劣で決まるという点にある。テスラやBYDはその流れをとらえ、戦略を明確にしているが、一方で日本企業はその潮流に対応する動きが鈍いのが実情だ。
中国の自動車産業に詳しいみずほ銀行ビジネスソリューション部の湯進主任研究員は「BYDのクルマはデジタル化が進んでおり、まさに『走るスマホ』。破壊的な競争力を持っている」と語る。
止まらない世界の「EVシフト」。新興中国企業「BYD」が勢いにのるなか、日本だけが取り残されていく。日本は、そして日本を代表する自動車メーカー「トヨタ」はどうなるのか...。後編記事『トヨタが中国企業に「敗北」する日がやってくる…日本の基幹産業を襲う「悲劇的な結末」』で引き続き紹介する。
「週刊現代」2023年1月28日号より
井上 久男(ジャーナリスト)/週刊現代(講談社)
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